インドの叙事詩「マハーバーラタ」を舞台化、「バトルフィールド」来日へ

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

インドの壮大な叙事詩「マハーバーラタ」をもとにした舞台「Battlefield(バトルフィールド) 『マハ―バ―ラタ』より」が、2015年11月25日から、東京の新国立劇場中劇場で上演されます。脚本・演出は、「現代演劇界の巨匠」と呼ばれるピーター・ブルックさんら。筆者(橋本)は、ストレートの演劇のことは良く知りませんが、「マハーバーラタ」については少々個人的な思い入れもありますので、アイデアニュースで紹介させていただきます。

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

ウィキペディアによると「マハーバーラタ」の「マハー」は「偉大な」という意味で、インド独立の父・ガンディーが「マハートマ・ガンディー」(偉大な魂のガンディー)と呼ばれるのと同じような使い方になります。「マハーバーラタ」となって「偉大なバラタ(バーラタ)族の物語」となります。

「マハーバーラタ」は18巻にもおよぶ長大な物語で、私も全文を読んだことはありませんが、学生時代にガンディーの非暴力闘争に興味を持っていたこともあり、「マハーバーラタ」の一部でガンディーが愛読した「バガヴァッド・ギーター」は何度も読み、メロディーをつけて歌にしたこともあるほど、愛唱しました。「ギーター」の内容をどうとらえるかは人によってそれぞれだと思いますが、私は「ギーター」の核心部分は「行為の結果にとらわれずに義務を遂行すること」にあると理解しており、これが「結果ではなく手段の正しさを重んじる」非暴力闘争を展開して戦争なしにインドを独立に導いたガンディーの力の源泉になったと考えています。

さて、この舞台「Battlefield(バトルフィールド) 『マハ―バ―ラタ』より」は、ピーター・ブルックさんが30年前に上演した舞台「マハーバーラタ」を、新たな形で上演する作品になっているそうです。

アイデアニュースに届いたプレスリリースによると、1985年にアビニョン・フェスティバルで初演された「マハーバーラタ」は、全体を「賭け」「追放」「戦争」の三部作に集約したもので、なんと全体で9時間かかるという超大作だったそうです。それに対して、今回の「バトルフィールド」は、すべての戦いが終わり、無数の骸(しかばね)で大地が覆われた戦場(battlefield)が舞台となっており、簡潔で深い示唆に富んだ80分の作品となっているとのことです。

今年90歳になったブルックさんは、1925年ロンドン生まれ。演劇、オペラ、映画、著作等、様々なジャンルで活躍し、『鳥の会議』『桜の園』『テンペスト』『マハーバーラタ』など話題作を発表。ドキュメンタリー映画「タイト・ロ―プ(邦題:ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古)」は、2014年9月に日本でも公開されています。

9月16日、ピーター・ブルックアトリエにて撮影=プレスリリースより

9月16日、ピーター・ブルックアトリエにて撮影=プレスリリースより

今回の舞台では、「マハーバーラタ」でも音楽監督をつとめた土取利行さんがひとりジャンベの音を響かせるなか、4人の俳優が、何色かの大きなショールを使い分けて、さまざまな人や動物を演じるとのこと。大量殺戮によって勝者となったパーンダヴァ軍の総帥ユディシュティラが「この勝利は敗北だ」と吐き捨て、悔恨や罪悪感にさいなまれる姿が描かれてゆくようです。

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

プレスリリースによると、2015年9月15日にパリで行なわれた「バトルフィールド」世界初演初日の翌日、取材に応じたブルックさんは「沈黙に耳を澄ませていたら、今やるべきなのはシェイクスピアでもオペラでもなく、これだろう。そう時代に促されたのだよ」と話しています。

世界各地で新たな紛争・戦争が起き、日本でも安保関連法(戦争法)をめぐって国会が包囲されるなど議論になっている今、この舞台を通して「バトルフィールド」について考えてみたいと思いました。

  • <公演概要>
    公演タイトル:Battlefield 『マハ―バ―ラタ』より
    脚本:ピーター・ブルック ジャン・クロード・カリエール マリ―=エレ―ヌ・エティエンヌ
    演出:ピーター・ブルック マリ―=エレ―ヌ・エティエンヌ/音楽:土取利行/照明:フィリップ・ヴァラット
    出演:キャロル・カルメラ ジェア・マクニ―ル エリ・ザラムンバ ショーン・オカラン
    世界初演:2015年9月15日 パリ ブッフェ ドゥ ノ―ル劇場
  • <日本公演>
    公演日程:2015年11月25日(水)~11月29日(日)
    会場:新国立劇場中劇場
    入場料金:7,000円(全席指定・税込)
    U-25チケット:3,500円(観劇時25歳以下対象・当日指定券引換・要身分証明書)
    ※U-25チケットはチケットぴあ・前売り販売のみの取り扱い。
    ※日本語字幕付き上演

この公演に先立って、10月31日には来日直前プレイベント「音楽家 土取利行が語る、ピーター・ブルックと『マハーバーラタ』30年の軌跡」が、東京のパルコ劇場で開かれます。入場は無料です。

  • <プレイベント>
  • 「バトルフィールド」来日公演記念
  • 音楽家 土取利行が語る、ピーター・ブルックと「マハーバーラタ」30年の軌跡
    日程:10月31日(土)19時30分開演
    会場:パルコ劇場
    出演:土取利行/伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)
    入場料:無料
    ※参加申込方法の詳細はパルコステージホームページにてご確認下さい。
    問い合わせ:パルコ TEL:03-3477-5858
    パルコステージHP:
  • http://www.parco-play.com/web/

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<アイデアニュース有料会員向けコンテンツ>

プレスリリースに掲載されていた、パリ公演評、ブルックさんと土取さんの略歴を、紹介します。

パリ公演劇評

ピーター・ブルック

土取利行

パリ公演劇評

「バトルフィールド」は、叡知と詩の軌跡だ・・・・・レ・エコー Les Echos

見事な考案、演出、上演。「バトルフィールド」を見るものは、その先に何があるのかを浮かびあがらせるようなシンプリシティと純粋さを体験する。・・・・・ ル・フィガロ Le Figaro

ピーター・ブルックはあたかも禅師のように、その演劇をさらに洗練させ、凝縮する。一つの物語を別の物語へと転がし、人生の探求を蒸留しているようだ。アフリカの村の広場で演じられているかのようでもあり、シェイクスピア時代の音や激情のようでもありながら、決してギリシャ悲劇の基礎を否定しない。魔術師ブルックは、見事なシンプリシティとともに、洗練を増していく。・・・・・ル・モンド Le Monde

ピーター・ブルック

1925年ロンドンに生まれる。その長いキャリアを通じて、演劇、オペラ、映画、著作等、様々なジャンルで優れた業績を収める。最初の舞台演出は1943年。その後、ロンドン、パリ、ニューヨークで70を超えるプロダクションを演出。1971年、国際演劇研究センターをパリに設立、1974年、テアトロ・デ・ブッフ・デュ・ノ―ルの恒久基地をオープンし、『鳥の会議』『桜の園』『テンペスト』『マハーバーラタ』など話題作を発表。主な著書に、15か国以上に翻訳された『なにもない空間』『秘密は何もない』、自伝『ピーター・ブルック回想録』など。昨年公開となったドキュメンタリー映画『タイト・ロ―プ(邦題:ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古)』が話題に。

土取利行さん=プレスリリースより

土取利行さん=プレスリリースより

土取利行

(つちとり としゆき) 1950年、香川県に生まれ。1970年から前衛ジャズドラマーとして近藤等則、坂本龍一等と活動、75年に渡米、渡欧。ミルフォード・グレイブス、ステーヴ・レイシー、デレク・ベイリーといった演奏家たちと共演。76年よりピーター・ブルックの劇団で演奏家・音楽監督として活躍。主な作品には、『鳥の会議』『マハーバーラタ』『テンペスト』『驚愕の谷』がある。また、世界中で民族音楽を学び、日本の古来の音楽の調査を行ない、その成果を演奏として発表。日本有史以前の音楽を録音した『銅鐸』『磬石(サヌカイト)』『縄文鼓』の三枚のアルバムをリリースしている。

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

「バトルフィールド」舞台写真=©Caroline Moreau

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