2017年7月に世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演として上演される『子午線の祀り』。『平家物語』を題材としたこの作品に九郎判官義経役で出演される成河さんへのインタビュー、後半です。
■リーディング公演の稽古に参加して、“山の高さ”を痛感
――公演は7月の上演で少し先ですが、もうお稽古に入られているのですか?
事前のリーディング公演(2016年10月 シアタートラム)には、僕は『エリザベート』名古屋公演中で出演出来なかったんですけど、稽古には何日間か参加させていただいて、そこでちょっと読ませていただいたりしました。勉強会のような雰囲気でもあって、みんなでちょっと考えてみようか、という開かれた場だったので。そこであの“山の高さ”を痛感しましたけどね(笑)。いや、やっぱり(古文は)読めないですよ。シェイクスピアを英語で音読した方がよっぽど読めます(笑)! 今の僕には同じぐらい距離がある言葉なので。ただ、まぁ、それならば、シェイクスピアであろうと、古文であろうと、勉強することは一緒なのかなと思っています。
■萬斎さんにどんな景色が見えているのか、すごく興味があります
――野村萬斎さんとは以前から交流がおありだったのですね。今回は初共演もされますが、演出家野村萬斎さんはいかがですか?
萬斎さんって、ご自身の様式というものから一度飛び出して、いろいろなことに挑戦されているじゃないですか。その中でご自分の様式というものをより強くしたり、探したりしてきていらっしゃる方だと思うので、僕が今持っている問題意識にとって、とても心強い先輩というか、これからたくさん教えていただきたいですね。萬斎さんにはどんな景色が見えているのか、ものすごく興味があります。
――そうですね。
いつも考えているんですけど、もちろん公演が成功して素晴らしい作品にならないと意味はないかもしれないけど、それ以前に、なんか…“それ”以上の“やる意味”ってあるような気がしているんですよね。
――公演の成功以外に?
公演の結果が成功であることはもちろん大切なことだと思います。商業的な成功だとかね、必要なものだと思うので。ただその…逆に言うと、その成功に自分にとっての意味が自分にとっての意味が見つけられなければ、どこか空しいと僕は思うんです。自分が携わった意味、自分にとっての意味っていうものを、僕はどうしても探してしまう性質(たち)なので。そういう意味では始まる前から、そうですね、今度の公演はとても大切な公演になるなぁという気がしています。
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■義経は「行為」が並べられるので、それを繋ぐ余地がたくさん残されている
■「本当は何考えてたの?本当は誰が友達ーっ?!」みたいな(笑)?
■自分の出来ることを120%、150%、いつもやりますから
■小難しい古典だと思って敬遠しないで。現代劇として、価値があるなぁと
<世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演『子午線の祀り』>
【東京公演】2017年7月1日(土)~23日(日) 世田谷パブリックシアター
【作】木下順二 【演出】野村萬斎 【音楽】武満徹 【出演】野村萬斎、成河、河原崎國太郎、今井朋彦、村田雄浩、若村麻由美ほか
<関連サイト>
『子午線の祀り』(世田谷パブリックシアター・ニュース) https://setagaya-pt.jp/news/201707shigosen_cast.html
成河・スタッフ オフィシャル Twitter https://twitter.com/tw_de_songha_sc
成河 オフィシャルブログ http://web-dorama.jugem.jp/
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■義経は「行為」が並べられるので、それを繋ぐ余地がたくさん残されている
――共演の皆さんとは、もう顔合わせされたのでしょうか?
全員ではないですけど、皆さん僕と一緒で、リーディング公演の稽古に少し参加されたり、そのままお出になられた方もいらっしゃいますし、そこで顔は合わせました。
――現時点(取材は3月中旬)で、役柄などの詳しいキャスティングは発表されていませんが…、成河さんは義経役ですか?
はい。義経をやらせていただきます。リーディングの稽古で(共演の)皆さんがそれぞれの役の台詞を読むのを聞いて、もうみんなその役以外考えられない位になっていますけど(笑)。今回の公演のようないろんな出自の方が集まった中に、僕みたいな若輩者を入れていただけるのは、ほんとに有り難いことですし、頑張らなければと思っています。
――オファーを受けられた前後で、義経のイメージに変化はありましたか?
受ける前ではなくて、この『子午線の祀り』という戯曲に触れる前と後という感じですね。やっぱり『子午線の祀り』で描かれている義経像というのは、それまで僕が持っていたものとは少し違いました。この戯曲の中の義経は、すごく余白を持って、点と点で描かれていたので。知盛は心情もなにも全部喋るんですけど、それに対して義経は行動というか、「行為」だけがバババッと並べられる。それをどう繋ぐかっていうのは、すごく余地がたくさん残されている。ほかの作品で、義経を主軸にしたものっていろいろあるじゃないですか。
■「本当は何考えてたの?本当は誰が友達ーっ?!」みたいな?(笑)
――日本人は「判官贔屓」で義経大好きですから(笑)。
そうなんですよね、やっぱり。でも初めて(戯曲を)読んだときの印象としては、そうですね……「敵(かたき)役」?(笑)。敵役のイメージありますよ、僕には。
――敵役! たしかに。
あれだけ心情をワーッと語っている知盛に対して、対照的な「敵役」としてバッと存在しているのが面白いし、かっこいいなぁと思いました。「敵役」ですよね(笑)! 敵役って僕はすごく大好きですし、観ている方にとっても一番残るというか。「あの人物は、あの時何を考えて、どうしてああいう行為に至ったのだろう?」っていうのが、謎であれば謎であるほど面白いし、それがずっと、こう、観た人の中に引っかかっていく役……だといいなぁと思ってます。もし義経が主軸でヒーローとして描かれていたら、たぶん全部お客さんと共有して一緒に進んでいくことになるんですけど、敵役の義経に抱く思いというのは、きっと観ている方も面白いんじゃないのかな? 僕は読んでいてそこが面白かったので。(義経は)「本当は何考えてたの? 本当は誰が友達ーっ?!」みたいな(笑)?
■自分の出来ることを120%、150%、いつもやりますから
――え?! 義経のお友達(笑)は、三郎義盛かなと思ってました。
いや、もちろんそうなんでしょうけど。ただその本心はというか、知盛が本当の本当の、心のうちをすべて喋るだけに、逆に義経の本心がすごく気になるんですよ。その(義経の)本心の部分というものが、なんというか、お客様に隠されれば隠されるほど素敵だなぁと思います。
――謎めいた敵役、みたいな。
ただ行為だけはハッキリしてます、ああいう時代ですしね。
――結構勇ましくワーッてやるシーンもありますね。
そうですね。声と身体に関しては、やっぱり「“在る”様式」を新しく入れなきゃいけないものもあるでしょうから。さぁ、ね、どうするんでしょうね?(笑)。ただまぁ、全力でやりますし、自分の出来ることを120%、150%、いつもやっていますから。結果がどうであろうと(笑)。そういう意味では変わらず、焦らず、いつも通り、120%、150%で暑苦しくやります、恥かいて(笑)。
■小難しい古典だと思って敬遠しないで。現代劇として、価値があるなぁと
――最後にご覧になる方へメッセージをお願いします。
『子午線の祀り』を観に来てくださるのは、どんな層のお客様なんでしょうか。僕は1981年生まれの36歳ですけど、この作品に触れてこなかったということを、とても…なんて言うんだろう、恥じました。なんというか…こんなすごい日本語があるなんて、と…、もっと早く知りたかったなと思いました。決して小難しい古典だと思って敬遠しないでいただきたいなと思っています。あくまでも現代劇として受け取れるように書かれていますし、表面的に難しいことは出てきますけれども、絶対にわかることばかりのはずなので。
――その場で生きてるのは人間であって、感情は多分共通のもので…
まさしくそうですね。こんな普遍的な世界は無いなと思います。何よりもその、日本語の余白の美しさを思い起こさせてくれるので、それだけでも本当に価値があるし、決して難しい作品ではないと思います。
――古典だからといって毛嫌いをしないで観に来てください、と。
これは現代劇として、価値があるなぁと思います。
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成河さんがご出演でなければ出会わなかった作品です。難しそうで心配だったのですが、成河さんの「ご覧になる方へメッセージ」を読んでとても安心しました。天魔王で春を満喫していますが夏も楽しみです。