難治性てんかん患者に効果的な「ケトン食」の働き解明、新しい治療薬研究へ

脳内のエネルギー代謝過程図
脳内のエネルギー代謝過程図

脳内のエネルギー代謝過程図

てんかんは、脳が発する電気活動の過剰興奮を特徴とし、全人口の約 1%が罹患(りかん)しています。そして、その約 3 割は、既存のてんかん治療薬でコントロールできません。今、新しいてんかん治療薬が必要とされています。この治療薬が効かない難治性てんかん患者の一部に、ケトン食療法(*)が効果的であることが知られています。つまり、ケトン食療法には、既存の治療薬にはない効用があると想定されます。それが分かれば、新しい治療薬開発に繋がります。(PR Web 2015年4 月27日 プレスリリースより)

(*)ケトン食療法:抗てんかん作用を持つ食事療法の 1 つ。高脂肪、低炭水化物から構成される。

Tsuyoshi Inoue and his team examined neural cells in an artificial cerebrospinal fluid solution switched from glucose to ketones. When glucose was switched to ketones the cells became hyperpolarized – a change in the cell’s membrane potential that makes neurons less prone to becoming excited and active. 岡山大学の井上剛准教授の研究グループは、グルコースからケトンに切り換えた人工脳脊髄液の中の神経細胞を調べました。グルコースからケトンに変わった時、細胞は過分極化。細胞の膜電位が変化したことで、ニューロンは過剰な電気活動を行わなくなったのです。

The researchers further broke down the processes in the metabolism of glucose and identified a crucial enzyme ―lactate dehydrogenase (LDH). Blocking LDH mimicked the switch from glucose to ketones in vitro. Further in vivo tests on mice confirmed the effect. 研究グループはグルコースの代謝プロセスを分析、ある決定的な酵素を突き止めました。乳酸脱水素酵素(LDH)です。LDHを阻害することで、グルコースからケトンへの切り替えに似た働きが試験管内で見られました。マウスによる生体実験でも効果は確認されています。

その後、本研究グループは、乳酸脱水素酵素を阻害する化合物を探索。小児の難治性てんかんの治療薬として近年承認されたスチリペントールが、乳酸脱水素酵素の阻害剤であることを見出しました。さらに、スチリペントールの化学構造を変化させることで、より 強力な抗てんかん作用を示す乳酸脱水素酵素阻害剤も見出すことに成功しました。 以上の結果は、乳酸脱水素酵素を標的とし、スチリペントールの化学構造を変化させる ことで、ケトン食療法に基づくてんかん治療薬が開発可能であることを示しています。

☆アイデアニュース編集部より

この研究は、難治性といわれてきたてんかん患者にケトン食療法が効果を上げる理由を解明し、代謝を制御する分子がてんかん発作を抑制することを示しています。新しいてんかん治療薬を開発していく基礎となる研究で、患者とその家族には朗報と思い、とりあげました。

上記は英文のプレスリリースを翻訳したものです。山陽新聞のウェブサイトに掲載された記事はこちら http://iryo.sanyo.oni.co.jp/hosp/h/055/c2015032011194981

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA