障がい児家族と支援者のホッとステーション:NPO法人「そらしど」、元気に邁進中

2016年12月8日「そらしど」理事長藤尾さおりさん=撮影・松中みどり

2016年7月25日、NPO法人として歩み始めた新しい団体「そらしど」のパンフレットにはこう書かれています。

  • そらの向こうの希望に向かって
    どこにどんな子どもが生まれても
    愛され、受けとめられ、
    必要な支援が受けられる社会へ

長男のタケル君の発達に関して気がかりなことが出てきたのは、彼が1歳を過ぎたころだったと「そらしど」理事長の藤尾さおりさんは言います。泣かない、笑わない。目を合わせない。名前を呼んでも振り向かない。抱きしめる母の手をすり抜けてしまうわが子は、「やっぱり自閉症なんだろうか?」NPO法人「そらしど」は、そんな不安な気持ちに揺れたひとりの母親の、さおちゃんこと藤尾さおりさんが中心になって設立されました。まだ出来たてホヤホヤのNPOは、なぜ、どんな経緯で誕生したのか?何を目指しているのか、お話をきいてきました。

NPO法人「そらしど」理事長藤尾さおりさんと長男のタケルくん 写真=藤尾さん提供

NPO法人「そらしど」理事長藤尾さおりさんと長男のタケルくん 写真=藤尾さん提供

タケル君が1歳を過ぎる頃、名前を呼んでも無視され、差し出す手を払いのけられたさおちゃんは、傷ついて、ひとりでいると押しつぶされそうなくらい不安な気持ちになったそうです。助産師の彼女は教科書を引っ張り出し、息子が自閉症の項目に当てはまることを確認しても、「いやそんなはずはない」「明日には、“普通”になって、お母さんって言うかもしれない」と本を閉じたといいます。

そんな気持ちを救ってくれたのは、同じような思いを抱えながら子育てをしているお母さんとのおしゃべりでした。「うちの子もそう」「わかる」「そういうことある、ある」お母さんたちが集まって、話をしているだけで、気持ちが明るく楽になるのを感じたさおちゃん。あるお母さんの言葉をきっかけに、我が子の発達が気がかりな親同士がつながれる場所を作るべく、走り始めました。その言葉とは、「ひとりではできへん。こんな場所いるよね!」としみじみ心のうちを吐き出した切実なひと言でした。親が安心してしゃべれる場、気軽に情報交換ができる場、これから生まれてくる子どもともつながることが出来るような場。そんな場所づくりは、まず神戸市北区の子育てサークル「JAM:ジャム」として実現しました。

障害のある子だけでなく、「発達に気がかりのある」という枠組みの中で、サークル活動をしていることがJAMの大きな特長です。子どもの障害が分かりやすいものでなくても、まだなにも診断がついていなくても、誰でも参加できる場所。そこにやってくる親が楽になることが一番大事で、その子だけでなく兄弟姉妹もいきいきと、その子らしく生きていけるようにという願いを込めて立ち上げられ、16年も続いている活動です。当事者だけでなく、サポートをしたい人にも入ってもらい、行政や大学や企業ともよい関係を持てたと、さおちゃんは言います。「北区障害児放課後支援委員会」「夢を語る会」などJAMから発展した様々な活動をくりひろげながら、保護者としてさおちゃんたちには次のような不安が残っていました。

「将来、わが子はどうなるのか。親亡き後は、どうなるのか」

さおちゃんは、障害のある子の保護者として、究極の願いは「安心して死にたい」ということだと言います。誰かの介助がなければ生きて行くことが出来ない子どもを、安心して託すことができたら、どんなにいいだろう。そんな就職先や施設が社会にたくさんあって、自分がいなくなっても、子どもが必要な支援を受けられると分かっていれば、憂いなく順番通りに先に死ぬことが出来る……。子育てサークルを立ち上げた時には1歳半だったタケル君は、18歳になりました。活動をしっかりと周囲に認知してもらい、課題を解決していくために、“ずっと避けてきた”というNPO法人をいよいよ立ち上げることになったのです。アドバイスをしてくれる中間支援組織の助けを借りて、2016年2月初めにNPO設立を決意、クラウドファンディングに参加して法人化のスタートとなる映画上映会と講演会を6月に実施、7月25日に認証というスピードでした。「そらしど」設立の趣旨はこうです。

子どもの保護者は「障がいについて知らないこと」から始まり、「具体的にどうすればいいのか分からないこと」に悩み、「周りから分かってもらえないこと」に苦しみ、さらには「将来たとえば親亡き後わが子はどうなるのか」というところに至ることを実感しました。そんな親子が相談できる場所や窓口を作りたいと思っています。~NPO法人「そらしど」ホームページより

神戸新聞の記事 藤尾さんのFacebookより

神戸新聞の記事 藤尾さんのFacebookより

2016年12月8日、「そらしど」主催のワークショップに参加してきました。法人になってから、神戸市北区だけでなく様々な地域の人々をつないでいきたいと、ユニークなイベントを続けている「そらしど」の啓発活動の一環です。ネット社会になって、情報があふれるようになっても、まだまだ障害に対して社会的な認知や理解は十分ではありません。「そらしど」は、障害のことや医療のこと、福祉の制度を知ってもらうイベントを継続して開催しているのです。さおちゃんから、こんなお誘いの言葉がありました。

    • 保護者さんや子ども達の笑顔のために 子育て支援をしたい!障がい児者支援をしたい! もしくは、そういった支援を現在している!という方!
    • そういった活動をしたいけど、何から始めたらいいの? 何かしたいけど、私にできるの?
    • 運営ってどうしてるの?こんな時どうしてるの?などなど・・・
    • 一緒に立ち上げや運営についての、どうする?どうしてる?について、ざっくばらんにお話しませんか?
2016年12月8日「そらしど」ワークショップにて=撮影・松中みどり

2016年12月8日「そらしど」ワークショップにて=撮影・松中みどり

「そらしど」が紹介された新聞記事を見て、さおちゃんに相談の電話をかけてきた人がいて、急きょ開催となったこの日、「そらしど」のメンバーに加え、筆者のような外部参加者も含めた10名が集まりました。温かく、笑いの絶えない雰囲気の中、ひとりひとりが自己紹介をし、さおちゃんはこれまでの活動について立ち上げから今までを紹介。ワークショップ開催のきっかけになったSさん自身の状況もゆっくり聴かせていただきました。安心して話が出来る場の力を感じたひとときでした。

人と人、人と情報、人と施設、施設と施設をつなぎ、協力協働し合うことが大切だと、「そらしど」ホームページに書かれています。どこに行ったらいいのか、誰に話すのがいいのか分からないとき、「そらしど」という場所があり、さおちゃんやメンバーの皆さんがいることを知っていたら、心強いだろうなあと思いました。NPO法人となって、より多くの人に情報を届けたい、色々な人に場を提供したいと願ったさおちゃんたちの気持ちがSさんの最初の一歩を踏みだす勇気を引き出し、実を結んでいるところを拝見して、とても嬉しかった次第です。

Sさん自身も、3人のお子さんそれぞれに気がかりなことがありながら、そんな子育てをしている自分だからこそ同じ立場の親御さんに寄り添っていきたい。相談の受け皿として自分も場所を作りたいという気持ちを話されて、その志に圧倒されました。さおちゃんたちのこれまでやってきたことや学んできたことをシェアする言葉も、けっして押しつけがましくなく、同じ仲間へのエールという雰囲気で語られ、素直に腑に落ちました。思いを共有し、一緒に学び合って、夢を実現しよう!とワークショップは締めくくられました。

この日聴いた色々な話の中で、紹介したい言葉があります。以前、サークルの中であるお母さんが言った言葉だそうです。

「あなたの話をきかせてほしいと言われるような綺麗な声をあげている方がいい」

「どうしてわかってくれないの」、「もっとこうしてほしい」、「ここが足りない」と不平不満を口にして戦闘的になるより、真剣に謙虚に話をすることで、他の人を気持ちよく巻き込むことが出来る。さおちゃんたちの明るく、温かく、素直なキャラクターがよく出た言葉で素敵だと思いました。これからも「そらしど」は、誰もが耳を傾けたくなる綺麗な声で、世の中に必要な情報を発信していくのだろうと確信しています。不安も不満ももちろんあるけれど、仲間と一緒に一歩ずつ笑顔で解決していくお母さんたちを支えているのは、子どもたちなのです。さおちゃんのFacebookページに、ある日のこんな様子が描かれていました。

藤尾さおりさんのFacebookページより

藤尾さおりさんのFacebookページより

    • 泣けちゃう;;
    • 気づいたらよく携帯をタケに触られてしまって、
      いつも写真とかを削除されたりしてしまうのですが、
      今日もやられてしまってたわけです。毎度置いてる私もいけないですが^^;
    • 部屋に入って見つけて「あ゛!!」と怒りモードで叫んだら
      ひょえ~((><))とばかりに手渡すタケ。
    • 携帯を見ると写真のような文章が・・・
    • 胸がきゅんとなって、ガツンときて、泣けてきちゃいました;;
    • ごめんなさい。ありがとう。
    • タケは、なんにも言わないけど、なんでもお見通し☆
    • 心してがんばります!;;

脊椎損傷をおった義父の在宅介護を7年続けたことがきっかけで、このアイデアニュースにも、介護関連の記事を幾つか書いてきました。今回さおちゃんにゆっくりお話をきく機会を得て、自分より前の世代をみることは、例えどれほど重度の障害があったとしても、ずっと楽なことだったんだと改めて思いました。本当はそんな保証はないけれど、義父の方が先に天国に引っ越すのが順番だと思っていたから、遠い先を憂えたり、悩んだりはしなかった私です。
でも、誰かの介助が必要で、周囲の理解と支援が必要な子どもの将来を思うとき、今のままだと安心して先に天国に引っ越せないと感じる親や家族は、その子どもが丸ごと受け入れられ、自分らしく暮らせる社会でなければ、「安心して死ねない」。だからこそ、さおちゃんたちは、「そらしど」を立ち上げたのです。

  • 空の向こうの希望に向かって
    どこにどんな子どもが生まれても
    愛され、受けとめられ、
    必要な支援が受けられる社会へ
2016年12月8日「そらしど」理事長・藤尾さおりさん=撮影・松中みどり

2016年12月8日「そらしど」理事長・藤尾さおりさん=撮影・松中みどり

さおちゃんたち「そらしど」の素敵な皆さんのこれからに、希望の虹がかかっていますように。そして、いつか「そらしど」のような団体が要らなくなり、どこにどんな子どもが生まれても、その子がその子のありのままで愛され、大切にされ、十分に支援を受けられる社会が来ますようにと願ってやみません。

<関連サイト>
◆NPO法人 そらしどホームページ→  http://infosorasido.wixsite.com/nposorasido
◆NPO法人 そらしどFacebookページ → https://www.facebook.com/nposorasido/?fref=ts

<アイデアニュース関連記事>
アイデアニュースの介護・医療関連記事→ こちら

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、NPO法人「そらしど」理事長さおちゃんこと藤尾さおりさんが、どんな思いで活動を開始したのか、伊勢神宮での不思議な体験などを語ってくれたインタビューを掲載しています。

※ここから有料会員限定部分です。

■ドキュメンタリー映画「日本一しあわせな従業員をつくる!」上映会と講演会が、NPO法人化へのスタートを応援

――「そらしど」を立ち上げて、NPOを作るぞっていう「宣言」というかお披露目は、やっぱりあの映画上映?

そうだね。もう本当に「日本一しあわせな従業員をつくる!」の映画上映会やりたかった、柴田先生を呼びたかったの。こんなあったかい施設があったら、こんな素敵な会社がいっぱいあったら、もう安心して死ねる~って初上映の時にお手伝いして思ったのね。

この映画を見て、どんな子どもも、どんな障害があっても、安心して働ける就職先がたくさんあったらいいなあって思った。施設や支援をしてくれる人、私たちみたいな親、いろんな人がつながって、このホテルみたいなあったかいところを生み出せたらいいなあ。上映会と一緒に、柴田先生にも来てほしいなあって。泣きながら想いをお話したら、柴田先生が、「いろいろある!わし行ったるから!頑張れ!」って言ってくれて。お金なんか心配せんでいいって。それで、法人化はまだしていなかったんだけど、スタートの弾みをつける意味で、映画上映と柴田先生の講演会をさせてもらったの。

2016年6月12日「日本一しあわせな従業員をつくる!」上映会・柴田秋雄先生講演会=撮影・松中みどり

2016年6月12日「日本一しあわせな従業員をつくる!」上映会・柴田秋雄先生講演会=撮影・松中みどり

――さおちゃんはこれまで子育て支援のサークルも長い経験があって、そういうグループの良さも知っていたわけだけど、今回NPOってことにしたのはなぜ?

どこかで踏ん切りをつけないといけないとなあと思ってたんだけど、怖かったの。ずっとすごい怖かったの。表に出るのが怖い。出る杭は打たれるじゃないけど・・・私がしなくても誰かがやってくれるんじゃないかとかネガティブなこと思ったし。私に出来るの?とかね。何年くらい前かなあ、障害のある子のために、私は絶対やるって決めたのに、すごい怖かったのね。今までの自分とは違う変化をするから、「そんなことしちゃダメ~~!」みたいなサイレンが鳴ったのよ。

――警告音?

そう!警告音。そんなことしたら大変~~!みたいな。でも、なんかやらなくちゃいけない気がするって。でも何か分からないけど。

――その時はまだNPOを作ろうとは思ってなかったの?

そう、まだ何なのか分かってなかったけど、このままではダメ、障害児をとりまく社会とか、その親に関わる何かをするってずっと思ってて、でもサイレンが鳴って怖くって。無理、無理、無理って思って、でもまたふっと思いが湧く。そんなことを繰り返してね。そんなとき、自分が死ぬ時のことを考えたんです。臨終の時にね、「やって出来た!」自分か、「やって出来なかった」自分か、「やらなくて出来なかった」自分。その三択を考えて、そりゃ「やって出来た!」が一番いいけど、その次には「やったけど、がんばったけど出来なかった」自分の方がカッコいいよなって思って。その時期に“お白石持ち行事”に参加したんですよ。

――お白石?

そう。2013年の、お伊勢さんの式年遷宮行事でね、白い石を新しいお社に敷き詰める行事。それに声をかけてもらって、参加することになってね。白い石を白い布に載せて、普段は入れないところまで入って、持っていくの。あたし、何でここにいるんだろう、何しにここに来たんだろう。こんな貴重な経験をさせてもらっている意味をずっと考えていたときに、「石だよなあ」「石……あ、意思だ!意志だ!」って気がついてね。私はこれをやりますって、神様に言いに来たんだって思ったの。そしたら、「やるんかあ~~~!!!」って声が聞こえてきて、怖くって、そしたらまた「やるんかあ~~~!!!」って恐ろしい声で。

――怖い声なんだ?

そう。それはそれは恐ろしい、怖い、雷みたいな声でね。「はい~~!」ってこたえて。っていうか、「はい」しか言えないくらい恐ろしい声で。

――「はい」しか言えないんだ。「いいえ」は言えないんだね。

そうなの。それに、やっぱり自分がやりたいわけだしなあって。その問答が4~5回続いたかなあ。「やるんかあ~~~!!!」「はい~~!」。「やるんかあ~~~!!!」「はい~~!」って。その声がどんどん大きくなっていってね。そしたら最後にね、「あとは笑おうていけ」って言われて。もうなんか安心したのと感動で、半泣きになって石を持っていったの。うちのタケルとか、障害のある子どもたちの笑顔を守るために、私は何かをさせていただきます、で、また20年後に“出来ました”って、報告に来ますって。

――10年後?

20年後。次の式年遷宮で・・・

――ああ、もう一度白い石を持っていくのね。

そうそう。とりあえずその時に、20年間、何か分からないけど、「障害のある子どもたちとその家族のために私は本気でやります」って約束してきたの。でも、まだ何をやるかは分かってないまま、決意はそこでしたの。20年走ろうと思ったのね。その20年で何かをなそうと。その時に、引退が出来るくらいに。次の世代に伝えられるくらい。私の代では完結しないだろうし、ずっと引き継いでいかないといけないことだろうと思ったのね。どこにどんな子どもが生まれても愛され、受けとめられ、必要な支援が受けられる社会っていうのを作るのはね。同じ意思を持つ人を育てていけるくらい、この20年頑張ろうと思って。そのくらいの決意をしたのね。そういう話をいろんなところでしていたら、「あなたのやりたいことは、NPOですね」って言ってもらって。それが今年の1月。そこから法人化に向けて「どうしよう!やる??」ってすごい早い動きになったのね。

――映画上映と講演会のクラウドファンディングもやって、会の準備をして、NPO法人の設立準備もして、同時進行だったってことだね。

もうね、柴田先生も、「お金なんか気にせんでいい、言い値でいい」って言ってくださるけど、そういうわけにはいかないし。でも、50万円目標のクラウドファンディングも達成したし、映画上映も本当にたくさんの人が応援してくれてね。ありがたかった。NPOを応援する中間支援のNPOの人に教えてもらって、法人化の方もうまくいきました。

――やっぱりさおちゃんや、「そらしど」メンバーの人柄だと思うよ。応援したくなる雰囲気があると思う。新しい良い出会いがあるのは、そういう雰囲気があるからじゃないかな。

今まで北区だけで細々と、「来たい人おいで~」って感じだったんだけど、「そらしど」では神戸市内の他の区のこととか、他の団体さんとかとNPOさんと出会う機会が増えてね。神戸市のことも、まだまだ知らないことあるなあって思ってる。教えてくれる人や寄り添ってくれる人の存在がありがたいなあって思います。

――さおちゃんの息子さんのタケル君のことを少しきかせてもらってもいい?

はい。自閉症と知的障害があるのね。妊娠中は順調で、元気に助産所で生まれて、ただよく泣く子だった~!仕事の方が楽と思ったけど、まあ赤ちゃんはこんなもんと思ってた。笑ってたし。1歳くらいになってあんまり泣かないし笑わなくなって……

――逆に泣かなくなったの?

うん。抱っこしてもすり抜ける。感覚過敏があったから。今だから分かるんやけど、当時まったく分からなかったから、「絶対嫌われてる」って思ってた。抱っこしても逃げる。呼んでも振り向かない。1歳くらいって「お母さん大好き」の時期なのに、目も合わせてくれないし、これは嫌われてるって思ってたの。

――そんな風に思ったら悲しいよね。でも、他の人が呼んでも振り向かないわけでしょう?

そうなんだけど、でもね、CMは振り向くの!うまいこと出来てるんだね。テレビには笑うの。キャッキャッキャッキャ。だからね、本当に思ったんだけど、一時、「テレビばっかり見せてるからそうなる」っていう報道があったの。自閉症の子の全部がそうとは限らないけど、テレビのコマーシャルとか喜ぶのね。対ヒトとなると、どう出るか分からないから怖いとか、感覚過敏があるから、抱っこされたり触られたりはイヤなの。テレビだと、同じパターンを繰り返すから安心でしょ。触りもしないし。親としては、私と関わっても喜んでくれないし、笑ってくれない。テレビを見て喜んでるんだったら、笑ってくれるんだったら、そっちの方がいいかなって。だから、言われていることと逆で、テレビを見るからそうなるんじゃなくて、そういう子だからテレビを見せてるのね。笑ってて欲しいから。だから、すごく罪悪感もあった。テレビばっかり見せてることに対して。

――なにか人と違うなと思ったのは1歳くらい?

うん、そう。自閉症かもって思ったの。教科書を引っ張り出してきて、「違う、違う、違う、そんなはずはない」ってまた閉じたり。受け入れるのに時間かかった。親として受け入れられないプラス自閉症の子を病院でみてた。その時可愛いと思ってた。なのに、我が子となったらそうじゃない。私は親身になってなかったっていう気持ち。私って全然、看護師としてもダメだ、みたいな。

――真面目だなあ。いろんなところから矢が飛んでくるのね、かわいそうに、辛かったね。

今から思うと、その当時の私に「そんなことないよ、他人事だから出来ることっていっぱいあるからね」って言ってあげたい。当時はなんてひどい私・・・出産して初めて出産の大変さが分かってね。今まで私は、平気で妊婦さんに「分娩台行きますよ」って言ってた。ごめんなさいって出産の時思ってたの。色んな意味で落ち込んでた。

――「そらしど」の事業展開は今後どうですか?

障害児や障害のある人の理解を深める講演会を7月にやれたのね。見た目で分からない障害の子たちがつけられるそらしどオリジナルバッジを作りたい。町のお店に「そらしど」認定ステッカーを貼ってもらって、このお店は入りやすい素敵なお店ですよってお知らせしたい。「障害児のママたちが送るそらしどホッとステーション」を、Facebookで毎月一回放送しようと思ってるし、いろんなやりたいことがいっぱい。これから、きっと、「あ、これや!」っていう事業展開が出てくると思ってる。待ってるところです。

2016年12月8日「そらしど」理事長・藤尾さおりさんと筆者=撮影・松中みどり

2016年12月8日「そらしど」理事長・藤尾さおりさんと筆者=撮影・松中みどり

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