「感じたことを、混ぜものなく」、『hana-1970、コザが燃えた日-』記者会見ルポ

松山ケンイチさん(中央)・岡山天音さん(右)・余貴美子さん(左)=撮影:宮川舞子

栗山民也さんと畑澤聖悟さんと松山ケンイチさんが初タッグを組み、返還直前の沖縄を生きる人々を描く作品『hana-1970、コザが燃えた日-』が、2022年1月9日(日)に東京芸術劇場プレイハウスで開幕します。2021年12月23日(木)に開かれた記者会見に出席した、ハルオ役の松山ケンイチさん、アキオ役の岡山天音さん、おかあ役の余貴美子さんのコメントの一部を紹介します。 

松山ケンイチさん(中央)・岡山天音さん(右)・余貴美子さん(左)=撮影:宮川舞子
松山ケンイチさん(中央)・岡山天音さん(右)・余貴美子さん(左)=撮影:宮川舞子

■松山:現地には、何十年も前の話を「今起こったこと」のように話してくれる方もいた

ーー稽古に入る前の沖縄取材で、印象に残ったことは何でしょうか?

<松山ケンイチさん>

コザ騒動自体の名前は知っていましたが、そこに行き着くまでの沖縄の人たちの感情だとか、想いみたいなものは、やっぱり分からないんですよね。知らなかったので、現地に行って色んな方とお話をさせていただいて。日本に対してもやっぱりすごく、怒りがある。アメリカ人に対してもある。ハルオに関しては、自分自身にも怒りが向けられてるような所があります。一方向ではなく、いろいろな角度から踏みにじられていることに、話を聞いて驚きましたし、今でも消化しきれない、自分の中で消化しきれない何かがずーっと、残りながら稽古やってますね。もう。何十年も前の話を、今起こったかのように話してくれる方とかもいらして。だから今も「解決していない問題」としてある、というか何も変わってない部分があるからこそ、声をきちんと発してるんだと思うんですよね。そのパワーに僕らはなんか圧倒されてたような気がしますね。

<岡山天音さん>

このモチーフになってるコザ騒動が実際あった場所、今の場所ですけど歩いてみて。そこで実際渦中にいた方から、「ここでこういうことがあって」っていうお話を聞きながら、街を回ったのは非常に印象的ですね。やっぱりこの舞台をやる上でその体験てものすごくおっきいものなので。実感をそこで持てた気がして、今も力になってる気はしますかね。

松山ケンイチさん=撮影:宮川舞子
松山ケンイチさん=撮影:宮川舞子

■余:沖縄に関わっていたいという気持ちが強かったので、今回とっても嬉しい

ーー沖縄への思いを教えてください。

<余 貴美子さん>

もう20年以上前なのですが、『うみ・そら・さんごのいいつたえ』という椎名誠さんの映画でも参加した時に、三線にハマってお稽古したり、古酒(くーす)泡盛を毎晩飲むとか、買い溜めしたりとか。もう本当に沖縄に住みたいぐらいでした。家族が台湾人なので、食べるものが近く、ヘチマやゴーヤも毎日食卓にありましたし、香辛料の匂いも沖縄とそっくりで、自分の血や生活の中に、沖縄の感じがあり、沖縄に行くとすごく居心地が良いです。沖縄に関わっていたいという気持ちが強かったので、今回とっても嬉しいです。

■岡山:最初に思っていたよりも、「人間の生き様が描かれた作品なんだな」と感じる

ーー台本を初めて読んだ時と、稽古が始まってからでは、作品への印象が変わりましたか?

<松山さん>

台本読んだ時点で、びっくりしたことばかりでした。日本人に対しての怒りだとか、日本と沖縄のギャップっていうんですかね。その感じが台本にはすごく、きちんと表現されているので。僕がびっくりし、感じたものをそのまま、できるだけ混ぜものなしに、お客さんに届けられるようにしたいですね。

<岡山さん>

実際にあって、今も続いてる、沖縄と日本の実情を伝える作品にもなっていると思います。実際に演じてみて、そして皆さんのお芝居を観てると、そのできごとを語るキャラクターの感情がその言葉の裏には流れていて。人の声で、できごとの説明や固有名詞が発せられていくと、最初に思っていたよりも、人間の生き様が描かれた作品なんだなと、改めて身をもって感じました。時代も場所も全然違いますが、根本の根本は、現代、今東京で生きてる僕と同じ人間なのだなと感じましたね。

<余さん>

読むだけではとても理解できなかったことが、相手がいて、ちゃんと話し、読み解いていくと、「あ、こういうことだったのか」と。その時代のことも、沖縄の言葉も、口に出していくうちに、実感が湧いてきました。

岡山天音さん=撮影:宮川舞子
岡山天音さん=撮影:宮川舞子

■松山:余さんの「おかあ」の暖かさや幸福感に救われる感じがする

<松山さん>

(余さんは)「昔からこんな風に接してきてたんだなあ、一緒に過ごしてきたんだなあ」と、実感できるような、おかあだったりするんですよね。そういうところに、僕はすごく暖かさだとか幸福感みたいな、救われる感じがしています。

■余:栗山さんが「言葉の力を信じろ」と

ーー「対話劇」と言われていることについてどう思われますか?

<余さん>

演出の栗山さんが、今回は特に、「言葉の力を信じろ」と。「本当に対話をして人と関わっていくことでしか、この時代を表現できない。それをみんな止めてしまった。怠けてるんじゃないか」っていつも仰るんです。舞台上だけではなくて、実人生でも「ああ、確かにそうだな」って。この作品に、今出会って良かったなと思いますね。

■岡山:松山さんと余さんから、チャーミングさをなんとか盗めないかと

ーー今回意識したり、大切にされていることは何でしょうか?

<岡山さん>

映像の仕事と比べて、圧倒的に舞台は経験値が少ないので、映像で培ってきたこれまで学んできたことを、どうすればこの舞台の表現に転用できるのかと、今も模索中ですね。とても広い劇場でやらせていただくのも、自分にとっては初挑戦です。「果てしない冒険」に今出ている最中という感じですね。僕自分が出てない場面は、お客さんと同じ目線で観させてもらったりしています。(松山さんと余さんが)お二人とも本当に生き生きされていて、すごくチャーミングなおかあとハルオがそこにいて。チャーミングさをなんとか盗めないかと、目を凝らしています。お二人の芝居を観てるとお客さんみたいな気持ちになります。本当に楽しいです。

■余:今年を漢字1文字で表すと、『三』という漢字の数字

ーー今年を漢字一文字で表すなら、どの漢字を選びますか?

<余さん>

『三』という漢字の数字です。三というものは、初めて三角形になって面になる。支えて形になる初めての数字なんですね。三角形がいっぱい集まると立体にもなっていって、どんな形にもなるんですけど。なんか本当に、そういうこと必要だなあと思った1年でしたね。

余貴美子さん=撮影:宮川舞子
余貴美子さん=撮影:宮川舞子

■岡山:去年も今年もフィクションに触れる時間はたくさん作れた。来年は実体験を持つ時間を増やしたい

ーー2022年の抱負について教えてください。

<松山さん>

こういう時期でもありますから、とにかく無事に、千秋楽を迎えるということが、やっぱりいちばん課題になってくるんじゃないかなと思うんですよね。健康面でも気をつけて、きちんとしたパフォーマンスをして、最後までできたらなというのが、まず来年一発目の抱負ですね。

<岡山さん>

ここ数年ご時世もあって、例えば本を読むとか、家で個人的にできることを推し進める時間が多かったんですね。インプットも何から何まで、個人的に向き合う時間が多かったので、来年はもうちょっと色んな人と交流できたらいいなと思います。フィクションに触れる時間は、去年も今年もいっぱい作れたので、実体験を持つ時間が増えたらいいなあと夢見てますね。

■松山:何かをなかったことにするのではなく、向き合っていくことが多様性だと感じている

ーー作品の見どころとファンのみなさまへのメッセージをお願いします。

<余さん>

参加者全員の、むき出しで丁々発止の会話をワクワクしながら、お楽しみいただけると思いますので。どうか劇場へ足をお運びください。

<岡山さん>

モチーフになってるのは沖縄で実際あったコザ騒動ですが、史実に触れたことがなかったり、今沖縄に住んでなくて全然関係ないとこ住んでる現代を生きる人たちにこそ、是非観て欲しいな思いますね。なんか今の人たちが、知らなかったり、どこかに置いてきてしまった人間の美しさみたいなものが、ふんだんに描かれた作品だと思います。新年から、濃い、沖縄に生きる人々のエネルギーを浴びに是非いらしてください。

<松山さん>

ひとことで言えるような作品ではないと思うんですけども、登場人物は、血が繋がってはいない疑似家族みたいな所に、アシバーというヤクザというか遊び人がいたり、教師がいたり、生活のために密貿易やってるおじいちゃんがいたり、米兵がいたり、学生運動じゃないですけど、デモを熱心にやってる人たちがいたりとか、ものすごく多様性のあるキャラクターたちなんですよね。その多様性って、その当時は普通にあったと思うんですよ。今はなんか多様性を認めようっていうような、動きありますけども。でも元々あったんですよね。もしかすると、何かをなかったことにすることで、多様性を見出そうとしているのかもしれないんですけども、なかったことにするということではなくて、やっぱり向き合っていくっていうことが、多様性なんじゃないかなっていう風に稽古を通して僕が感じたことです。今にも通じる部分があると思いますので、是非観ていただきたいなと思います。

松山ケンイチさん(中央)・岡山天音さん(右)・余貴美子さん(左)=撮影:宮川舞子
松山ケンイチさん(中央)・岡山天音さん(右)・余貴美子さん(左)=撮影:宮川舞子

<『hanaー1970、コザが燃えた日ー』>
【東京公演】2022年1月9日(日)~1月30日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
【大阪公演】2022年2月5日(土)~2月6日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【宮城公演】2022年2月10日(木)~2月11日(金・祝) 多賀城市民会館
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/hana2022/
公式Twitter
https://twitter.com/stagehana

<キャスト>
松山ケンイチ
岡山天音
神尾佑
櫻井章喜
金子岳憲
玲央バルトナー
上原千果
余貴美子

<スタッフ>
作:畑澤聖悟
演出:栗山民也
美術:伊藤雅子
照明:服部基
音楽:国広和毅
音響:井上正弘
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:鎌田直樹
映像:栗山聡之
方言指導:今科子
歌唱指導:伊藤和美
三線指導:宮里英克
ドラマターグ:工藤千夏
演出助手:田中麻衣子
舞台監督:加藤高
企画制作:ホリプロ

<主催、お問い合わせ>
■東京公演
主催:ホリプロ
■大阪公演
主催:梅田芸術劇場
■宮城公演
主催:仙台放送

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“「感じたことを、混ぜものなく」、『hana-1970、コザが燃えた日-』記者会見ルポ” への 1 件のフィードバック

  1. ソワレ より:

    会見動画を拝見していた際に余さんが仰っていた三角にまつわるお話が、とても印象的だったのですが明確に思い出せず記憶力に愕然としていたところ、こちらの記事で文字起こしされており、大変嬉しいです!
    ありがとうございます!
    こちらの記事を改めて再読したら
    無事に再演発送され、御三方やスタッフさんの想いが、また伝わってきました。

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