「腹に落とし込んで、初めて舞台に立てる」、矢崎広・橋本淳インタビュー(下)

矢崎広さんと橋本淳さん=撮影・岩村美佳

2018年4月6日に東京で開幕し、4月25日からは大阪で上演される舞台『PHOTOGRAPH 51』(フォトグラフ 51)に出演する矢崎広さんと橋本淳さんの対談インタビュー、後半です。有料部分では、舞台上の「居方」について、じっくり語っていただきました。

矢崎広さんと橋本淳さん=撮影・岩村美佳

矢崎広さんと橋本淳さん=撮影・岩村美佳

――お二人とも、「演劇が好き」という印象があるんですが、同世代の役者がたくさんいる中で、それぞれが選んできている道をどう感じていますか?

橋本:(矢崎)広は、やはり若手筆頭役者なんじゃないですか? バランスがすごい。翻訳作品もやるし、ミュージカルも、若手が集まるような作品も。枠にとらわれず、こんなにも色々なジャンルを飛び交っているのは、すごいんじゃないかなと思います。なかなか、やりきれる人もいないと思うんだよね。

矢崎:コントもやったし。

橋本:その選び方は、「この人なんなんだろうな」と思ったりします。大抵は偏るか、色々なことをやりすぎてあまり上手くいかないかのどっちかだと思うんですよ。そこを器用にやれるんだよね。そこが長所であり、魅力なんだろうと思います。この世代で、その立ち位置を取っているというのは、他にいないんじゃないかなと思います。

矢崎:でも、確かにレンジはパラメーター的にやっとできるようになった感覚。ミュージカルとストレートを分けたくないのですが、作品に挑むにあたって、何を準備したらいいか、作品のどこに比重を置くか、例えば、劇場の大きさによって、どうしたらいいかというルールが、やっと自分の中で決まってきて、役者の準備の仕方が分かってきた30歳だなと思いますし、それが分かったことは大きいです。訳も分からずにやっていた若いころは、ただ「苦」でしかなかったので。

――次はあっち、次はこっちと?

矢崎:それこそ、何でもやってしまうがゆえに。「何でもできちゃう」なんて、あんまり自分で言うのはどうかと思うけど(笑)。でも、何でもやらせて頂いたがゆえに、経験したがゆえに、一時期辛かったというか。いや、辛いじゃないな。そのときの自分は楽しんでいるんですよ。今回もそうなると思うのですが、粗はないか、やっていないことはないかなと自分で考えながら。

橋本:大丈夫だよ、粗があったって。

矢崎:そうなんだけどさ。

――逆に矢崎さんから、橋本さんを見て、いかかですか?

矢崎:あっちゃん(橋本)はね、共演後、出演しているお芝居を観にいって、羨ましい作品にたくさん出ているなと思います。それは、お客様が見てもそうですし、役者側から見ても、「よくあそこに入れるな」という作品。特にこの2年ぐらいがすごいなと思っていて、憧れるし、いいなと思うし、すごく意識する役者さんです。あっちゃんには言ってるんですが、舞台上の居方がすごいので。

橋本:言われてない(笑)。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、台詞がないまま舞台上にいる場合にどうするかなどについて語ってくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■矢崎:台詞ないままに舞台上にいる。そういうの、彼はお茶の子さいさい

■橋本:ゼロで舞台にいるのが本当に大変。でも、それを失うと新鮮じゃない

■矢崎:押されて、ふっとなる感じでいてはいけない。意味があって、いる

■橋本:時間と空間を買ってもらう仕事なので、値段以上のものを提示しないと

■矢崎:『PHOTOGRAPH 51』は今の時代に感じてもらえることが、たくさんある

■橋本:観る人によって見方や解釈が変わるような、おもしろい作品にしたい

<『PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ 51)』>
【東京公演】2018/4/6(金) ~ 2018/4/22(日) 東京芸術劇場シアターウエスト
【大阪公演】2018/4/25(水)~ 2018/4/26(木) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式ページ
http://www.umegei.com/schedule/667/
公演ツイッター
https://twitter.com/Photograph51_JP
Instagram
https://www.instagram.com/photograph51_jp/

<関連サイト>
矢崎広 オフィシャルページ
http://tristone.co.jp/actors/yazaki/
矢崎広 Twitter
https://twitter.com/hiroshi_yazaki
橋本淳 アミューズオフィシャルサイト
http://artist.amuse.co.jp/artist/hashimoto_atsushi/
橋本淳 オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/hashimoto-atsushi/
橋本淳 Twitter
https://twitter.com/tenpaorkusege

PHOTOGRAPH51 関連記事:

⇒すべて見る

矢崎広 関連記事:

⇒すべて見る

橋本淳 関連記事:

⇒すべて見る

※矢崎広さんと橋本淳さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは2月27日(火)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

矢崎広さんと橋本淳さん=撮影・岩村美佳

矢崎広さんと橋本淳さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■矢崎:台詞ないままに舞台上にいる。そういうの、彼はお茶の子さいさい

矢崎:舞台上にいられる人なので、そこは本当にすごいと思います。そこが色々な演出家さんから重宝される理由だと思います。ちゃんと1個1個の理由をつけられるし、その理由が全然的外れじゃない。そこはセンスですが、そのセンスもある。今回は、割と台詞ないままに、舞台上にいることもあるんです。そういうの、彼はお茶の子さいさいですから。

橋本:いやいや。

矢崎:本当にいれるから。

橋本:苦労するんだから~。

矢崎:「どうしてんの?」って聞いたことありますもん。

――聞かれたことは、覚えていますか?

矢崎:多分、楽屋で聞いた。

橋本:嘘?! 何て答えてた?

矢崎:『魔術』のとき。全然台詞がないまま、舞台上でずっと見ているというのが、あって、「あれはどうしてるの?」って。

――そのときの返答は?

矢崎:何て言ってたかな。

橋本:覚えてないじゃないかよ!

矢崎:「意外と人を見てない瞬間の方が多くてさ」って。

矢崎広さん=撮影・岩村美佳

矢崎広さん=撮影・岩村美佳

■橋本:ゼロで舞台にいるのが本当に大変。でも、それを失うと新鮮じゃない

――舞台上にいるけれど、例えば、相手の役者さんとかを見てないということですか?

矢崎:それで、多分教えてくれなかったんですよ(笑)。

橋本:なんでだろう。

矢崎:すっと、かわされたんですが。

橋本:結局、稽古中に試行錯誤して、自分が理解するまで解釈するんです。戯曲がお腹まで落ちていない状態で、頭の中でずっと考えながらやって、腹に落とし込んで、初めて舞台に立てると思うんですよ。ただ、何もしていない表現だけど、自分の中で決まって生きている状態が、多分ベストにいる、存在するということだと思うんです。そこまで突き詰めるのに、毎回、本当に血尿が出るんじゃないかというくらい大変なんです。

リラックスして、自分自身のゼロで舞台にいるというのが、本当に大変。でも、それを失うと新鮮じゃないですし、毎日生き物として舞台を作っていくという作業をやるんです。お金をもらっている仕事なので、そこができて初めて商品になるので、落とし込むのは大変です。でも、楽しい部分でもあるので、毎回意識しています。どうやっているのかは、あんまり分からない。

矢崎:単純に、「これだ」とは教えてくれなかったですが、結局、僕も行き着くところは同じですね。僕が考え始めたというか、何となくこうだろうなと思えたのは、やはり、そこを指摘してくださる役者さんが大変多かったので。

橋本淳さん=撮影・岩村美佳

橋本淳さん=撮影・岩村美佳

■矢崎:押されて、ふっとなる感じでいてはいけない。意味があって、ここにいる

――舞台でどういるんだとか、その目的とか?

矢崎:そこに辿りつきました。やはり、1個1個ちゃんと理由をもって。あっちゃんの言葉を借りると、「色々考えているけど、外から見ていると何もしていないように見える」ということ。でも、僕にはそこにいる理由があるから。

――でなければ、そこにいる必要がないですもんね。

矢崎:だから、地に足をつけろってことですよね。トンと押されて、ふっとなるような感じでいてはいけない。今、ここにいる意味があって、いる。

橋本:色々なやり方があるからね。テクニックだけで立とうとしても、少し嘘くさくなってしまうし。

――すごいですよね。血尿が出るくらいまで追い込むってことですよね。

矢崎:本当にそうです。例えば、「ハートがあれば」と言われても、「ハートだけじゃない」って(笑)。

――(笑)。

矢崎:「ハートがあれば」と言って、気持ちだけでそこにいるのは、自分なんだから。

橋本:そうだね。表現じゃないからね。

矢崎:演出家さんの目もあるし、今、何を効果的に見せたいかという作品全体の居方もあるし……というところを考えると、確かに血尿が出るな、と(笑)。

橋本:おもしろいんですけどね。

矢崎広さんと橋本淳さん=撮影・岩村美佳

矢崎広さんと橋本淳さん=撮影・岩村美佳

■橋本:時間と空間を買ってもらう仕事なので、値段以上のものを提示しないと

――「商品」という言葉が出たのは、すごくおもしろいなと思いました。もちろんお客さんはお金を払って観に行くから、そうなんですが。でも、演劇を買うもの売るものとして、観る側もやる側も、そこまで明確に意識している人って、どれくらいいるだろうかと。すごいなと思いました。

橋本:言葉的には、「商品」って雑かもしれないですけどね。でも、空間技術なので。時間と、空間をお客様が買う、買ってもらう仕事なので、値段以上のものを提示しないと、お客様は納得しない。特に、今回8,500円と高いので、毎回値段を考えるんです(笑)。

――ミュージカル観ている人からすると、安い方かも(笑)。でも、普段の演劇だと、4〜5,000円位が多いですもんね。

橋本:やはり、それに見合う価値をと考えます。来る道中の移動時間を含め、チケットを買って来るまでの日数などは、その人の目標、少しでも人生の糧になってしまうので、その期待値やこの作品に対して考えてくださる時間を無駄にさせないように、物作りをしっかりとして、楽しませるものをやれているかというのが、一番僕らが楽しい部分だと思います。無駄にはできない、大切だなと思いますね。

■矢崎:『PHOTOGRAPH 51』は今の時代に感じてもらえることが、たくさんある

■橋本:観る人によって見方や解釈が変わるような、おもしろい作品にしたい

――ありがとうございました。最後に楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。

矢崎:色々話しましたが、『PHOTOGRAPH 51』は今の時代だからこそ感じてもらえることが、たくさんある作品だなと思っています。少し硬そうな作品に見えなくもないですが、そういう気持ちがもしあるなら、そうは思わずに、ふらっと立ち寄る感覚で、楽しみに観て頂けたらと思います。この作品に出会って自分も、たくさん学ぶこともあると思います。色々なメッセージがたくさん詰まっている作品だと思いますし、もしかしたらお客様が観終わった後に、自分を見つめ直したり、色々感じて頂けるんじゃないかと。そういう作品だと思います。

橋本:本当に、少し難しい部分や、時代背景の部分があるんですが、とても人間くさいドラマや芝居になると思います。観る人によって見方や解釈が変わるような、おもしろい作品にしたいですし、なると思いますので、ぜひ、それを体験しに劇場へ足を運んで頂けたら幸いです。

※矢崎広さんと橋本淳さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは2月27日(火)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

Follow me!

“「腹に落とし込んで、初めて舞台に立てる」、矢崎広・橋本淳インタビュー(下)” への 5 件のフィードバック

  1. りん より:

    矢崎広さんの大ファンです。
    とても読み応えのある記事と素敵な写真ありがとうございます。
    PHOTOGRAPH51がますます楽しみになりました。

  2. miq より:

    間違いなくここ数年注目の、そして知的で技術もしっかりした舞台を観せてくださるお二人のインタビュー、読み応えがありました。
    共演される次の舞台も本当に楽しみです。

  3. すけさん より:

    橋本さんの作品に対する考え方に共感しました。
    矢崎さんとの久しぶりの共演も楽しみにしています。

  4. りん より:

    矢崎さん、橋本さんの演劇に対する考え方など興味深い話がたくさん聞けました。
    写真もとても素敵です。
    大好きなお二人の共演、とてもとても楽しみです。

  5. ぴろ より:

    矢崎さんと槁本さんの仲の良さが伝わってくるインタビューでした。作品は難しいところもありそうですが、楽しみになりました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA