「“即興音楽舞踏劇”とは、新しいジャンル」、『砂の城』池田純矢(上)

池田純矢さん=撮影・NORI

エン*ゲキ#06即興音楽舞踏劇『砂の城』が、2022年10月15日(土)から10月30日(日)まで、東京・紀伊國屋ホールで、2022年11月3日(木・祝)から11月13日(日)まで、大阪・ABC ホールで上演されます。本作は、役者・池田純矢さんが自身の脚本・演出・出演により《演劇とは娯楽であるべきだ》の理念の基、誰もが楽しめる王道エンターテインメントに特化した公演を上演するために作られた企画、「エン*ゲキ」シリーズの6作目です。テオ役の中山優馬さん、レオニダス役の岐洲匠さん、エウリデュケ役の夏川アサさん、アッタロス役の野島健児さん、ゲルギオス役の池田純矢さん、そしてアデル役の鈴木勝吾さん、さらにバルツァ役の升毅さんが出演します。

アイデアニュースでは、“即興音楽舞踏劇”と題し、即興で音楽を奏で、舞うという挑戦的で革新的な試みとなる本作で、作・演出・出演を務める池田純矢さんにインタビューしました。インタビューは、上下に分けてお届けします。「上」では、「即興音楽劇」というジャンルの着想の背景、中山さんとご自身の共通点だと思うこと、キャスティングに込められた想いなどについて伺った内容を紹介します。「下」では、『砂の城』は、ご自身のお話であるということ、池田さんが考える「芸術」のこと、30代を迎える節目に思うことなどについて伺った内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。

池田純矢さん=撮影・NORI
池田純矢さん=撮影・NORI

――公式のコメントでは「アドリブミュージカル」という言葉を使っていらっしゃいましたが、「即興音楽舞踏劇」とは、具体的にはどのようなものなのでしょう?

わかりやすく端的に表すなら「アドリブ・ミュージカル」なのですが、そもそも「ミュージカル」でもなければ「アドリブ」でもないんです。「では、なんぞや?」となりますが、本当に端的に言うならば、「演劇のニュージャンル」だと思ってください。ジャンルといえば、「ストレートプレイ」「ミュージカル」「音楽劇」「ロックオペラ」などがありますが、そこに新しく、今までになかった「即興音楽舞踏劇」というジャンルが加わると思っていただけたら。

――「即興音楽舞踏劇」を着想された原点、きっかけを教えてください。

発想の原点というところで言うと、主演の中山優馬くんとプライベートで2人で飲んで話していたときに出てきた案なんです。僕らは似ている部分が結構あって、この世界に入ったのが2006年で、同期なんです。当時、僕は14歳で優馬が12歳だから、子供と大人の狭間というか、「子役」と言うほど子供ではないけれど、全然大人でもない。その狭間の時期から、この芸能界という世界に、お互い16年身を置いてやってきて、ここまで生きてこれたのは、僕らの特性といいますか……「狙って90点を取れる」んですよ。

――お仕事で「狙って90点が取れる」ということですか?

例えば、ダンス、芝居、アクションなど、何でもある程度の理解と経験があればコンスタントに、常に90点を狙える。舞台でいうと、「再現性が高い芝居を、高クオリティでできる」ということです。これって一見、すごく良いことのように思うんですが、120点を出せる役者が当然ながら居るんですよ。

でもその人は日々0点だったりする。そういう俳優が、120点を出すのを、僕らはできないからすごく羨ましく見ていて。何故なら「0か100か」というぐらい全てを捨てないと、そういう表現にはたどり着けないからなんです。でも僕たちは、90点を下回るということ、イコール「淘汰される」世界で生きてきてしまったので、90点を下回ることは恐怖。お互いそこから一歩抜け出せないんです。「どうすれば90点を下回らずに、120点に到達できるんだろう」というところが元々のスタートなんです。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、中山さんとご自身の共通点だと思うこと、キャスティングに込められた想いなどについて伺った内容など、インタビュー前半の全文と写真を掲載しています。14日掲載予定のインタビュー「下」では、『砂の城』は、ご自身のお話であるということ、池田さんが考える「芸術」のこと、30代を迎える節目に思うこと、お客さまへのメッセージについて伺った内容など、インタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■一瞬も自分に戻ることなく存在することができたら、120点を叩き出せるのではと

■「絶対観に行くよ!」と言ってくださった升さんに、土下座で出演オファーを(笑)

■優馬と並べた時の美しさで岐洲くん。オーディションで、すごく気になった夏川さん

■「爆発をしなくてもいい俳優に」という意味合いを込めて、勝ちゃんにアデル役を

<エン*ゲキ#06即興音楽舞踏劇『砂の城』>
【東京公演】2022年10月15日(土)〜10月30日(日) 紀伊國屋ホール
【大阪公演】2022年11月3日(木・祝)〜11月13日(日) ABC ホール
公式サイト
https://enxgeki.com

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池田純矢さん=撮影・NORI
池田純矢さん=撮影・NORI

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■一瞬も自分に戻ることなく存在することができたら、120点を叩き出せるのではと

例えばミュージカルでは、作曲家・音楽家がこの「役」の表現をしようと思って作った音符の音があるので、そこに俳優がハマりにいってピッチを合わせて歌います。それはひとつの正解だとは思うんです。ただ、役を演じるときは、その役にハマりにいくのではなく、本来は「己でありながら、その “役” であるという状態を作る」のがベストではあるんです。そうなったときに、作家よりも、演出家よりも、俳優の方がその「役」を理解している瞬間が必ず訪れるんです。

――俳優がその「役」を一番理解している瞬間があるのですね。

これは、僕が作家と演出家と役者もやっているからこそわかるんですけど、自分が書いた1本の同じ本でも、演出のときに「あっ!」という発見があるんです。それに従って演出をするのですが、役者として入って感情を動かしてみたら全然違った、ということがよくあるんです。であれば、音楽もそうあるべきだと思うんですよ。俳優が一番「役」を理解しているのであれば、本当は俳優が作ったメロディを歌うべきなんです。

そう思ったときに「その場で作曲をして、メロディーを作って歌えて、かつ演奏とも合う」ということを、どうにかして成立させることができたら、「即興音楽劇」という新たなジャンルになる。さらにここに、やっぱり優馬も僕もダンスが好きで、いろんなところに憧れもあるので、歌って踊れる俳優が「役」の感情のまま演じながら、どこも途切れることなく「役」の一生を2時間キープしたままの状態で、一瞬も自分に戻ることなく存在することができたら、僕らの力で120点を叩き出せるんじゃないか、と。そういうことを考えて「即興音楽舞踏劇」というものを想像したんですけど、じゃあ果たしてそれはできるのか? 実現できるのか、再現性があるのか、そしてそれが売り物になるのか? ですよね。

池田純矢さん=撮影・NORI
池田純矢さん=撮影・NORI

■「絶対観に行くよ!」と言ってくださった升さんに、土下座で出演オファーを(笑)

――たしかにそうですね。

勝算なく挑むことはできないので「もしやるなら、勝算を持った上で “どうだ!” と名乗りを上げるための1本にしよう」と、優馬と話していたんです。そこからずっと考えて「こうやったらできるんじゃないかな」と思えるシステムを考えついたんですが、音楽家にも、プロデューサーにも、みんなに「馬鹿じゃないの? そんなもの見たことも聞いたこともない」と言われて(笑)。

でも見たことも聞いたこともないとしたら、やる価値はあるなと思いました。僕はそのシステムを思いついたときに、何でみんながやっていないのかがわからなかったんです。「何でここに思い至らない人がいるんだ? そんなことはない、考えたら絶対ここに思い至るはずなのに」って。だから「誰かやっているはずだ」と思ったんですが、探せど探せどやっている人が見つからなくて。だから「もしかしたら、初めてなのかもしれない」と思っているところです。

――まさに前人未踏の演劇ですね。「即興音楽舞踏劇」についてのキャストの皆さんの反応はいかがでしたか?

升毅さんに、キャスティングするという流れもなく、単純に飲みの場で「こういうことやろうと思ってるんですよ」と話したときに「絶対観に行くよ! 面白そうじゃん」って言ってくださったんです。そしていざキャスティングの段階になって、この「バルツァ」という役を「誰が演じれば一番良いのだろう」と考えたときに、ポンと「升さん!」と思って。また飲みに誘って土下座してお願いしたりしました(笑)。

――升毅さんがコメントで「ぜひ見てみたいと思っていたのですが、どうやら見ることは叶わないみたいです」と仰っていましたね(笑)。キャスティングはどのように決まっていったのでしょうか?

まず優馬があって、勝ちゃん(鈴木勝吾さん)、升さんでした。

池田純矢さん=撮影・NORI
池田純矢さん=撮影・NORI

■優馬と並べた時の美しさで岐洲くん。オーディションで、すごく気になった夏川さん

――「テオ」役の中山優馬さん、「レオニダス」役の岐洲匠さん、「エウリデュケ」役の夏川アサさんについて、キャスティングについてのエピソードや、何が決め手になったのかをお伺いしたいです。

優馬は、彼とやろうと決めたことなので、僕と2人でこの作品の発起人だと思っているので、今も一緒にやっているという感じです。「レオニダス」は一番最後まで決まらなくて。お芝居という面で言うと、勝ちゃんでもよかったのですが、でもやっぱり優馬と並べたときの自分の中のイメージが違ったので、岐洲くんみたいな人を探していたんです。優馬と並べたときの美しさというところを一番重点的に考えていたので、顔とスタイルで彼に決めたという感じですね。

「エウリデュケ」の夏川さんに関しては、今回はオーディションで決めました。オーディションを見て、一番歌がうまかったわけでもなく、一番踊りがうまかったわけでもなく、一番芝居がうまかったわけでもなく。じゃあ「エウリデュケ」というキャラクターにどハマりしているかというと、全然そうではなかったんですが、ただ「気になった」んですよ、ものすごく。

――何が「気になった」のでしょう?

なにかすごく「いきぐるしそう」だなと思ったんですよね。

――「いき」には、「息」と「生き」がありますね。

「息苦しい」もありつつ「生きづらそう」でもあり。もちろんすごく才能がある子だなと思ったんですが「すげぇデカいエンジン積んでるのに、まだ運転の仕方がわかっていないのかな」と。オーディションで見た中で、一番「いきぐるしそう」だなと思ったので、彼女が生き生きとしてる姿を見たいと思ったという感じですね。

池田純矢さん=撮影・NORI
池田純矢さん=撮影・NORI

■「爆発をしなくてもいい俳優に」という意味合いを込めて、勝ちゃんにアデル役を

――「エン*ゲキ」シリーズに鈴木勝吾さんが帰ってこられました。幼なじみの「エウリデュケ」を想う「アデル」役ですね。

勝ちゃんは『スター☆ピープルズ!!』(2017年)、『ザ・池田屋!』(2018年)という2作で主役をやってもらって、「20代の主役」としての「役」は、もう渡し終わったなと思ったので、大人の俳優になってほしいという意味を込めて『絶唱サロメ』(2019年)のときに、「ヘロデ・アンティパス王」という役を渡しました。実際あの役は、50代・60代の方が演じるような役だったんですが、僕は彼なら演じられると思ったので、「一歩大人になった鈴木勝吾を見たい」と思って、あの役を渡したんです。今回においては、彼が「爆発をしなくてもいい俳優になってほしい」という意味合いを込めて、この役をプレゼントした感じです(笑)。

――「爆発をしなくてもいい」とはどういうことでしょう?

やっぱり「鈴木勝吾」の魅力って、突き抜けた爆発力であったり、突貫力、突破力というか。その瞬間的な最大ボリュームが、彼のすごく魅力的な部分だと思うのですが、それをしなくても「いい俳優だね」と言われる俳優になってほしいんです。

池田純矢さん=撮影・NORI
池田純矢さん=撮影・NORI

※池田純矢さんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは11月13日(日)です(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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“「“即興音楽舞踏劇”とは、新しいジャンル」、『砂の城』池田純矢(上)” への 3 件のフィードバック

  1. 蒼月 より:

    ずっと前から応援している純矢くんの、覚悟を決めた1作、しかと見届けました

  2. ミナト より:

    エンゲキシリーズの最新作のインタビューありがとうございました。
    久しぶりの舞台です。舞台を見る感覚というものが薄くなってしまった現在、「生」の魅力を存分に見せてもらえると思うと楽しみでなりません。また、共演者の皆様を語る言葉に深い愛を感じられるような素敵なインタビューでした。最後になりましたが、こちらのお写真はいつも本当に最高としか言えず、今回もアンニュイなお顔とポーズの魅せ方に感謝です。いつもありがとうございます。

  3. そら より:

    池田さんのインタビューはいくら読んでも足りないぐらいなのでとてもありがたいです!舞台も初日にいきます。とても久しぶりの観劇なので、本番も楽しみにしています。

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