噂に違わぬ大迫力! 客席のどよめきと興奮が凄かった「I LOVE MUSICALS」

「I LOVE MUSICALS ~ミュージカル・グレイテスト・ヒッツ・コンサート~」より=(C)タカハシアキラ

2016年7月7日に日本武道館で開催された「I LOVE MUSICALS ~ ミュージカル・グレイテスト・ヒッツ・コンサート ~」を拝見しました。”七夕の日”1日限りの2回公演という貴重なこのコンサートは、スウェーデンの国民的人気ミュージカル俳優であるピーター・ジョーバックさんの発案で2012年に始まり、ヨーロッパで15万人以上を魅了し大ヒット。ヨーロッパ以外で初めて開催されたのが今回の日本公演なのだそうです。

メインキャストは、ブロードウェイとウエストエンドの両方で「オペラ座の怪人」のファントム役を演じたピーター・ジョーバックさん、”ミュージカル界の貴公子”の異名を持ち「オペラ座の怪人25周年記念公演 in ロンドン」でファントム役を演じたラミン・カリムルーさん、ブロードウェイで初めて、アフリカ系俳優としてファントム役を演じたノーム・ルイスさん、という、世界クラスのファントム俳優であるお三方の揃い踏み。

さらに「リトルマーメイド」アリエル役、「オペラ座の怪人」、「ラブ・ネバー・ダイ」という一連の作品でヒロインのクリスティーヌを演じたシエラ・ボーゲスさん。そしてスペシャルゲストとして「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役「ミス・サイゴン」のキム役、シルヴェスター・リーヴァイさん作曲によるミュージカル「王家の紋章」ワールドプレミアではヒロインのキャロル役を演じる、日本ミュージカル界の歌姫、新妻聖子さん、という、ミュージカルをこよなく愛するファンにとっては、まさに垂涎ものの豪華キャストによる千載一遇の競演でした。

「I LOVE MUSICALS ~ミュージカル・グレイテスト・ヒッツ・コンサート~」より=(C)タカハシアキラ

「I LOVE MUSICALS ~ミュージカル・グレイテスト・ヒッツ・コンサート~」より=(C)タカハシアキラ

上演当日の都心は梅雨の中休みの快晴で35度超えの猛暑。会場となった武道館には熱狂的なミュージカルファンが集い、開演前の客席では、このコンサートを待っていたんだ!という内容の興奮した会話があちこちで聞こえてくる程で、空調が効いて快適な筈の館内も、外の気温に負けるとも劣らずの「熱い」空間になっていました。

ステージを挟む形で上方左右両サイドには大画面モニターが設置され、ステージやキャストのアップ、字幕を映し出すようになっていて、後方の席でも迫力あるステージをストレス無く楽しめるようになっていました。

いよいよ東京フィルハーモニー交響楽団による演奏が始まると、生音の重低音が武道館の館内一杯広がり、ズシズシと足元からも振動を感じて、まさに音楽の大海に体ごと呑み込まれていくような感覚でした。

最初の楽曲は『エニワン・キャン・ホイッスル』から「エブリバディ・セズ・ドント」。メインキャスト4人での初っ端からノリノリの熱唱!客席のテンションも、一気に上がります。

1曲目直後のMCではメインキャストの自己紹介と、コンサートタイトルでもある「私はミュージカルが大好き!」という、それぞれ”ミュージカル愛”迸る宣言から始まったこのコンサート。そのセットリストをご覧下さい。

◆ ACT1 ◆

「EVREYBODY SAYS DON’T」 『Anyone Can Whistle』より ピーター・ジョーバック、ノーム・ルイス、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス

「OVERTURE」 オーケストラ

「WHY GOD WHY?」 『Miss Saigon』よりピーター・ジョーバック(昼公演)/ラミン・カリムルー(夜公演)

「LAST NIGHT OF THE WORLD」 『Miss Saigon』より ラミン・カリムルー(昼公演)/ピーター・ジョーバック(夜公演)、新妻聖子

「I’D GIVE MY LIFE FOR YOU」 『Miss Saigon』より 新妻聖子

「PART OF YOUR WORLD」 『The Little Mermaid』より シエラ・ボーゲス

「OUT THERE」 『ノートルダムの鐘』より ノーム・ルイス

「LUCK BE A LADY」 『Gays & Dolls』より ラミン・カリムルー(昼公演)/ピーター・ジョーバック(夜公演)

GERSHWIN MEDLEY (「I Got Rhythm」/「Nice Work If You Can Get It」/「Fascinating Rhythm」) シエラ・ボーゲス、ピーター・ジョーバック(昼公演)/ラミン・カリムルー(夜公演)、ノーム・ルイス

「LILY’S EYES」 『The Secret Garden』より ピーター・ジョーバック、ノーム・ルイス、ラミン・カリムルー

「BEING ALIVE」 『Company』より ピーター・ジョーバック

「A BOY LIKE THAT」/「I HAVE A LOVE」 『West Side Story』より 新妻聖子/シエラ・ボーゲス

「TONIGHT」 『West Side Story』より 全員

◆ ACT2 ◆

『CABARET』/『CHICAGO』MEDLEY (「Wikllkommen」/「Cabaret」/「All I Care About」/「All That Jazz」) ピーター・ジョーバック、シエラ・ボーゲス、新妻聖子、ノーム・ルイス

「KISS OF THE SPIDER WOMAN」 『蜘蛛女のキス』より ピーター・ジョーバック

「THE PHANTOM OF THE OPERA」 『オペラ座の怪人』より ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス

「THE MUSIC OF THE NIGHT」 『オペラ座の怪人』より ピーター・ジョーバック、ノーム・ルイス、ラミン・カリムルー

「I KNOW HIM SO WELL」 『Chess』より 新妻聖子、シエラ・ボーゲス

「OVERTURE」/「NOTHING’S GONNA HARM YOU」/「JOHANNA」 『Sweeney Todd』より オーケストラ、ノーム・ルイス、新妻聖子

「GETHSEMANE」 『Jesus Christ Superstar』より ピーター・ジョーバック

「YOU’RE NOTHING WITHOUT ME」 『City of Angels』より ラミン・カリムルー、ピーター・ジョーバック

「ENTR’ACTE/SUNSET OULEVARD」 『サンセット大通り』より ラミン・カリムルー

「LOVE NEVER DIES」 『Love Never Dies』より シエラ・ボーゲス

「I GOT PLENTY O’ NUTTIN’」 『ポーギーとベス』より ノーム・ルイス

「COME WHAT MAY」 『Moulin Rouge!』より ピーター・ジョーバック、新妻聖子

『LES MESÉRABLES』MEDLEY (「夢破れて」/「彼を帰して」/「星よ」/「One Day More」) シエラ・ボーゲス、ラミン・カリムルー、ノーム・ルイス with ピーター・ジョーバック、新妻聖子

「YOU’LL NEVER WALK ALONE」/「CLIMB EV’RY MOUNTAIN」 『回転木馬』/『サウンド・オブ・ミュージック』より 全員

(公式パンフレットより)
<I LOVE MUSICALS ~ ミュージカル・グレイテスト・ヒッツ・コンサート ~>
【東京公演】2016年7月7日(木)日本武道館 (この公演は終了しています)
公式サイト ⇒http://www.ilovemusicals.jp/

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■ピーター・ジョーバックさん、「GETHSEMANE」での高音シャウトに、ハッと

■ラミン・カリムルーさん、見えない”何か”が客席に押し寄せてくるような衝撃

■ノーム・ルイスさん、柔和な印象から一瞬でのジャベールへの変化に、役者って凄い!

■シエラ・ボーゲスさん、清楚なクリスティーヌからコケティシュな『キャバレー』まで

■楽曲のもたらす、感情の波に身を任せて音楽にたゆたう気持ちの良いひと時

■ピーター・ジョーバックさん、「GETHSEMANE」での高音シャウトに、ハッと

楽曲のラインナップは、本場での観劇経験なし日本国内限定で海外ミュージカルを楽しむ私でも、どこかで耳にしたことのある有名なものぱかり。スウェーデン生まれのピーター・ジョーバックさんは、甘いマスクでやわらかいトーンのセクシーボイス。歌唱では一転クリアに響く歌声で、「GETHSEMANE」での高音のシャウトは、ハッとするほど素晴らしいでした。この歌声を聴いていると、彼の歌う甘やかなバラードあたりも聴いてみたいという欲が生まれてきます。

■ラミン・カリムルーさん、見えない”何か”が客席に押し寄せてくるような衝撃

イラン生まれでカナダ育ちのエキゾチックな雰囲気漂うラミン・カリムルーさんは、質量と芯のあるとても印象に残る魅力的な歌声。彼が歌い出すと、彼から客席へ向かって見えない”何か”が押し寄せてくるような、意識の奥にカーンと響くような衝撃を受けました。余談で、歌の合間のMCでは、ピーターさん、ラミンさんのお二人が、それぞれのファントム役等の経歴をネタに、どっちが俳優として上手いか?という競争で張り合い、会場の笑いを誘う演出があり、そのさまがちょっと面白くて、一気にお二人に親しみが沸きました(笑)

■ノーム・ルイスさん、柔和な印象から一瞬でのジャベールへの変化に、役者って凄い!

アメリカ生まれのノーム・ルイスさんは、朗らかな方なのだろうなあと思われる人柄がにじみ出たような笑顔と深みのあるお声が素敵。周囲を包み込むような柔らかな雰囲気と軽快な歌声は聴いていてとてもほっこりとしました。『レ・ミゼラブルメドレー』では、ジャベールの「星よ」を熱唱。それまでどちらかといえばバルジャンに近い雰囲気を漂わせていた彼が、歌いだした途端に表情も雰囲気も硬質な印象が勝つ、ジャベールその人に変化していたのには、思わず、役者って凄い!と、感嘆しきりでした。

■シエラ・ボーゲスさん、清楚なクリスティーヌからコケティシュな『キャバレー』まで

メインキャストの紅一点、シエラ・ボーゲスさんは、耳に心地よく響く美しいソプラノが魅力的。『ファントム』のクリスティーヌや『ウェストサイド』のマリアとして彼女が歌うとき、さながらディズニー映画の清楚なヒロインが、確かな生身をもってステージに存在しているような錯覚を覚えました。かと思うと『キャバレー』ではコケティシュな雰囲気を纏って登場し、非凡な女優としての極一端も垣間見せてもらいました。シエラさんとラミンさんのお二人による「THE PHANTOM OF THE OPERA」は、噂に違わぬ大迫力で圧巻!客席のどよめきと興奮はもの凄かったです。

■新妻聖子さんの『ミス・サイゴン』、命懸けで子を想う一人の母が確かに舞台上に

スペシャルゲストの新妻聖子さんは、今回も小柄な身体に似合わぬパワーある歌声で魅せてくれました。ACT1の『ミス・サイゴン』のコーナーで初めてステージ上に現れた彼女は、キムとしてクリス(昼公演はラミン・カリムルーさん)とロマンチックに「LAST NIGHT OF THE WORLD」を歌い上げ、続いて「I’D GIVE MY LIFE FOR YOU」日本では「命をあげよう」として有名な曲を熱唱。あの瞬間、眼前のステージは「コンサート会場」ではなく、命懸けで子を想う、一人の母が確かに存在していました。新妻さんはコンサートなどでも何回か拝見していますが、楽曲の持つ世界感を瞬時に自らを通して更に豊に具現化し、客席へ渡してくださる女優さんだと感じています。

■楽曲のもたらす、感情の波に身を任せて音楽にたゆたう気持ちの良いひと時

楽曲によってはそのイントロが流れるだけで、ざわざわと肌がざわめいたり、鼻の奥がツーンとなって、みるみる涙が溜まってきたりと、おそらく多くの方が経験したことのある、曲によって”その曲を聴いた瞬間”の感情を呼び起こされてしまい、「お芝居」ではなく「コンサート」であるにもかかわらず、我ながら結構な感情の起伏を覚えて、音楽が私達にもたらす”影響”は本当に侮れないものだと改めて感じました。楽しかったり嬉しかったり、切なかったり悲しかったり。楽曲のもたらす、感情の波に身を任せて音楽にたゆたう気持ちの良いひと時でした。

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