実録・大家さん(1) 安くて、築浅で、家賃収入が多いマンションを手に入れるには

最初に購入した部屋のあるマンションの玄関=2005年2月12日、撮影・橋本正人

「実録・コインランドリー屋さん」をお読みくださったみなさま、ありがとうございます。一部の読者の方からは「面白い」と熱い評価をいただいていたのですが、コインランドリーについてはいったんネタが尽きたので、いったん休止として、ここからは「実録・大家さん」と題して連載します。「大家さん」というのもなかなか魅力的だとは思うのですが、知人に話をするとコインランドリーほど、みなさん身を乗り出して聞こうとはなさりません。コインランドリーは未知の世界な感じがしますが、大家さんは「なんとなくわかる」からでしょうか。ただ、これまでと同じように、赤裸々に大家さんの裏側を紹介してゆきますので、しばらくお付き合いください。

最初に購入した部屋のあるマンションの玄関=2005年2月12日、撮影・橋本正人

最初に購入した部屋のあるマンションの玄関=2005年2月12日、撮影・橋本正人

そもそも、私は先祖代々の大きな土地を持っている地主の家系などではなく、戦争で焼け出された父は小学生のころから「塩田」で働き、家計を支えてきました。父は市役所に勤め、母は小学校の教諭として共働きしながら私と姉を育ててくれました。私が育った家は、特別に貧しいということはありませんでしたが、それほどお金持ちという家でもなく、「サザエさん」のようなごく一般的な家庭でした。

私は大学を卒業してから新聞社に入り、最初に勤めた産経新聞社を4年で退社し、当時は朝日新聞社に勤めていました。転職を1度経験していることもあり、いつかはまた転職するかもしれないなと思いながら、いざという時に、思い切って転職できるように、それなりの蓄えをしておかなければと思いながらサラリーマン生活を続けていました。

そんなある日、40歳をすぎたころに、本屋さんでふと目に止まった本が「サラリーマンでも『大家さん』になれる46の秘訣」という本でした。いざという時のためになんらかの副収入を手に入れておきたいけれども、仕事は忙しいし、かといって株式投資はインサイダー取引になる可能性もあるので会社では禁じられていますし、でも銀行にお金を預けていても金利はほとんどゼロだし、なにかいいことはないかなと思っていたところで、単純に「大家さんならあまり手間もかからず、副業としては、いいのでは?」と思ったのです。

当時は、サラリーマンとしての収入と信用を担保に金融機関から融資を受けて、マンションなどを買うという投資法がもてはやされていました。そういうセミナーにも参加したのですが、なんだか借金して投資するというのはうさんくさい感じがして、どうもなじめませんでした。ノウハウも持っていないのに、いきなり借金をするのは危険だと思い、自分の貯金を使って安全確実に大家さん業を経験できないかと考え、自嘲気味に「貯金大家さん」と名付けた資産運用をはじめたのです。

「貯金大家さん」というのは、文字通り貯金を使って、つまり、融資をうけずに自分のお金で不動産を買って大家さんになるということです。借金をしていないので、万が一失敗をしても最初に使った貯金の分だけで済むなら、「勉強代」ということで許せるかもしれない。そう思って「勉強」のために、できるだけ安い物件を探しました。

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※ここからアイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分です。「サラリーマン大家さん」になるために、購入価格が安くて、新しくて、それでいて高い家賃がいただけそうな物件を入手するために、何をして、どうなったのかについて書いています。

物件探しは、インターネットで始めました。「不動産投資」などで検索すれば、いろいろな情報サイトが出てきます。ただ、インターネットに掲載されている情報だと「おお、これは、いい!」と思っても、実際に物件を見にいってみると「なんじゃこれは!」というものがほとんどで、現地を見に行って「がっくり」して帰ってくるということを何度も繰り返しました。ネットでは綺麗に写っていたのにボロボロの建物とか、見るからに危険な場所に建っていたり、まあ、これでもか、これでもかというぐらい、「こりゃあかんわ」物件が続きます。もともと、安く買える物件を探しているわけですから、難があるのは当然ですが…。

それでも、そんなある日、「いいかも」物件がネットに出ているのを見つけました。築15年の鉄筋コンクリート4階建てマンション2階の1室。ワンルームとキッチン・バスのついた部屋が360万円で売りに出ていたのです。この部屋の家賃は月額4万円で、これに共益費6000円と固定水道代2000円が加わるので、大家さん側に入ってくるお金は月に4万8000円。マンションの管理会社には、管理費として月に6000円と修繕積立金4000円、固定水道代2000円の合計1万2000円を支払う必要があります。4万8000円の収入で、1万2000円の支出なので、差額の3万6000円が手元に残ることになります。

最初に購入した部屋が出ていた業者のページ(一部修正しています)=2005年2月15日、キャプチャー・橋本正人

最初に購入した部屋が出ていた業者のページ(一部修正しています)=2005年2月15日、キャプチャー・橋本正人

360万円で買った部屋から月々3万6000円が入ってくるということは、単純計算すれば、100ケ月(8年3ヶ月)で購入資金が回収できて、それ以降の収入は、まるまるプラスになるということになります。実際には、ずっと満室が続くことはないでしょうし、退去の際のリフォームや、固定資産税の支払いなども必要なので、私の頭の中では「収入の2ヶ月分は経費になると計算して10ケ月分の収入で計算しよう」と考えました。月収を年収に換算する時、12倍すると「かけざん」が面倒ですが、10倍だとパッとわかって便利です。ということで、私は、利益として手元に残るお金を10倍して年間の手取りと計算するようにしました。この計算方法は、実際にこれまで大家さん業をずっと続けてきて、だいたい正確な数字になることがわかりました。

となると360万円で購入して、月の手取りが3万6000円なら、10年で元がとれて、11年目以降は「丸儲け」となる計算になります。実際に現地を見に行っても、なかなか綺麗な建物で、オートロックもついているし、大学も近いし、難点は駅から徒歩15分と遠いことだけど、フラットな地形の場所なので自転車に乗ればそれほど遠い距離でもないし、大丈夫だ。よし、買おう!と思いました。

ところが、連れ合いからストップがかかりました。360万円は「言い値」なので、もう少し安い値段で購入すると交渉を持ちかけてはどうかというのです。たしかに、購入するためには物件の価格以外に、不動産業者に支払う手数料や登記料などが50万円ほどかかるので、それを含めれば、410万円の買い物になるわけで、360万円だけというわけではないのでした。

ということで、不動産業者に電話連絡して「300万円で購入申し込みをしたいのですが」と、いわゆる「指し値」をしました。業者は「それは無理ですよ。360万円で売りに出しているのですから、300万円で買うという人が出てきたなんて、とても売主さんに言うことはできません」という答えでした。たしかにそれもごもっともです。ということで、まあ、今回は無かったというでいいかなと思い、別の物件をさがしはじめました。

しかし、なかなかいい物件が見つからず、1カ月後にもう一度業者に問い合わせたところ、まだ売れていないということで、「300万円はあり得ないと言っておられましたがいくらぐらいなら?」と聞くと、「330万円ぐらいなら話を持っていける」とのお答え。「では、330万円でもいいのですが、できるだけ安い価格で合意できるようお願いします」と業者に交渉を依頼しました。そして、2005年2月に320万円で売買することが決まりました。

最初に購入した部屋の入居者募集案内。これは購入後9年たった時のものなので、家賃は購入時より2000円下げて38000円にしています=2014年2月、作成・橋本正人

最初に購入した部屋の入居者募集案内。これは購入後9年たった時のものなので、家賃は購入時より2000円下げて38000円にしています=2014年2月、作成・橋本正人

私が生まれて初めて購入した賃貸物件が、このワンルームでした。この部屋の入居者は、とても良い人で、家賃は毎月キチンと決められた日に払ってくれるしトラブルも全く無し。私はただ家賃が振り込まれているのを確認して、管理費などを管理会社に振り込むだけでした。この部屋は、その後、2014年7月に300万円で売却することができました。9年5ケ月たって、購入価格から20万円減だけの価格で売れたのは、良かったと思っています。大雑把に言うと、300万円で購入して、10年間に300万円を手にして、10年後に300万円で売れた、ということになるので、だいたい10年でお金が倍になったと言えると思います。

ということは、これと同じことを繰り返せば、さらに大きな利益を得ることができるのでは?と思うのは人情ですよね。ということで、最初のマンション1室を購入してからしばらくした頃、私は2室目を購入しました。ところが、1室目と違って、2室目は大変でした。空き室の状態で購入したのですが、入居者が決まらないのです。あちこちの不動産業者に仲介を依頼して回りましたが、見学すらあまりありません。2ケ月ほどは我慢しましたが、それでもダメだったので、私は一生懸命考えて、インターネットを使ったある方法で、入居者を集めようと思い立ちました。そして、それを実行した翌日、不動産業者から電話がどんどんかかってきました。そして、なんと3日後には入居者が決まってしまいました。私が「えげつない作戦」と名付けた、その方法については、次回(7月31日掲載予定)、紹介します。

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