継続していくことがモットーであり心がけ 木場昌雄さんインタビュー(下)

木場昌雄さん=写真提供・JDFA

元ガンバ大阪キャプテンでタイでのプレー経験を持つサッカー選手、木場昌雄さんが代表をつとめる一般社団法人『Japan Dream Football Association(以下、JDFA)』は、東南アジアサッカーの発展と、東南アジア出身のJリーガーを輩出することを目的に、2011年9月に設立され、今年5年目を迎えます。「サッカーを通じて東南アジアと日本の架け橋に」との思いで地道な活動を続けてきた木場さんに、(上)に続いて、JDFAの活動はJリーグにとってどういうメリットがあるのか、故郷淡路島への思いについてを伺いました。

これまでの活動を振り返る木場さん=撮影・堀内優美

これまでの活動を振り返る木場さん=撮影・堀内優美

■14歳以下の国際大会をタイで開催、昨年は20チーム参加

――これまで現地メディアでも数多く取り上げられていますが、現地での反響はいかがですか?

現地では、子供たちに夢を与える活動を継続的にずっとやっているので、感謝の声が多いですね。しかも、東南アジアからJリーグでプレーする選手を輩出するという意味では基本的にタイであればタイの子供たち限定で、カンボジアであればカンボジアの子供たち限定でやっていて、子供たちからお金を取っていないので、社会的貢献性の高い活動として評価されています。だからこそいろんな人脈も構築できました。今後その人脈と経験を生かして結果を残していくことが、次のステージだと思っています。

――Jリーグアカデミーへの留学プロジェクトについて具体的に教えてください。

2年前から14歳以下の国際大会をタイのバンコクで開催しています。2015年大会はタイのチーム、日本のJリーグアカデミー、タイ以外のASEANの国からマレーシア、ベトナムと、20チームが一堂に会し、タイ、アセアンチームから優秀選手を選び、日本のJリーグアカデミーのチームの練習に一週間参加させるという企画です。僕は大会のアンバサダーという形で関っています。JDFA、広告代理店、旅行代理店の三者で大会の実行委員会を作り、運営しています。大会のアンバサダーとして僕が関わるに当たっては、東南アジアの中からJリーグのプレイヤーを出したい、タイとASEANの中から優秀選手を選んで、Jリーグのアカデミーへ留学させる企画をこの大会でやらせてほしいという要望を出したんです。そうなれば僕のやりたいことがこの大会の中で描けるし、具体的に子供たちが日本でプレーできる環境を与えることもできる。その中で実力を発揮すれば、将来的にJリーグのクラブに入れる可能性もあるということでこの留学プロジェクトを企画しました。参加チームも、2014年大会は12チーム、2015年大会は20チームと増えてきており、今年も開催する予定です。

「U14 ASEAN Dream Football Tournament」では大会アンバサダーをつとめる=写真提供・JDFA

「U14 ASEAN Dream Football Tournament」では大会アンバサダーをつとめる=写真提供・JDFA

――JDFAの今後の活動についてお聞かせください。

今後も定期的にタイを中心にサッカー教室を開催し、スカウティング活動も大会も継続して行なっていくことで、僕がやる意味合いが大きくなると思っています。そうすることが、将来的にJリーグのプレイヤーを出すことにつながっていくと思うので続けていきたいです。

■タイの選手が日本でプレーしたら、放映権が売れ、Jリーグのメリットに

――JDFAの活動はJリーグにとってどういうメリットがあるのでしょうか?

実はJリーグからもアジアアンバサダーという肩書きをいただいているんです。僕たちのJDFAの活動が始まる4年前から、Jリーグでもアジア戦略というのをはじめていて、Jリーグが20数年培ってきたノウハウをアジアにも広め、アジアサッカー界全体の底上げを、ということでJDFAの活動も認めてもらっているわけですが、僕たちの活動を通じて、例えばタイの選手がJリーグでプレーするようになればタイの人もJリーグを見たいと思うようになるでしょうし、インドネシアの人がプレーしたらインドネシアの人が見たいと思う環境を作っていける。Jリーグの認知度が上がって、大きなメリットがあると思うんです。

――タイの若手選手がJリーグに入って活躍すればタイのテレビでJリーグが放映されて放映料もJリーグに入ってくるという話は、セリエAに日本選手が加入したことでヨーロッパサッカーの放映が日本で増えたことと重なりますね。

まさに、タイの選手が日本でプレーしたら、タイの人たちが日本の放映を見たいということになり、放映権が売れ、Jリーグにとっても収益性のメリットにもつながります。また、Jリーグは世界にいけるステップアップのリーグだと思ってるので、Jリーグのクラブでプレーしている東南アジアの選手がヨーロッパのクラブに移るとなると、ヨーロッパのクラブからJリーグのクラブに対し、移籍金というのが入ってきます。そうなれば収益性のある事業としての話になってきます。

■企業が長くサポートしてくださるのは、思いや夢に賛同していただいているから

――JDFAの活動にスポンサーが協力することが企業にとってどういうメリットがあるのでしょうか?タイに進出している日本企業にとって、JDFAの活動に協力することにどういうメリットがあるのかを紹介してください。

JDFAは、非営利団体として社会貢献活動をさせてもらっていますので、現地進出の日系企業にサポートしてもらっています。こういった企業に関してはCSRといって企業としての社会的責任を僕たちのサッカークリニックを支援することで行えるといった点で大きなメリットを感じてもらっています。

――スポンサーの1つ「帝人(帝人株式会社)」のCMにはJDFAが登場しますが、「帝人」について、もしくは、他の企業についてお話いただけますか。

帝人さんは、現地の子供たちにペットボトルを持ってきてもらい、帝人さんの技術でリサイクルしてできたシャツを現地の子供たちにプレゼントし、サッカークリニックで環境問題をアプローチしました。僕たちの活動を通じて一緒に環境問題に取り組んでいるという点で、帝人さんのアピールにつながりますし、子供たちには、ペットボトルはゴミではなく、資源ですよと訴えかけることもできます。また、アース製薬(アース製薬株式会社)さんや仁丹さん(森下仁丹株式会社)は物を売っている企業なので、サッカー教室のときにブースを出し、子供たちにサンプリング活動していただく中で、子供の時代から自分たちのブランドを覚えてもらうという点でのメリットを感じていただいています。ただもちろん、企業的なメリットもありますが、どの企業も長くサポートしてくださっているのは、僕たちの活動に対する思いや夢に賛同していただいているからだと思います。だからこそ、僕もスポンサーさんに、より多くのメリットを感じてもらえるように、各企業何をアピールしたいか、何を売りたいかということをしっかり汲み取り、雑誌や新聞で取り上げてもらったりする際には、随時スポンサーさんの名前が少しでも出るような形でお話をさせてもらっています。各スポンサーさんには3年以上活動へのご支援を頂いていますが、何もないところから始めた活動を継続しご支援いただいているので、一緒に作っていきましょうという感覚のもと、いい関係を築かせてもらっていると感謝しています。

――出来上がったところに乗っかかるというわけでなく、一からというところがいいですよね。

そう、しかもそれが単発的に終わるのではなく、継続していくことで、企業としてこの活動をずっとサポートしていることを対外的にアピールできるので、自分の思いを叶えるためだけではなく、スポンサーさんや支援してくださってる方々に対しても、やっぱり続けていくことが大事だと思っています。

指導にあたる木場さん=写真提供・JDFA

指導にあたる木場さん=写真提供・JDFA

■継続することで結果が出せる、継続していくことがモットーであり心がけ

――木場さんは、解説者、指導者としても、精力的に活動されていますが、ご自身の活動について今後どういったことを展開していきたいですか?

JDFAの活動は社会的貢献性の高いところで基本的にずっと続けていきたいとは思っていますが、やはり生活があるので自分の生活を成り立たせていくためには、収益性のある活動もやっていかねばならないと思っています。あとは自分で会社を立ち上げ、例えばJリーグでプレーする東南アジアの選手と代理人契約をして、チームと選手の間に入り、年俸の交渉やいろんなことをビジネス的要素も含めてやっていくことも考えています。例えばタイの選手が、日本でプレーすれば、タイの中での認知度が上がるので、CMに出たり、いろんな活動をマネジメントしていくこととか。まずその選手がJリーグでプレーするために、Jリーグのクラブに持ちかけ話をまとめる役目としてのエージェントや代理人になるんですけど、そういうことも今後やっていきたいです。また、Jリーグのクラブにアジアのスポンサーを仲介したり、Jリーグのチームにスポンサーをつけることで、Jリーグのクラブがアジアの選手を採用できる資金を捻出できるかもしれないので、そういうことを仲介できるビジネスも考えています。社会貢献活動を通じて培ってきた人脈を生かし、そうった収益性のある事業にも変えていきたいと考えています。

――木場さんのモットーやビジョンをお聞かせください。

何事も継続することで結果が出せると思うので、単発的ではなく、継続していくことがモットーであり、心がけていることです。

――こういった考えは、現役のときから?

いや、現役のときはこういう感覚はなく、現役を終えていろんな活動をする中で感じてきたことですね。どんな活動に携わるに当たっても、継続的に意味のあるものにしていくためにはどうしたらいいかを、常に考え行動しています。

サッカークリニックの様子=写真提供・JDFA

サッカークリニックの様子=写真提供・JDFA

<関連サイト>
一般社団法人JDFAのオフィシャルサイト

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■淡路島は自分が育った町なので、思いはずっとあります

■1回で終わってしまうのは何も意味がないと思っている

■チャレンジするかしないか迷ったときは、チャレンジしてほしい

■ぜひ日本のサッカーだけではなく、東南アジアのサッカーにも注目を

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■淡路島は自分が育った町なので、思いはずっとあります

――さて、私も同じ淡路島出身なので、同郷として聞きたいこと。淡路島からは多くのサッカー選手が誕生していますが、木場さんは第一号のJリーガーでした。故郷の淡路島への思いを聞かせてください。

淡路島は自分が育った町なので、そこに対しての思いはずっとあります。3年前、淡路島のJリーグプレイヤーやサッカー選手が一堂に会し、地元の子供たちを指導する機会がありました。そういったことをきっかけに、なんらかの形で淡路島に貢献していきたいという思いは常にあります。最近は淡路島の中からあまりJリーグのプレイヤーが出ていないので、そういう環境になるように、僕ができることはやっていきたいし、なんらかの形で淡路島の子供たちと関わっていきたいと思っています。

――JDFAの活動の淡路版みたいな?

そうです。そういう思いはもちろんあります。

■1回で終わってしまうのは何も意味がないと思っている

――今日は3・11ですが、木場さんも阪神淡路大震災を淡路島で経験されましたね。

震災に関しては、正直デリケートなところだと思っています。阪神淡路大震災を経験し、その被災地に対して何かしてきたかというと正直ないですし、東日本にたいしても何もやってなかったです。JDFAの活動もそうですが、継続してやれることじゃないなら、安易に携わってはいけないというのが僕自身の中であって……。でも昨年、ジャイカ(青年海外協力隊)スリランカ事務所の活動で阪神淡路大震災から20年、スマトラ大津波から10年ということで、スリランカもスマトラ大津波で大きな被害があったので、被災地域に対し、阪神淡路大震災を経験したスポーツ選手が現地に行き、震災のことを語り継ぐという機会がありました。震災のことを子供たちに話す中、防災の意識を高めてもらったり、サッカーを通じて交流させてもらったんですが、そういう活動に被災者や経験者が携わるに当たり、1回で終わってしまうのは何も意味がないと思っているので、ジャイカの方に「毎年させてほしい」とお願いしたんです。それで昨年と今年の2月、スリランカへ行きました。そういう活動を通じて、僕自身、被災地の経験を伝えていきたいと思っています。阪神淡路大震災や東日本大震災を経験したサッカー選手は僕だけではなく、他にもたくさんいるので、そういう人たちにも機会を与えてほしいと今ジャイカの方にお伝えしているので、それが継続していく形になればと思っています。来年以降はスリランカで行うので、僕だけではなく震災を経験したサッカー選手と一緒に行って、また新しいことを繋げていけたらと思います。

■チャレンジするかしないか迷ったときは、チャレンジしてほしい

――将来サッカー選手になりたいという後継者たちへ、指導者としての立場からメッセージがあれば。

今の日本のサッカー界は、僕たちが子供の頃に比べると、すごく恵まれている環境にあります。どこの県に行っても、JリーグのクラブやJリーグを目指しているクラブがあり、目の前にプロのサッカー選手がいる。世界のサッカーもテレビで見ることができる。すぐ近くに目標があり、夢を叶える場所があるので、ぜひそこを目指してほしい。チャレンジするかしないか迷ったときは、チャレンジしてほしい。ダメだった場合でも学べることはたくさんあるし、失敗から学ぶことってたくさんあると思うので、迷ったときはぜひチャレンジしてほしいです。とにかくいろんなことを見て学ぶことが大事。その環境が今の日本にはたくさんあるのでぜひ生かしてほしいです。

■ぜひ日本のサッカーだけではなく、東南アジアのサッカーにも注目を

――最後に、アイデアニュースの読者に向けてのメッセージをお願いします。

今後、Jリーグで東南アジアのサッカー選手がプレーする機会が増えてくると思います。そういう選手が増えてきたら、「木場の活動がやっと認められるようになってきたな」と思ってください。僕自身この活動を継続的にやっていくつもりですし、ぜひ日本のサッカーだけではなく、東南アジアのサッカーにも注目してもらえたら嬉しいです。

――ありがとうございました。

木場昌雄さん=写真提供・JDFA

木場昌雄さん=写真提供・JDFA

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