『ある日の入管』出版記念原画展開催、5月1日にはトークイベントも

「ある日の入管~外国人収容施設は生き地獄~」出版記念写真展&原画展開催

在留期間を経過した外国人を収容している出入国在留管理庁(入管)の施設の実態をマンガで描いた本『ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~』が、扶桑社から2021年2月28日に発売されました。日本の入管に収容されて、深刻な権利侵害を受けている外国人の面会活動などを続け、SNS他さまざまなメディアで発信している織田朝日さんの新しい本です。漫画とコラムで読みやすく、わかりやすい。涙が出るのに、ユーモラス。ぜひ多くの人に手に取ってほしい本です。2021年4月25日(日)から5月6日(木) まで、東京千代田区のブックカフェ二十世紀で出版記念原画展が開催中です。5月1日(土)午後2時からは同会場で、出版記念トークイベント『誰もが笑って生きられる世界を目指して』が開かれ、著者の織田朝日さんのほか、ゲストとして、東京新聞の望月衣塑子さん、フォトジャーナリストの安田菜津紀さん(リモート参加)、難民申請者の方々が参加します。

ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~ 扶桑社 織田朝日著
ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~ 扶桑社 織田朝日著

日本にきてばか:被収容者の最後の言葉

先日、著者の織田朝日さんとオンラインでお話しました。Twitterでは、「#入管法改悪反対」がトレンド入りするほど、最近は耳目に触れることが多くなった「入管」という言葉。でも、朝日さんが活動を始めた2004年当時には、入管という施設で何が行われているか、知っている人はほとんどいませんでした。「こんなに無関心なんだ。こんなにも他人事なんだ」と日本人を恨みたくなったと話す朝日さんが、初期の頃に描いた漫画を見てください。

『ある日の入管』140~141ページより
『ある日の入管』140~141ページより

入管法改正案は何が問題?

この漫画の描かれた頃から比べると、2021年3月に、名古屋入管に収容されていたスリランカ人女性ウイシュマさんが満足な治療を受けられずに亡くなった事件はテレビのニュース番組でも取り上げられましたし、入管法改正案が審議されている今、国会前での「シットイン」や、反対署名に10万筆以上集まるなど、いろいろなところで声を上げる人が出てきました。朝日さんも「ちょっとしたきっかけで広がっていって、立ち上がってくれた。案外(日本人は)悪くなかった」と話していました。では、今回の入管法改正案の何が問題なのでしょうか。

政府は、入管施設への長期収容の問題を解消するための改正案だと説明しています。監理人が見守りをすることで施設の外で暮らせる「監理措置」制度を設けるとしていますが、外国人が働くことは認められておらず、社会保障もなく、生活は困難です。また、これまでは難民認定の手続き中は送還されなかったのに、難民申請を3回以上行った人を自国に送還することも可能にします。難民支援団体や国連から、非人道的という批判を受けている改正案なのです。

長期収容されている人たちってどんな人?

自国にも帰れず、認定もされずに長期収容されてしまう難民申請者と、正規のビザを持たない外国人が入管に収容されているわけですが、実は、収容されれば大多数の人が帰国しています。今、長期収容されているのは、国に帰るのは危険な難民の人たちと、日本で結婚して生活基盤が日本にあるなど、帰れない事情のある人たち。下の漫画にあるように、日本で生まれて日本しか知らない子どもが、成人になれば収容されるケースもあるのです。朝日さんはこの本の中で、「すべてを一緒くたにせず、一人一人のケースを見て丁寧に判断してほしい」と書いています。

『ある日の入管』52~53ページより
『ある日の入管』52~53ページより

入管の中で起きているイジメや嫌がらせの例

外部から来た医師の中にも、高圧的な人たちがいて、収容されたひとたちをいじめたり、嫌がらせをしたりします。朝日さんによると、2020年6月に東京入管にやってきた男性常勤医が、「オレの言う事を聞け、嫌なら国へかえれ!」と医療関係者とは思えない発言を繰り返し、被収容者から嫌われていたそうです。朝日さんは本の中で、「しかも制圧を先導し、自らも被収容者の体を押さえつけるなど、とても医者の行動とは思えない暴挙も行っている。抗議のハンストを続けて、長期収容によるストレスで摂食障害になった人も多い」と書いていました。

『ある日の入管』26~27ページより
『ある日の入管』26~27ページより

入管制度を改善する必要

入管職員は、収容されている外国人をイジメたり嫌がらせをしたりしてでも、早く帰国させることが仕事。「アイヒマン(ナチス・ドイツのユダヤ人移送局長官)にならないで。仕事だからって、自分で考えることをやめないで」と職員に話しかけるという朝日さん。最初の頃は、職員が嫌いで、敵意をむき出しにしていたと言います。しかし、入管の問題が世間の注目を集める中、少しずつ変化もあるそうです。職員の中には被収容者と仲良くなったり、感謝されている人もいるとのこと。下の漫画も職員の人たちのそんな一面を表しています。

『ある日の入管』148~149ページより
『ある日の入管』148~149ページより

「国際社会から批判されて、日本にとってマイナスである入管の制度や難民認定の制度を変えていかないといけない。いつかは変わるだろうけど、ただ待っているだけではなくて、変わるスピードを上げたい」と語る朝日さん。今回出た『ある日の入管』は2016年頃からネットでアップされてきた漫画に加えて16本の描き下ろし作品と、入管に関するキーワード解説も入っていて、本当に至れり尽くせり。初心者でもわかりやすく、「知ってるよ」という人の心にもあらためて突き刺さる本だと思います。

織田朝日さんの写真展と原画展が開催されます

この漫画の原画と、朝日さんがこれまで撮ってきた難民や移民の方々の写真が見られる【織田朝日『ある日の入管』出版記念 写真展&原画展】が開催されます。「A4のコピー用紙に色鉛筆やコピックで描いた漫画を画鋲で貼っていく」と笑う朝日さん。コロナ禍でなかったら私も駆けつけたかった!お近くの方、ぜひ足を運んでください。5月1日には朝日さんと望月衣塑子さん(『東京新聞』記者)、緊急事態宣言のためオンラインで参加の安田菜津紀さん(フォトジャーナリスト)、難民申請者の方々とのトークイベントも企画されています。

【織田朝日『ある日の入管』出版記念 写真展&原画展】イベントチラシ
【織田朝日『ある日の入管』出版記念 写真展&原画展】イベントチラシ

原画展には、難民の方々が収容中に描かれた絵も飾られるそうで、そちらもとても素敵です。

入管の中の難民審査部門で、審査を待っている人たちの長いすが撤去されていたという漫画を読んで、ホームレスの人たちが横になれないように駅やバス停の椅子が撤去されたり、真ん中に手すりをつけられたりしたことを思い出しました。「お父さんを返して!」「娘を返して!」と訴える人たちの写真を動画を許可なく撮り続ける入管職員の漫画では、沖縄で反基地運動で座り込みをしているときに、許可なく私たちの写真や動画を撮った機動隊のことを思い出しました。「この人たちは、仲間じゃない。弱い立場だから、何をしてもいい」という刃の矛先は、いつ誰に向くか分からない。それが恐ろしいと思いました。だから、今苦しんでいる人たちのことを、「自分のことじゃないから、関係ないから」と無視することは、いずれ自分たちの首を絞める。黙っているわけにはいかないと、あらためて思います。多くの人が、織田朝日さんの本を手に取り、この問題を知ってくれますようにと心から願っています。

<著者・織田朝日さんプロフィール>
外国人支援団体「編む夢企画」主宰。SYI「収容者友人有志一同」メンバー。2004年より入管における外国人への虐待的な扱いを知り、面会活動をしながら当事者の証言を通してSNS、雑誌やウエブメディアなどで状況を積極的に発表している。また、クルド人の子供たちの劇団「ウインクス」の脚本・演出を担当、子供たちの体験をもとにした演劇を披露している。一児の母で、写真家として日本にいる難民たちを撮り続けており、個展も開催。共著に『難民を追い詰める国』(緑風出版)『日本を壊した安倍政権』(扶桑社)、著書に『となりの難民』(旬報社)など。

<織田朝日『ある日の入管』出版記念 写真展&原画展>
【日時】2021年4月25日(日)~5月6日(木) 11:00~19:00(祭日と最終日は18:00まで) ブックカフェ二十世紀
https://jimbo20seiki.wixsite.com/jimbocho20c
東京都千代田区神田神保町2-5-4開拓社ビル2階
jimbo20seiki@gmail.com
TEL: 03-5213-4853
※5月1日には、写真&原画展会場で織田朝日のトークイベントがあります(事前申し込み不要)。

<織田朝日さんトークイベント『誰もが笑って生きられる世界を目指して』>
【日時】2021年5月1日(土)14:00~16:00
ゲスト:望月衣塑子(『東京新聞』記者)、安田菜津紀(フォトジャーナリスト)、難民申請者の方々
チャージ:1500円(1ドリンク付き)  

<関連リンク>
織田朝日Twitterページ
https://twitter.com/freeasahi
収容者友人有志一同(SYI)Twitterページ
https://twitter.com/syi_pinkydragon
編む夢企画Facebookページ
https://bit.ly/3asS7hC

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