シリアで40カ月という長い期間拘束されて、昨年10月に解放されたフリージャーナリスト・安田純平さんの帰国報告会が2019年2月16日(土)、神戸市勤労会館で開かれました。安田さんのサイン入り著書『シリア拘束 安田純平の40か月』を、アイデアニュース有料会員1名様にプレゼントします(このプレゼント募集は終了しました)
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安田さんは、大学卒業後、信濃毎日新聞に入社。在籍中からアフガニスタンやイラク等の取材をおこなってきました。2003年に退社、フリーランスのジャーナリストとして中東、東南アジア、東日本大震災などを取材。イラク戦争時には、世界中から民間人が集まってきて、建設現場や基地で働く現代の民営化された戦争を、自らも料理人として働いた経験をルポ『戦場出稼ぎ労働者』に記しています。
今回、2015年6月から2018年10月の解放まで、実に40カ月にもおよんだ拘束を経験したわけです。お話が止まらない、言葉がどんどん出てくる元気な様子に、ホッとしました。一方で、本にサインをしてもらった時の体の細さに胸をつかれました。どれほど過酷な経験だったことかと思います。その貴重な報告は、『シリア拘束 安田純平の40か月』にも生々しく描かれています。
いわゆる生存証明のため、お連れ合いから本人にしか分からない質問がきて、その回答の中に、メッセージをしのばせていた安田さん。イラクやシリアに取材に行くようになって、つねづね「私の身に何かあったら放置しろ」と彼女に伝えていたそうです。回答に紛れこませて送ったメッセージは、例えば、安田さんがお連れ合いを呼ぶときのニックネーム、”Oku”に、”Oku-Houchi”と書いたこと。放置という言葉を付け足したわけで、日本人なら意味が分かるけれど、シリア人がネットで日本語にしても意味が分からないように工夫したというわけです。お連れ合いが安田さんを呼ぶときの”Puku”というニックネームにも”Puku-Hottoku”、「放って置く」という言葉をつけました。他にも、「Danko6446 断固無視しろ」「Buji frog 無事に帰る」のような、日本語ネイティブでないと変換できないような暗号を書き添えたと安田さんは語りました。
「私のことは放置しろ」とは、つまり、日本政府が退避勧告を出した地域に出かけていくときの、自らの覚悟の話です。拘束した組織と日本政府が交渉し、身代金を支払うことはありえないという前提で、現場に入っているというお話でした。危険な地域になぜ入るのか、その思いについて、この日会場にたくさん来ていた若者の質問に答える形で安田さんはこう答えました。
- 『自分が生きている同じ時代に、戦争で人が殺されていることを見て見ぬふりはできない。自分は好奇心旺盛で、そういう場所で、人はどんな風に生きているのか、その姿を見たい。それを知らないでいるのは、同時代人として間違っているのではないかと。そして、それを知ったからには、帰る場所がある人間として伝えていかなければと思う』
戦場からの情報が、戦争の当事者である国家や権力者から出るものだけであれば、どんな人権侵害も伝えられない可能性があります。筆者も、フィリピンに初めて行った時、「私には帰る場所がある」と強く感じました。政府による民間人への暴力が続いていて、日本に帰ってホッとしたときに、フィリピン人の友を思って罪悪感をおぼえたことを思い出しました。「彼や彼女には帰る場所がないのだ、だとすれば、第三者である私にこそ出来ることがあるのではないか」という思い。「知ったからには伝えなければ」という気持ち。現地の情報を伝えるジャーナリストの存在は大切だと改めて思った帰国報告会でした。
<関連リンク>
- 安田純平 Twitterページ
- 安田純平 メルマガ 「安田純平の死んでも書きたい話」
- HARBOR BUSINESS online 安田純平氏が戦場取材をする理由。「『テロリスト』として殺される“普通の人”の存在を伝えたい」
<単行本『シリア拘束 安田純平の40か月』>
- 著者:安田純平
編集:ハーバー・ビジネス・オンライン
出版社:扶桑社
発売日:2018年11月24日
Amazon 単行本 864円
Amazon Kindle版 800円
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