「エンターテインメントの要素が詰まった作品」『ピピン』、森崎ウィン(上)

森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳

ミュージカル『ピピン』が、2022年8月30日(火)から9月19日(月・祝)まで東急シアターオーブで、9月23日(金・祝)から9月27日(火)まで大阪・オリックス劇場で上演されます。1972年にボブ・フォッシーの演出で誕生した『ピピン』は、紀元8世紀後半のローマ帝国を舞台に、若き王子ピピンが「特別な何か」を探し求めて旅に出る物語です。本作は、2013年にはシルク・ドゥ・ソレイユ出身のアーティストが手を加えたエキサイティングな新演出でブロードウェイに帰還し、同年のトニー賞でミュージカル部門・最優秀リバイバル作品賞を含む4部門を受賞しました。日本では2019年に、城田優さんが主演を務めた日本版初演が上演されました。2022年公演では、森崎ウィンさんがピピン役を演じ、物語のキーを握るリーディングプレイヤー役は、本作で読売演劇大賞優秀女優賞を受賞した Crystal Kay(クリスタル・ケイ)さんが続投します。

アイデアニュースでは、森崎ウィンさんにインタビューしました。上、下に分けてお届けします。「上」の無料部分では、『ピピン』を初めて観たときのこと、ご自身が出演すると決まったときの気持ち、2019年にピピン役を務めた城田さんとお話ししたことなどについて話してくださった合同インタビューの内容を、有料部分では、昨年森崎さんが出演された『ジェイミー』について伺った独自インタビューの内容を紹介します。

「下」の無料部分では、『ピピン』の楽曲のこと、ミュージカル出演を経験して歌手活動の中で変わったこと、リーディングプレイヤーという存在について思うことや、お客さまへのメッセージについて伺った合同インタビューの内容を紹介します。有料部分では、『ジェイミー』を経て更にミュージカルが好きになったというお話や、ミュージカルならではの「計算通りに行かない」面白さのことなどについて伺った独自インタビューの内容を紹介します。

森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳
森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳

――『ピピン』初演をご覧になったそうですが、どのような感想を持たれましたか?

こんなにすごいエンターテインメントがこの世に存在するんだなということに、まず驚きました。ブロードウェイでやっているとなったら、そこまで驚かなかったかもしれないですが、日本のキャストでこのクオリティのものを日本でやってしまうとは、「日本のミュージカル界はすごいな」と初めて感じました。

――この作品をやってみたいとは、思われましたか?

その時は、僕にはできないなと勝手に思いました。城田君もすごかったですし。純粋に、同じ俳優で、歌もやっている方に、あそこまでのすごいものを見せられると、「やっぱりすごいな」という想いで終わってしまうんです。

僕はミュージカルをあまり知らなかったこともあり、当時は再演というシステムがあること自体知らなかったですし、再演は同じキャストで同じ演目をやるものなんだなと思いました。だから、この作品にはご縁はないと勝手に思っていました。僕が出演させていただくなんて、まさかですよね。

――出演のお話が決まった時は、いかがでしたか?

純粋に嬉しかったです。あの世界観をもう一回この日本で観られるということと、同時に自分がそこに入って体験できるという嬉しさが、大きかったですね。

――改めて、出演する側からこの作品を見てみると、何か違うことを感じますか?

あれだけのすごいエンターテインメントがどのように作られているのか、その裏側を全部知ることができるのだと思うと、純粋に興奮します。同時に、稽古はこれからですが、自分がピピンとして立たなければいけないので、どんなピピンになるのか、僕自身楽しみです。その中で、この作品が伝えたいメッセージや歴史の背景を、これから勉強していこうというところです。稽古期間に、しっかりと森崎ウィンのピピンを見つけていきたいと思っています。

――初演のキャストの多くが今回もキャスティングされていて、その中に森崎さんが入っていく形ですが、どのように受け止めていらっしゃいますか?

映像の仕事でも同じようなことを経験したことがあり、できあがった現場の中にゲスト出演として出させていただく時などは、やっぱり緊張もしました。

今回、映像と違うのは稽古期間があることなので、コミュニケーションをしっかり取る時間があるのはありがたいです。映像はいきなり「はい、回します。よーいスタート」で、その日のものが作品として残ってしまうので、緊張感が半端ないんです。

でも、今回もアウェイというとおこがましいですが、できあがったところに入っていくというのも、ちょっと興奮します。それは、どんな感じで受け入れてくれるのかなとか、どういう方たちなのかなというところも含めてです。

――稽古の中でなじませていこうという感じですか?

そうですね。やるべきことを一生懸命やるだけのようにも感じています。自分をこう見せようとはあまり考えていないですが、「僕はこれです」ということを、いかに出していくかが一番重要なのではないかと思っています。

――シングルキャストとしてミュージカルの主演をされるのは初めてでいらっしゃいますが、今どのようなお気持ちですか?

初めての経験なので、どうなるのか正直怖いところではあります。公演数も多いですし。そこも含めて、自分の体力の作り方も含め、実際に入ってみないと、どういう力配分というか、どういう体の使い方をすればいいのか分からないですから。

でも、こういう経験を経て、皆さん強くなってきているのだと思います。そういう意味では、ここでがっつり自分のリズムなどを掴んでいきたいと思っています。

――先ほど、初演で城田さんがされていたのを「僕にはできないな」と思ったとおっしゃっていましたが、そういった部分でのプレッシャーはありますか?

もちろんあります。でも、やっぱり役との出会いは縁なんです。初演を作った方がいらっしゃるから、初演を観て作品を好きになった方が、今回観に来た時に「全然違うじゃないか」と思われるかもしれませんが、僕はそれでもいいと思っています。

僕がやる意味というのは絶対にあるはずなので、それを見つけられたら強いと思います。僕自身も、1人のお客さんとして観に行くのだったら比べてしまいますが、「むしろ比べてください、これがウィンのピピンです」と、この稽古期間中に見つけられるように一生懸命取り組んでいきたいと思っています。

だって、城田優くんにはなれないので。でも逆も然りで、城田優くんは僕にはなれないですから。多分、優くんも観に来ると思いますが、僕が2代目ピピンとしてやる意味は、認めてもらうというよりは、「ウィン君がやるとこうなるんだね。こういうピピンが仕上がって、また面白いね」と思ってもらえることだと思います。

 ――城田さんとは『ピピン』について何かお話はされましたか?

お話ししました。「稽古が大変だよ。やることがいっぱいあるから、ちょっとずつでいいから練習していったほうがいいよ」と言っていました。「体も作っていったほうがいいと思う」とも話していたので、自分の中でちょっとずつ体を作ったりはしています。

――城田さんが観に来られるのが楽しみですね。

2回ぐらい来て欲しいですね。なんか言われそうだな(笑)。

――今の時点では、ピピンをどんな青年だと思っていますか?また、どのようなところを大切に演じたいですか?

ピピン自身が、「自分が欲しいものは何なのかという、居場所探しというか、自分は何がしたいんだろう、本当の幸せって何だろう」と、特別な日常を探しに旅に出ます。

それを探したり、考えたりするのは簡単ですが、探すためにいろんなところに精力的に行動して飛び込んでいくピピンは、すごく勇気を持っている人なのだと感じます。

いろいろなことを知りすぎていないからこそできる、何が怖いのかすら分からないからこその、ピュアさを持った青年だと捉えています。役をいただく時にはいつも、「これは自分にぴったりだ」「俺のこういうところを見て振ってくれたんだな」と感じますが、自分に近い役だったり、はたまた自分と真逆の役だったりします。

ピピン役については、僕自身も「自分って何だろう」と探している瞬間も多々あるなと思いました。僕の場合は、やりたいことははっきりしているのですが、それをやるためにはどういうふうに作っていけばいいのかと模索している、常に何かを探し求めているところがあります。もしかすると、今そういう感覚になっているから、ピピンという役に出会えたのかなと感じています。

<クレジット>
ヘアメイク KEIKO
スタイリスト 森田晃嘉

※アイデアニュース有料会員限定部分には、昨年森崎さんが出演された『ジェイミー』について伺った内容など、独自インタビュー前半の全文と写真を掲載しています。31日掲載予定のインタビュー「下」の無料部分では、『ピピン』の楽曲のこと、ミュージカル出演を経験して歌手活動の中で変わったこと、リーディングプレイヤーという存在について思うことや、お客さまへのメッセージについて伺った合同インタビューの内容を紹介します。有料部分では、『ジェイミー』を経て更にミュージカルが好きになったというお話や、ミュージカルならではの「計算通りに行かない」面白さのことなどについて伺った独自インタビュー後半の内容と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■「ドラァグクイーンとはこういうもの」と、ミッツ・マングローブさんがお店に

■お店で話を聞くことができ、「今までの自分の考え方が非常に狭かった」と知った

■『ジェイミー』は、ジェンダー観の話のようにも見えるが、家族の話だと思う

■『ピピン』をやり切れたら、ひと回りもふた回りも演者として成長できそうな気が

<ミュージカル『ピピン』>
【東京公演】2022年8月30日(火)〜 9月19日(月・祝) 東急シアターオーブ
【大阪公演】2022年9月23日(金・祝)〜 9月27日(火) オリックス劇場
公式サイト
https://www.pippin2022.jp

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※森崎ウィンさんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは8月30日(火)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳
森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■「ドラァグクイーンとはこういうもの」と、ミッツ・マングローブさんがお店に

――アイデアニュースには、昨年『ジェイミー』の取材でご登場いただきました。読者の皆さまも『ジェイミー』が大好きだったと思います。

いい作品ですよね。素敵な作品だと思います。

――今、『ジェイミー』を振り返っていかがですか?

やってよかったと思います。真面目な話、『ジェイミー』という作品に出会って、僕のジェンダー観に対しての自分の価値観だったり、いろんな知識も含めて、がらっと変わりました。でも、答えが出たのかと言われたら、出てはいないです。「こういう人たちもいるんだ」という世界にも触れられましたし、それこそ『ジェイミー』をきっかけにミッツ・マングローブさんとも仲よくさせていただいて。「ドラァグクイーンとはこういうものなんだよ」とお店に連れて行ってもらったりしたんです。

森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳
森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳

■お店で話を聞くことができ、「今までの自分の考え方が非常に狭かった」と知った

ショーをやっていない時期だったのですが、開いていないお店を開けてくれて、「話だけでも聞きに行く? 」と、そういう機会を経験できたんです。今までの自分の考え方が、非常に狭かったと改めて知ることができて、大きな収穫でした。

『ジェイミー』は、家族の話でもあるので、やっている間はえぐられる部分も多かったですが、今一度「家族とは?」という問いかけも自分に対してできたので、この作品に出会えて、そして何よりこういうご時世にも関わらず最後まで走り抜けられたので、本当にやってよかったなと思っています。

森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳
森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳

■『ジェイミー』は、ジェンダー観の話のようにも見えるが、家族の話だと思う

――私も『ジェイミー』が好きすぎて、何度か拝見しましたが、どうしてあんなに皆さんに刺さったんだろうなと思いました。

打ち出し方としては「ドラァグクイーンを目指す高校生」ということで、ジェンダー観の話なのかなと思いながら、そこではなくて、僕が思うに本来家族の話なんですよ。シングルマザーで育ててもらっているというストーリーで、「家族とは?」という問いかけもすごくあったと思うんです。家族の問題は、誰しもが持つものじゃないですか。

「いい家族、悪い家族」の判断基準も、それぞれの価値観だという気がしていて。はたから見て「いい家族だよね」と思っていても、本人からしたら全然違ったり、その家族にしか分からないものだったりもします。そういうものへの問いかけだったような気がしています。ハッピーエンドだから、純粋に気持ちよく観られたという方々もいたみたいですね。

森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳
森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳

■『ピピン』をやり切れたら、ひと回りもふた回りも演者として成長できそうな気が

――今のお話を伺って、新たな作品に出会うことで、知らなかったことに出会っていらっしゃるのだと思いました。そういう視点で『ピピン』を経ると、どのようなものが新しく増えそうですか?

それは正直やり終えないと分からないですが……。

――期待するところはありますか?

エンターテインメントの要素が詰まりに詰まった作品なので、この作品を経て、僕のエンターテインメントに対する価値観だったり、見え方というものがまた大きく変わりそうな気がしています。ひとりのエンターテイナーとして、自分がエンターテインメントをする上でのやるべきことだったり、取り組む姿勢もそうですね。あとは、ピピンをやり切れたら、ひと回りもふた回りも演者として大きく成長できるような気がしています。

森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳
森崎ウィンさん=撮影・岩村美佳

※森崎ウィンさんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは8月30日(火)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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“「エンターテインメントの要素が詰まった作品」『ピピン』、森崎ウィン(上)” への 3 件のフィードバック

  1. キィ より:

    再演というプレッシャーの中に身を置きつつも、自分にしかできないことがあると胸を張る姿、自分がやる意味を追求し続けたいという姿勢が格好良いです。カンパニーのみなさんとのコミュニケーションを大切にすることも、ウィンさんらしいですね。
    『ジェイミー』を家族の話だと常々おっしゃっていたウィンさん、その解釈にずっと興味があり、この記事を読みました。公演を通して『ピピン』をどう捉えていくのか、益々楽しみになりました。

  2. キヨカ より:

    ピピンをプライベートで見に行かれていたときからきっと物語が始まっていたのだと思います。「これが僕のピピンです。比べて下さい」という言葉に、全て受け入れようとする強い思いと覚悟を感じます。また、それを臆するわけではなく楽しもうとしているように感じました。ピピンが終わったときにエンターテイナーとして本当に大きく成長されているのだろうなと思います。
    少し時間を経て聞くジェイミーのお話もとても興味深かったです。

  3. Yuu- より:

    この記事を読んで、ウィンさんがたくさん勉強して自分なりのピピンを見つけようと努力されているのを知ることができました。

    ジェイミーのインタビューも当時読ませていただきましたが、ウィンさんは内に秘めた情熱が熱い方だなっていうのが印象的で、ジェイミーをやり遂げて一回り成長されたウィンさんが、どんなピピンを見せてくれるのか、舞台を絶対に見に行きたいって思いました。

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