創価大学と創価女子短期大学の関係者が特設サイト「安全保障関連法案に反対する創価大学・創価女子短期大学関係者 有志の会」で行なっている安全保障関連法案(戦争法案)への反対署名は、8月24日の時点で1400人を超えました。安保法案を推進している公明党とも関係の深い創価大学・創価女子大学の関係者が、なぜ法案反対署名の活動をはじめたのか。それに対する風当たりはどうなのか。署名活動の呼びかけ人の1人、創価大学通信教育部非常勤講師の佐野潤一郎さんにインタビューして、たっぷりお話をうかがいました。※署名締切は8月26日(水)午前0時で、26日に予定されている「安全保障関連法案に反対する学者の会」の「100大学有志共同行動」で与野党参議院議員に提出されます。署名サイトはこちら → http://sokauniv-nowar.strikingly.com/
佐野さんは北海道出身で、中学までは地元の中学で学びました。中学の先輩に自衛官になった人がいて、その人が演習中に地雷の事故で亡くなり、彼の母親が嘆き悲しむ姿を見たのがきっかけとなり「何かが間違っているのではないか」と考えるようになったということでした。そして、そのことを伝え聞いた人が「その答えを出してくれるのは池田(大作)先生しかいません。この子は創価学園に行かせた方がいい」とアドバイスし、佐野さんは東京の創価高校に進学することになりました。
創価大学文学部に進んだ佐野さんが関心を持ったのは、米国の作家、マーク・トウェインでした。「トム・ソーヤーの冒険」や「ハックルベリー・フィン」で知られるマーク・トウェインは、児童文学を通して大人社会のウソや欺瞞を暴き、晩年には反帝国主義運動などに身を投じた人物です。そして、佐野さんは創価大学大学院を卒業し、創価大学の非常勤講師となります。佐野さんの研究対象は「権威主義に対する風刺の笑い」で、現在、佐野さんは創価大学の九州と関西の地方スクーリングで、英語の授業を担当しています。
創価大学は公明党議員を多く輩出しているため、その公明党が推進する安保関連法案に反対することはハードルが高いことは容易に想像できます。佐野さんは、なぜこの法案に反対しているのでしょうか。掲載が随分遅くなりましたが、特設サイトが公開された翌日の8月12日に佐野さんにお会いしてうかがった内容を、佐野さんの言葉でお伝えします。
--まず、「安全保障関連法案に反対する学者の会」(http://anti-security-related-bill.jp/)の賛同者リストで、「2015年6月11日20時から6月15日15時までのご署名分」の部分に、創価大学講師(非常勤)として佐野潤一郎さんのお名前が、創価女子短期大学非常勤講師の氏家法雄(うじけ・のりお)さんらと一緒に出ていますが、この「反対する学者の会」に署名された経緯をお教えください。
今回の法案が通ってしまったら、まず第一に自衛隊がどんなことをしでかすかわからないと思いました。私は、自衛隊で先輩を亡くした経験から、とにかく武力ないし人の命を手段にする、そうしたことには一切反対という、かなり急進的かもしれませんが、そうした立場です。自衛権うんぬんは別にしても、安倍政権は国民の声を聞かずにどんどん先走ってしまっていますが、国民の声を聴かないというのは国会議員ではあってはならないことです。彼らは私たちが選挙で選んで、そして権威を負託した立場です。だから私たちには、それに対して言う権利があります。にもかかわらず、それを聞かずに「まだ理解が進んでいない。理解が十分ではない」と公明党の山口代表もおっしゃってますし、安倍首相もおっしゃってます。私たちは理解しているからこそ反対しているのに「理解が進んでいない」と言うのは、「私たちの意見を聞きなさい」ということですよね。
--教えているような感じですね。
それに対しては我慢がならない。そうではなくて、理解したうえで反対しているということを表明したかったんです。表明するにしても、ツイッターやフェイスブックでは限界があります。氏家法雄くんが徹底して、いろんな議員のフェイスブックに書き込んで、反論につぐ反論をしたんですけど、まったく返ってこない。それどころか、まわりの支持者という人たちから総攻撃にあって来た。氏家くんは、1人で孤軍奮闘して、私はツイッターで、いろいろな人のリツイートをしたりしていました。
--ツイッターでリツイートを。
ええ、リツイートですね。そして、法案に反対だという表明をしてきました。そうしたなかで、こうした場(法案に反対する学者の会)があったので、氏家くんから聞いて、私もすぐに署名したということです。
--そういうことをすることに対して、創価大学あるいは創価学会から「何をしてるんだ」という声は?
大学というのは何を言っても自由なはずですね。学問の自由がありますし。それから卒業生であれ教職員であれ関係者であれ、大学の理念に賛同するということであれば、別に創価学会という宗教でもなければ公明党という政治団体でもありませんので、ここは言論が担保されるであろうという風に考えました。
--学者の会で名前を連ねたことに対して、まわりの反応はどうだったんですか?
ほとんど黙殺でした。
--何をやってるんだとも言われなかった。学者の会の署名の時は。
この時にはまったく。まあ、いわゆるネトウヨの人からは多少はありましたが、それ以外は、ほとんどありませんでしたね。
--創価学会というか公明党が一枚岩で来たことにたいしての「分裂工作」というような声はなかったのですか?
どうでしょうか。一枚岩かどうかすら、私にはわかりませんね。ただ、みんなが声をあげないということが不思議だと思っておりまして。賛成なら賛成で、私はツイッターに書いたんですけど、賛成してるんだったら、なぜ安倍さんを支援するデモに一緒に行かないんですかと。
--ああ~、でもそれは結構つらそうですよね。あそこに行くのは勇気いるでしょうねぇ。
でしょうねぇ。SEALDs(シールズ/Students Emergency Action for Liberal Democracy – s/自由と民主主義のための学生緊急行動)のデモに行くよりずっと敷居高いと思いますよ。
--旭日旗ですもんね。
私は、むしろSEALDsの方には親近感を持っていて、(今年の)6月21日でしたかね、(京都の)円山公園のデモに初めて参加しました。
--では、今回、「創価大学・創価女子短期大学関係者 有志の会」で署名活動をしようということになった経緯はどうなんでしょうか?
大学ごとにやっている運動を広げていかなければならないと思いましたが、創価大学はなかなか立ち上がりません。私は以前、日本大学の非常勤講師もしていて、日本大学が立ち上がったので、そこにすぐに名前を連ねさせていただいて。そのうちに、創価大学の若い世代の人たち、今回の発起人の中でも若い世代の人たちから、やっぱり創価大学でやりたいよねという声が出てきました。氏家くんが「こういう若い人がいるんですけど、佐野さん、私たち2人で人身御供になりませんか」と。「10人揃ったら始めようか」と言っていたのが、おとといだったんです。そしたらあっという間に10人集まって。
--おとといですか。
それから池田先生の指導をもとにした文案をもらいました。ただ、私としては、自衛権についての議論になってしまうと、いろいろな考え方があると。私は自衛隊自体を違憲だと思っている人間ですけど…
--ようするに、日本への直接的な攻撃についての個別的自衛権を認めるのかどうかということになってしまうと、いろんな意見が出てくるということですね。
はい。ですから、そこでまとまるのは難しいだろうから、むしろ「我々は何を創価大学で学んできたのか」ということを中心に考えて、やはり「人権を守る、民衆を守る」ということだろうと思いましたので、このような文面の声明に書きあらためさせていただきました。
--つまり、今回の声明というのは、人権意識を持っているなら今回の法案には反対しないとおかしいというか、だからこそ反対しているんですよということで、憲法9条の「戦争の放棄」について自衛隊がどうなのかということとは別、ということですね。
そこは別ですね。
--人権の尊重から言って、今回の法案は認められないと。
今回の法案と、今回の法案を通そうとする人たちの動きが認められないということです。ですから、法案の内容については、今回の宣言では一切触れていません。今回の運動は、声を上げられない状況になっているといことが問題なのだいうことです。
--創価学会員の中には、一部、もしくはごく一部と言われるかもしれないけれども、デモに参加して法案反対のプラカードを掲げている人もいますよね。
勇気ありますよねぇ。
--それよりも広い状態で、創価学会や公明党の支持者のなかで、どこかで討議は行なわれていないんでしょうか? あるいは、あっても見えてこないのか。
実際のところ、みんなが遠慮しあって声をあげていないというのがひとつと、創価学会の支援という闘いの中で、公明党に異議をとなえるのはどうかと思うという人たちがたくさんいらっしゃって、「あなたたちがやっていることは、公明党が一枚岩で自民党を止めるための戦いをしているのに、それを弱めるものだから、自民党を利することになってしまう」と…
--ちょっと、そこ、大事なところだと思うんですが、自民党の暴走を止めるために公明党が一枚岩になって闘っているのに、その足を引っ張るというか、それを弱くすると、そういう理屈ですね。
そういう理屈でツイッターなどで言ってくる人たちが多いですね。新設されたばかりのアカウントで、突然来て、ツイートはそれしかなかったりとか。そんなことがあって。どんどんブロックしていますけど。
--実際に、公明党は自民党が暴走するのを止める役割をしていて、平和に対する貢献をしている、公明党こそが平和を作り出しているという主張はありますよね。
小渕さん(小渕恵三さん)が頭を下げられて政権入りした時、当時は私もそうだと思っていました。ですから、それはもう諸手を挙げて賛成しましたし。
--公明党が政権入りした当時、佐野さんは、それに賛成されていたんですね。
ええ。そして公明党議員を必死になって支援しましたし、ついこの間の選挙まで、徹底して選挙の支援活動はしていました。
--じゃあ、PKOの時はどうだったんですか?
PKOの時は、私は大反対しました。当時は東京に住んでいたんですけど、東京の市議会議員さんが来られまして、立派な方でした。この方は、毎日話を聞いてくださった。でも結局、話は平行線のままでした。
--PKOの時もいろんな議論があったけれども、それでも先生は公明党を支持してきた。
ええ。
--それが今回はちょっと違うんだというのは、どういうことなんでしょうか? そういう人もいると思うんですよ。PKOまではギリギリだった。実際に何をやるかどうか、それが突破口になるかどうかは別として、PKOは形としては国連の旗のもとで行う活動ですから、そこまではいいだろうと。だけど今回は何が違うのか。
PKO法案が通り、防衛庁が防衛省になり、秘密保護法が通り、もうここぐらいでダメだろうなと思っていました。そしたら案の定、今回は安保法制がこうなってしまった。もう、これ以上は歯止めになるとか言っても、もう信用できない。
--今回は、米軍とともに戦闘が行われている現場にも行く可能性が非常に高い法案になってますよね。
はい。その可能性が高い法案ですね。しかも、そのあいまいさというのが、時の内閣が考える、それが根拠になってしまうという可能性が今の法案にはありますので、それは憲法どころか法治主義を否定していることになってしまいます。
--「それでも公明党がブレーキ役になっている」という議論はどうですか?
いや、ブレーキ役には、もうなっていないと思っています。逆に、安倍さんが公明党内の固さを信じて、自民党内からどんな声が上がろうと、公明党がいるんだから大丈夫という風にすらなっているんじゃないかと思います。
--今回は公明党がブレーキ役というより、安倍政権の中の中核部隊というか、カッチリした部分として動いていると。たしかに一枚岩ですよねぇ。
それが不思議なんですよねぇ。地方議員に至るまでそうでして。
--公明党は造反の声を聞きませんよね。自民党の中には、いろいろな声がありますけどね。国会議員にも地方議員にも、反対の声を上げている自民党議員はいる。
まあ、いろんな温度差はありますけどね。
--ただ、現役の公明党議員で、明確に私は反対だと声を上げている人は、少なくとも私の知る限りではいませんよね。
いませんね。何か議論ができない雰囲気ができてしまっている。これって人権問題じゃないかと思いまして。人権が抑圧されてる状況にある、無言の圧迫があると。
--公明党内の議論が聞こえてこないですね。
何が議論を妨げているのかはわかりません。彼らがどういったことを考えているのか、わかりません。ただ、彼らはなぜか同じことを繰り返しているんですよね。ペルシャ湾の話だとか、何か答案ペーパーがあってそれをオウム返しに読んでいるような、薄気味悪さがあります。
--そういえば、ペルシャ湾の機雷の件に関しては中東の学者さんたちが「おかしい」と声を上げましたね。そして、今度はだんだん日本の近くに話が戻ってきて、今度は中国が脅威だと言いだして…。
中国は内部にはいろんな声があると思いますけど、中国大使の程永華(てい・えいか)さんは、創価大学の卒業生で……
--中国大使?
東京にある駐日中国大使館のトップの全権大使は、程永華さんで、この方は創価大学の卒業生。一番最初に中国から受け入れた留学生の1人なんです。
--創価大学の卒業生が中国大使館のトップに…
ええ、トップです。それだけ創価大学は中国と強いきずなを持っています。安倍政権が中国は仮想敵だと、国会答弁ですら中国を名指ししました。私は創価大学中国研究会の会員でもあるんですが、あれは本当に、ほんとに腹が立ちました。そして、それに対して何も言わない公明党に対して、もっと腹が立ちました。池田先生が中国のことを大切にされ、中国の人たちと日本の市民とで友好が結ばれようとしているのに、それを国レベルで名指しして、いらん火をあおって…。これは違うと思いました。
--中国だって名指しされたら、「なにを」って思いますよね。日本が軍備を拡張すれば中国はもっと拡張しなければいけないと。一部には防衛じゃなくて先につぶすべきだとか言っている人もいますよね。
答弁を聞いているとそれを否定しないどころか、それが見えてしまいますよね。
--池田大作さんとアーノルド・トインビーさんの「二十一世紀への対話」も読ませていただきましたが、この本をきちんと読めば、今回の法案はおかしいとわかりますよね。きちんと読めよって思っちゃいますよね。
そうした開かれた対話ができたら、すぐわかってしまうから、開かれた対話ができていない。そういう状況を打ち砕きたいというのが、我々の「人権」という立場なんです。みんな不満に思っているんだけれど、どうしていいのかわからない。
--公明党や創価学会の中でもおかしいと思っている人がいるけれど、それについて議論されないまま進んでいっていいのかといことですね。
その部分を公明党が説得、ないしは指導するという。私は「指導」という言葉は嫌いでないんですよ。指導というのは困っている人に寄り添うということだという風に池田先生が使っているので、創価学会指導主義、それは私は納得しています。でも、公明党から指導される立場じゃないですよね。
--創価学会が指導するんですか?
創価学会の指導という言葉は、私は使っています。
--公明党の指導はないんですか?
それはないと思います。聞いたことがないですね。だいたい信仰は、公明党を拝んでませんから。
--署名サイトを立ち上げて、これからはどういう風に活動を展開していくイメージなんですか?
今回のことは、安保法制廃案、これだけです。26日の学者の会に、できるだけ多くの署名を持っていく。
--26日というのは8月26日。「学者の会」のホームページに出ている8月26日の「100大学有志共同行動」(http://anti-security-related-bill.jp/)に持って行くんですね。
はい。東京で100大学を目標に集まって、ここに私が創価大学の有志の会の代表として署名を届け、共同歩調をとるということです。国会議員に対する請願もやってゆくと聞いています。そこで、これだけの人が反対しているんですという声を届ける。これが一番だと思っています。
--なるほど。
創価大学というと世間から何やってるんだとかいろいろ言われますけど、創価大学も大学のひとつです。そして、この会は、「学者の会」の一部としての創価大学の会だと思っています。ですので創価大学が公明党に対してだとか、創価大学が創価学会に対してではなくて、学者の会の一部として安保法制に反対する創価大学の人の集まりだと思っています。
--今回の学者の会というのも、大学が入っているわけではなくて、それぞれの大学の中の学者さんが集まってますよね。名前もいろいろあって、有志の会だったり、教職員の会だったり。
そうですね。
--そういう中の1つとしてやっていくということですね。ただ、世間から見ると、法案に反対している創価学会員はいるけれども、それは創価学会員のごく一部で、創価大学でも反対しているのはごく一部の人じゃないかという意見もあると思うんですが?
私たちも一部ですし、彼らも一部かもしれませんし。大多数が声を上げていないわけですから。そして、私たちが今、集めているのは、創価大学の理念に賛同してくださる方であればどなたでもということで、それを新しい創価大学を作ってゆく声にしたいと。なによりも自由に声が上げられること。創価学会の中で声があげられないので、代償行為として創価大学の中でサインをするという人もいると思います。日本大学でも、卒業生、父母、みんなOKなんです。そうしたものの1つとして創価大学の署名を集めて、その動きを国会に伝えたいということです。
--わかりました。
※「創価大学・創価女子短期大学関係者 有志の会」の署名締切は、8月26日(水)の午前0時です。署名はこちらから → http://sokauniv-nowar.strikingly.com/
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インタビューの後半では、創価学会支持者の間で、あまり声があがらないというのは、なぜなのか? 声をあげると何か不利益があるのか? 創価学会の座談会や聖教新聞については、どうなのか。そして、もし公明党が法案に賛成しなくなったら、どうなるのかなどについて、引き続き、創価大学の佐野潤一郎さんに詳しくうかがいました。会話形式で掲載します。
--創価学会支持者の間で声があがらないというのは、なぜなのか? 何か不利益があるんでしょうか。
創価学会の活動家というか、創価学会を熱心にやっているということは、創価学会のすべての活動をやっているということが前提だという雰囲気ができてしまっています。そうすると、その中に選挙の支援活動が入ってしまう。我々のもともとの活動は、折伏戦(しゃくぶくせん)…
--シャクブクセン?
折伏戦(しゃくぶくせん)です。日蓮大聖人の教義にあります折伏(wikipediaによると、折伏とは悪人・悪法を打ち砕き、迷いを覚まさせること)。みんなを幸福にしていこう、ひとりひとりが幸福になるための力をつけてゆこう、賢くなっていこう、騙されないでおこうと。これが権力に、はむかって島流しにまで遭った日蓮大聖人のもともとの根本教義だと。ところが、なにか今、ちょっと違ってきている。それは公明党を支援することで権力者の側にすり寄っているとしか見えないわけですね。そして、自分たちの安全を担保するために、公明党を政権に残しておいて、そしてある程度譲歩しなければならないと。この考え方はわかります。しかし、その「ある程度」の程度がもういいかげんダメだろうと。
--具体的に、学会員で反対すると、たとえば学会のお友達とかグループの中から、つまはじきにされてしまって、なにか生活しにくくなるとかは、あるんでしょうか。
創価学会に限らず、日本社会はそうなんじゃないですか。
--なるほど、学会に限らず(笑)。
日本社会そのものを映しているのが創価学会ですから、おんなじです。創価学会の中には日本会議的な発言をする方もたくさんいますし、共産党的な発言をする方もいます。私みたいなガチガチの違憲論者もいますし、いろんな人がいて、いろんな意見が自由に言えるのが創価学会の、特に座談会のいいところだったんです。
--座談会って?
座談会。地域の集まりですね。小さな会議で、老若男女を問わず、小学生もいて…
--月に1回とか?
そうですね。月に1回ぐらいのペースで。
--それは町単位とか、市単位とか、あるんですか。
いや、もっと小さな、たとえばひとつのマンションで1つのブロックになっていて、80人近くの学会員が集まって…
--なるほど。そしたら100人より少ないぐらいの単位で座談会という形で集まって、そこでいろんな話をすると。
はい。ですから、そうした場では、ほんとになんでも言いあえていたんです。それが最近になって、公明党のビデオを見てくださいだとか、あるいは公明党議員さんのお話を聞きましょうと市議会議員さんが連れてこられたりだとか。そんな風なってきて、そして質問をしても答えてくれない。学んでくださいとしか言わない。
--以前のPKOの時もそうだったんじゃないですか?
そうでしたねぇ。ただし、ここまで強くはなかったです。
--今回ほど強くはなかった。
ですから私は、当時はまだSNSがなかったので、たった1人で…
--何がなかった?
SNS(ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルネットワークサービス)です。PKOの時はSNSがなかったので、たった1人で声をあげて、たまたま路上でPKO法案反対の歌を歌っていた方と知り合って、2人だけでいろんなことを話して。そして、たまたま岩手の方に憲法の風呂敷を作っている人と知り合って…
--風呂敷? 憲法の
憲法前文の風呂敷です。たまたまそれを見つけて意気投合しまして、話をしてたりとか。せいぜいそのぐらしか仲間がいなかったんですよ。ところが今回はSNSがあって、そこからいろんな人の意見が、反対の人も含めて聞けるようになった。ああ、こんなことを考えていたんだ、自分だけじゃなかったんだと、ようやく思えるようになってきてました。
--大きいですよね、ネットの力というのは、つながることができるから。
ですから私たちのお手本は、SEALDs(シールズ)なんです。
--若い人たちを中心にデモなどを行っているSEALDsですね。
ええ。SEALDsの、あの、ゆる~い集まり。ネットを通してつながり、一緒に勉強会をして、いろんな学者さんと行動している。ああいう会ができればいいなぁと。
--今回、創価大学の声をあげた人たちが、勉強会的なものを各地でやって、いろんな議論をするということもありえるんでしょうか。
どうなんでしょうか。そこまで私たちは見通しを持っていません。各地でやるといっても創価大学の卒業生はそんなに多くはありませんし、集まってくる人たちはおそらく法案に反対する人たちが多いでしょうから、創価学会の分派活動だと思われてしまうのは得策ではありません。私どもの目的は、安保法案を廃案にする、この1点ですので、できれば公明党は、安保法案を廃案に追い込む原動力になってほしいと、私は思っています。
--少なくとも、公明党が法案に賛成せずに採決を棄権するということですよね。反対してくれれば一番いいけれども。
そうですね。
--賛成しないと微妙なんですよね。
数から言ったら、それで廃案になる可能性は出てきますよね。
--ちなみに、聖教新聞を読んでいると、わりとまともなことを書いてますよね。でもって、今回の法案に賛成と明確には言っていませんよね。
池田大作先生の思想を学んできた人間としては、公明党がやっていることには違和感はありますけど、今の聖教新聞にはまったく違和感がないんですよ。ただ問題なのは、社会面が何も触れていないんです。
--社会面では反対運動だとか、そういうのは書いていないということですね。ちなみに、もし、公明党がひっくり返ったらどうですか? 急に法案反対と。
ひっくり返ったとしたら、議員さんと徹底して議論します。その中で、その人たちが本当に翻ったのか、それまで言ってきたことをちゃんと謝罪するのか、そこを見ようと思います。そのうえで公明党のような存在、第3極というのは必要だと思いますから、そうした勢力は応援したいと思います。
--でも小選挙区では、第3極というのは厳しいじゃないですか。共産党だって第3極だし、民主党だって第3極だし。みんな第3極だから。
そうなんです。あれだけの得票をしておきながら。ほんとうに小選挙区というのは…
--公明党が他の野党と一緒に動くことができる時代は来るんでしょうか。
私はよくわかりません。公明党が何を考えているのかすら見えなくなってしまいました。我々の公明党ではなくなってしまいました。意見を言ってもはねつけられるだけですので。
--最後になりましたが、今回の署名で言っている「人権」について、もう一度説明いただけますか。
今回の闘いは、立憲主義を目指す闘いです。法律を軽視していることに対する立憲主義の闘いではありますが、今回の法案が廃案になって立憲主義が醸成されたとしても、それからあとも、人権の闘いというのはずっと続いてゆくものだと思います。これは永遠に終わらない闘いで、1人1人が人権の闘いを続けてゆく、今回の署名集めは、そのための契機だと思っています。
--人権というのは、特に佐野さんの中では、議論をしてゆくことだと…
議論ですね。自由に議論をしてゆく、そして心の束縛を解き放つ、それが自分にとって人権の闘い。恐れてものを言わないという状況はひっくり返したいと思いますし、それに対して暴力、言葉の暴力も含めた暴力で圧迫を加えてくる人とは、闘いたいです。
--わかりました。長時間、ありがとうございました。