宝塚歌劇花組シアター・ドラマシティ公演、ロマンス『蘭陵王(らんりょうおう)―美しすぎる武将―』が2018年11月20日(火)に、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕し、12月4日(火)からはKAAT神奈川芸術劇場で上演されます。蘭陵王は、6世紀の中国に実在した人物。武術にすぐれ、類まれなる美貌をもち、「兵士たちの士気が下がるのを恐れ、戦場では仮面をつけて戦った」という伝説で有名な武将です。この作品は、その美しさゆえに、過酷な運命に巻き込まれる蘭陵王の波瀾の人生をドラマティックに描いた作品。主演をつとめる専科の凪七瑠海(なぎな・るうみ)さんが、華やかな衣装に身をつつみ、堂々と、力強く、美しき武将を演じます。
舞台は1500年ほど前の中国、斉(北斉)と周(北周)が争っていた時代。雨にうたれ、一人うずくまっていた少年の美しさに目を奪われた村の長者は、彼に衣服や食べ物を与える代わりに、彼を自分のものにします。そんな少年の美しさに目を奪われ、より強いものが彼を奪い、同じことの繰り返しが続く日々。しかし、あるとき北斉軍に捕えられた少年は、行方知れずになっていた高家の王子、高長恭(こうちょうきょう)であることが判明します。高長恭は、強いものだけが生き残ることができると知り、武術の鍛錬に励み、初陣で皇太子の高緯(こうい)が率いる北斉軍を勝利に導き、「蘭陵」という領地を与えられて、「蘭陵王」と呼ばれることになります。
冒頭は、高長恭の少年時代。舞台の中央で小さくうずくまり、迷子になった子どものように不安な表情を浮かべて、心細そうな様子をみせる高長恭役の凪七さん。あどけなさの残る歌声を高い声で表現し、その心情がじんわりと胸に伝わってきました。そんな弱々しい存在の高長恭を演じていた凪七さんでしたが、成長して立派な武将となってからは、立ち振る舞いや歌声も堂々としたものになり、戦場では「軍神」と呼ばれるにふさわしい勇ましさと、男らしさが感じられる蘭陵王を熱演。普段はクールな役どころですが、そんな蘭陵王がふと笑みをこぼすシーンには、思わずキュンとしてしまいます。また、次々にかわる煌びやかな衣装がより美しさを際立てていて、伝説に残る蘭陵王の神々しい雰囲気を醸し出していました。
蘭陵王に下賜された美女の一人で、周の間者である洛妃(らくひ)役は、100期生の音くり寿(おと・くりす)さん。最初はおしとやかで、花が咲くように可愛らしく振舞う洛妃ですが、蘭陵王に間者であることを見抜かれてからは、芯の強い、しっかりとしている印象が強い女性に。洛妃は「寝首をかいてやる」と蘭陵王に豪語していたにも関わらず、一緒にいるうちに、次第に蘭陵王に心惹かれていきます。健気で、いじらしい、そんな洛妃が、音さんにぴったり。蘭陵王が別の女性と婚礼を挙げると聞き、自分の心の内にある複雑な心境を歌うシーンでは、胸がギュッと締め付けられるような切なさが伝わってきます。聴いていて惹きつけられるその美声は、透きとおっている水のような心地よさが感じられました。
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■「美しいものが大好き」とポップに歌う高緯役の瀬戸かずやが、かわいい
■高緯の寵愛を受ける逍遥君役の帆純まひろは、ミステリアスな美しさ
■蘭陵王に‟振られた”美女5人、着物をふわりと翻して、華やかに舞い歌う
■それぞれのキャラクターがすっと頭に入り、うっとり、すっきり、気持ちよく
<宝塚歌劇花組シアター・ドラマシティ公演、ロマンス『蘭陵王(らんりょうおう)―美しすぎる武将―』>
【大阪公演】2018年11月20日(火)~ 11月28日(水) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【神奈川公演】2018年12月4日(火)~ 12月10日(月) KAAT神奈川芸術劇場
<関連ページ>
宝塚歌劇団 『蘭陵王』のページ
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2018/ranryouou/
梅田芸術劇場 『蘭陵王』のページ
http://www.umegei.com/schedule/740/
KAAT神奈川芸術劇場 『蘭陵王』のページ
http://www.kaat.jp/detail?url=ranryouou
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■「美しいものが大好き」とポップに歌う高緯役の瀬戸かずやが、かわいい
重々しい時代劇の雰囲気が、突然、パッと明るくなるのは、「美しいものが大好き」と歌う皇太子・高緯(こうい)役の瀬戸かずや(せと・かずや)さんの登場シーンから。青や緑、ピンクの着物をひらりと翻し、かわいらしい雰囲気を漂わせながら、ポップなソロナンバーを歌い上げます。戦場に出ても、および腰で「痛い」「やめて」と叫びながら逃げ回る。瀬戸さんが演じる高緯は茶目っ気たっぷりで、どこか憎めないところがあり、とても魅力的なキャラクターでした。最初は美しい蘭陵王にまっすぐな好意を向けていますが、物語の後半で起こるある出来事をきっかけに、2人の関係性は変わってしまいます。それでも、心に秘めた蘭陵王への思いを吐露するシーンは、蘭陵王を思う洛妃とはまた違った切なさが垣間みえて、胸が熱くなりました。
■高緯の寵愛を受ける逍遥君役の帆純まひろは、ミステリアスな美しさ
北斉の重臣で、高緯からの寵愛を受ける逍遥君(しょうようくん)役を演じるのは、帆純まひろ(ほずみ・まひろ)さん。高緯のことを思う逍遥君は、洛陽城の戦いで武功をあげ、伝説になりつつある蘭陵王の活躍をよく思っていません。そんな逍遥君は、物語の展開に大きく関わっている人物の一人。背が高く、スタイルのよい帆純さんは舞台でも目立ち、高緯からの寵愛を受けるのも納得できる美しさと、品のよさが感じられます。蘭陵王とはまた違い、謎めいた、ミステリアスな雰囲気を醸し出す逍遥君の妖しげな美しさも素敵でした。
■蘭陵王に‟振られた”美女5人、着物をふわりと翻して、華やかに舞い歌う
高長恭には初陣の褒美として、「蘭陵」という領地が与えられて蘭陵王となり、20人の美女が与えられます。国中から集めた美女たちが一人ずつ自己紹介をしますが、どの娘を見ても首を縦に振らない蘭陵王。そんな様子を憎らしく思った美女たちの心情を歌うのは、勺妃(しゃくひ)役の美花梨乃(みはな・りの)さん、蘭妃(らんひ)役の若草萌香(わかくさ・もえか)さん、丹妃(たんひ)役の桜月のあ(おづき・のあ)さん、桃妃(とうひ)役の詩希すみれ(しき・すみれ)さん、桂妃(けいひ)役の美里玲菜(みさと・れいな)さんの5人。色とりどりの着物をふわりと翻して踊りながら歌うシーンは、見た目も華やか。5人の歌声がきれいに重なるハーモニーにも注目です。
■それぞれのキャラクターがすっと頭に入り、うっとり、すっきり、気持ちよく
観る前は「登場人物やその関係性を把握するのがむずかしそう」と感じていましたが、実際に舞台を観てみると、それぞれのキャラクターがすっと頭に入ってきて、とても分かりやすい物語でした。また、雅楽師、東儀秀樹さんが作曲したナンバーに合わせて踊るフィナーレもぜひ注目してみてほしいところの一つ。お揃いの衣装を身にまとい、凪七さんと音さんが息を合わせ、体をしなやかに動かして優美に舞い踊るシーンは、思わずうっとりとしてしまいます。観たあとは、すっきりとした気持ちよさが感じられる舞台だと思いました。