福島県浪江町、被災犬と猫の私設シェルターに「ドッグラン」ができました

完成したドッグランを走る赤間さんのところのハスキー犬リアちゃん=撮影・松中みどり

2017年、11月13日から14日には、福島県双葉郡浪江町を訪れました。ここは福島第一原発20キロ圏内の町。震災直後から、浪江町の自宅やご自分の会社事務所などを使って、被災した動物の保護活動を続けている赤間徹さんに会いに行ったのです。今年3月31日、浪江町は帰還困難区域を除いて避難指示が解除されました。およそ2年ぶりに訪れた浪江町と、赤間徹さんのところの犬や猫たちの様子についてお伝えします。前回お訪ねしたときの様子は、こちらの記事:「ひとり行くぜ、東北」旅エッセイ(2)福島県浪江町、猫を愛する人々について⇒https://ideanews.jp/backup/archives/14646 でぜひお読みください。

猫たちの様子を見る赤間徹さん=撮影・松中みどり

猫たちの様子を見る赤間徹さん=撮影・松中みどり

――浪江町は今年の3月で、一部を除いて、避難指示が解除になりましたね。赤間さんのところもですか?

そうですね。3月31日に解除でした。避難先の郡山からは片道2時間くらいかかって、雪の時などは3時間以上もかかるから、今はここに泊まることも増えました。

――猫や犬はもちろんいるけど、赤間さんおひとりで泊まると食事はどうされるんですか。仮設のお店は早く閉まるし、夜は真っ暗ですよね。

真っ暗ですね。夜はほとんどコンビニのお弁当です。コンビニもまだ24時間は開いてないんですよ。夜は8時まで。避難指示が解除になっって、浪江町に帰ってきた人もいるんですよ。お店を再開したお寿司屋さんとか、年配の方で家に帰ってきた人とか。でも、周りにまだ何もないですからね。買い物するところもないし、お年寄りだと病院がないというのも困りますからね。診療所がひとつ、役場のところにあるだけだもの。まだ住むのはやはり難しいと、避難していたところにまた戻っていく人もいます。

完成したドッグランを走る赤間さんのところのハスキー犬リアちゃん=撮影・松中みどり

完成したドッグランを走る赤間さんのところのハスキー犬リアちゃん=撮影・松中みどり

■犬24匹と猫57匹が住む私設シェルター。ドッグランは9月に完成

――今回、ドッグランを拝見して驚きました。立派なのが出来ましたね! 若いハスキー犬もいて、散歩だけでは大変ですものね。

今年の9月に完成しました。犬を運動させるために作ったんです。大型犬はやっぱり走らせてやらないとね。犬は20匹以上いるので、散歩もなかなか大変です。実家の前の土地で、畑だったところに作りました。芝も自分たちで敷いたんです。

今も犬24匹、猫は57匹(2017年11月15日現在)が、赤間さんの私設シェルターに住んでいます。散歩、餌やり、掃除。TNR活動のT(Trap=捕獲)も担い、協力してくれる獣医さんのところにN(Neuter=不妊手術)にも連れて行き、飼い主のところに戻したり、新しい里親を見つけたりする一連の活動を続ける赤間さんもまた、震災と原発事故の後に暮らしが一変した人のひとりです。赤間さんの活動の様子は、昨年放送されたNNNのドキュメント番組「その哭き声が聞こえるか~避難区域の動物たち~」にも描かれています。 こちらのリンクで視聴できます。⇒http://www.dailymotion.com/video/x55m8hp

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分では、最近の町の様子や赤間さんのところにいる犬や猫を紹介しています。ボランティア希望の方や、里親になりたい方はぜひご覧ください。

<有料会員限定部分の小見出し>

■朝、宿の屋根から、ものすごい音が。お猿さんたちが屋根やその近くに

■シェルターにいる大型犬も、ドッグランなら全力疾走できます

■以前に比べて少し数が減ったとはいえ、57匹の猫の世話も大変な労力

■居住制限区域内だったシェルター。避難解除で電気料金を支払う必要が出てきた

■愛する犬や猫をバスに乗せられないと言われた住民とペットの姿が忘れられない

<関連リンク>

3.11レスキュー日誌 http://okomenokiwami.blog38.fc2.com/

赤間さんが記録し続けているブログです

赤間徹さん Facebookページ https://www.facebook.com/profile.php?id=100011606678610

赤間さんの活動に共感していただけましたら、物資やカンパの協力もどうぞよろしくお願いいたします。必要な物資については、赤間さんのブログやFacebookページを確認して、下記の住所までお送りください。義援金については、赤間さんのブログやFacebookページを通して連絡されるか、もしくは電話で、振込先の口座番号などをおききください。

〒979-1536 福島県双葉郡加倉字馬場内259-3 赤間徹 電話:090-5839-5453

※ここから有料会員限定部分です。

■朝、宿の屋根から、ものすごい音が。お猿さんたちが屋根やその近くに

これまで、何度か車で訪れた福島ですが、今回の訪問でドキドキしながら体験したのは、電車と代替バスと地元のタクシーを使っての移動です。JR常盤線の電車でいわきから富岡まで乗り、富岡駅から浪江まではJRの代替バスを利用。夕方4時54分着の電車から4時59分のバスに乗り換えるという時間のなさでした。駅にいた見知らぬ人に、「早くバスに乗らないと、出るよ~しばらく来ないよ~」と声をかけられ、あわてて乗車。一緒にバスに乗ったのはほんの数名で、「一部、帰還困難区域を通りますので窓は開けないようにお願いいたします」とアナウンスが入りました。

浪江から今夜の宿がある小高には再びJR常磐線に乗って一駅。小高駅に着くと、もう辺りは真っ暗で、次に乗り継いだ地元のタクシーは、あらかじめ平日に電話を入れての予約が必要でした。タクシーの運転手さんに「もし予約が出来ていなかったら、宿は歩いても行けたでしょうか?」と聞いたら、「歩けない距離ではありませんが、道は真っ暗ですし、野生動物がいるので避けた方がいいですね」とのことでした。

小高で泊まった宿の屋根の上を走り回る猿たち=撮影・松中みどり

小高で泊まった宿の屋根の上を走り回る猿たち=撮影・松中みどり

次の日の早朝、泊まった宿の屋根の上で、ものすごい音がして目が覚めました。例えるなら、屋根から梯子をかけて何か重たいものを転がして落としているような音。外に出てみると、数匹のお猿さんたちが宿の屋根やその近くにいました。大きな音は、猿たちのたてた音だったのです。

20匹ほどの犬を毎日散歩させるのです=撮影・松中みどり

20匹ほどの犬を毎日散歩させるのです=撮影・松中みどり

■シェルターにいる大型犬も、ドッグランなら全力疾走できます

その宿まで、赤間さんが車で迎えに来て下さって、筆者のたった半日のボランティアが始まりました。

犬の散歩をする筆者=撮影・赤間徹さん

犬の散歩をする筆者=撮影・赤間徹さん

まずは赤間さんのお家シェルターにいる犬たちの散歩から。紅葉とたくさんの柿が生っている散歩コースは、秋の終わりの美しい道でした。

お散歩が嬉しい赤間さんシェルターの犬=撮影・松中みどり

お散歩が嬉しい赤間さんシェルターの犬=撮影・松中みどり

お散歩が嬉しい赤間さんシェルターの犬=撮影・松中みどり

お散歩が嬉しい赤間さんシェルターの犬=撮影・松中みどり

犬たちは、もう一ヵ所、赤間さんの実家の近くにもいます。そこにドッグランがあたらしく出来たというわけです。

ドッグランを最も楽しみにしているハスキー犬のリアとロス=撮影・松中みどり

ドッグランを最も楽しみにしているハスキー犬のリアとロス=撮影・松中みどり

運動量が大きい大型犬も、ドッグランなら全力疾走ができますね。

ボール遊びが大好きなハスキーのリアちゃん=撮影・赤間徹さん

ボール遊びが大好きなハスキーのリアちゃん=撮影・赤間徹さん

今回、一緒に一番遊んでもらったリアちゃんとロスちゃんも、里親さん募集中なのです。

運動が足りて満足した表情=撮影・松中みどり

運動が足りて満足した表情=撮影・松中みどり

■以前に比べて少し数が減ったとはいえ、57匹の猫の世話も大変な労力

もちろん、猫のことも忘れてはいけません。

赤間さんのところには2017年11月現在57匹の猫がいます=撮影・松中みどり

赤間さんのところには2017年11月現在57匹の猫がいます=撮影・松中みどり

以前に比べて少し数が減ったとはいえ、57匹の猫の世話も大変な労力です。餌をやって、トイレ掃除をして、かまって欲しい子猫の面倒も見て、あっという間に時間が過ぎていきます。

赤間さんのところには2017年11月現在57匹の猫がいます=撮影・松中みどり

赤間さんのところには2017年11月現在57匹の猫がいます=撮影・松中みどり

■居住制限区域内だったシェルター。避難解除で電気料金を支払う必要が出てきた

――避難解除で、大きく変わったことはありますか?

これまでは、電気代と水道代は免除だったんだけど、今年の11月から電気代を払わないといけなくなったんだよね。水道は来年から。うちは井戸水だからそっちはいいんだけど。

――赤間さんのところの電気代は、免じておいてほしいです。被災した動物たちを面倒みているシェルターの電気代なんですから。

そうですね。でも、うちは東北電力に電気代払うんだよね。東京電力は、原発で作った電気を東京に送ってるんだから。

――あ、そうか。東北電力ですね……。それでもやっぱり何か理不尽な気がします。

猫たちの様子を見る赤間徹さん=撮影・松中みどり

猫たちの様子を見る赤間徹さん=撮影・松中みどり

今年の3月31日以降、浪江町に寝泊まりすることが出来るようになったとはいえ、赤間さんとご家族の「家」は、郡山にあります。赤間さんの私設シェルターは居住制限区域にあったため、電気代がこれまで免じられてきました。しかし、避難解除から半年、11月からは電気料金を支払う必要が出てきたのです。取り残された地元の犬や猫を見捨てておけずに、震災直後から保護活動を続けている赤間さん。

町から認められた活動ですが、助成金などが出ているわけではありません。生活基盤のある郡山の電気代に加えて、浪江町のシェルターの電気代も支払わないといけなくなれば、大きな負担がかかります。避難が解除になれば、すぐに懐かしい元の家に帰れるわけではありません。それぞれに事情があり、帰りたくてもすぐには帰れない人の方が多いのが現実。浪江町のホームページによると、5月31日現在、浪江町に居住しているのは165世帯・234人となっています。

■愛する犬や猫をバスに乗せられないと言われた住民とペットの姿が忘れられない

原発の事故後、連れて行くつもりだった愛するペットをバスに乗せることは出来ないと行政側に言われます。せっかく一緒に逃げてきた犬や猫を、手放さなければならなかった浪江町の住民の方々。訳も分からず置いていかれたペットたち。赤間さんはその姿が忘れられないから、この活動を続けているのです。

赤間さんのところの犬 こんな目をして見られると泣けてきます=撮影・松中みどり

赤間さんのところの犬 こんな目をして見られると泣けてきます=撮影・松中みどり

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