本物の鎧を製作している甲冑師、佐藤誠孝先生インタビュー

佐藤誠孝先生=撮影・狸爺

関西では1人しかいないといわれる甲冑師、佐藤誠孝(さとう・まさたか)先生の工房へ見学に行き、お話を伺ってきました…! 国内でも数える程しかいないと言われている「甲冑師」。作業場や製作途中のものなど、普段はなかなか見ることが出来ない工房の内側を紹介します。

インタビュー中の佐藤誠孝先生=撮影・狸爺

インタビュー中の佐藤誠孝先生=撮影・狸爺

「甲」は鎧、「冑」は兜を指し、これをつくる職人を「甲冑師」あるいは「鎧師」と呼ぶのだそうです。現代では殆ど見る事の出来ない、国内にも数える程しかいない貴重な職人です。5月人形(鎧)を製作している人形師とは異なり、本物の鎧の製作のみを手がけている、関西地方では1人しかいないといわれる貴重な甲冑師です。

■甲冑とは?

小札(こざね)・金具廻(かなぐまわり)金物(かなもの)・革所(かわどころ)威毛(おどしげ)と呼ばれる部位によって構成されています。甲冑師は漆芸、鉄工、彫金、革工、組紐などこれらを全て一人で仕上げていくのですが、これらの工芸技術を駆使しながら完成させるまでには、大変な忍耐力と年月、技術が必要になります。本物であれば一領(鎧の単位)製作するのに数年かかります。

鉄打ち出し=撮影・狸爺

鉄打ち出し=撮影・狸爺

頬当て。補修・補強なども手がけている=撮影・狸爺

頬当て。補修・補強なども手がけている=撮影・狸爺

■本物とレプリカの違い

残念ながら、現在私たちが時代祭りやイベントなどで目にすることのある甲冑は、殆どが業者製のレプリカです。イベント用に長時間着られるようにと材質も軽いもので作られています。(レプリカでも金属を使用してる場合はかなり重いですが…)値段は数百万単位〜です。本物は、博物館や神社仏閣の宝物館や個人の所蔵でないと見る事が出来ません。現代の甲冑師は、博物館などから依頼を受け、甲冑の修復や新たな製作、海外の富裕層に向けてマーケティングを展開しているので私たちが見る事は殆どありません。値段は数千万〜で、製作期間は3年〜6年程度かかるそうです。

筋兜=撮影・狸爺

筋兜=撮影・狸爺

■佐藤先生 Q&A

Q1.甲冑師になろうと思ったのはなぜ?

工芸の本のコラムでみた甲冑師の仕事に興味を持ち、博物館で本物を見て、長く残る仕事だと思いました。

Q2.これからの目標は?

オリジナルのデザインの甲冑の制作など。

Q3.今までに製作したもので一番印象に残ったものは?

生まれつき体の弱い同級生の息子の初節句の兜を作ったこと。本物と同じ作り方で1/3に縮尺して復元しました。

佐藤誠孝先生=撮影・狸爺

佐藤誠孝先生=撮影・狸爺

Q4.この仕事をしていてよかったと思うエピソードがあれば教えてください。

ボロボロの甲冑を手間をかけて修理して完成したときの充実感を得たとき。

資料を見ている佐藤誠孝先生=撮影・狸爺

資料を見ている佐藤誠孝先生=撮影・狸爺

説明を聞いているところ=撮影・狸爺

説明を聞いているところ=撮影・狸爺

着付け体験の一部。これはレプリカなので本物より軽いはずなのですが、着慣れていない私には重くて動きにくく、視界は悪いし耳は聞こえにくかったです。当時の武士は大変だなと感じました=撮影・狸爺

着付け体験の一部。これはレプリカなので本物より軽いはずなのですが、着慣れていない私には重くて動きにくく、視界は悪いし耳は聞こえにくかったです。当時の武士は大変だなと感じました=撮影・狸爺

<佐藤誠孝(さとう・まさたか)先生のプロフィール>
一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会評議員。鉄打ち出し、漆塗り、彫金、革工芸、仕立てなどの工程を一人で行う数少ない甲冑師。中世の大鎧から戦国偉大の当世具足まで幅広く、実物の調査による豊富な資料を所蔵。最先端の時代考証で製作している。 デアゴスティーニ「週刊 戦国甲冑をつくる」雛形製作と製作指揮担当。

<鎧甲冑製作所>
・URL http://www.yoroikatchu.com
・Twitter.@katchusi

<Lapisさんの今後の予定>

●与一くんお誕生会…4/30日(土)
栃木県大田原市で開催される「与一くんお誕生日会」。回を重ねるごとに盛り上がりを見せるイベントに密着取材してきます。ご当地キャラさんたちがたくさん集まります! 私もキャストとして出陣してきますので、遊びに来てくださいね!⇒詳しくはこちら

●第31回しものせき海峡まつり…5/2(月)、3(火・祝)、4(水)※源平祭りは3日(火)です。
源平最期の戦い、壇ノ浦の合戦を源氏と平家キャスト合わせて100人で再現します。源平両軍が実際に80隻あまりの船に乗ってパレードする姿は圧巻です。義経や弁慶、静御前、安徳天皇や二位尼などなど、有名な歴史人物をリアル平安絵巻で見る事が出来ます。是非ともお越し下さい! 私は平家軍の「平経盛(たいらのつねもり)」役で武者行列&船上パレードに出陣します!(※烏帽子キャラです)⇒詳しくはこちら

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  • 工房の中には何があるの?
  • 甲冑の着付け体験
  • インタビューを終えて
  • 先生が現在製作中の、新しい甲冑を少しだけ公開

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■工房の中には何があるの?

乾燥棚。漆を塗った部品などを乾燥させる為の棚。湿度や温度が管理されている=撮影・狸爺

乾燥棚。漆を塗った部品などを乾燥させる為の棚。湿度や温度が管理されている=撮影・狸爺

乾燥棚の中で乾燥させているものを見せてもらいました=撮影・狸爺

乾燥棚の中で乾燥させているものを見せてもらいました=撮影・狸爺

絵韋(えがわ)の模様が彫られた型紙=撮影・狸爺

絵韋(えがわ)の模様が彫られた型紙=撮影・狸爺

絹の平紐と絵韋。紐は職人の手で1から結うのだそうです=撮影・狸爺

絹の平紐と絵韋。紐は職人の手で1から結うのだそうです=撮影・狸爺

籠手の鎖。オークションなどで本物を落札、損傷が激しくてリサイクル出来そうにない場合は解体して部分だけ使用するそうです=撮影・狸爺

籠手の鎖。オークションなどで本物を落札、損傷が激しくてリサイクル出来そうにない場合は解体して部分だけ使用するそうです=撮影・狸爺

胴丸。先生が20代のときに製作した甲冑=撮影・狸爺

胴丸。先生が20代のときに製作した甲冑=撮影・狸爺

金具の彫刻。一つ一つ全て手作業でつくられる=撮影・狸爺

金具の彫刻。一つ一つ全て手作業でつくられる=撮影・狸爺

■甲冑の着付け体験

勉強の為に、先生が製作した甲冑を着させてもらいました。

試着。脛当、佩楯、籠手をつける=撮影・狸爺

試着。脛当、佩楯、籠手をつける=撮影・狸爺

甲冑を着る=撮影・狸爺

甲冑を着る=撮影・狸爺

右側で引き合わせて締めます=撮影・狸爺

右側で引き合わせて締めます=撮影・狸爺

完成。これはレプリカなので本物より軽いはずなのですが、着慣れていない私には重くて動きにくく、視界は悪いし耳は聞こえにくかったです。当時の武士は大変だなと感じました=撮影・狸爺

完成。これはレプリカなので本物より軽いはずなのですが、着慣れていない私には重くて動きにくく、視界は悪いし耳は聞こえにくかったです。当時の武士は大変だなと感じました=撮影・狸爺

頰当ては兜をかぶることで顎が固定され、より効果が発揮されます=撮影・狸爺

頰当ては兜をかぶることで顎が固定され、より効果が発揮されます=撮影・狸爺

■インタビューを終えて

「甲冑師」と言うと、口数が少なめで厳格な方が多いのかなと思っていましたが、先生はむしろ親しみやすく私のような知識の浅い人間に分かりやすいように解説してくださいました。何より優しい…!しかも、工房は大阪の中心地!山奥にひっそりと佇む庵で製作してるイメーイが強かったので何もかもが驚きの連続で新鮮でした。

現在では端午の節句シーズンぐらいにしか見かけなくなった甲冑ですが、古の時代は武士の命を守る為の大切なものでした。甲冑に身を包むということは、命がけで戦場へ赴くということ。「甲冑」と「死」は常に隣り合わせの関係で、そこには製作者の思いや武士の美学、決意などを垣間見ることが出来ます。だからこそ甲冑は奥深い。知れば知る程その魅力に引き寄せられていきます。私が本物を追いかけ続ける理由は、そこにあります。人形店や時代祭で見られるレプリカでは、独特の重みや皮の香り、草摺りが擦れる音など聞けません。安い値段で何でも手に入る便利な世の中になりましたが、本物の甲冑の魅力に気付いてしまうとそれでは満足出来ないのです。

今、本物を製作出来る「甲冑師」と呼ばれる職人は、確実にその数を減らしています。数少ない日本の伝統美を守る為にも、本物を伝えていく活動に力を入れていきたいと感じました。出版に向けての準備で多忙なスケジュールの合間にインタビュー取材に応じていただいた先生、本当にありがとうございました。

■最期に、先生が現在製作中の新しい甲冑を少しだけ公開したいと思います!

新作の兜。赤い雄牛の変わり兜=撮影・狸爺

新作の兜。赤い雄牛の変わり兜=撮影・狸爺

新作の胴。炎がデザインされた胴=撮影・狸爺

新作の胴。炎がデザインされた胴=撮影・狸爺

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