「しろさびとまっちゃん」福島原発20km圏内で生きる猫と松村さんの日々

「しろさびとまっちゃん 福島の保護猫と松村さんの、いいやんべえな日々」
「しろさびとまっちゃん 福島の保護猫と松村さんの、いいやんべえな日々」

「しろさびとまっちゃん 福島の保護猫と松村さんの、いいやんべえな日々」

フリーランスのフォトグラファー太田康介さんは、福島第一原発20キロ圏内で生きる動物たちのためのボランティアを続けながら、出会った動物たちのことを、「のこされた動物たち」(2011年)と「待ちつづける動物たち」(2012年)という2冊にまとめられています。このたび、太田さんの新しい本「しろさびとまっちゃん~福島の保護猫と松村さんの、いいやんべぇな日々」が出ました。

今も、東京から福島に通い続け、給餌や「えさ台」の修理をして一回の訪問で650キロも走行する太田さんは大の猫好き。この新しい本、「しろさびとまっちゃん」も、主人公は「しろ」と「さび」という姉妹猫です。

まっちゃんというのは、松村直登さん。福島第一原発から10キロ前後の富岡町にひとりとどまっている男性です。松村さんは、彼以外全員避難した町で、たったひとり、そこに住み続けています。殺処分を待つ牛を引き取り、残された犬や猫に餌をやって、そして、2013年7月に保健所行きになりそうだった子猫を引き取られました。この本は、そんなまっちゃんと、引き取られた「しろ」と、「さび」の写真物語です。

松村さんは、今、犬の「石松」とダチョウ、イノシシ、ポニー、牛、そしてオッドアイの白猫「しろ」とさび柄猫の「さび」と一緒に暮らしています。2匹とも2013年夏生まれ。どの写真も、むじゃきな姉妹猫の可愛さと、人がいなくなったことで、かえってますます緑美しく、豊かな自然に恵まれた福島の風景に彩られています。

どんくさくて、ダチョウに近づきすぎたり、石松の餌を食べちゃったり、転んで泥だらけになる「しろ」の可愛いこと!何も知らずに見たら、にこにこしてしまう写真。でも、ここは、あの2011年3月11日の後の福島・富岡町なのです。人間はひとりだけ。福島のラストマンと海外の報道では呼ばれている松村直登さんたったひとり。

太田さんは『松村さんがしてくれたこと』と題して、こんな文章を書かれています。

『人間も動物も同じ命であるはずです。食事でいただく命には意味がありますが、”意味なく”殺されることには我慢ができないという徹底して貫かれた松村さんの意志。彼らの命がつながっているのは、松村さんがここに留まり続けたからにほかありません。

そして今、私が痛感しているのは、この場所でおおくの動物の命が失われたのは、国や原発のせいだけではないということ。私を含めた、人々の動物に対する意識の低さが招いた悲劇だと感じています。すべては、「もうどうしようもない」「可哀そうだけど仕方がない」とあきらめ、動かなかった人間のせい。みんなに目の前の一匹を救う意志があれば、助けられた命だってたくさんあったと思うのです』

まっちゃんと「しろ」

まっちゃんと「しろ」

「しろさびとまっちゃん~福島の保護猫と松村さんの、いいやんべぇな日々」の購入は、フォトグラファー太田康介さんのブログ「うちのとらまる」の中の、「松村さんとしろさびのいる風景」ページ」文末のリンクからどうぞ →「松村さんとしろさびのいる風景」のページはこちら(http://ameblo.jp/uchino-toramaru/theme-10077511866.html)

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アイデアニュース有料会員向け【おまけ】  太田さんの写真展を見に行った時のショック、今も忘れることが出来ません(松中みどり)

筆者は、2013年11月に京都の知恩院で開催された太田さんの写真展を見に行った時のショックを今も忘れることが出来ません。犬や猫などペットのことばかり気になっていた私の目に飛び込んできた牛たち。立ち上がれないほど痩せた姿。水を飲みたくて用水路に落ちて死んだ牛・・・

松村さんがここにいてくれることで救われた命のことを思い、失われた命を思い、胸の奥は痛みます。おなかを空かして死んでしまった犬や猫、家畜・・・またすぐに戻ってこられると思って、動物たちを置いて避難してしまった人たち。助けようと今も頑張っている人たち。すでに失われた命と、生き残っている動物たち。どうしようもない現実の中でも、写真の中の2匹の猫はなんだかとても幸せそうなのです。

「しろ」と「さび」は2014年4月そろって子どもを生みました。生き残ったのら猫が父親だと思われます。猫の家族が増えたことで、松村さんの暮らしは穏やかな幸せを増しているようです・・・動物たちと一緒に生きる。ここで生きる。まっちゃん、今日も富岡町でひとり、生きているのです。猫たちの幸せが、まっちゃんの穏やかな日々が守られますように。いいやんべぇな日々が続きますようにと心から祈ります。

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