関西でミュージカル上演「劇団Compass」結成から2年、横田裕久インタビュー(上)

横田裕久さん=撮影・中田ゆりな

【編集部追記】この公演は、3月公演が中止となり、振替公演を2020年7月18日(土)に予定し、既にチケットの振替えについてもご案内しておりましたが、その後の緊急事態宣言の発令や、この先のコロナウイルス感染症における事態収束の見込みが立たない状況であること、公演までの稽古の再開が困難であること等を検討した結果、中止となりました。チケットの払戻し対応につきましては公式サイトをご確認ください。

俳優・横田裕久さんが主宰する劇団Compassのミュージカル『ネズミはライオンにはなれない』が、2020年7月18日(土)に神戸ポートオアシス2階ホールで上演されます。脚本・演出を担当する横田裕久さんのインタビューです。(上)では劇団Compassを立ち上げたきっかけや子どものころのこと、(下)では公演内容や劇団への思いについてうかがいました。

横田裕久さん=撮影・中田ゆりな

横田裕久さん=撮影・中田ゆりな

ーーまず、劇団Compssを立ち上げたきっかけを教えてください。

もともと僕は愛知出身で高校演劇をやってきたんですが、プロを目指そうと思っても、現実的にはそういう環境がなくて。たまたま学生時代のおわりに、NPO法人コモンビートという団体が主催している市民参加型ミュージカルの関西公演に出ることになったんです。そのときに出会った人が神戸で「CafeBar&Gallery en+(エンタス)」という店を経営している方で、大学卒業後、その店で働くことになったんですね。実際飲食業をしながら舞台に出るというのはなかなか難しく、店のマスターに「何かやり方ないかな」と相談したところ、「じゃあ、うちのお店で創っちゃおうか」と(笑)。表現活動を通してプロの世界ではなく、自分主催で何かしてみようと、2009年に劇団Compassの前身である「en+伐娑羅-BaSaLa-」という団体を立ち上げました。そこで自分で脚本を書いたり、出演したりという経験を積みながら、自分も店で約10年働くなかで、改めて店の冠を掲げず、自分で劇団を創りたくて、2018年の4月に「劇団Compass」を立ち上げたんです。

ーーその間に、2年間ほどプロの俳優として活動されていた時期もありましたね。

そうですね。そのなかで、やはり食べていくには難しい世界だということを知りました。仕事になったからといって、生活していけるわけではない。であれば、自分が今までやってきたことで、もしかしたらできることがあるかもしれないと思い、劇団Compassを立ち上げました。ありがたいことに、すごくたくさんの方に応援していただける環境がそこまでにできていたので、そうやって応援してもらえる方がたくさんいて、公演に人が呼べるのであれば、自分で立ち上げたほうが早いのではないかなと思ったんです。改めて劇団Compassとして何をしていくかということは、信頼のおける10人にスタッフとして声をかけ一つずつ決めていきました。話し合いのなかで、コンセプトを「Spotlight one’s identity」と定め、何か本業を持っている人たちが表現活動を通じて、仕事と同じぐらいの熱量で力を発揮しながら、表現を楽しむということをしてみようと。あとは、もちろんクオリティーとしても高いものを目指していくんですが、そこに特化するわけではなく、日々を一生懸命生きてる人たちの良さが活きるような舞台作りをしていこうと方向性を決めました。

ーー「出演者の良さが生きる舞台作り」ですか。

作っていく側も、その良さが活かせる脚本、演出、歌、ダンスを考え、スキルに特化するのではなく、それぞれの個性が輝くようにするためにはどうしたらいいかというのを一人ひとりに歩み寄りながら、寄り添いながら作っていくという形でやっています。どうしても表現の世界には、否定するというか、できないとだめ、みたいな評価基準があるところもありますが、そう言われ続けてしまうと、人間ってなかなか本来の力を発揮できないのかなと思っていて。頭ごなしの言い方ではなく、ちゃんと本人たちがやる気を持って取り組めるという環境がつくれたら、きちんと届くものがつくれるんじゃないかなと思っています。劇団Compassの「Compass」は、羅針盤。自分の魂がどこに向かっていきたいかというのを選ぶのは自分なんだから、どこに向かっていくかという方位磁針を自分がきちんと見つけれたら、もっと自由に自分の思いどおりに動いていけるという想いを込めて「Compass」という名前をつけました。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、劇団のメンバーや活動について、子どものころのことなどインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。3月10日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、公演内容や劇団への思いなどインタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■ミュージカルというものを劇団の活動を通してより身近に感じてもらえるように

■その人の夢をかなえる、みたいなことができたらいいなと

■表現に関わるベースは母が作ってくれた

■決めたらそれこそ直感でパンって動くタイプ

<ミュージカル『ネズミはライオンにはなれない』>
【兵庫公演】2020年7月18日(土) 神戸ポートオアシス 2階ホール
※この公演は2020年3月20日から3月21日まで上演が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症対策における神戸市の対応方針に基づいて中止となり、7月18日(土)に振替公演が実施されることになりました。当日は昼夜2回公演を予定しているとのことですが、詳しくは公式ページでご確認ください。
劇団Compass公式サイト
https://troupecompass.com/

<関連リンク>
劇団Compass Instagram
https://www.instagram.com/troupe.compass/
横田裕久 Twitter
https://twitter.com/compass_hiro
横田裕久 Instagram
https://www.instagram.com/hirohisa1126compass/

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※横田裕久さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは4月9日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)(有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

劇団Compass稽古場より=撮影・中田ゆりな

劇団Compass稽古場より=撮影・中田ゆりな

※ここから有料会員限定部分です。

■ミュージカルというものを劇団の活動を通してより身近に感じてもらえるように

ーーInstagramの劇団員の紹介などを見ていると、本当に出身地も職種もいろいろな方が参加されていますよね。

参加者は営業マンや事務員などの会社員をはじめ、子育て中の主婦の方、そのお子さんなど、さまざまです。どうしても表現の世界は、結婚して子どもができると子ども優先になってしまい、諦めてしまう主婦の方も多いと思いますが、うちの劇団では、お子さんが来ても大丈夫な環境を整えています。前回は、保育士さんをつけて託児所付きの稽古場としてずっとやっていましたが、今期は保育士さんの確保が大変だったこともあり、仲間うちで見てみることになりました。手の空いてる劇団員たちが子どもの面倒を見ながら、たまには周りの人に助けてもらいながら、子どもがいてもお母さんはお母さんできちんと稽古に集中できる環境を作っています。「できない」という理由に逆に着目して、それを「できる」に変えられる方法さえ見つければ、どんな人でも表現は楽しめるのかなと思うんです。自分が勝手に思い込んでいる既成概念、「こうであるべきだ」とか「こういうものでしょ?」という意識を取っ払っていけたら、もっともっと世界が広がるのかなという想いで活動しています。

ーー活動内容は、主にどんなことやっていらっしゃるんですか?

現状は年に1回のミュージカル本公演を春先に行っています。あとは、ご縁があった方や企業さまが主催しているイベントでミュージカルのパフォーマンスをさせていただきます。昨年の年末は、神戸市営地下鉄&こべっこランドさまとコラボレーションして、地下鉄の車両内でミニミュージカルを上演しました。ミュージカルというもの自体が、遠い世界に感じている方も多いと思うので、それを劇団の活動を通して、より身近に感じてもらえるようにできたら。僕がたまたま長年接客業をしていて、ありがたいことに人脈が広いこともあり、企業の方たちと話をしながら「うちでもやってみてほしい」と、ご紹介でお話をいただくことが多いんです。

横田裕久さん=撮影・中田ゆりな

横田裕久さん=撮影・中田ゆりな

■その人の夢をかなえる、みたいなことができたらいいなと

ーーほかには、どんなことをされていますか?

あとは、絵本のパフォーマンス。劇団オリジナルミュージカル『ネズミはライオンにはなれない』という作品のなかに、自作の絵本が登場するんですが、実際にその絵本のシーンを、役者たちがパフォーマーとして登場人物になりきって動き、歌うという読み聞かせのパフォーマンスも行っています。また横田裕久個人としては、外部の舞台をプロデュースし、そのなかに劇団Compassのメンバーたちをどんどん派遣したりもしていますね。今は地域と絡めて、何か町おこしをやってみたいと思っています。去年も僕が外部で受けた仕事で、大阪の茨木市で町おこし演劇を作りました。「こんなことしてみたい」と思っている、そのアイデアを持ってる人の構想を形にする、いろいろなことができたらいいですね。ミュージカルに限りませんが、歌やダンス、お芝居を通して、その人の夢をかなえることができたらいいなと思っています。

ーー公演の脚本や演出だけでなく、幅広く活動を行っていらっしゃるんですね。

「これをしよう」と決めてるわけではないので、目の前にぽっと現れた案件やアイデアに対して、「それ、おもしろそう」と、飛びついていって、いろいろ試しながら劇団としての方向性を探していっている感じです。本当は公演も年2回はできるようにしたいなと思ってるんですが、いかんせん出演者たちが、平日は仕事しているので。僕たちの活動は基本、土・日にしています。今はだいたい半年ぐらいが稽古期間で、残りの半年はいろいろな方に興味を持ってもらえるように、一般の方も参加できるワークショップを定期的に開催しています。

劇団Compass稽古場より=撮影・中田ゆりな

劇団Compass稽古場より=撮影・中田ゆりな

■表現に関わるベースは母が作ってくれた

ーー役者というと人前に立つ仕事ですが、横田さんご自身は小さいころから人前に立つことが好きなお子さんでしたか?

目立ちたがり屋で、よくいえば学級委員をしたがるタイプ。でも、生徒会長にはなれなくて、副会長のポジションでした。だから自分には、ずっと二番手が向いてるんだなと思っていて、仕事でも二番手をすることが多かったんですね。ですから、スタッフ作りのなかで、いわゆるトップダウンの組織は作っていません。もちろん代表なので、「偉いのは僕なんだよ」と話すこともありますが(笑)。だからといって、ほかの意見を聞かないということではなくて、ちゃんとみんなの意見を尊重しながら作っています。あと、うちは二世帯住宅で、いつも祖父と祖母が家にいたので、リビングのふすまを開けてショーが始まる、みたいな感じで二人の妹たちと自分たちで作った歌やダンスを披露したりもしていました。演出をしている今の自分のベースは小学校のころにあったのかなと思います。

ーーなるほど。

でも、自分のこういう表現に関わるベースは母が作ってくれたんだと思います。この『ネズミはライオンにはなれない』の作品でも読み聞かせが出てきますが、うちも毎晩、母が絵本の読み聞かせをしてくれていたんです。決して我が家は裕福な家庭ではなかったんですが、絵本だけは数えきれないほど置いてありました。その読み聞かせのときに、母がおもしろおかしく読んでくれるのが、自分のなかでおもしろくて、気付けばそういう表現を自分がするようになったのかなと思います。あとは、母が親子劇場に参加していたので、僕たちも一緒に観劇したり、運営側として劇団を招いて公演を主催したりということに参加していました。4人兄妹のなかでは、僕が一番ついていっていた気がしますね。そういう意味では、演劇というものに昔から興味があったのかも。ただ、高校生のときに演劇部に入ったのはたまたまで、全然入る気はなくて、本当は体操部に入りたかったんです。体操が得意だったので、体操部だったら日本一になれるんじゃないかなと思って(笑)。ところが、説明会で流れた映像を観たときに、「あっ、演劇部にしよう」と、なぜか思っちゃったんです。気付けば、そこからどっぷりと演劇の世界に浸かっていきました。

劇団Compass稽古場より=撮影・中田ゆりな

劇団Compass稽古場より=撮影・中田ゆりな

■決めたらそれこそ直感でパンって動くタイプ

ーーそのときに観た映像がすごくよかったとか、印象に残るものがあったのでしょうか。

その時は野田秀樹さんの『半神』という作品を高校で上演していた時の映像が流れてて。何かそれで、「あっ、もう入ろう」って思っちゃったんです。

ーービビッときたんですね(笑)。

僕自身が、あんまり悩むのが得意ではないというか、悩む体力があんまりないので(笑)。決めたらそれこそ直感でパンって動くタイプで、フットワークが軽いんです。あと、前例はあまり意識してなくて。道が用意されてないと、人間は、なかなか歩けないじゃないですか。でも、逆に僕は誰もやってないことのほうが、やる気になってしまう。人と変わったことがしたいわけではなくて、前例がないということは、「失敗してもいいじゃん」と思える。自分が最初なんだから失敗もするだろうし、失敗したところで、まだ1回目だから工夫のしようはいくらでもあるかなという意味で、全部を実験と思っています。

ーー横田さんには、固定概念があまりないという感じが伝わってきます。

そうですね。むしろどんどんなくなってきています。もちろん考えなければいけないことは、しっかり考えますが、家が貧しかったので、できない制限がすごいあったんですよ。「お金がないから演劇の学校に行かせてもらえない」とか「お小遣いがないから本当に欲しい物しか買ってもらえない」みたいに。そのなかで、どうやって楽しむかは子どものころから、ずっと考えていました。家もおんぼろで建て替えるお金はない。でも、きれいにはしたいから、どうやったらボロボロで、穴が空いてるのが埋まるのかなと考えてみたり(笑)。もちろん、うらやましいなという気持ちはいっぱいあるんですが、それが叶わないのなら、ずっとうらやましいなと思っていても仕方がないじゃないですか。だったら、できる方法を考えてやったほうがいいというのは、子どものころから思っていました。

ーー子どものころの経験が今の活動にも、すごく影響していますね。

だから、両親には感謝しています。毎回、公演にも愛知から観に来てくれますしね。「うちは貧しいんだよ」と言われて育ってきましたが、思い返してみると「幸せだったな」と感じるように育ててくれたことは、本当にありがたいと思っています。

横田裕久さん=撮影・中田ゆりな

横田裕久さん=撮影・中田ゆりな

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