「子供たちの純粋さが、間違えると恐ろしい展開に」、南沢奈央インタビュー(下)

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

思春期の子供たちの “生” と “性” をテーマにした、KAAT神奈川芸術劇場の “近現代戯曲シリーズ” の第2弾、ジャン・コクトー原作の『恐るべき子供たち』が、2019年5月18日(土)~2019年6月2日(日)に、KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオで上演されます。エリザベート役の南沢奈央さんに、「かなりチャレンジな役」という役づくりについて、エリザベートの弟・ポール役の柾木玲弥さんとのエピソードについて、お話いただいたインタビューの後半です。

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

――エリザベートは、ある時から一転、「子供部屋」から「外」に出ようとしますね。モデルの仕事、そしてマイケルとの結婚と、急にポンポンっと。

そうなんですよ(笑)。あれはでも、弟への意地というか、姉ぶっている感じとか。

――度々ポールやジェラールにマウンティングかけるシーンがありましたね(笑)。

そうそう(笑)。「わたしがやんなきゃいけないのよ! あなたは何もできないでしょ!」っていう。だから、ちょっと試みてはいるんですよね。「外」に出ようっていう。でも、モデルの仕事がどうなったのかはわからないですけど、結婚は結局、思いがけない形でなくなってしまって、ただただ大きな城が残り(笑)。巨大な家で「子供たち」で、また暮らしていくっていう。

――結局、元の木阿弥になってしまうのですね。

外に出ようとしたけど、上手くいってない。でも結局、エリザベートも結構それを望んでたような気もするんですよね。

――エリザベートは自分たちの世界、「子供部屋」を頑なに守ろうとしますが、それでも、アガートやマイケル、「外」の人間を受け入れたりもしますね。そこは拒絶ではないところが少し意外で。寄る辺ない存在を受け入れる、そこに彼女の母性的な部分を感じるような、なかなかにエリザベートという少女は複雑で(笑)。

そうなんですよね(笑)。一筋縄でいかないです。マイケルとの会話も原作にはなくて、原作では、もっとあっさりとしていて、マイケルが死んでどう思ったのかも書かれていない。なので、あのシーンも結構幻想的で不思議なシーンで、そこを今、結構白井さんともお話していて、どうしていくか考えているところなんです。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、弟・ポール役の柾木玲弥さんについてのほか、映像、ラジオ、WEBなどのお仕事についても伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■「死」を子供たちがどう捉えているのかが重要、実は受け入れきれていないんです

■(弟役の柾木さんと)最初はお互い人見知り。今は、いじられても「なによ!」(笑)

■(映像、ラジオ、WEB…)切り替えるのに時間がかかります。でもどの仕事も本当に好き

■子供たちの純粋さや無垢が、方向を間違えて恐ろしい展開に。その変化を観て欲しい

<舞台『恐るべき子供たち』>
【神奈川公演】2019年5月18日(土)~2019年6月2日(日) KAAT神奈川芸術劇場
https://www.kaat.jp/d/osorubeki

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南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

※ここから有料会員限定部分です。

■「死」を子供たちがどう捉えているのかが重要、実は受け入れきれていないんです

最初の母の死もそうなんですけど、マイケルの死も、「死」を子供たちがどう捉えているのかっていうのが結構重要で、実は受け入れきれていないんです。だから「死んだけど、コレって何なんですか?」っていうテンションで、涙も流さないし、全然悲しい表情もしない。「え? コレなんか死んだみたいなんですけど、どういう意味なんですか?」みたいな、本当に事実を飲み込みきれていなくて、もうモヤモヤして消化できていない状態を作りたいっていうことになっているんです。

マイケルが死んだことも「悲しいわ」っていう台詞があるんですけど、「決して悲しい顔をしないでね」と白井さんからは言われているので「コレ、悲しいみたい。コレが悲しいんだ」みたいなテンションで。だから本当に「死」が、結構重要なシーンになってくるんです。マイケルの死も、あそこでなにかを「失う」ということが、どういうことなのかわからずに、 “またモヤモヤが増えました” となって、 “モヤモヤを抱えたまま生きていきます” っていう。それでなにか変な方向に歪んでいってしまうんですけど。

――そこから先は加速度的に、歪みが進む展開になっていきますね。前半の母親の死も「母が死にましたの」という台詞がもう、うすら寒いほど無感情に淡々と事実だけを述べていたのは、理解できていなかったからなのですね。

そうなんですよ。「死んだみたいです」みたいなテンションなんですよね。あれ難しいんですけど、何でしょうね、でも姉弟とも受け入れきれていなくて。ただ淡々と平然と言っていて。

――南沢さんのこれまで演じられた役の中では、エリザベートはかなり異色に思えるのですが、いかがでしょう?

いやー、なかったですね! わたし「アガート」タイプだよなー、って思っています(笑)。

――たしかに!(笑)。翻弄される側のイメージはありますね。

そうなんですよ。振り回される側だったんですけど、振り回す側っていうのは、なかなか。初めてですね、ここまで中心に立って、振り回して振り回して、人の運命も翻弄していってしまうっていう。かなりチャレンジな役ですね。

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

■(弟役の柾木さんと)最初はお互い人見知り。今は、いじられても「なによ!」(笑)

――いままでとは真逆の役なんですね。今はお稽古で試行錯誤の渦中と思いますが、千穐楽近くには、これがまた逆に快感になっていくのでは?(笑)。

そうかも!(笑)。なんかでも、すでに口が悪くなってきているって感じます(笑)。

――ひょっとして役に引きずられるタイプですか?

はい、なんか引きずられつつあります(笑)。稽古中の話なので全然いいんですけど、この間ふと出たアドリブが、結構普段言わないような…、「(低い声で)うるせぇな」みたいな(笑)。普段絶対言わないような言葉が出てきて、「アレっ?」っと思っちゃったんですよね(笑)。エリザベートになりつつあるのかなと思いながらも、ちょっとなんか、結構気が強くなってきてしまって(笑)。

――それは…!(笑)。役が日常にも影響しているのでしょうか。

なんかね、わかんないです。この間、初めてキャストで飲みに行ったんですけど、「(弟・ポール役の)柾木(玲弥)くんと、なんかずっと言い合いしてたよ」って言われて(笑)。

――ポールとエリザベート、そのまんまじゃないですか!(笑)。

そうなんですよね(笑)。なんか、柾木くんが本当にポールっぽくて、結構ちょっかいというか、いじってくるんですよね。なので、それにわたしも「なによ!」みたいに(笑)。「は? もっかい言ってみなさいよ!」みたいな。…最初はそんなことなかったんですけど(笑)。

――最初は丁寧な受け答えをしていらっしゃったんですね?(笑)。

そうなんです。でも、いい関係性ができてるなって。やっぱり、ポールに対しては、決して遠慮しちゃいけないので。言うときは言う、でも、ときどき母性を発揮して「ヨシヨシ」みたいなのもあるんですけど。

始めの頃、お互い人見知りだったので、結構距離があったんですよ。共演したこともあったのに(『お父さんは二度死ぬ』2013年 NHKBSプレミアム)、なんか全然話せなくて、芝居中に目を合わす程度で、それ以外は、ぜんぜん目を合わせないぐらい(笑)。なんか人見知りだったんですね、お互い。

――お互い人見知りだったなんて、いまお話いただいた “リアル姉弟” な様子からは、ものすごく意外な感じがします(笑)。

ね、そうなんですよ。でもだんだん、そういういい関係になって。

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

■(映像、ラジオ、WEB…)切り替えるのに時間がかかります。でもどの仕事も本当に好き

――南沢さんは、映像をメインに活躍の場を広げていらっしゃいますが、直近のお仕事では、舞台(『罪と罰』2019年)出演、ラジオ番組(『TOPPAN FUTURISM』J-WAVE)のナビゲーター、WEBでの連載(『南沢奈央の読書日記』Book Bang)、テレビ番組(『上方落語の会』NHK)レギュラー出演と、特に舞台以外のお仕事は、シナリオとは別に番組で取り扱うテーマや、お招きするゲストについての資料に目を通したり、紹介する本を探して読み込むなど、本番前の下準備に一定の時間を要するお仕事を複数お持ちです。時間の使い方はどうされているのでしょう?

いやぁ…舞台入ると、結構舞台が大幅を占めてしまうので、時間の使い方は結構難しいんですよね。決して上手くはない、かも。

――たとえば「今からこの仕事をやります」というときに、スイッチがパチンと、すんなりと切り替えられるのでしょうか?

いや、うーん…入らないです!(笑)。なかなか切り替えるのに時間かかりますね。でもどの仕事も結構本当に好きなので。本読むのも好きですし、落語も好きですし、ラジオみたいなのも好きだし、だからまぁ、ぜんぜん苦ではないんです。でも、本は移動中、稽古場に行く途中とかに読みますね。いまはようやく台詞もだいたい入ったので、本を読んだりとかしますけど、それでもふと、台詞のことを考えてしまったりもしますし…。

――先程、役がプライベートに影響するお話を伺いましたが、演じている役によって、たとえば読んだ本の捉え方が変わったりもするのでしょうか?

感想は変わらないかな(笑)。でも選ぶ本は変わりますね。役に影響されてというよりは、その舞台で本当に、…なんだろう、物語疲れっていうか。

――物語疲れ?

ストーリーとか、流れとか、心情とか、舞台のことばかり考えているので、だからできればもう、他の心情とか考えたくないという。もうエネルギーが残っていないので、小説を読む力が残っていないんです。なので、どちらかというと、実用書、新書とかを読んだりとかするんです。でも最近…そう言いつつも、読みましたね、小説(笑)。それもフランスの現代小説で、最近文庫化したのかな? でもそれは気分転換になったので、本当に没頭して読みました(笑)。

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

■子供たちの純粋さや無垢が、方向を間違えて恐ろしい展開に。その変化を観て欲しい

――最後に、作品をご覧になるお客さまへのメッセージをお願いします。

まずはエリザベートという役が、わたしにとっては結構挑戦なので、本当に「あれ? こんな一面があったんだ」って思ってもらえるぐらいに別人になりたいなと思いながら演じています。なので、そういう新しい役に挑戦するところを是非、みなさんに観ていただきたいですし、作品も、子供たちの純粋さとか、透明で無垢なところが、ちょっと方向を間違えると、なにか狂っていって恐ろしい展開になってしまうという、その子供たちの変化を観て欲しいです。

原作はフランスの近現代の作品ですが、でもそんなに国が違うとか、時代が違うというのを押し出している作品ではないので、ぜんぜん難しいと思わずに、自分の思春期とかを思い出してもらいながら観てもらえたら、楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。

――有難うございました。

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

南沢奈央さん=撮影・伊藤華織

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