「ビリギャル」じゃないけど、短期間に成績を急上昇させた記憶法

ちまたでは、「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」という本がベストセラーになり、映画化もされていますが、私もそれほど勉強は得意な方ではありませんでした。ただ、中学時代に、ある方法を編み出してからは(汗)、受験に向けた記憶力だけは自信を持てるようになり、受験前に短期決戦で成績を急上昇させるという経験を繰り返してきました。今回は、その方法のご紹介です。

事前におことわりしておきますが、勉強法というのは人それぞれで、向き不向きがあり、私の方法が合っている人もいれば、合わない人もいると思いますので、あくまで参考にということで、ご了承ください。

私はどういうタイプかというと、「口と耳で覚える」のが得意なタイプでした。でもって「手で覚える」は全然だめでした。英単語などをノートに何度も書いていると、手が覚えるとよく言われますよね。私の手は、いくら書いても覚えてくれないのです。で、「見て覚える」もダメでした。どうやらビジュアル系には弱いらしいです。私の場合、とにかく「口と耳」。「しゃべって・聞いてなんぼ」です。

ただし、「聞く」記憶法といっても、英会話の教材などで良くある「市販の音」を聞き流すという方式はダメでした。自分で教科書や問題集を読んで、自分自身が先生や講師、もしくはDJになったつもりで読み上げて録音したコンテンツを作り、それをあらゆる機会に聞く、聞く、聞く。そうした勉強法でした。

私が愛用しているmp3レコーダ、後ろにあるのは数年前に勉強したXMLの教科書=撮影・橋本正人

私が愛用しているmp3レコーダ、後ろにあるのは数年前に勉強したXMLの教科書=撮影・橋本正人

私の学生時代は、「カセットテープ」が出だしたころで、ソニーの「ウオークマン」に、問題集で間違えたポイントなどを中心にどんどん録音しては、お風呂に入っている時も風呂の扉の外で流し、学校に通う行き返りの時も聞く、という感じでした。間違えたところを録音するというのも、ミソでした。覚えていることをさらに記憶する必要はありませんから、間違えたところだけを録音しておくのは当然ですよね。市販の教材だと、自分の得意な部分も録音されているので、それを聞くのはムダが多すぎるし、自分で理解して録音しようとしないから、理解できてないことを聞いてもダメという理屈でした。

私は、子供のころは故郷の徳島県鳴門市の公立中学に通っていて、中学2年生の時は、1学年400人くらいの生徒の中で成績は150番から200番ぐらい。だいたい真ん中でした。でも3年生になってから、この勉強法をはじめて、みるみる成績が上がり、3年生の最後には全校で4番になりました。1等賞はとれなかったのですが、おかげで徳島市内の進学校に合格することができました。

高校では、徳島市内の成績優秀な生徒や、県内各地から越境してきた生徒らが入る「進学クラス」のような特別な学級に入ったのですが、高校に進学してからはあまり勉強せず、もっぱら合唱部や新聞局などの勉強以外の活動に力を注いだこともあり、クラスではいつも後ろから5本の指に入る成績でした。でも、中学時代に成績が急上昇した記憶があるため、「本気でやったら東大ぐらい合格できる」と思っていたのですが、高校2年の終わりにあった「進路相談」で、自分では控えめにしたつもりで「地元の国立大学に進学したい」と先生に言うと、「ぜんぜん、まったく無理」という反応でした(汗)。

たしかに、高校受験と違って、大学受験となると、ちょっとやそっと頑張っても、そう成績は伸びないだろうということは自覚していました。ただ、その頃はインド独立の父、ガンディーの本を読んで感化され、弁護士になりたいと思うようになっていたので、司法試験の合格率の高い大学に進みたいと考えました。司法試験の合格者数を調べてみると、国公立なら東大か京大の法学部、私立なら早稲田か中央か立命館の法学部に進む必要があると思われました。ただ、私立専願にすると学費がかかります。家族に負担をかけるので申し訳ないのですが、姉が学費の安い国立大学に入っていたこともあり、私の「私立専願」を両親が許してくれ、方向性は決まりました。

それからは、ひたすら勉強ですが、やはり「自分で録音したテープ」がお友達です。寝ている時間以外は、ひたすらテープを吹き込み、そして聞きました。偏差値がいくつだったかは覚えていませんが、成績は急上昇し、第1志望だった早稲田の法学部には落ちましたが、第2志望の中央大学の法学部法律学科に合格しました。

今は見かけることが少なくなったカセットテープが使えるプレーヤー(右)。左はXMLの教科書、中央はmp3レコーダー=撮影・橋本正人

今は見かけることが少なくなったカセットテープが使えるプレーヤー(右)。左はXMLの教科書、中央はmp3レコーダー=撮影・橋本正人

大学を卒業して新聞社に就職してからは、「記憶」が必要な仕事はほとんどありませんでした。ただ、デジタル関係の仕事についた時に、せっかくだから資格をとっておこうと思って受験した「XMLマスター」という試験。これは、70点が合格ラインなのですが、デジタルに関する専門的知識がほとんどない状態で本を読んで自習し、教科書の「模擬試験」をやってみたら、なんと40点! 時間配分がうまくできていなかったという反省点はあるものの、このままではとても合格できないので、得意のテープ(この時はすでにmp3レコーダーの時代でしたが)に録音して必死で聞いたところ、受験の前日にもうひとつの「模擬試験」結果が60点に上昇。あと10点上乗せすれば合格だというので、当日は苦手な長文問題を捨てて戦略的な時間配分でのぞんだら、ギリギリの74点で合格しました(大汗)。

今は安価なmp3レコーダーなどが多く販売されているので、自分の声を録音して何度も聞くということは簡単にできると思います。この勉強法のミソは「聞く」ことよりも、「話す」ことで、「話す」ためには内容を理解していないとうまく話せないので、録音するために一生懸命理解しようとする作業が大事だということです。本や教科書を読んで、頑張って理解して、わからないところは人や先生に尋ねて理解して、その上で理解した内容を口に出して録音し、記憶する部分だけは耳に頼る。そうした方式が、私には合っていたということだと思います。

私の最近の趣味は声楽で、コンクールや発表会でイタリア語やフランス語の歌を歌ったりもしますが、イタリア語やフランス語の歌詞を覚える際にも、この「しゃべって聞いて覚える」記憶法は役立っています。言葉の意味を覚え、先生に教えてもらった発音の注意点も含めて、自分自身の声で歌詞の解説をmp3プレーヤーに吹き込み、通勤電車の中などでひたすら聞くわけです。数日繰り返せば、歌詞が頭の中に刷り込まれて、忘れられなくなります。

たいしたことはない記憶法で、長々と失礼しました。「これなら私もやっている」と思った人も多いのではないでしょうか。もし、私と同じように「話すことと聞くこと」が得意なお子さまで、まだ受験などに役立てていない方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、お試しくだされば幸いです。

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【有料会員向けおまけ】  大学時代は、司法試験に「映像系の記憶術」で挑んで惨敗。高校時代と同じ「音」方式で勉強すれば良かった。

弁護士目指して中央大学法学部法律学科に進学した私ですが、初めての大都会・東京は魅力に満ちていて、案の定、いつものように遊んでしまいました。

大学3年になってから猛勉強を始めたのですが、司法試験は2回受験して2回とも択一で不合格。このまま勉強を続けると、合格は30歳ぐらいになるなぁというのが実感としてわかり、司法試験をあきらめて新聞社に就職してから、29年間、記者を続けることになったわけです。

今にして思えば、なぜ司法試験の時も、それまでのように「テープ」を使って勉強しなかったのかと悔やまれます。大学3年生の時に「私はこの記憶術で司法試験に合格した」というノウハウを通販で購入して読んでところ、それは「街の構造や風景の中に記憶を埋め込む」という方法で、それはそれで斬新だったので「これだ!」と思って、頑張って司法試験の本の中の内容を、街の中の光景に埋め込もうとしたのです。

しかし、その記憶術でうまく行った人もいるのかもしれませんが、私は全然ダメでした。というか、私には「画像」で覚えるという能力は、まったくなかったのでした。そういえば、今でも人の顔と名前の記憶がなかなか一致しませんし、街の風景など、ぼんやりしか覚えられないのが私だったのです。

やはり、自分に合った方式が一番。でもって、私が得意なのは「話すことと聞くこと」。今になって、それが良く分かったというお話でした。

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