KAAT神奈川芸術劇場芸術監督・白井晃さん演出×ノゾエ征爾さん上演台本による、思春期の子供たちの “生” と “性” をテーマにした、“近現代戯曲シリーズ” 最新作、ジャン・コクトー原作の中編小説を舞台化した『恐るべき子供たち』が、2019年5月18日(土)~2019年6月2日(日)に、KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオで上演されます。外の世界を知らずに成長し、姉弟ふたりの “王国” を守るために、周囲を翻弄する美しい姉、エリザベートを演じる南沢奈央さんに、作品についてお話を伺いました。
――『恐るべき子供たち』出演のお話が来たときのお気持ちはいかがでしたか?
まず、白井晃さんとお仕事をしたかったので、白井さん演出の作品に出られるというのが、すごく嬉しくて光栄だなと思いました。そして、作品が『恐るべき子供たち』、…まさか子供を演じることになるとは思わなかったんですけど(笑)、原作を読んでみたら面白くて! 文学的に面白いと思ったんです。なので、「これを舞台にして、具現化してしまって大丈夫なのかな? どう舞台化するんだろう?」って、そこが結構難しいところなのかなと思った部分だったんです。
だから、上演台本だった時点ではまだ見えていなかったんですけど、稽古が始まってみると、原作にあった抽象的な表現とかが、意外に舞台でも結構、抽象的にやれていたりして、「あぁ、こうやって形になっていくんだな」というのを、ちょっと面白いなと思いながら、いま稽古しています。
――上演台本を拝見すると、「これ、どうやって表現するのかな?」と思う箇所があったのですが、白井さんが演出されるので、きっと何かミラクルな(笑)、こちらが予想できない演出をされるのだろうという期待感があります。実際にお稽古に入られて、そのあたりはいかがですか?
そうですね、わたしも上演台本を読んだときに「ここ、どうするんだろう?」っていう表現がいっぱいあって(笑)。想像もつかなかった演出を、やっぱり白井さんがされるので、本当に魔法のように場面が変わって、気付いたら違う場所になってと、本当にそんな感じです。それも結構グラデーションがあって変化していくので、急に変わります! という感じではないんです。“いつの間にか、その場所に来ています” 、という感じで。
そういう展開をしていくので演じてても、こうやってシーンが繋がれて表現されていくんだなというのもすごく面白いし、「なんだかちょっと難しそうだな」という印象がある近現代の作品なんですけど、ノゾエ征爾さんの上演台本によって、原作の空気感は残っているんですけど、言葉もちょっと現代寄りになっているし、見ていても会話のテンポ感も自然で、多分きっと、観ている方もそんなに難しいと思わずに、スッと観られるようになっているんじゃないかなと思うんです。
――それほど難解な言い回しもありませんでしたね。姉弟の口喧嘩のシーンの台詞も、日常でよくある普通の姉弟喧嘩のようでした。
そうですね。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、白井晃さんの演出や、「危険なことに触れて、ちょっと快感を覚えてしまう」エリザベートという役について、ご自身とエリザベートとの共通点と違いなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。5月15日(水)掲載予定のインタビュー「下」では、弟・ポール役の柾木玲弥さんについてのほか、映像、ラジオ、WEBなどのお仕事についても伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■前半はすごいスピード感で進んで、後半は芝居場になって、間のあいだに心情、心証を表現
■(白井さんの演出は)楽しいです! いろいろ演ってみて、みんなの空気感で創っていく感じ
■エリザベートは、私、私、が結構多くて。自分とは違う部分、でも弟に対する思いは分かる
■「君は大人なんだから、頼りにしてるぞ」って言われて、「大人ってなによ!?」って
<舞台『恐るべき子供たち』>
【神奈川公演】2019年5月18日(土)~2019年6月2日(日) KAAT神奈川芸術劇場
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■前半はすごいスピード感で進んで、後半は芝居場になって、間のあいだに心情、心証を表現
――原作をお読みになって、文学的に面白いと感じられたのは、具体的にはどんなところでしょう?
「表現」ですね、言葉のチョイスというか。ただ “エリザベートという役” を説明するのにも、こんなにいろいろ言葉を尽くして表現してるんだなっていう(笑)。冒頭が雪合戦のシーンから始まるんですけど、雪合戦のことを「戦闘」と言ってみたり、雪合戦をやっている人を「戦闘員」と表現してみたり。やっぱりなにか、ただの「雪合戦」ではなくて、そこにちょっと意味を持たせる表現で描いているので、もちろん話も面白いんですけど、作品の空気感、描写が面白いなと思ったんですね。
――上演台本では、現代寄りの話し言葉になり、しかし作品の世界観は残っているということでしたが、原作での文学的な部分についても、作品の中で、なんらかの形で生かされるのでしょうか?
そうですね。前半は、ワーッてすごいスピード感で進んでいくんですけど、後半は急になにか芝居場になってきて、結構間を取ったり、間のあいだに心情、心証を表現するために、たとえばセットをちょっと動かしたりと、音楽で表現したりします。なので、後半は特にそういう抽象的というか、ハッキリは言っていないけど、音響だったり、照明とか、セットで表現していくというところがあります。
――直接的な表現はないけれど、演者の動きであったり、音楽、照明効果で客席になにかを感じ取ってもらう、という感じなのですね。
■(白井さんの演出は)楽しいです! いろいろ演ってみて、みんなの空気感で創っていく感じ
――実際に白井さんの演出を受けられていかがですか?
楽しいです! やっぱり、いろいろ試して試して、実験させてもらえるというか、「こっちで演ったらどうだろう? じゃあ、こっちで演ったらどうだろう?」って言いながら、「やっぱりこっちだね」って見つけていったりするんです。なので、白井さんも、決めつけて「こうでしょ」って、ガッチリ自分の考えだけで進めるのではなくて、いろいろ演ってみて、みんなの空気感で創っていく感じがあって。
――演者の持っている空気感を織り込みつつ、構築する感じで?
そうですね、あと、やっぱり本当に思いがけない演出もされますし。でも今はまだ、「いろいろ創ってきてください」って、こちらに託されている部分がある段階ですね。
――まずは演者の持っているものを引き出して。
引き出すためのヒントは、結構たくさんもらえますけど、結果は言わない! みたいな。でも本当にヒントはいろいろな角度からもらえるので実像が見えてくる、みたいな感じで。でも、そのヒントもすごくわかりやすいですし、実際、白井さんが本当に、急にエリザベートになって台詞を言ってみたりとか(笑)。
――おおっ!(笑)。
だから、すごいわかりやすい。あと、例えて言ってくれたりもするので、すごくイメージしやすいです。
――白井さんご自身も役者でいらっしゃるので、そこは役者同士の共通言語を駆使されるのでしょうね。
そうですね。
■エリザベートは、私、私、が結構多くて。自分とは違う部分、でも弟に対する思いは分かる
――お稽古に入って発見した、ご自身とエリザベートとの共通点と、逆に違いなどはありますか?
共通点は…まず、弟がいるっていう(笑)。だから弟に対するエリザベートの思いというのは分かります。思いは分かるけど、接し方は、実際はちょっと違うところはある、かな。…あんなに周りを翻弄させられないですね、わたしは。…と、思います!(笑)。
――なかなか周囲を振り回しますね、エリザベートは(笑)。
わたし自身は「わたしが!」って感じのタイプではないので。ただ、ノゾエさんの上演台本では、最初の方は特に印象づけるためかもしれないんですけど、エリザベートは「わたしが」、「わたしは」、という、私、私、が結構多くて。なのでそこを強調していたりして、それが結構キャラクターを現してるなと思うんです。なので、それは自分とは違う部分なんですけど、でも弟に対する思いは分かるなー、って思う部分はちょこちょこあります。
――エリザベートについて、ここは探っていかなきゃ、みたいなところはありますか?
万引きとかするんですけど、どんなテンションでやってるんだろうって(笑)。
――母親の看病をしたり、怪我をして帰ってきた弟の面倒をみたり、すごくいいお姉ちゃんだったのに(笑)。
最初、結構楽しんでやってたんですけど、ちょっと演出が変わってきて、白井さんからは「ただ楽しいだけじゃなくて、ちょっと危険なことに触れたい」と。「危険なことに触れて、ちょっと快感を覚えてしまう」っていう風に。やっぱり子供だから、ちょっと危険なあぶない遊びをしたい、っていう気持ちですね。
――駄目って言われたことほどやってみたくなるという、アレですね(笑)。
そうですね(笑)。あぶない遊びをやってみたくなる感じなんだというのを聞いて、「あ、そうか!」って、エリザベートの万引きするときのテンションを、ちょっとわかってきてはいるんです。なのでそういう、大人になると絶対しない、もうあぶないからやりませんというところを、子供だから、あぶないからこそちょっと興味を持っちゃう、っていう気持ちを、思い出さなきゃなって思っているところですね(笑)。
―― “大人になったらできること、できないこと、子供だからできること、できないこと” という歌も上演台本にありましたね。
あれはノゾエさんの書かれたものですね。どこから生まれてきたのか、ノゾエさん面白いなと思って。あれも歌になるのか、どうなるのかっていうのも、ちょっと見どころなんですけど。
――原作にはない歌なのですね。
原作にはないですね。上演台本にも、 “歌ってもいいし歌わなくてもいい” 、みたいに書いてあって(笑)。そうなんですよ、歌わないんですけど、出てきます、あの歌。
――結構重要な歌だったんですね…!
そうなんですよね。結構すごい突いたことを言っているというか、核心を突いたことを言っていて。
■「君は大人なんだから、頼りにしてるぞ」って言われて、「大人ってなによ!?」って
――エリザベートは、彼女の置かれた環境に、子供でいられる時間を奪わているような、「子供」としてはハードな立ち位置にいる少女ですね。
そうですね、十代後半、一応大きくなってきてはいるんですけど。お母さんの面倒をみて、お父さんは死んじゃってるし、結構すごい立場なんですね。「大人になれ」って、周りの環境はなっているけど、彼女は拒否している感じです。お母さんのお医者さんが来て、「君は大人なんだから、頼りにしてるぞ」って言われるんですけど、「大人ってなによ!?」っていう場面もあって、大人っていう一言で片づけられたくない! と。
でも、ちょうど年齢的には大人に移行していく頃ではあると思うんですよ、十代後半って。小学生とかじゃないから、本当に子供ってわけでもないし。でもその移行していって変わっていくのが、やっぱり受け入れられなくてというのが、本当に、まさに作品全体のテーマで、葛藤ですね。
――彼女が「子供部屋」に固執するのも…。
そうなんです。「子供部屋」とか「宝物箱」を持っていたりとか、やっぱり自分たちの世界を守りたい、みたいなものがあって。でも、「外」に出なさい、と言われると、ちょっと拒否してしまって。だからなかなか家から外へ、みたいな方向に行けない子達ですよね、結局。「行かなきゃいけないけど、行きたくない」みたいな葛藤の中にいる子供たちですね。
※南沢奈央さんのサイン入り写真1枚を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは6月14日(金)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。