アメリカ合衆国では、2011年9月の時点でおよそ40万人の児童が、フォスターケア(里親制度)で養育されているという統計があります。( Children’s Bureau) 日本では委託児童数が2010年末で3,876人(厚生労働省)ですから、大きな違いです。アメリカのフォスターケアに関しては、以下のような驚くべき数字もあります。
・里親制度で育った少女の50%が、18歳になって制度の保護から出た数年以内に妊娠している
・里子だった者の74%がアメリカの刑務所にいる
・50%の里子が、18歳になって制度を離れた2年以内に投獄されている
・死刑囚監房に入っている若年層の80%はかつて里子であった
・アメリカのホームレスの30%は里親制度出身である
・40% of foster children are white里子の40%が白人、34%が黒人、18%がラテンアメリカ系
このようなフォスターケアシステムを何とかしたいと、”Silence” という短編映画のプロジェクトが生まれました。((PR.com 2015年3月21日) 映画を通してフォスターケアシステムの危機を訴え、より多くの人々に関心を持ってもられるように情報を伝えたいというわけです。
映画は、里子となった姉妹の困難な日々を描いていきます。ふたりは引き離され、別々の家庭に引き取られますが、ひとつのところに長くはいられません。家から家へ、学校から学校へ移されます。友だちを作ったり、学校の行事やスポーツに参加したり、いい成績をとったりするのはとても難しい状況です。映画の姉妹も、そして、現実の社会で里子として暮らしている多くの子どもたちも願っているのは、いつか誰かが自分を受け入れてくれて、家族になって生きていきたいということ。
里子の擁護団体Foster A Voiceは、この映画を通して、現在のフォスターケアシステムの欠点を改善するだけではなく、里子たちが18歳になってからも直面する様々な問題を解決して、悪しき連鎖を断ち切りたいと考えています。つまり、これまで多くの素晴らしい人々が里親になることを妨げてきた現在の煩雑な手続きを改めると同時に、“Cycle Out”というメンター制度を作り、様々な技術や知識を持つメンター(指導者)が里子たちを助け支えていくことを計画中です。そうした人がいることで、里子たちが犯罪に手を染めず、普通の生活を送ることができるようになってほしいと願っているのです。
Foster A Voice の代表でPNCアリーナの副総支配人ラリー・パーキンズ氏は自身の経験を踏まえてこう語っています。「自分の職業人としての半生を本に書こうとして、副支配人を務めていたジャイアンツ・スタジアムのことなどを書き始めたのですが、成功したキャリアを持っていても、書いていてどうもしっくりこないのです。そのうちどうにも書けなくなって、ふと、誰かに肩を叩かれ、こう聞かれたような気がしました。”おまえはいったい何者だ?”」
「私がまだ幼いころ、母は、私と弟と妹の3人を捨てました。自分の夢を追いかけるためにニューヨークに行ってしまったのです。私たちはいろんな家族のところに預けられ、あちこち転々として最終的には再婚していた父のところに行ったのですが、父の農場で朝から晩まで働かされました。疲れ果ててベッドに倒れこむ日々、とうとう10代の私は家から逃げ出しました」
“ and now I realized I’d never stopped running. My body and brain were in perpetual motion.
But now…I know who I am. And I’ve stopped running.” それ以来、ずっと逃げ続けているんだということに気が付いたんです。私の体も頭も、終わりがない感じで動いていたんですね。でも、今私は自分が何者なのかが分かりました。やっと逃げるのをやめることが出来たのです」
ラリー・パーキンズ氏は、今回のプロジェクトほど情熱を傾けられる仕事はなかったという語ります。多くの賛同者が集まっていて、米国大使ジェイムス・P・カイン氏も映画への支援を訴えるひとりです。捨てられた子どもたちの絶望のサイクルを断ち切るために、この映画に賛同してほしいと語っています。
現在、クラウドファンディングKickstar で、映画製作の資金を募集中です。