男子生徒だけで「宝塚歌劇」を演じる東海高校・中学の「カヅラカタ歌劇団」が、2017年10月7日、『1789 -バスティーユの恋人たち-』を上演しました。2016年の『エリザベート』に続いて、公演の様子を取材させていただくことができましたので、レポートします。
カヅラカタ歌劇団の公演を観るのは、2016年の『エリザベート』に続いて2度目ですが、キャストが発表になるまで一番ドキドキしたのは、ロナン役を誰がするのかということでした。昨年、エリザベートを見事に演じた鳥居留圭君は、今年が公演に出られる最終学年の高校2年生ということもあり、男役でセンターに立つ鳥居君の姿を最後にぜひ観たいと思いつつ、学校の部活動なので、さまざまな事情もあって、観客の期待とキャスティングは必ずしも一致するものではないだろうなと覚悟していました。
それが、期待どおり鳥居君のロナンが発表され、そして、鳥居君は期待を上回る男らしいアナンを見事に演じ、歌唱力と演技力とビジュアルとダンスで、私を含めた観客を魅了してくれました。お世辞でもなんでもなく、宝塚歌劇のロナンや、東宝のロナンと比べても、ひけをとらない、吸い込まれるような魅力にあふれたロナンだと思いました。
そして特筆しなければならないのは、ロナンの恋人となるオランプを演じた高校1年の矢木俊也君。昨年、中学3年生で『エリザベート』の少年ルドルフ役をつとめ、「これは口パクではないのか」と感じてしまうほどの完璧な歌唱で観客をうならせた矢木君が、これ以上ないというほどの、はまり役、オランプを演じ切りました。
矢木君の歌唱力が如何なく発揮されたのが、ロナンの死の直後にオランプが歌った「叫ぶ声」。宝塚や東宝では、ロナンの妹らが歌う曲ですが、これをロナンを失ったオランプが切々と歌うことで、よりわかりやすくなったと思いました。矢木君は、来年も公演に出ることができるので、楽しみです。
こちらは、カヅラカタ歌劇団『1789 -バスティーユの恋人たち-』公演本編のダイジェスト動画です。
こちらは、本編が終わったあとの、フィナーレの一部の動画です。昨年の『エリザベート』のダンスもすごいと思いましたが、今年はさらにパワーアップして、ロケット(ラインダンス)から黒燕尾、デュエット群舞、そして再び黒燕尾と続く群舞の流れが、パワフルで美しかったです。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、無料部分に書いた以外のテキスト全文と、公演の本編を撮影した写真21枚を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■マリー・アントワネットとフェルゼンの関係も、鮮明に
■ニヤリとアルトワ、迫力満点ペイロール、コミカル秘密警察
■名古屋工学院専門学校によるライトを使った場面転換が奏功
■登場人物の感情が伝わってくる点については、本物に負けていない
■「清く正しく美しく」、愛する人を大切にする、素晴らしい青年に
※こちらは公演最後の団員紹介の動画です(少々ピントが甘い部分がありますが、ご了承願います)。
<東海高校カヅラカタ歌劇団 第15期 秋の本公演>
『1789 -バスティーユの恋人たち-』
【愛知公演】2017年10月7日(土) 東海高校 講堂(この公演は終了しています)
<再演情報>
カヅラカタ歌劇団『1789 -バスティーユの恋人たち-』
2017年11月26日(日)開演13:20 東海高校講堂
地域別県民文化大祭典2017「ひがしオータムフェスティバル」の一環で。
詳しくは以下のページをご参照ください。
http://zuka08.blog121.fc2.com/blog-entry-267.html
<関連サイト>
東海高校カヅラカタ歌劇団
http://zuka08.blog121.fc2.com/
学校法人東海学園(東海中学校・東海高等学校)
http://www.tokai-jh.ed.jp/
名鶴ダンスカンパニー
http://www.nazuru.com/
名古屋工学院専門学校
http://www.denpa.ac.jp/
松枝衣裳店総本店
http://matsueda.co.jp/
河合塾 http://www.kawai-juku.ac.jp/
- 【動画】芝居の説得力とリアルな美しさ、カヅラカタ歌劇団『ポーの一族』 2022年10月14日
- 【動画】3組の愛をコミカルにドラマチックに、カヅラカタ歌劇団『CASANOVA』 2021年11月30日
- 【動画】全員の個性が輝く、カヅラカタ歌劇団『All for One』~ダルタニアンと太陽王~ 2020年10月14日
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、カヅラカタ歌劇団『1789 -バスティーユの恋人たち-』公演に関する記事の全文と、公演の本編を撮影した写真、15枚を掲載しています。また、この公演のスタッフ用オリジナルTシャツを、有料会員1名さまに抽選でプレゼントします。サイズはLサイズです。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは10月23日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
※ここから有料会員限定部分です。
■マリー・アントワネットとフェルゼンの関係も、鮮明に
絵内颯太君が演じたマリー・アントワネットと、阿部隼也君が演じたフェルゼンの関係も、とても鮮明に写りました。フェルゼンと、革命側3人組(デムーラン、ロベスピエール、ダントン)は、いずれもイケメン的に描かれるので、誰が誰だかわかりにくくなりがちですが、フェルゼン役の阿部君の、ふわりとした大きな金髪と西洋風のビジュアルが、いかにも貴族側といった優雅な雰囲気を漂わせており、小川航君(デムーラン)、門間大輔君(ロベスピエール)、近藤慎太朗君(ダントン)や、医師で記者のマラー役の荒木雅盛君らの、学生然とした生真面目な雰囲気と好対照で、物語の構造をわかりやすくする効果を生み出していました。
■ニヤリとアルトワ、迫力満点ペイロール、コミカル秘密警察
悪役のシャルル・アルトワを演じたのは、カヅラカタ歌劇団第15期団長の川上龍人君。昨年の『エリザベート』では、迫力ある歌声でフランツ・ヨーゼフを堂々と演じましたが、今年は悪役のシャルル・アルトワ役です。陽田祥平君が演じる気の弱い国王を操り、時にはニヤリと悪そうな笑みを浮かべながら、アルトワを見事に演じました。閉幕後の団員紹介では、自分を紹介する時に思わず声を詰まらせていましたが、団長として、これまでいろいろな苦労があったんだろうなと、ホロッときました。
コミカルな秘密警察を演じたのは、増田拓真君、山口隼矢君、伊東和真君の3人。コソコソ、チマチマした感じが、いい味を出しており、そのダメっぷりが舞台の清涼剤になっていました。
また、悪役としては、ムチを使ってロナンを痛めつけ、民衆への発砲を命じる貴族将校、ペイロールを演じた櫻井響君が光っていました。中学3年生とは思えない、響きのある太い声で、ソロのパートも朗々と歌い上げました。来年、そして再来年も楽しみです。
■名古屋工学院専門学校によるライトを使った場面転換が奏功
そして、今回、キャスティング以上に「どうするのだろうか」と思っていたのは、舞台装置。宮殿、印刷所、カフェ、地下など、刻々と変わる場面を、学校の講堂の舞台でどう表現するのか注目していましたが、複数枚ある幕と、さまざまな色や形の照明を巧みに使うことで違和感なく表現していました。色をつけたり、足元から照らしたりのさまざまなライトが、場面転換に効果的に使われており、担当した名古屋工学院専門学校の生徒さんたちに拍手を送りたいと思いました。
■登場人物の感情が伝わってくる点については、本家に負けていない
もちろん高校の部活動なので、宝塚歌劇団と比べると「ここはもう少し…」という点は多々あります。しかし、今回の舞台を観る限り、登場人物の感情が伝わってくるという点に関しては、本家に負けていないと感じました。もちろん、宝塚に比べて、男の子が男の役をするという有利さはありますが…。
■「清く正しく美しく」、愛する人を大切にする、素晴らしい青年に
東海高校は今年の大学入試で、国公立大学医学部の合格者数全国1位を10年連続で達成しました。カヅラカタ歌劇団のメンバーは、この超進学校の生徒なので、多くの人がこの国の未来を担ってゆく高い地位につかれる可能性があると思います。そんな男の子たちが、ぜひ『1789 -バスティーユの恋人たち-』の最後の場面で読み上げられるフランス人権宣言の自由と平等を大事にする大人になってくれるように、そして何よりも、「清く正しく美しく」、愛する人を大切にする、素晴らしい青年になって欲しいと思いました。
「カヅラカタ歌劇団『1789 -バスティーユの恋人たち-』公演」スタッフ用のオリジナルTシャツを、有料会員1名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは10月23日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。