「三人で話すのは初めて」、『雨が止まない世界なら』海宝直人・内藤大希・spi(上)

(左から)海宝直人さん、内藤大希さん、spiさん

ミュージカル『雨が止まない世界なら』のコンセプトアルバムが、2022年6月30日(木)に発売されました。ミュージカル俳優、クリエイターとしてマルチに活動し、YouTube「クロネコチャンネル」のホストも務める西川大貴さんと、ジャズピアニストとして国内外で活動する桑原あいさんがコロナ禍に書き上げたミュージカルで、豪華キャストの皆さんが参加されています。また、このアルバムは発売4日で初回生産分が完売。再販が、2022年7月17日(日)から開始しました。特設サイト (https://ame-musical.com/products/cd)から購入できます。

アイデアニュースでは、アルバムに参加された、海宝直人さん、内藤大希さん、spiさんの鼎談を、上、下に分けてお届けします。「上」では、アルバムに参加した時の想い、西川さんからのディレクションのこと、今回のアルバムを通して感じたお互いの印象や、お互いの共通点のことなどについて話してくださった内容を紹介します。「下」では、三人で話すのは初めてというみなさんに自由にお話しいただいたことや、今後の日本のミュージカル界について考えていることやそれぞれの抱負、今回の経験を踏まえて今思うことなどについて話してくださった内容を紹介します。

(左から)海宝直人さん、内藤大希さん、spiさん
(左から)海宝直人さん、内藤大希さん、spiさん

ーーspiさんが1987年生まれ、内藤さんと海宝さんが1988年生まれの同世代で、それぞれに第一線を走っていらっしゃることと、子供の頃からミュージカルに出演されている共通点もあり、お三方での鼎談を企画しました。お受けいただきありがとうございます。三人で一緒にお話をするのは初めてですか?

全員:初めてですね。

ーー『雨が止まない世界なら』アルバム企画のオファーを受けて、どんな想いで参加されましたか?

海宝:たいきくんが……ややこしいな(笑)。西川くんがこういうコンセプトで、こういう形にしていきたいと、構想しているところから話は聞いていて、準備稿から読ませていただいたりしていたので、コンサートを経てCDになるということで、ぜひ参加させてもらおうと思いました。

内藤:僕は昨年開催されたCOTTON CLUBでのコンサート(ワークショップ公演)を拝見したのですが、西川・桑原コンビの作品は初めて拝見したので、こういうことをやっているんだ、すごいなと思っていました。だから、お話を伺ってぜひやりたいと思いました。spiは西川くんと初めてじゃない?

spi:そうだね。最初に「YouTubeで朗読をやるのでお願いできませんか」と言われて「いいよ」と引き受けて、次に「CDを作るのだけどどう?」とのことで「いいよ」と引き受けました。なぜ「いいよ」と言ったのかというと、海外から持ってきたものを日本で上演して、その権利代を海外に払うよりは、日本産のものをどんどん作って、ミュージカル界を盛り上げたいという想いが、僕の根底に流れているからです。

ーー三者三様の想いで参加されたんですね。

全員:本当に、それぞれですね。

内藤:CDを通して聴いてみたのですが、みんな上手くて!

海宝:上手い!

spi:俺はまだ全体は聴けてなくて。

内藤:spiと吉沢梨絵さんのデュエット「きっとまだ」は、spiの長尺の歌を聞いたことがなかったので、こんなに素敵な歌声で、こんなに上手いんだと思いました。海宝くんの「狐雨の頃」は、ひとつの作品でした。シンプルに「上手い!」って。

海宝:本当にみんなすごいよね。さすが西川先生が集めた方々です。

内藤:人選がすごくない? この人にこの曲を当てるというのが、すごく合っていて、なおかつ、皆プロなんだなと思いました。

spi:参加している方々を知ったのが情報発表の時で、「大希いるの!? 海宝ってこういう仕事するんだ! 畠(畠中洋)さんいる! めっちゃすごいじゃん! 俺ここにいていいのか?」と、すごい人達の中に入っていることに驚きました。

ーー本当に素晴らしいアルバムで隙がないというか。もちろんCDという完成形を作るのだから当然だと思いますが、最初から最後までものすごい完成度で、一度かけたら聴き入ってしまいますね。収録現場でのディレクションなどを通して、どんなことを感じましたか?

spi:例えばポップスのレコーディングだと、表面的に聞こえが良ければいいとか、仮歌と同じように歌ってくれればいい、みたいなディレクションも多いと思うのですが、そうではなかったですね。曲の根底に流れているものを説明してくれて、それを共有して共感した上で、あなたなりに歌ってくれたものでいいですと言ってくれる現場だったので、アーティストというよりは俳優目線でレコーディングができました。ある意味やりやすかったのかなと思います。

ーーspiさんはデュエット曲を別々にレコーディングされたと伺いましたが、そこをどう聞かせたいみたいなオファーはありましたか?

spi:おそらく皆そうだと思いますが、すごく信頼してくれて「あなたの感じで」と、歌い手を信じてくれたので、どうしたいというよりは、感じたものを大事に歌いました。

ーー任された部分で、spiさんは具体的にどう表現したいと思われたのでしょうか?

spi:やっぱり、大希や海宝たち同年代の人達に刺激を受けて今の歌がある、というのは間違いなくて。憧れる人達のなかの二人です。僕が今いる畑は、歌よりも、ダンスやパフォーマンス、お芝居がメインのところになりますが、ミュージカル畑の人達の同年代、例えば海宝は10年前から本当に衝撃でしたし、そういう人達の歌を聞いて、俺もこうなりたいなと思ってきました。

今回、そこから学んだ思い切りや、その裏にある確実な技術で、精神的なものを、技術的に音的にどう出そうかなと。例えば「きっとまだ」では、「失恋だけれど、前に進みたいけれど、進めないかもしれないけれど、進みたい」というアンバランスな部分を、歌でどう表現したらいいのかと考えて歌いました。かつての仲間達やライバル達と、勝手に切磋琢磨させていただいた結果だと思っています。

ーー内藤さんの「正気を気取った狂人」は、どんなディレクションがありましたか?

内藤:僕はディレクションを何回も重ねたんです。ここはこういう感じだと思うとか、ここはこういう気持ちのテンションで言っているとか、擦り合わせを沢山して、細かくテイクを重ねて、いいところをとってもらいました。だから、完成したものを自分で聴いた時には大満足でした。でも、全曲聴いたら皆が上手くて衝撃を受けました。さらっと歌っているのですが、spiが言ったように技術というか、声のコントロール、息の量など、全てが絶妙なバランスで、どの曲も聴き入ってしまいました。

ーー内藤さんが歌う曲のテイストに、新鮮さを感じました。

内藤:西川くんの幼少期のジレンマや葛藤には、いまだに自分のなかに共有できる部分があるんです。彼は、クリエイトすることで大人になっていきましたが、僕は何もせずに、そのまま地繋ぎでここまで来てしまっているんですが、そういう部分がこの曲とリンクしていて、何も障害がなく理解しながら歌えたなと思いました。

海宝:西川くんは、よく人を見ているというか、その人のどの部分が曲に合うかを把握していて、特に大希くんとは長い付き合いだからこそもあるんだろうなと感じました。大希くんが持っている爆発力や表現力と、この曲とに違和感がなくてさすがだなと。今回のアルバムは、一曲一曲まったく違うジャンルに聞こえるのがすごく素敵だなと思います。

ザ・ミュージカルで、お芝居を観たような、一本のドラマを観たような満足感のある曲があったり、一曲のバラードのようにも聞こえたり、そのバランスが素敵だなと思っているんです。

spiのデュエットもとても素敵で、あの曲だけの空気感、雰囲気があって、特徴的だなと思います。僕は二人の歌が大好きなんです。ミュージカルで活躍する同年代は沢山いますが、その中でも表現の繊細さなど、特殊な能力を持っている二人だなと思っているので、今回一緒にできて嬉しいですね。

ーー海宝さんの「狐雨の頃 」は、どんなディレクションを受けましたか?

海宝:皆は、一度リハーサルみたいに歌ったんだよね?

内藤・spi:スタジオでね。

海宝:僕は自宅で軽く録音して一回送って、それを聴いてもらっていたので、リハーサルなしでいいかと。そうしたら、西川くんから20分くらいのビデオレターが届いたんです(笑)。

内藤:逆に、そっちの方が大変だよね(笑)。

海宝:結構な長尺で(笑)。「こういう意図があって、こういう風景があって、いろんな選択肢があって、細かい部分は任せますが、ここではどういう展開にこの後なったのかな、と想像してもらえると嬉しいです」みたいなことを、曲の初めから最後まで送っていただいたビデオレターを観てから、本番に臨みました。本番では、大希くんが言ったみたいに、細かくさらに深めて録りました。

内藤:やっぱり上手で素敵だし、声がいい。表現や奥行きなど、素晴らしくないですか? 圧巻で、誰も何も言うことがないと思います。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、今回のアルバムを通して感じたお互いの印象や、お互いの共通点のことなどについて話してくださった内容などインタビュー前半の全文を掲載しています。27日掲載予定のインタビュー「下」では、三人で話すのは初めてというみなさんに自由にお話しいただいたことや、今後の日本のミュージカル界について考えていることやそれぞれの抱負、今回の経験を踏まえて今思うことなどについて話してくださった内容などインタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■海宝:全員で歌う「世界は変わってない」は、特に皆が思う存分表現を発揮している

■内藤:西川くんとspiの組み合わせは、友達の友達が友達みたいで、何か嬉しかった

■spi:内藤は、この素の感じから、繊細な表現が出てると思う。海宝:わかるわ〜

■spi:海宝は、俺ら世代のヒーローじゃん。内藤:わかるわかる!

■spi:海外作品をやるときよりも、表現したいことを100%表現しきれている本作

<ソングサイクル・ミュージカル『雨が止まない世界なら』コンセプトアルバム>
「雨がずっと止まなかったら?」“降り止まない雨”をテーマに綴った 20 曲の短篇集ミュージカル
作詞・構成 西川大貴 作曲 桑原あい

発売日:2022年6月30日(木)
定価:4,200 円(税込み)

【収録曲(全21曲)】
1. 今日も窓が濡れる / 小此木麻里・清水彩花・田中秀哉・畠中洋
2. 狐雨の頃 / 海宝直人
3. 雨蛙の主張 / 土居裕子・畠中洋
4. news#1 / 内海啓貴(語り)
5. 逃げのびるだけでいいだろう / 西川大貴
6. 海に潜ったクジラ / 田村芽実
7. 知ろうとしない / 鈴木壮麻
8. 正気を気取った狂人 / 内藤大希
9. 今ならきっと / 豐原江理佳
10. We’re Singin’ in the Rain / 昆夏美と雨が止まない合唱団
11. Blue Blue Earth / 七尾旅人
12. 東京漂流 / 咲妃みゆ
13. NEWS!NEWS!NEWS! / 伊藤広祥・塚本直・松原凜子・山野靖博
14. news#2 / 内海啓貴(語り)
15. 空に飛ばす手紙 / 田村芽実
16. news#3 / 内海啓貴(語り)
17. きっとまだ / spi・吉沢梨絵
18. 舟を漕ごう / 西川大貴
19. 世界は変わってない
20. Epilogue D.C.

Piano 桑原あい、Violin 吉田篤貴、2nd Violin 地行美穂、Viola 世川すみれ、Viola 三品芽生、 Cello 島津由美、Bass 勝矢匠、Drums 山田玲、Guitar 伊藤ハルトシ

雨が止まない合唱団:内海湧真・河本雪華・小林謙真・佐藤孔明・二宮伶寧・平賀晴
Voice:吉田玲菜 Tap:西川大貴

特設サイト: https://ame-musical.com/
Twitter: https://twitter.com/ame_musical
Instagram: https://www.instagram.com/ame.musical/

Teaser i(CM): https://youtu.be/crEJ37jcF3I
Teaser ii(レコーディング風景): https://youtu.be/ktQZeCEbNLY 
楽曲ダイジェスト:https://youtu.be/8phzKRaurLE

製作・企画・制作
「雨が止まない世界なら」実行委員会 / クロネコチャンネル / Setsuna

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■海宝:全員で歌う「世界は変わってない」は、特に皆が思う存分表現を発揮している

ーーこれまでに、それぞれご一緒されている作品の現場で聴いてきた歌と、今回の楽曲では、印象が違うところもありましたか?

海宝:今回強く感じるのは、西川くんがそれぞれの個性をピックアップして、この曲を歌ってほしいと思って選んでいる人達だから、その個性を存分に発揮してほしいんだろうなという感じがしていて。

内藤:spi:うんうん。

海宝:普通のミュージカルだったら、spiが言っていたように、もっと「キャラクターがこうだから、こういう感じで歌って欲しい」とか、自分ではないものに引き離していく作業も必要になってくると思いますが、今回のアルバムではその人の個性が存分に発揮された上で表現されるものが素敵だなと。最後の全員で歌う「世界は変わってない」は、「海宝くんの節回しをもっともっと出してほしい」とディレクションを受けながら歌ったのですが、皆が思う存分表現を発揮している感じが、特に素敵な曲だなと思います。

■内藤:西川くんとspiの組み合わせは、友達の友達が友達みたいで、何か嬉しかった

内藤:僕は、西川くんとspiって結びつかなかったんですよ。でも、結びつくとこんな素敵な楽曲になるんだと。

海宝:二人、合ってると思う。

内藤:そうだよね。何か嬉しかったです。友達の友達が友達みたいな。

全員:(笑)。

内藤:「コイツ面白いから、マジ上手いから」みたいな(笑)。

海宝:仲良くなったんだ。

内藤:そう、それで作品作っちゃうの。こうやって共有できるのが嬉しいですね。

spi:二人ともぶちかましてるのは知っているので。

内藤:でも、聴いてないんでしょ?

spi:聴かなくてもわかるよ! どうせぶちかましてるよ!

内藤・海宝:(笑)。

■spi:内藤は、この素の感じから、繊細な表現が出てると思う。海宝:わかるわ〜

spi:内藤は、この素の感じから、こんなに上手な繊細な表現が出てるんだと思う。

海宝:そうだよね。わかるわ〜。

内藤:本当!?

spi:でしょ? ギャップが凄い。

海宝:わかるわかる。

■spi:海宝は、俺ら世代のヒーローじゃん。内藤:わかるわかる!

spi:海宝は、俺ら世代のヒーローじゃん。

内藤:わかるわかる!

spi:何を歌ってもマジで凄いし、海宝に憧れている人はものすごく沢山いるし、俺だってその中のひとりだし。その中で、この三人に共通していることは、俺らの世代で子役からやっていることプラス、海外のミュージカルを日本語でやったりするじゃないですか。

海宝・内藤:そうだね。

■spi:海外作品をやるときよりも、表現したいことを100%表現しきれている本作

spi:そうすると日本語が足りなかったりして、表現が難しくなるんですよね。海外の詞を日本語にすると、もっと言いたいことがあるのに、削ってこれしか言えないのかということが起こりやすくて、そういう作品に二人も出ているし、俺は英語がわかる分、そのもどかしさを強く受けたりするんです。

英語だとこんなに言っているのに、日本語だとそんなに表現できないのかと。しかも西川くんもそういう海外ミュージカルを経験してきていて、そのもどかしさを持っている人達が、ミュージカルや音楽で表現する経験のある人達で作る、日本人が考えた日本的なメロディの日本語の歌詞。要するにそれは100%なんですよね。

海宝・内藤:そうそう!

spi:表現したいことを、100%表現しきれているんですよ。『メリー・ポピンズ』『レ・ミゼラブル』『ジャージー・ボーイズ』などよりも、日本語で表現できていることが遥かに多いと思う。そこを、他の方々ももちろんですが、この三人は特に本領発揮しているんじゃないかなという気はします。

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“「三人で話すのは初めて」、『雨が止まない世界なら』海宝直人・内藤大希・spi(上)” への 2 件のフィードバック

  1. たのしいひと より:

    鼎談ありがとうございます!楽しく読みました!
    特に、spiさんの海外の詩を日本語にする時の表現の難しさやもどかしさが、なるほど、思いました。
    表現したいことを100パーセント表現出来ている、雨が止まない世界なら
    いつか、ミュージカルになる事がますます期待してしまいますね!

  2. まき より:

    新鮮な組合わせのお三方の話がとても興味深かったです!
    同世代で近いフィールドで活躍しつつも、お互いをどのように思っているのか、ファンは中々知ることが出来ないので、率直な思いを読めてとても嬉しいです。例えば何年か後に読んでもとても楽しいだろうな、と思えるインタビューでした。
    インタビューを読んでより一層3人の共演を観てみたくなりました!『雨が止まない世界なら』の舞台上演で実現したらもっといいですね!

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