すべてのいのちの幸せを願って 映画「大地の花咲き」上映へ(上)

大地の花咲き1アイキャッチ

北海道・洞爺湖にある「佐々木ファーム」では、畑仕事の前にスタッフが円陣を組み、大きな声を出して宣言します。「愛と喜びを循環するぞ!」 野菜は自分たちの言葉を聴いているから、「ありがとう」「おはよう」「元気か?」と声をかけて育てる。農薬も肥料も使わない。大地の力を信じる。野菜も、虫も、雑草も、仲間。そんな佐々木ファームの日々を追ったドキュメンタリー映画「大地の花咲き 洞爺・佐々木ファーム ”喜び”ですべてを繋ぐ」、ただいま編集中。初上映は物語の舞台である北海道、「札幌芸術の森」で8月22日(土)に公開されます。東京では「よみうりホール」で9月12日(土)、兵庫では「伊丹ホール」で9月21日(月・祝)に公開です。(アイデアニュースでは、この記事「上」で映画の内容について、記事「下」で映画の制作・配給についてお伝えします)

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

「大地の花咲き」
出演/佐々木ファームとその仲間たち
制作/E・Eプロジェクト(岩崎靖子/小野敬広)
配給/NPO法人ハートオブミラクル
時間/90分予定

みなさんは、「愛と喜びを循環するぞ」「野菜は生きているから、僕らの声を聴いている」「ありがとうって声をかけ続けたらごぼうの味が変わったんだよね」 という言葉を読んで、どう感じられるでしょうか。あり得ない?うさんくさい?それとも、がぜん興味がわいてきましたか?環境問題に関心が高く、国産の野菜や、無農薬のものを出来るだけ食べているという人は、きっと関心を持ってくれるでしょう。でも、筆者のように、忙しさにかまけてコンビニでサラダを買ったり、安い輸入野菜につい手が伸びたりする人だと、どうでしょう・・・「愛と喜び」ばっかりでは生きていけないし・・・と敬遠してしまうかもしれません。映画の予告編を見るまでは、実は筆者もそうでした。2015年6月27日、映画の初上映を手伝うスタッフミーティングが行われるというので、取材のために参加。そこで、まだ編集中の映画の30分バージョンの試写が行われました。そこで知ったのです。「愛と喜びを循環するぞ」という言葉は、想像したのとは全く違う、思いっきり人間くさい葛藤と、目がよく見えなくなるほどの涙の果てにたどり着いた言葉だった。30分バージョンですでに涙があふれ、佐々木ファームとそこで働く人たちのファンになってしまいました。

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

5年前から、農薬や肥料を使わず、野菜が自分の力で成長していく農法にチャレンジしている佐々木ファーム。草原のような畑では、草と一緒にのびのび育つキャベツが見つかります。

現社長の村上貴仁さんは、妻のさゆみさんの実家である佐々木ファームに夫婦で戻ってきて、農業を始めた人です。転職をして、農業を始めたばかりの頃は、「どんな人も食べない人はいないから、食べるものを作っていれば誰からも必要とされる職業につけるんだ」と夢と希望にあふれていたそうです。でも、出荷先の工場を見学して、自分たちの作ったレタスが洗われ、漂白されているのを見たり、大量に作った野菜が市場で余って、大量に破棄されたり焼却処分になっていたりするのを知って、大きな疑問を抱きます。

「農業ってこんなもんですか?もっと誇り高い職業じゃないんですか?」 理想に燃える若い貴仁さんと、近代農業を行う農家として経験を積んできた先代(さゆみさんのお父さん)とは、激しくぶつかりました。間にはさまって苦しむさゆみさん。畑を大事に思う気持ちは同じなのに、越えられない壁。ケンカが絶えず、家族はバラバラになりました。もう限界だと思ったある日のことです。

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

4歳の息子、大地くんが珍しく「疲れた」と言って早く寝てしまったその日も、家族でケンカをしていたのだそうです。その最中に大地くんのことが気になったさゆみさんが見に行くと・・・

「大地が息してない!」

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

悪夢のような時間のなかで、なぜだかわからないけれど、「愛とともに生きる」「愛とともに生きる」という言葉が頭の中でリフレインしていたさゆみさんです。天国にお引越ししてしまった大地くんを病院から連れて帰ってきたときも、集まっていた家族や親族の間にはわだかまりが残っていました。それを見たさゆみさんはたまらなくなります。「これを大地は見てたんだ。これを大地は望まなかったんだ」

さゆみさんはみんなを輪にして、手をつながせて言いました。「大地、これが見たかったんでしょ。みんなに仲良くしてほしかったんでしょ。これからはみんなが手をつないで仲良くやっていくからね、それが約束なんだよね」

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

みんながケンカをしていると、割って入ってみんなを笑わせたり、変な顔をしてふざけていた大地くん。この顔につられてみんなが思わずふきだして、和む。4歳の大地くんは、大好きなみんなに笑っていてほしかったのです。さゆみさんは思い出しました。天国にお引越しする1か月くらい前から、「大地が家族を守るから、大丈夫だよ、おかあちゃん」と大地くんが言っていたことを。みんなが寂しくないようにたくさんの絵を描いて壁に貼った大地くん。まだ字が書けないから紙に〇をいっぱい書いて「これはお金なんだよ、これを持ってたらお金に困らないから、大丈夫だからね」と”お金”を引き出しにいっぱい入れていた大地くん。

今、さゆみさんは確信しています。大地くんの一番の願いは「みんなが喜んで生きること。笑って、みんな仲良く生きること」

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

大地くんを失って1か月程泣き暮らし、あまりに涙を流したので、目がよく見えなくなっていたという貴仁さん。世界が色をなくして、なにもかもぼんやりとしたグレーに見えるようになっていたときに、貴仁さんは気が付きました。ひとつだけ見える色があることに。それは、緑色。外に立っている木の色。部屋の中の観葉植物の色。それだけがはっきり見えたのでした。

「ああ!生きてるからだ!いのちだから見えるんだ」 木々も、花も、自分たちが育てている野菜も生きてる。貴仁さんは、それが、自分がいのちを育てる職業についていることがはっきりと分かった瞬間だったと話します。

大地くんが天国にお引越してから5年後に、先代から社長の座を譲り受けた貴仁さん。そこから、野菜の力を信じる今の農法を始めます。自分は一貫して、いのちと一緒に生きていきたいと思ってると語る貴仁さんは、こう続けています。

「いのちを奪いたくないと最初は思ってたけど、いのちを奪うから薬を使えないっていうのも、なんかちょっと違うなって思ってたときに出てきたのが、”いのちと一緒に生きていきたい”だったんだよね。息子の大地の肉体は亡くしちゃったけど、この自分が立っている大地が、息子そのものだと思ったら、いのちに溢れてるなって。このいのちたちと生きていくために農業がやりたいって思えた」

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

佐々木ファームでは、規格に満たないサイズの野菜も、あきらめずに活躍の場を探します。捨てられるはずのいのちが、輝く場所を探すのです。野菜の外側の葉っぱや使わない部分は土に返し、来年の野菜のための栄養になってもらう。雑草も、種をつけて次の世代を残すまでいのちを全うしてもらいます。枯れて土に返ってくれることで、肥料は入れなくてもよくなるのです。虫も、草も、大事な仲間。循環しているのです。

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」の一場面より

肥料のような特別な栄養ももらわず、農薬で守ってもらわなくても、ちゃんと実をつける。花が咲き、種ができる。この自然界がずっとそうしてきたような循環。佐々木ファームは「永続可能型地球」の食部門担当だと、さゆみさんは言います。八方良しの、みんなが良くなるシステムじゃないとだめ。取り合う中に繁栄はないからと。

「愛と喜びを循環するぞ!」 映画を見た後で、この言葉は深く温かく胸にしみこんでいきます。大地に生きる仲間たちの言葉が素直に聞けるようになっていることに気が付きます。そうなったら、もうこの映画の初上映に行くしかありません。岩崎康子監督は今も撮影中。「初上映会ギリギリまで、佐々木ファームの笑顔も涙も撮り続けます」とのことですから、本編はますます素晴らしい映画になっているはずです。

そして、初上映会には村上貴仁・さゆみ夫妻が駆けつけてくれます。北海道から、収穫で忙しい時期に現役の農家のトップがふたり、やってくるのはどんなに大変なことかと岩崎靖子監督は話してくれました。「今までも、自分たちの思いを発信していきたいと思って頑張ってきたけれど、いち農家が発信できることには限界がある。映画を通してたくさんの皆さんに出会えるチャンスをいただいたと、だから初上映の日は必ず行きたいですと言ってくださっているんです。本当にありがたい!」

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」のチラシ:北海道版

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」のチラシ:北海道版

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」のチラシ 関東:関西版

ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」のチラシ 関東:関西版

アイデアニュースは、ドキュメンタリー映画「大地の花咲き」に協賛しています。9月21日(月・祝)の関西での上映会のチケットを読者の皆様にプレゼントいたします(このプレゼントの募集は終了し、当選者にチケットを発送しました)。ご応募くださったみなさま、ありがとうございました。

<読者の声(プレゼント応募から)>

佐々木ファームさんは、昨年、私が理事を務める「ふるさとイベント協議会」(http://www.npo-furusato.org/)が主催するふるさと田園フェスティバルに出店して下さいました。

こんにちは。去年の秋からタネ採りを目的に小さな畑で野菜作りを始めました。遺伝子組み替えでないタネ、から始まって、無農薬・無肥料栽培です。土もまだまだ出来ていないですが、野菜が一生懸命育とうとしています。映画のささきファームの方達と同じく私の出来ることは、野菜に声を掛けることと、力を信じることです。映画をとても観たいと思います。ありがとうございます。

早く観たいです。岩崎靖子監督の映画は、心がキレイになります。今回のテーマも興味があり、最新作楽しみです。

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「大地の花咲き」上映に関する詳しいお知らせはこちら
http://heartofmiracle.net/hotnews/hotnews0012015.html

佐々木ファームの公式ホームページはこちら
http://www.sasakifarm.net/index.html

5分バージョンの映画「大地の花咲き」予告編はこちらです。

スタッフミーティングの前には、編集中の映画の30分バージョン試写会をおこなっています。映画の内容を知って、ますますこの映画の成功に力を尽くしたいという気持ちになる・・・フルバージョンを早く見たくてたまらない・・・そんな感想が寄せられていました。8月8日(土)午後1時から、大阪市福島区民センターで30分パージョンの試写会が行われます。そのあとで関西のスタッフミーティングです。試写会だけでもけっこうですし、この映画を盛り上げる仲間になりたいという方はぜひ、足をお運びください。

詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.yonbunnoichi.net/saishinnews/014339.php

<この映画を配給している「ハートオブミラクル」については、アイデアニュースの記事「下」で、7月30日に詳しくお伝えします>

<アイデアニュース関連記事>

すべてのいのちの幸せを願って、映画「大地の花咲き」上映へ(上)
https://ideanews.jp/backup/archives/6829

「ハートオブミラクル」の挑戦、映画「大地の花咲き」上映へ(下) (この記事は7月30日に掲載します)
https://ideanews.jp/backup/archives/6745

【補足】

「大地の花咲き」の初上映会はいずれも大成功、感動の輪が広がっています。自主上映や各地の映画館でも上映されています。関西の方にはぜひ、下記シアターセブンで鑑賞してもらいたいと思い、補足情報です。

上映日程

10月24日(土)~10月30日(金) 午前10:00~11:39

10月31日(土)~11月6日(金) 午後2:30~4:09

11月7日(土)~11月13日(金) 午前10:00~11:39

シアターセブン上映スケジュール → http://www.theater-seven.com/2015/movie_daichi.html

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アイデアニュース有料会員向け【おまけ的小文】    映画上映会では佐々木ファームの美味しい野菜が販売されます(松中みどり)

映画上映会では、出演者である佐々木ファームの村上貴仁さん、さゆみさんも来られて佐々木ファームのお野菜を買うことが出来ます。何を持ってこられるかは、「大地と相談中」というわけなんですが、岩崎靖子監督におすすめをききました。

「なんでも美味しくて、ジャガイモなんかサツマイモなんじゃないかっていうくらい甘くて…でも、そうですね。私が好きなのはズッキーニ。めちゃめちゃ美味しい!」なんでも、甥御さんに食べさせたら、野菜なのにおやつみたいにパクパク食べて「おいちい、おいちい!」と連呼していたそうです。そして、みんなに圧倒的な人気があるのは人参。生で食べても甘いのです。一期一会のこの機会に佐々木ファームのお野菜をぜひお買い求めください。

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