「森亮平さんの編曲を聴いて、すごい!と」、松本和巳監督・海宝直人対談(下)

(左から)井内徳次さん、松本和巳監督、海宝直人さん、小野華那子さん=撮影・岩村美佳

被爆者の新たな証言を集めたドキュメンタリー映画『a hope of NAGASAKI 優しい人たち』の松本和巳監督と、主題歌「坂道」を歌った海宝直人さんのインタビュー後半をお届けします。レコーディング時の様子や、編曲を担当した森亮平さんのエピソード、松本監督が映画を通して伝えたい想い、松本監督と海宝さんが考える平和について伺いました。現在映画館での上映は終了していますが、9月から自主上映会の受付が始まり、主題歌「坂道」のCDはYahoo!ショッピングとSTORESで販売されています(数量限定)。「坂道」のアレンジとピアノ演奏を担当したのは、『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『ラブ・ネバー・ダイ』など数々のミュージカル作品でオーケストラを指揮してきた、森亮平さんです。

(左から)井内徳次さん、松本和巳監督、海宝直人さん、小野華那子さん=撮影・岩村美佳
(左から)井内徳次さん、松本和巳監督、海宝直人さん、小野華那子さん=撮影・岩村美佳

――昨年、海宝さんが収録されているスタジオに、松本監督が行かれた時のツイートを拝見した覚えがあるのですが、レコーディングを聴いていて、いかがでしたか?

松本:デモが上がってきた時に、「すごいな」と思いました。実際に収録しているところを見た時は、その取り組み方が半端なくて驚きました。自分の納得するポイントに行くまで、何回もきちんとやられていく。普通は、時間がないとか、制約の中でやるじゃないですか。でも、「ここはこういう風に歌ったほうがいいかな」、「こういう風にしたほうがいいかな」とご自身が思う部分を、悩みながらでも収録してくれていて、いろんな想いを込めてもらっているんだなと強く感じました。お任せしてよかったです。僕から「こういう風に歌って欲しい」というリクエストはまったくありませんでしたから。

――完全にお任せですか?

松本:「海宝さんが映画を観て解釈してもらった部分、『アリージャンス』のために調べたいろんな部分も解釈して、想いを乗せてください」というお願いしかしていません。それが、あの調べになったということです。

海宝:レコーディングのときに、どう表現するのがいいだろうかと、楽曲も音楽的には難しいメロディラインだったりするので、これをいかにストレスなく、皆さんの心にすっと届けることができるだろうかと、いろいろと試行錯誤しました。作詞作曲をされた井筒節さんは、プロフェッショナルで作詞作曲をされている方ではなくて、本当にご自身の想いで書かれていて、ものすごく純粋な想いや願いがこもっている曲でしたので、それを何とかそのまま届けたいなと。だから、必要以上に表現でドラマチックにすることはないなと思いました。いかにピュアに、この楽曲自体を届けるか。聴いた人が、想像力でそれぞれの想いを乗せて、響いたらいいなと。削ぎ落として、シンプルにお届けすることを大事にしました。

――初めて聴いた時は、海宝さんが歌ってきた今までの曲とは声が違って驚きました。何と言うか、その透明感に揺さぶられて。

海宝:キーにこだわるところがあって、下げようかという話もあったんです。結果的には、皆さんのとても純粋な笑顔や想いみたいなものが、声のサウンドで表現できたらなと思いました。声としてはいかに透き通った部分で届けるか。聴いた方それぞれが、いろんな感情を乗せて聴いてもらえたらいいなと思いました。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』など数々のミュージカル作品でオーケストラを指揮してきた森亮平さんが編曲した「坂道」を聴いた時の松本監督の思いや、森さんはこのお話をいただく前に語り部の方のお話を聴きたいと長崎に聴きに行っていたこと、「平和」とは何かということについて今どう思っているかなどについて話してくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■松本:森亮平さんが編曲してくださったデモテープを聴いて「何これ! すごい!」と

■海宝:亮平は、語り部の方のお話を聴きたいと、長崎に行ったことがあるんです

■松本:平和に対する考えが変わりました。平和とは「安心して寝られること」

■海宝:笑顔で人と会話できることが平和だと思います。戦争になればそれもできない

<映画『a hope of NAGASAKI 優しい人たち』>
2021年7月29日~8月19日 全国ロードショー(映画館での上映は終了しています)
自主上映会:2021年9月から受付開始
公式サイト
https://nagasaki.cc/

<「a hope of NAGASAKI 優しい人たち」主題歌CD「坂道」>
アーティスト:海宝直人
発売日:2021年8月6日
数量限定発売(AQC1-77504)
価格:1,000円(税込)
Yahoo!ショッピング:
https://store.shopping.yahoo.co.jp/slagoods/cd0001.html
STORES:
https://simplelifegoods.stores.jp/

<関連リンク>
a hope of nagasaki 優しい人たち 公式Twitter:
https://twitter.com/ahopeofnagasaki

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松本和巳監督(左)と海宝直人さん(右)=撮影・岩村美佳
松本和巳監督(左)と海宝直人さん(右)=撮影・岩村美佳

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■松本:森亮平さんが編曲してくださったデモテープを聴いて「何これ! すごい!」と

――鎮魂歌のようにも、映画のタイトルにもある、希望にも思えて。

松本:もしかしたら、あの歌がないと、結構重い気持ちのままで終わってしまう方も、いるかもしれないですね。最終的に、海宝さんの歌声で、すーっと洗い流してくれる感覚なんです。本当にあそこにきちんとあるべき歌だと感じています。

――監督としてもそこでピリオドを打った感じでしょうか。

松本:そうです。僕も編集で何百回と見ていますが、あの歌が入った時に、すっと落ちます。編曲をしてくださった森亮平さんが、引き受けてくれた次の日に、デモテープを送ってきてくれたんです。それを聴いて「何これ! すごい! 曲が変わっちゃった!」と、井筒さんと話していました。そのぐらいの衝撃で、これはすごい人が参加してくれたな、と思いました。

松本和巳監督=撮影・岩村美佳
松本和巳監督=撮影・岩村美佳

■海宝:亮平は、語り部の方のお話を聴きたいと、長崎に行ったことがあるんです

ーー海宝さんは、森さんと曲について何か話したんですか?

海宝:特に話していないんです。亮平がアレンジしてくれたピアノができあがったものを届けてくれました。このお話をいただく前に公演があって博多を訪れていたとき、亮平は語り部の方のお話を聴きたいと、ひとりで長崎に聴きに行っていたんですよ。だから、彼もとても興味を持っていて、この仕事を喜んでいました。「坂道」は、元々はメロディしかなかったのですが、イントロから作ってくれて、すばらしいアレンジに仕上げてくれました。

松本:おふたりは最高の組み合わせですよね。森さんがいなければ、また違う曲になっていたと思います。森さんの録音にも行かせてもらったんですが、演奏に入ってしまうと、我々が消えてしまうんですよね。海宝さんは、そのピアノ音源に歌を合わせて、鍵盤を叩きながら「こうだろうか? こういう風に歌ったほうがいいのかな?」と、ずっと試行錯誤されていましたね。頼まれごとだからではなく、「この歌に対しての想いをちゃんと乗せなければいけない」というところが、本当にありがたいです。

海宝直人さん=撮影・岩村美佳
海宝直人さん=撮影・岩村美佳

■松本:平和に対する考えが変わりました。平和とは「安心して寝られること」

――最後に監督から読者の方へ伝えたいことはありますか。

松本:この平和のお話は身近な話だと思います。映画にも出てきていますが、このコロナ禍において、やっぱり差別は起きているんです。自分の知らないこと、未知のものに対して恐怖を持つことから、人に対してそういうことをしてしまう。それは76年前とまったく変わらないですし、東日本大震災でも変わらない。人間はそこから何も学べてきていないのかなという一面があるので、「じゃあどうするの」と一緒に考えてもらえたらいいなと思います。被爆者の皆さんの経験されたことが、きちんと伝わっていくのであれば、話していただいた意味があるかなと思います。

松本:親戚が死んだ、親が死んだ、自分も怪我したという戦争の悲惨さは伝えなければいけないですが、戦争が終わってから生きてきた人たちの大変さもある。差別を受けたり、いじめを受けたり、何回も死のうと思った方がいらっしゃるわけです。それを乗り越えてきた生きる力と、差別やいじめがなくならない原因が共有できていないように思います。社会や自分の身近なところで、そういうことが起きないようにするにはどうすればいいのかを考えるきっかけになってもらいたいです。それはやっぱり平和かなと思います。身近な平和がないと、大きな平和って成り立たないじゃないですか。

――映画のなかで、「平和とはどういうものですか?」と、皆さんに質問していましたが、監督はどうお答えになりますか?

松本:僕も皆さんの答えを聞いて、本当に考えが変わりました。編集していて思ったのは、「安心して寝られること」が一番の平和。何か心の中や周りに不安があれば、寝られなくなりますよね。そうではなくて、平和だということは本当に眠れること。日常の小さなことですが、みんなが安心して眠れる社会になれば、平和な世界になるかもしれない。爆撃されることも、いじめられることもなく、それに対してドキドキすることもなく。だから、平和ということを、もっと身近で考えなければいけないんだなと思いました。それを共有してもらって、自分の生活の中に落とし込んでもらうと、違うものが見えてくるんじゃないかなと思います。

松本和巳監督=撮影・岩村美佳
松本和巳監督=撮影・岩村美佳

■海宝:笑顔で人と会話できることが平和だと思います。戦争になればそれもできない

ーー海宝さんはいかがですか?

海宝:このコロナ禍も含めて、人と笑顔で喋れることが、すごく平和の象徴なんだなと思います。今までは当たり前のことでしたし、普通でしたが、戦争になればそういうこともできないですから。当たり前に、笑顔で人と会話できることって、すごく平和なんだなと思います。

海宝直人さん=撮影・岩村美佳
海宝直人さん=撮影・岩村美佳

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