2020年12月10日(木)に愛知の名古屋市公会堂で、12月19日(土)から東京の草月ホールで上演される音楽座ミュージカル『SUNDAY(サンデイ)』(以下『SUNDAY』)に出演する高野菜々(こうの・なな)さんと広田勇二(ひろた・ゆうじ)さんの対談、後編です。音楽座ミュージカルならではの制作メソッド「ワームホールプロジェクト」について、稽古場での具体的なエピソードも交えて話していただきました。
ーーオリジナルミュージカルを創る過程で、自然と「どんどん変わっていく」というやり方になっていったのでしょうか?
広田:僕たちがそうしようとしたわけではなく、音楽座ミュージカルの創設者である相川レイ子が、30年以上前から意図してそうしてきました。「音楽座ミュージカル」では、絶対的な力を持った演出家がいて、その人の指示通りに全部創りり上げるというやり方ではなく、テーマや方向性はリーダーである代表が担いながら、かかわる一人一人が当事者として作品創造に携わっていく「ワームホールプロジェクト」というシステムで作品を創っています。このあり方が、最近の企業で求められる組織の創造に生かせるということで、企業や学校の研修などでも注目されているんですよ。
高野:私たちも企業や学校での研修やワークショップのファシリテーターやトレーナーをやることも多くなってきました。何かを教えるような立場ではなく、一緒に見つけていくための伴走者に近いかもしれません。
ーー高野さんも広田さんも、そのコンセプトに共感されて入られたのですか?
高野・広田:いや全然違います! 元々は、ただミュージカルをしたかっただけですね(笑)。
広田:最初は、なんで研修のファシリテーターをしなければならないんだろう?って思っていましたね。でも、今はやっとつながってきました。これをやることで、舞台の上の表現も磨かれていくんです。研修では、そこで起こる様々なことと丸裸で向き合わなくてはいけません。決まったことをやる、というんじゃない、それがミュージカルの演技にも生きています。
高野:『SUNDAY』もそうですが、ミュージカルを創っているとき、とにかくカンパニー全体で徹底的に話し合って、本音をぶつけ合っていきます。
広田:芝居畑出身の人ほど、それに戸惑うんですよね。演出家からのオーダーを、いかに自分の技術で解決しながら超えていくかというアプローチをするというやり方に、みんな慣れていますから。
高野:馴染めないことも多かったですよね。稽古日なのに、一日中、話し合いで終わることもしょっちゅうなんですよ。あなたはどうしたい?って。もっと稽古しましょうよ、話し合いより踊りや歌の練習もしたいです、なんて思っていました(笑)。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、前代表が、役をおろされて絶望している人に「よかったわね、あなた!」と言った意味や、歌には自信のあった広田さんが入って最初のレッスンの時に全然歌えなくて驚いた理由、今『SUNDAY』をお客さまに届ける意味などについて話してくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■広田:前代表は、役をおろされた人にも「よかったわね!」と言っていました
■高野:本音をぶつけ合ううちに、全員で作品を届けたいという気持ちになれる
■広田:小手先の技術ではなんともならないんだと気づいたんです
■高野:『SUNDAY』に私も救われました。今いちばん届けたい作品です
<音楽座ミュージカル『SUNDAY(サンデイ)』舞台映像オンライン配信>
【配信日時】2020年12月28日(月)19:00~2021年1月3日(日)22:00
【上演時間】約2時間30分
【視聴料金】4,400円(税込)
【配信場所】イープラス「Streaming+」
https://eplus.jp/sf/detail/0126900009-P0030094P021001
<音楽座ミュージカル『SUNDAY(サンデイ)』>
【ラボシアター】2020年10月31日(土)~11月1日(日) 東京・町田市内の音楽座ミュージカル「芹ヶ谷スタジオ」(この公演は終了しています)
【大阪公演】2020年11月12日(木) 東大阪市文化創造館大ホール(この公演は終了しています)
【広島公演】2020年11月16日(月) 上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)(この公演は中止になりました)
【愛知公演】2020年12月10日(木) 名古屋市公会堂
【東京公演】2020年12月19日(土)~12月20日(日) 草月ホール
※東京公演は完売
公式サイト
http://www.ongakuza-musical.com/works/sunday
<関連リンク>
音楽座ミュージカル
http://www.ongakuza-musical.com/
高野菜々 Twitter
https://twitter.com/kounonana
高野菜々 公式ブログ「ななのナナなの♪」
https://ameblo.jp/nana-kouno/
広田勇二 Twitter
https://twitter.com/yuji_hirota
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■広田:前代表は、役をおろされた人にも「よかったわね!」と言っていました
広田:もうね、台本読みたくなりますよね、早く!って(笑)。昨日も稽古場で全員で話す時間がありまして。
ーー稽古場ではどんなことがあったのでしょうか?
広田:稽古の中で、課題をクリアできないメンバーがいたんです。どうにかして舞台に出したいから、みんなが彼女にいろんな意見をいうんですよ。それを言っている人たちが、今、ぐんぐん成長しているメンバーだった。その様子を見ながら、彼女に聞いてみたんですよね。「あなたは他の人に自分が思ったことをフィードバックしたことはある?」と。そしたら「相手がかわいそうだから言えない」って言うんですね。相手を気遣っているように見えて、自分が傷つかないように守ってしまっているんです。
ーーどんどん言うことで、成長につながるんですね。
高野:さっき広田から出た「人に指摘できる」人が伸びるのは、恥ずかしい経験を自分で認められているからだと思うんです。役をおろされることのような、ネガティブな過去があるからこそ気づけるものもあって。
広田:前代表は、役をおろされて絶望している人にも「よかったわね、あなた!」と言っていました。最初は、なんて事言うんだ!って思っていましたが(笑)。
■高野:本音をぶつけ合ううちに、全員で作品を届けたいという気持ちになれる
ーー本音を言い合える人間関係の上に成り立つミュージカル。ストーリーに説得力を感じるのは、創り方に理由がありそうですね。
広田:稽古場を見た人には驚かれますよ。あの人、言われすぎているけど大丈夫なのかとか。台本があるって思われるくらい。みんな間髪入れずにダメ出しをすごいスピードでしていくんですよね。
高野:結構、辛辣なダメ出しもあります。作品を良くする、というミッションを全員が共有できているからできることですね。もちろん、それで落ち込んだりするときもあります。でも、そのダメ出しって言われている人だけに向けられたダメ出しじゃないんですよ。全員、ダメ出しをしている本人自身にも返ってくる。だから、一対一でやらずに、場でひらきながらダメ出しをしていくんです。
ーーその関係性ゆえに、作品からあたたかい手触りが伝わってくるのだなと思いました。
広田:創り方としては、本当に面倒臭いことをやっていると思いますよ。でもそこが、作品を通して伝わるんだと思います。新人でも積極的に意見をいうように言っているんですよね。面白くないと思ったら、相手が先輩だろうと伝えるべきだと。
高野:本音をぶつけ合ううちに、こんな作品が見たい、全員でこういう作品を届けたいという気持ちになれるんですよね。だから、人の目が気にならなくなるし、自分を見て!という気持ちも消えていくし、舞台上でも相手とのコミュニケーションに集中できるんです。
■広田:小手先の技術ではなんともならないんだと気づいたんです
ーーそういう関係の上で生まれる舞台が音楽座ミュージカルなんですね。
広田:まだ入る前だったんですが、初めてここの作品を観た時に、すごく不思議だなあと感じたんですよね。作品の雰囲気が、なんとなくあったかいんですよ。当時は、きっと技術的な理由だろうと考えていました。ビブラートをあまりかけずに、セリフみたいに歌っているからなのかな、とかね。でもね、そこじゃなかったんですよ。
ーー理由は何だったのでしょうか?
広田:実は僕、入って最初のレッスンの時、全然歌えなくて驚いたんですよ。歌には自信もあったし、声が出ないとかそういう技術的なことではないのに、歌いこなせないんですね。なぜだろう?と、この壁を乗り越えようとする中で、ああ、これは小手先の技術ではなんともならないんだと気づいたんです。これが理由ですとお伝えできるものがあるわけではないんですけどね。
■高野:『SUNDAY』に私も救われました。今いちばん届けたい作品です
ーー今、2020年末に『SUNDAY』をお客さまに届けることについて、最後にひとことお願いします。
高野:9月にやっと初日で、12月に千秋楽。今年は1年間ずっと『SUNDAY』をやっていましたね。
広田:5月の上演に向けて、1月から稽古していましたからね。その間にオンラインでの配信などにも挑戦してきましたが、やはり久しぶりに皆さんの前でやる喜びは格別です。
高野:この崖っぷちの今の環境の中で、カンパニーの中でもたくさん話し合いました。今後どうするのかのヒリヒリ感は今までに味わったことがないものでしたね。『SUNDAY』のストーリーには、この厳しい環境の中で私も救われました。今いちばん届けたい作品です。
広田:まず、この時期に作品を観ていただけるのが本当にありがたいです。お客さまがどう受け取ってくださったか、反応が嬉しいんですよね。あー!そうきたか!とか。予想外の感想もあるし、いつも楽しみにしているんですよ。
※高野菜々さん・広田勇二さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは2021年1月7日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。