【編集部追記】この公演は、3月公演が中止となり、振替公演を2020年7月18日(土)に予定し、既にチケットの振替えについてもご案内しておりましたが、その後の緊急事態宣言の発令や、この先のコロナウイルス感染症における事態収束の見込みが立たない状況であること、公演までの稽古の再開が困難であること等を検討した結果、中止となりました。チケットの払戻し対応につきましては公式サイトをご確認ください。
2020年7月18日(土)に神戸ポートオアシス2階ホールで上演される劇団Compassのミュージカル『ネズミはライオンにはなれない』で、脚本・演出を担当する横田裕久さんのインタビュー、後半です。『ネズミはライオンにはなれない』の公演内容や、自身が主宰する劇団Compassの考え方などについてうかがいました。
ーー3月に上演される『ネズミはライオンにはなれない』の公演内容について教えてください。
この物語は現代劇の話のなかに、主人公が幼いころから読み聞かされていた『ネズミはライオンにはなれない』という絵本が出てきます。主人公は、まだ会社員になりたての若い青年。もともとはダンスをやっていて、プロの道を目指してたけれども、父親が経営している会社の「後を継げ」と言われる。腑に落ちないまま結局、親の言いなりになって、会社を継ぐような道を歩もうとしてたところ、ひょんなことからミュージカルのオーディションに参加することになります。一念発起で主役になりたいと思って受けたところ、結局、主役にはなれなくて。「主役に選ばれるような人たちと自分は違うんだ」と周りと比べながら「自分って結局何なんだろうな」と考えていくなかで、劇団内でさまざまなことが起こっていきます。そこで、周りの人間たちと関係性を築きながら、本人が「自分らしさ」というものに気付いていくという話ですね。「努力は無駄ではない。諦めなければ必ず光が射す」というメッセージを込めて作りました。
ーーどの年代にも共感できる部分がありそうな物語ですね。
この作品は、実は3回目の上演で、前身の団体を立ち上げたころは、僕が主役を演じて初演を、2年前にキャストを変えて再演を行い、今回で再再演です。ひとつの舞台を通して出演者自身が何かきっかけをつかんでほしいという思いがあって、脚本や構成も出演者に合わせて少しずつ変えたりしています。例えば、ふつうにプロの舞台に出ようと思ったら、ソロをもらえない人でも、うちの舞台では思い切ってソロを与えてみる。本人のモチベーションが上がったり、「あっ、自分ってもしかしてこんなこともできるのかな」と思ってもらったり、それこそ物語の主人公みたいにやりがいを見つけてもらえたらと思って、配役も決めています。長年出てくれているメンバーは次のステップアップとして、今までやってこなかった引き出しを引き出せるように、というところを意識して作っていますね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、劇団への思いなどインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■この人にはこんな言葉と出会ってほしいなというような台詞を考えます
■基本はアットホームで、集中する時にきちんと集中できるような環境作りを
■「Yes, and」で、相手の出してくれた表現を認めてそれをどう生かそうかと
■この作品を通してミュージカルや表現をもっと身近に感じていただけたら
<ミュージカル『ネズミはライオンにはなれない』>
【兵庫公演】2020年7月18日(土) 神戸ポートオアシス 2階ホール
※この公演は2020年3月20日から3月21日まで上演が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症対策における神戸市の対応方針に基づいて中止となり、7月18日(土)に振替公演が実施されることになりました。当日は昼夜2回公演を予定しているとのことですが、詳しくは公式ページでご確認ください。
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https://www.instagram.com/hirohisa1126compass/
- 「自信を持って」、『ネズミはライオンにはなれない』横田裕久インタビュー(下) 2020年3月10日
- 関西でミュージカル上演「劇団Compass」結成から2年、横田裕久インタビュー(上) 2020年3月9日
- ハートフルコメディミュージカル『人間泥棒-元小泥棒の夢-』、大阪で12月23日開幕 2021年11月18日
- 2020年12月以前のプレゼント 2021年6月16日
- 俳優やダンサーが講師に、ネットレッスン『うちで MUSICAL DAY!』4月27日開講 2020年4月25日
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■この人にはこんな言葉と出会ってほしいなというような台詞を考えます
ーーひとつの体験が、その後の成長につながりますよね。
そうなんです。だから、舞台上で口にする台詞も、今、この人にはこんな言葉と出会ってほしいなというような台詞を考えます。例えば、「ありがとう」と、あまり言えない人に、「ありがとう」と言う台詞を与えて、稽古のなかでなじませていく。そうすることで、結果的に自信を持てなかった人の雰囲気が明るくなったり、生き生きしだしたり、自らやりだしたりするような変化が出てくるんです。僕自身は、そこが一番やりがいがあるのかなと思っているんですよ。それを「教育」みたいな大きな枠組みで捉えるのではなく、表現活動を通して、自分に自信を持って、自分も他人のことも認められて、ちゃんと周りとコミュニケーションとりながら、それぞれが自律して自分らしく生きていける人たちを増やしていくことを目的に作品作りをしています。この作品は、その一番大元になってる作品という感じですね。
ーー出演者一人ひとりによって台詞を変えるということですが、過去に上演された内容と大枠は変わらず?
大枠は変わっていません。でも、主人公も3回変わり、それぞれの役者が歩んできた人生に合わせてるので、家族設定や主人公の職種が変わったりはしています。今回はダンサーの男の子を起用したので主人公はダンサーですが、前回はシンガーソングライターをしていた男性だったので、「歌を目指してきた男」という設定にしていました。芝居を初めてする人たちも多いので、ナチュラルに芝居の世界に入っていきやすいような仕組みを作っています。ですから、脚本も当て書きという形をとっています。見に来てくださったお客さんも、「いい意味でみんな自然だったね」と言う。どうしても素人がやると、素人っぽさが出るじゃないですか。でも、その人がナチュラルに舞台で楽しんでるから、「普段を見てるようだったわ」という意見も多い。それが本人たちの中では「あー、悔しい」となる場合もあるんですが(笑)。うちの劇団は年齢もさまざまで、一番下だと小学校1年生、上は50代の方まで。前回は還暦の人もいました。今は四国から来てくださっている親子もいます(笑)。
ーー四国ですか! すごい遠方から来てくださる方もいらっしゃるんですね。
彼女たちはさすがに毎週は来れませんが、月に1回か2回のペースで参加してくれています。普通だったらそんな練習頻度では厳しいと思いますが、彼女たちが無理をせず、ちゃんと家族のことも大事にできて、表現活動ができる環境を整備してみたくて参加を認めました。
■基本はアットホームで、集中する時にきちんと集中できるような環境作りを
ーー劇団員の方たちは、どういった経路で入団されるんですか? ホームページとか?
劇団Compassになってからは、うちのメンバーがしっかりとしたホームページを作ってくれているので、ホームページ経由で劇団に入りたいという問い合わせもあります。ほかには紹介であったり、前回の公演を観て「自分もやってみたい」というような形で参加してくれている人もいますね。
ーー劇団は、どんな雰囲気ですか?
外部の現場に行ったときもそうなんですが、僕が作ると現場の雰囲気はアットホームになります(笑)。劇団員たちに厳しくすることも、もちろんできますが、そうすると心が疲れてしまうじゃないですか。なので、できるだけ基本はアットホームで、集中する時にきちんと集中できるような環境作りをしています。
ーー横田さんのお話を聞いていると、スキルうんぬんの前に、まず「表現を楽しんでほしい」という気持ちが強い感じがしますね。
そうですね。それこそ、僕自身『ネズミはライオンにはなれない』の主人公のように「自分ではだめなのかな」と思うこともあったんですが、演出家として外部の公演にも携わるようになると、どの現場でも、「自分の体では表現できないかもしれないけど、この人の感性や身体能力だったら、これをもっとおもしろく表現できるかもしれない」と思うようになってきました。役者としての自分に限界を感じることもありましたが、「演出の仕事もまんざらではないな」と(笑)。僕自身は誰かについて演出法や脚本術を学んでいたわけでもなかったので、今は外の舞台を見せてもらったり、お世話になっている演出家さんの下につきながら、勉強しているところですね。
■「Yes, and」で、相手の出してくれた表現を認めてそれをどう生かそうかと
ーー演出や脚本については、これまでほとんど独学でやってこられたということですか。
そうです。脚本も独学だし、演出も最初は見よう見まねでずっとやってきました。今はデイサービスセンターや保育園で表現のレクリエーションやワークショップの仕事もしていますが、それ自体もそんなことをやってみたいなということだけ決めただけ。「じゃあ、ぜひうちでやってみてよ」と声をかけていただく機会があったので、そこから、やらせていただいています。一応インプロ(即興劇)の勉強をしていた時期があるんですが、インプロには台本のない芝居をするための練習技法があるんです。そのなかに、たくさんゲームがあるので、そういうワークをみなさんにやってもらっています。それも「表現のスキルを上げよう」ではなく、大きな声を出してみるなど、「こういうこともできるんですよ」ということを体験してもらっているような感じですね。高齢者の方だと、どうしても、「だんだん、できなくなってきた」と思っていることが増えますから。
ーーなるほど。
劇団の考え方にも通ずるところがあるんですが、「Yes, and」の精神を大切にしています。「これは違いますよ」と否定するのではなく、まずは相手の出してくれた表現を認めてあげて、それをどうやって活かそうかと考える。「リンゴのポーズをしてください」と言ったときに、どう見てもリンゴじゃないと思う表現だったとしても、それをリンゴだとしたら周りはどうするか。そんな考え方を大事にしています。そういう考えを幼児教育の現場にも持っていって、まだまだ自己が形成されてないタイミングで、子どもたちが、まず大人に否定されるのではなく、「これもやってもいいし、あれもやってもいい」ということを体感してもらう。そこから自信をつけていってほしいということを目標に今、活動しているところです。年長になると、「自信をつけていく」発達段階があるんですが、その時期に友達の真似をしてもいいし、友達と全然違うことをしてたら、その友達のことも「これも正解なんだな」と思ってあげると同時に、「自分も正解なんだな」と思えるように。「これでしかできない」という既成概念を最初から作らないように仕事にも取り組んでいます。
■この作品を通してミュージカルや表現をもっと身近に感じていただけたら
ーー『ネズミはライオンにはなれない』は、いろんな年代の方が共感できる内容だと思いますが、横田さんはどんな方に観てほしいと思っていらっしゃいますか?
この作品はまず頑張ってる人に観てもらいたいですね。自分でどうしたいのか答えがわからなくてもがいてる人や、現実を見ながら今働いているけれど、どこか心が苦しいと思っている人が、結構多いと思うんです。そういう「気持ちのやり場がない」「逃げ場がない」と思っている人たちに、ぜひ観てほしいなと思います。あとは、それぞれの個性を認めることが大事というメッセージも込められているので、子どもと接する職業に携わってる方など、教育関係の方にも観に来てほしいです。劇団四季や東宝など有名なプロのミュージカルもたくさんありますが、ミュージカルを観たことがない方のなかには「そういうところは自分にとって敷居が高い」と思っている方もいると思います。僕は、自分たちの劇団を通して「ミュージカルっておもしろいじゃん」と感じてもらえたら、もっとこの演劇界が盛り上がると思うんですよ。だから、その入口として、まず自分の身近な人が出演している作品や、自分に近いなって思える環境の人が出ているもので、何かメッセージを受け取ってもらって、もっともっと表現というものが日常になってくれたら。そういう形で、社会貢献ができたらいいなと思ってやっています。
ーーわかりました。最後に、公演を楽しみにされてるファンの方へメッセージをお願いします。
この公演を通して、改めて自分を好きになってもらうきっかけができて、人をもっと好きになってもらえたらうれしいです。そして、この作品を通してミュージカルや表現をもっと身近に感じていただけたら幸いです。
ーーありがとうございました!
※横田裕久さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは4月9日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。