25周年・50歳の節目から「次」へ、石丸幹二さんインタビュー

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

人気ミュージカル「ジキル&ハイド」が今年3月から東京、大阪、名古屋で上演される。2001年に日本で初演されて以来、再演を重ね、前回の2012年の公演から鹿賀丈史が演じてきた主役のジキル&ハイドを石丸幹二が継承した。石丸に、役や作品に対する思いを聞いた。(※以下「 」の段落は石丸さんの言葉です。記事の後半、コンサートなどについて詳しくうかがった部分はアイデアニュース有料会員限定とさせていただきます)

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

ミュージカル「ジキル&ハイド」はロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」が原作。19世紀のロンドンを舞台に、「人間の善と悪を分離する薬」の開発にいそしむ、善良な医師ジキル博士が、自ら作った薬を飲むことで、ハイドという悪の人物に変わっていくさまを描く。

「善と悪は、どなたも両方持っていらっしゃるはずだと思います。悪の部分を表に出さないようにして生きるのが大人の生き方。ジキルは薬を使って悪の部分を消し去ろうとした結果、悪に征服されてしまった。でも、薬にかかわらず、周りの意見に耳を貸さず、自分の意見を押し通そうとする強引な悪の部分が、ジキルにもあった。それが、ふつふつと沸きだし、薬が引き金となり、ハイド化してしまったところもあると思うんです」

人間の見たくはない、恐ろしい部分を露骨に表したハイドは、悪の権化のような人物で、人殺しもいとわない。しかし、それが人間の持つ多面性ともいえる。

「ジキルが作った薬は、たとえば、常識や生き方、価値観という言葉にも置き換えられると思うんです。どれも一歩間違えると思ってもいない悪の方向に進んでしまう可能性がある。この作品を見ると、自分の人生もジキルの人生もあながち遠くはないと感じるんです。僕にとっての薬とは何かと考え、そこを今回はもう少し突き詰めて演じていきたいですね」

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

ジキルとハイド役を演じるのは2回目となる。前回から4年の年月を得て、役柄について新たな発見はあるのだろうか。

「今作の作曲を手掛けたフランク・ワイルドホーンから、この作品の主演は3役を演じなくてはならないと言われていたんです。つまり、ジキルとハイド、そしてハイドの存在を知ったジキル。前回、ジキルとハイドは僕の中でも明確に演じられましたが、ハイドの存在を知ったジキルという存在はまだまだ発展途上だった。今回は第三のキャラクターをいっそう深めたい。ハイドの存在を知ったジキルは、何とかしなきゃいけないと、焦りや恐怖があると思うんです。悪や影を持つ人物がどこか人を引きつけるのと同じで、自分の悪の部分を知ってしまったジキルは、ある意味、魅力的だと思うんです」

さらに、ワイルドホーンはハイドという人間は「お祭り」だと石丸に話したという。

「ハイドは自分が悪であるという意識はない、それどころか正義を実行していると思い込んでいる。だから人生を謳歌して演じてほしいと言われました。面白い解釈だなと(笑)」

石丸にとって、お酒を飲むときの解放感が「お祭り」に似ているという。

「遮るものが少なくなって、多弁になったり、大声で歌ったりする。そういう感覚がハイドに通じるかもしれないですね」

また、実生活でハイドに豹変する人物も参考にする。

「豹変する人物を目撃した場合、もう私も50歳ですからね、まずは、その人は何か理由があってそうなったんだろうなと考えますね。そして、ハイドに生かそうと役者として観察してみる。直接被害がある場合? もちろん、逃げますよ(笑)」

ジキルに忠実で従順な恋人のエマ(笹本玲奈)と、ジキルにはっきりと意見を述べる娼婦のルーシー(濱田めぐみ)、二人の女性との関係性も作品に描かれる。

「ジキルとハイドは同一人物ですが、エマとルーシーは二人とも、彼らの心に響くものを持っている女性。いいなずけのエマは母性があり、ジキルにとっては同志のような存在。一方、ルーシーには、人を押しのけてでも自我を通す自主性や、ハングリー精神がある。ジキルはハイドになったときに、そんなルーシーに心が動いていく。生きていくために必要な存在と、本能的に求めあってしまう存在、その二極が二人の女性に表れている。ジキルとハイドにとってはどちらも必要なんです。ずるいですよね(笑)」

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

2015年にデビュー25周年を迎えた。

「この仕事を25年間続けてきて、50歳になり、いい〝節〟だなと思います。今後も俳優と歌手という〝二足の草鞋〟を履いていきたいですね。最近、子どものころからなじんできた童謡にとても深いメッセージがあることに気がつきました。あまり大人が歌わない童謡や、山田耕筰、武満徹らが作った日本の名曲を歌っていくことが、次の節にやれることではないかと思っています」

<公演案内>
ミュージカル『ジキル&ハイド』
【東京公演】2016年3月5日(土)~2016年3月20日(日) 東京国際フォーラム ホールC
http://www.tohostage.com/j-h/index.html
【大阪公演】2016年3月25日(金)~2016年3月27日(日) 梅田芸術劇場メインホール
http://www.umegei.com/schedule/497/
【名古屋公演】2016年4月8日(金)~2016年4月10日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
http://www.kyodotokai.co.jp/events/detail/1087

<関連リンク>
石丸幹二オフィシャルサイト
http://ishimaru-kanji.com/

<プレゼント>
石丸幹二さんのサイン色紙を、アイデアニュース購読者3名に抽選でプレゼントします(月額300円の有料会員が対象となります)。応募締め切りは2016年1月15日(金)。当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。(このプレゼント募集は終了しました。ご応募くださったみなさま、ありがとうございました)

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<ここから全文閲覧権購入者向け部分>
ブロードウェイ観劇、ニューアルバム、コンサートなどについて、詳しくうかがいました。
■ブロードウェイは、観客の期待に大いに応える場所
■渡辺謙さんは偉業を成し遂げられたと思います
■5月の「オーケストラコンサート」は夢のようで楽しみ
■オケやバンドと心を添わせて歌うことに命を懸けています
■舞台や映像で自分がどこまでできるのか試してみたい

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石丸幹二さん=撮影・橋本正人

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

■ブロードウェイは、観客の期待に大いに応える場所

--以前、石丸さんは、ブロードウェイで見た「ラ・カージュ・オ・フォール」が素晴らしかったとおっしゃっていました。

たまたま、「ラ・カージュ・オ・フォール」が再演になった2010年のオープニングの時期にブロードウェイに行ったんです。ブロードウェイの初日がどんなものなのかにも興味がありました。やはり、観客の期待に大いに応える作品でしたね。幕開きの場面、観客席にドラッグクイーンが入っていって、観客に絡みながらいつの間にかショーが始まっていくという作りだったんです。

僕にしてみれば、そこまでのお客いじりができるんだと。ドラッグクイーンが劇場の外まで並んでいましたからね。ディズニーランドと一緒で、観客がその世界にボンっと飛び込めるように、間口をひろげることをやっているんだなと感心しました。

--観客にもドラッグクイーンがいっぱいいたそうですね。

どっちが出演者でどっちが観客か分からないほど(笑)。初日でしたし、ブロードウェイの業界の人もたくさんいらっしゃいました。とにかく、会場はヤンヤヤンヤの大喝采でしたよ。観客の姿勢として「切符を買ったからには楽しまなきゃ」みたいな人がとても多いのはブロードウェイならではだと思いました。

ブロードウェイは社会的な作品も多いので、日本人から見ると、フィットするものが少ないときもあるんです。でも、質やレベルはものすごく高いですから、1年に一度は訪れて最新のショーを何本も一気に見ているのですが、残念ながら去年はそれが叶わなかった。近いうちにまた訪れたいですね。

■渡辺謙さんは偉業を成し遂げられたと思います

--来春は渡辺謙さんが「王様と私」で、再び、ブロードウェイの舞台に立たれる予定です。私個人としましては、石丸さんにも、いつか、ブロードウェイの舞台に立っていただきたいのですが。

いえいえ、私にとってブロードウェイは観劇に行く場所です。(笑)

--でも、もし、ワイルドホーンさんからオファーがあれば、出演されますよね(笑)?

いやいやいやいや…(一同笑)。とても魅力がある現場ですし、渡辺謙さんは本当に優れた役者さんで、偉業を成し遂げられたと思います。ブロードウェイに立つには、演じる役柄の人種にあてはまらないといけないんですよね。例えば、白人の役を東洋人が演じる訳にはいきませんから、オリエンタルの人種にはとても場が限られているんです。

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

■5月の「オーケストラコンサート」は夢のようで楽しみ

--石丸さんも昨年11月に「My Musical Life」というデビュー25周年記念ニューアルバムを発売されました。本当に題名通りのミュージカル人生を歩んでいらっしゃいますね。

あのタイトルは僕の発案なんです。劇団四季に入って、ミュージカルに触れることから自分の新しい人生が始まったので、それを形に残したいと思っていました。とくに、僕にとってご褒美だったのは、オーケストラと一緒にレコーディングできるというチャンスが巡ってきたことです。東京オペラシティのコンサートホールを借り、円光寺雅彦さんの指揮による、東京フィルハーモニー交響楽団の皆さんの演奏で、こんなチャンスは一生に一度なんじゃないかと思いました。

コンサートホールはオケの皆さんのホームグラウンドですから、皆さんは、どういう風に弾けば、どういう音が鳴るのかよく分かっていらっしゃる。オーケストラの現場で歌えたことは僕にとっても収穫でした。今年5月14日にオーチャードホールで「デビュー25周年記念オーケストラコンサート」として、円光寺さんと東京フィルハーモニー交響楽団の皆さんと一緒に舞台に立てるのが楽しみでもありますし、夢のようで、今からワクワクしています。

■オケやバンドと心を添わせて歌うことに命を懸けています

--石丸さんの歌声は、オーケストラの音色とよく調和されていて、本当に美しいです。

ありがとうございます。オケが鳴っていると、僕も楽器をやっていた人間ですから、調和しようという気持ちが芽生えるんですね。その上で、ソリストとして飛び出して歌おうとしています。アンサンブルする面白さというのは心地いいんです。ミュージカルをやっていても、オケやバンドのメンバーと一緒になって心を添わせて歌うということに命を懸けているんですよ(笑)。それが、5月のコンサートでできるので非常に楽しみです。

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

石丸幹二さん=撮影・橋本正人

■舞台や映像で自分がどこまでできるのか試してみたい

--石丸さんといえば、「ミュージカル界の貴公子」の代表ですが、テレビドラマ「半沢直樹」の悪役をきっかけに、映像でも演じる役の幅を広げられて大活躍されています。

舞台をご覧になっている方は「貴公子」と思って下さっていたんでしょうけれど(笑)、いい意味で、それを裏切りたかった。舞台の現場で裏切ることは「ジキル&ハイド」や、「エリザベート」のトート役で、できたと思っています。いわゆる正統派のトートではなく、皆がイヤだなと思うトートを作ろうとしていましたから、昔から兆しはあったんです(笑)。

これは自論ですが、綺麗も汚いも演じて役者だと思うんです。今、そういう幅の広い役を演じるチャンスがたくさん来ているので、舞台や映像で自分がどこまでできるのか試してみたいですね。50歳を節とするのなら、より自分らしく、枝が何本にも分かれてきている状況だと思います。(ジキル&ハイドの楽曲)まさしく「時が来た」という感じですね。

<プレゼント>
石丸幹二さんのサイン色紙を、アイデアニュース購読者3名に抽選でプレゼントします(月額300円の有料会員が対象となります)。応募締め切りは2016年1月15日(金)。当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。(このプレゼント募集は終了しました。ご応募くださったみなさま、ありがとうございました)

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