2022年5月20日(金)から24日(火)に、東京・紀伊國屋ホールで上演される『飛龍伝2022〜愛と青春の国会前〜』で主演を務める一色洋平さん(山崎一平役)のインタビュー、後編です。「下」では、演出の錦織一清さんからの「山崎一平」役へのオーダーのこと、役に向き合いながら感じていること、立ち稽古初日にいつも感じること、共演する井上怜愛さん(神林美智子役)と小山蓮司さん(桂木純一郎役)のことなどについて伺った内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。
――演出の錦織一清さんから「山崎一平」についてオーダーはありましたか?
「一色さんの中で、無理なく純朴であればいいよ」と。これもまた面白いところで、ちょっと話が『熱海』に戻りますが、『熱海殺人事件』は4人芝居で、4人それぞれの「正義」があって、「どうすればこの辺りが面白くなるんだろう」と考えたときに、4人それぞれが「誠実」であったらいいのかなと思った瞬間があったんです。同じ「つか戯曲」なので『飛龍伝』でも、それをちょっと引きずっているところがあるんです。「誠実でありたい」というととてもチープに聞こえますけど、僕は『熱海』で犯人の大山金太郎という、好きだった女の子を手にかけてしまうような役でしたが、大山金太郎のときに「殺人犯ではあるけれど、誠実でいたい」と思った気持ちと、錦織さんから今回いただいた「一色さんの中で純朴であればいい」という言葉がすごくリンクする部分があるんです。
山崎一平が神林美智子にかける台詞は、ある一定の愛情のレベルに達していないと恥ずかしいんです。美智子に対する愛の言葉を、こすっからい芝居をするのではなくて、誠実に吐けたらいいですよね。今、いろいろ頭の中でぐるぐるしていて、もう少しでしっくりくる気持ちが浮かびそうな気がしているんですけど…。今回の山崎一平はすごい台詞量なんです。こんなことを言ったら、つかさんに「何を言ってんだ」と言われるかもしれないですが、それでも『熱海』のときに、あの台詞量を乗りこなせた、乗れていると思った瞬間があって、初めて少しだけ「誠実で居られたかもしれない」と思えたんです。僕はまだ「山崎一平」を乗りこなすということがわかっていないから、いま言葉に詰まっているんです(笑)。まだまだ乗りこなせていないし、それは単純に、例えば膨大な台詞量に頭がノッキングしてるという部分も、たくさんあるのかもしれないです。
――「山崎一平」という人物を産み出す苦しみの渦中なのですね。
一平をやっていて気持ち悪くはないんですけど、乗りこなすにはまだまだ時間がかかりそうで、もどかしくてメチャメチャ焦っている自分がいます。錦織さんと見ている景色は一緒だけれど、目指す島がすごく遠い。目指す場所や、自分が伸びていく方向のビジョンみたいなものはあるんですけど、道のりの遠さみたいなものも同時に感じていて…。だから一平について何か語ろうとすると、ストップがかかる自分がいるんです。抽象的な言い方ですが、島は見えていて方向もよくわかるけど、近くに行って見えているわけでもないから、その島にどんな木があって、どんな花が咲いてどんな匂いがして、ということをよく語れないみたいなところに今はいます。
でも、やっていてとても楽しいです。神林美智子とダブルの主演だと思っているんですけれど、「主演」という肩書を楽しく焦っています。これまで作ってきた、自分のいろんな引き出しを使うかもしれないし、今回を機に、新しい引き出しを作ることになるかもしれない。そしてやっぱり、僕の「山崎一平」を、錦織さんと「北区AKT STAGE」の皆さんにもお見せしたい。いろいろな焦りはありますが、「北区」の皆さんと、錦織さんの人間性も相まっての演出のおかげで、大きなプレッシャーみたいなものは、いい意味でないんです。大役ですが、焦らずに楽しく臨めています。
――これから稽古を重ねられて、一色さんと山崎一平の距離がなくなったときが、錦織さんの言葉の「純朴であって欲しい」に繋がるのかもしれませんね。
そのときは一つ、手応えはあるでしょうね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、共演する井上怜愛さん(神林美智子役)と小山蓮司さん(桂木純一郎役)のことなどについて伺った内容と、お客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■相手役にかける一言で、「人となり」がわかるのが立稽古初日。とても緊張する
■稽古初日から、僕の台詞を「聞いてくれた」怜愛ちゃん。どれほど助かったか
■「洋ちゃん」と構ってくれる蓮さん。毎テイク変化するアプローチが新鮮で有難い
■歴史ある作品だが、今に通ずるものがある。是非そこを頭の片隅に置いて劇場へ
<『飛龍伝2022〜愛と青春の国会前〜』>
【東京公演】2022年5月20日(金)〜24日(火)紀伊國屋ホール
公式サイト
http://aktstage.com/topics/2051/
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■相手役にかける一言で、「人となり」がわかるのが立稽古初日。とても緊張する
――神林美智子役の井上怜愛さんの印象はいかがですか?。
稽古初日に立ち稽古も始まったんですけれど、立ち稽古初日って、相手にどんな言葉をかけるのかという「人となり」が出るので、「どんな人間なんだろう」というのが、一言でいろいろわかるんです。なので、とても緊張するんです。例えば「大丈夫?」という台詞を「この人は人に対してこういう言い方をするんだ」とか。そういうところが見える怖さも多少あります。やはり、人に言葉をかけるというのは、見ている分には面白いですけど、自分がやるとなると怖いんです。
■稽古初日から相手役の言葉を「聞いてくれる」怜愛ちゃん。どれほど助かったか
――人にかける言葉が「台詞」であっても怖いのですか?
「台詞」であっても怖いです。もちろん「役」として話すのですが、その中にも、どこか自分の人間性というのが乗る気がするんです。だからたまに怖いときがあって。怜愛ちゃんとは、今回一番言葉を掛け合う仲ですが、初日から目を合わせて聞いてくれたので、怜愛ちゃんのおかげで緊張しなかったんです。
この「聞いてくれる」という感覚がどれだけ有難いか。ご自身も稽古初日でいっぱいいっぱいという中で、それでも自分の演技プランに一切縛られることなく、今僕から出てくる言葉を聞いて、集中してということを稽古初日から一緒にやってくださったことが、どれほど助かったかというのが最初の印象です。それは今日の今日まで続いていて、僕が一平の台詞を1人でブツブツ言っていると、入ってきてくださるんです。ご自身も神林美智子という役でいっぱいいっぱいの中、相手役のことを初日から今日に至るまでずっと気にかけてくださるので、お芝居でちゃんとお返ししていけたらいいなと思っています。
■「洋ちゃん」と構ってくれる蓮さん。毎テイク変化するアプローチが新鮮で有難い
――桂木純一郎役の小山蓮司さんの印象についてはいかがでしょう?
蓮さんは僕の一つ上なんですが、初日からちょっと「お兄ちゃん」ぽく接してくださることがたくさんあって。僕は「洋ちゃん」って呼ばれるのが一番好きなんですが「洋ちゃん、洋ちゃん」と、いろいろ構ってくださいます。稽古では、蓮さんは1テイク、1テイクでお芝居をぐっと変えてくださるんです。立ち位置ひとつとっても、僕に触れることも、少し強引に触れたり、逆に触れなかったり、毎テイクいろいろアプローチを変えてくださるので「蓮さんとやってると新鮮だな」と思う自分がいるんです。それは多分、僕が一平として無意識にいっぱいいっぱいで、早くも「こうしなきゃとか」と凝り固まってきている部分がたくさんあるからだと思うので、そこは今特に有難いと思っています。
――いろんなアプローチで、お互いにちょうどいいところを探っているような感じでしょうか?
「自分には何ができるんだろう」とご自身が模索されているところもありますし、逆に「洋ちゃんから何が出てくるんだろう」と僕の芝居を模索してくださっているところもあります。蓮さんは毎晩遅くまでお酒を飲んでいらっしゃるらしいのですが(笑)、とてもそうは思えないくらい、稽古場に来ると顔がシャキッとして、あの手この手でいろいろお芝居をしてくださるので「楽しいお兄ちゃんだな」と思って、今頼らせていただいています。
■歴史ある作品だが、今に通ずるものがある。是非そこを頭の片隅に置いて劇場へ
――『飛龍伝2022〜愛と青春の国会前〜』をご覧になるお客様へ、メッセージをお願いします。
『飛龍伝』という作品は歴史のある作品ですが、錦織一清さんは演出中に「今観てくださる方々に伝わるようにせねば」ということをおっしゃいますし、羽原大介さんの脚本にも、現在の世界情勢の要素がちょっと入っています。学生運動に関する当時の資料を見ると、機動隊側の中にも学生側の中にも「なぜ今戦っているのか?」を、よくわからないまま、闘争の渦中に居た人っていうのが結構居たそうで。機動隊になぜこれだけ圧をかけているのかについて、「今この渦の中にいることが、自分の自己確立に繋がる」という勢いだけで参加している学生もいましたし、機動隊も「学生側が一体何にあんなに盛り上がってるのかわからないけれど、学生を弾圧しろと上から言われているから」というように、なぜなのかわからないまま人の顔面に武器を振り下ろすということが実際にあったんです。
これは今起こっている戦争と『飛龍伝』が、一番リンクすると感じているところで、ずっと変わらない「人間の馬鹿さ」だと、正直僕は思っているんです。実は一平も、台本では「馬鹿だ」書かれていて、チャーミングということだけではなく、そういう「馬鹿さ」を、難しいですがちゃんとやりたいと思っています。他の登場人物にも、とてもお馬鹿な要素がたくさんあります。笑える馬鹿さあり、笑えない馬鹿さもたくさんある作品ですが、でも、その「馬鹿さ」というのを、錦織さんは今観てくださる方々にも伝わるように作っていってくださっています。
歴史ある作品ですが、決して古くさくなく、今に通ずるものがありますし、そのようにリメイクされつつあります。記事を見てくださった方々が、このことをちょっと頭の片隅にでも置いて劇場に来ていただけると、『飛龍伝』という作品が、一歩でも半歩でも彩り豊かに見えるかもしれません。是非とも、初夏の紀伊國屋ホールでお待ちしております。
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