愛希れいかさんのインタビュー後半です。愛希さんは、宝塚退団公演『エリザベート―愛と死の輪舞―』に続いて、東宝版の『エリザベート』で、同じエリザベート役を演じます(花總まりさんとダブルキャスト)。宝塚で演じたエリザベートについて振り返っていただき、作品の魅力や、改めて取り組むこの役への思いなどを伺いました。
――男役を率いて踊れる格好良さや、『BADDY―悪党は月からやって来る―』の戦うデュエットダンスに代表されるような強さは、具体的にどのように出来上がっていったのでしょうか?
私も戦う、あのようなデュエットダンスは初めてでした。娘役だからと言うものに縛られた時期もあったんです。単純に自分も宝塚のいちファンだったので、「こうあってほしい」「こうであるべき」というものがあったんですが、みんながみんなそうじゃなくていいんだと思えた時があって。だったら、私にしかできない事はなんだろうと思ってやっていたら、ああなったという感じです。それも最初は皆さんに受け入れられるか心配でしたが、そのうち「面白いじゃん」と言ってくださる方が出てきてくださることが嬉しかったですね。振り切るのはすごく怖かったですが、人とは違うことをやろうという意識は常に持っていました。
――龍さん、珠城さんとコンビを組む過程で、さまざまな変化を経て、退団公演の『エリザベート―愛と死の輪舞―』に繋がっていったんですね。宝塚でエリザベートを演じ終えてみて、演じきった感覚はありますか?
演じきったという感覚は正直ないんです。「宝塚ではやり切った」と言う感覚は強かったのですが、正直なところ、「エリザベートという人をまだ追求しきれなかった」と思っているんです。やはり、もっともっと深い人ですし、理解できなかったところも、たくさんあるなと思いました。やはり宝塚は、トートという男役さんが主役ですし、そこに合わせるじゃないですが、やはり娘役ですから、いくら自分はエリザベートと思ってやっていても、そういう部分はどうしても残ったのかなというのはありましたね。でも、宝塚では10回目の上演であり、これまでのほとんどの公演を観てきていますが、本当に新しいものやろうと言う感覚では取り組みました。
――おふたりとも新しかったですよね。
そう言っていただけたのが、すごく嬉しかったです。
――パッションがものすごいなと思いました。
やはりそこは目指しましたね。宝塚の『エリザベート―愛と死の輪舞―』をやる上でも、新しい感覚で観ていただきたかったですし、こういうアプローチの仕方もあるんだという風に思ってもらいたい。もちろん、本質は変わらないですが、そういうところは思いながらやりました。
――エリザベートを演じるうえで、一番大事にしたものは何ですか?
自分の信念ですね。自分の信念で生きるということと、生きることへの執着。どんなことがあっても生きようとする人です。
<取材協力>
スタイリスト:Die-co★
トップス ¥50000、パンツ ¥65000/Chicca Lualdi(アッカドゥエ)(03-5451-3670)
シューズ ¥43000/L’AUTRE CHOSE(T-Square Press Room)(03-5770-7068)
ブレスレット/スタイリスト私物
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<有料会員限定部分の小見出し>
■エリザベートという人をもっともっと理解して追求しないといけない
■前向きになれるエネルギー、一歩踏み出すエネルギーをくれる。今の働く女性に響く
■多分違うものになると思います。(観たら衝撃が?)そうだと思います(笑)
■緊張でしかないですが、新しい風を吹かせます!
<ミュージカル『エリザベート』>
【東京公演】2019年6月7日(金)~8月26日(月) 帝国劇場
公式サイト
https://www.tohostage.com/elisabeth/
<関連リンク>
愛希れいか アミューズオフィシャルウェブサイト
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■エリザベートという人をもっともっと理解して追求しないといけない
でも、それって何だろうかと。息子が死んでも生きようとするし、自殺はしないじゃないですか。結局最後は殺された。そういう生きるエネルギー、生に執着するということはすごく考えましたし、「自分がこうしたいから、こうする」というところには、こだわりました。環境に振り回されて、それに乗ろうと思えば、流れに身を任せることができたと思うんです。でもそうしなかった彼女の人間性が、自分自身で苦しめていると思うので。
――逃げなかったということですよね。
だから、そこはすごくこだわりました。まっすぐな感じというか。
――次に演じる『エリザベート』は、エリザベートが主人公の物語ですが、こうして行きたいとか、逆に貫きたいと考えているところはありますか?
本質は変わらないですね。ちょっとエゴイストの部分をどうやったら強く出せるか。宝塚は、ふたりの愛の物語性が強いですが、そうじゃない人間、エリザベートという人をもっともっと理解して追求しないといけないと思っています。あとは単純に男性がいらっしゃるのが違うので、そのエネルギーに負けないくらいの強さというよりは、一本強く筋が通っている感じを出さなければと。
――女の生き方みたいなところでしょうか。
でも、愛されたいし、弱い、欲がある感じをどうやったらいいかとも考えています。
■前向きになれるエネルギー、一歩踏み出すエネルギーをくれる。今の働く女性に響く
――そう思うと、とても人間らしい人ですよね。
すごく人間らしいと思います。人間らしすぎて。もっとわがままにできたらと思います。まだ漠然と思っている状態ですが。
――『エリザベート』は特に女性にものすごく人気のある作品じゃないですか。愛希さんご自身は女性として、この作品もしくはエリザベートに対して、演じることを抜きにして惹かれるところはなんですか?
とにかく観たときに、「明日から生きよう」と思えた。最後は死んでしまうのに、前向きになれるって何なんだろうと思ったんです。ズンとくるんですが、明日から自分らしく生きようと思える。私はそう思ったんですよね。恐れずにやっていこうって。私が宝塚に入ろうと思ったのもこの作品を観たときでしたが、そういった前向きになれるエネルギー、一歩踏み出すエネルギーをくれる。何があってもめげないでいいよと思える、頑張れる作品です。やはり今の働く女性の方には響きますよね。格好いいなと思えると思います。
■多分違うものになると思います。(観たら衝撃が?)そうだと思います(笑)
――男性から『エリザベート』の面白さがわからないと言われて、「なるほど」と思ったことがあるんです。自由を求めるエリザベートの視点では見られないと。フランツがあんなに謝って戻ってきてと言っているのにって(笑)。もちろん男性も個々に思うことは色々だと思いますが。
できるなら戻りたいですよね。でも、寄り添うのではなく、自分の道を行くのがエリザベート。
――女性が惹かれるのは、そういうエリザベートの生き方に憧れみたいなものがあるのかなと。
憧れはあります。格好いい。でも、舞台で離れてみるからいいんだと思うんです。日常にいたら、ちょっと周りが困っちゃう(笑)。
――確かに(笑)。今回は、意図的に変えようとするわけではなく、ブラッシュアップのようなイメージですか?
多分違うものになると思います。自分の感覚なので、何とも言えないんですが、多分違うと思います。
――観たら「こうなったんだ!」と言う衝撃がある?
そうだと思います(笑)。宝塚ではあの時にしかできなかったものもあるので。
――宝塚の作品と、音楽的に違うところがたくさんありますが、稽古をするなかで手ごたえはありますか?
やはりものすごく難しくて、曲は一緒ですが、少しずつ違っているところもあって大変ですね。エリザベートをやると決まってから、ずっと聴いているので、狂いそうになりますが(笑)。でも、嫌にならないのは音楽が素敵で虜にさせられているんだろうなと思います。もうずっと、エリザベートのことを考えています。
■緊張でしかないですが、新しい風を吹かせます!
――夢に出てきちゃうとか?
夢には出てきませんが(笑)。ずっと頭にはありますね。ずっと考えています。
――「役が降りてくる」という方もいますが、そんな事はありましたか?
公演中には、ずっと近くにいてくれる感じがありました。
――そうなんですか!
やはりそうだと自分も信じていたし、舞台に入ったらスイッチが入れられると思っているので。
――最後に、楽しみにしていらっしゃる皆さんにメッセージをお願いします。
卒業して初めての舞台で、半年ぶりくらいの作品になるので、すごく緊張している気持ちと、楽しみな気持ちがあります。『エリザベート』ファンの方がたくさんいらっしゃると思いますが、その方々にも驚いていただけるように、しっかり準備して全力を発揮したいと思います。
――今回のキャストは、「『エリザベート』で育った」という方々が大集合ですね。
正直ここに入るのは、緊張でしかないですが、そこで新しい風を吹かせます!
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エリザベート、チケット入手できませんでしたが、それも愛希さんのスタートとしては、なんだか嬉しいです。