進化するハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」、今回もやっぱり引き込まれた

Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

「週刊少年ジャンプ」にて連載中のバレーボール漫画「ハイキュー!!」を舞台化した作品、「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』“烏野、復活!”」が、2016年10月28日より東京・岩手・福岡・大阪の4都市で公演中です。2015年11月に初演、2016年4月に再演、そして今回の新作。人気の2.5次元系舞台「ハイキュー!!」の東京公演を、フリージャーナリストの中本千晶さんに紹介していただきます。

■2.5次元であろうとなかろうと、良い舞台は良いし、つまらないものはつまらない

じつは私、すっかり舞台版「ハイキュー!」のファンになってしまっている。

この作品は「週刊少年ジャンプ」の人気連載漫画を舞台化したものだから、今流行りの「2.5次元舞台」ということになる。もともとこの作品の存在を知ったのも、2.5次元系の舞台に詳しい人に「最近のオススメは?」と聞いたとき、これだと即答されたのがきっかけだった。ちょうど1年前の今頃だったと思う。その時は観に行けなかったが、今年の4月に再演されたときにさっそく観て、ハマってしまったのだった。

最近は「2.5次元舞台」と「それ以外」の間に線引きをして「2.5次元舞台」をいろいろな意味で特別視してしまったりするが、そんな線引きはいずれ意味をなさなくなってしまうに違いない。2.5次元であろうとなかろうと、良い舞台は良いし、つまらないものはつまらない。そして、たとえ原作を知らなくても、舞台としてのクオリティが高ければ十分に楽しめる。そんなシンプルな結論に落ち着くのだと確信させてくれたのがこの作品だった(この辺り、つい最近発売となった拙著『宝塚歌劇に誘う7つの扉』でも触れたので良かったらご覧ください)。

バレーボールを舞台上でどう見せるのかにも注目だ=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

バレーボールを舞台上でどう見せるのかにも注目だ=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

■かつては強豪として知られていた高校バレー部をめぐる物語

かつては強豪として知られていた宮城県の烏野(からすの)高校バレー部。そこに2人の風変わりな新入部員が入ってくるところから物語は始まる。ひとりは、抜群の運動能力と人懐っこさ、そしてバレーが好き!という気持ちだけは誰にも負けない日向翔陽(須賀健太)。もうひとりは「コート上の王様」の異名を取る天才セッターだが、じつは心を閉ざしている影山飛雄(木村達成)だ。最初は反発しあう2人だったが、やがて強い信頼関係で結ばれた名コンビとなっていく。同時に、バラバラだったバレー部のメンバーも一人また一人と戻ってくる。いよいよ強豪復活への第一歩か??

名コンビとなっていく日向(後)と影山(前)=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

名コンビとなっていく日向(後)と影山(前)=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

■第二弾となる今回は、強豪時代の因縁のライバル校との練習試合から

……というところまでが、昨年11月に初演された第一弾で描かれていた。そして、第二弾となる今回は「烏野、復活!」のサブタイトルが付き、強豪時代の因縁のライバル校、音駒(ねこま)高校との練習試合から始まる。その名も「ゴミ捨て場の決戦」というだけあって、開演前の舞台上には古い家具やら自転車やらギターやらが山積みされている。八百屋の舞台の中央には丸いセリがあり、これが傾斜を変えながらぐるぐる回るという仕掛けだ。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、さらに詳しい公演レポートを掲載しています。

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■気鋭の才能が結集した舞台はスタイリッシュで、現代劇を彷彿とさせる進行

■目を見張る映像使い。バレーボールの試合を、あの手この手で舞台上で表現

■気恥ずかしくなるような「名言」を正々堂々とセリフで言ってくれるのもお楽しみの一つ

■2回戦の伊達工業戦は、さながらダンス対決の趣き。振付は「左 HIDALI」の笹尾功

■役者に対する賞賛というよりは、まるでスポーツ観戦の客席のような拍手喝采

■まるで連続ドラマの第2回目を見終わった時のようなワクワクした気持ち

<ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“烏野、復活!”>
【東京公演】2016年10月28日(金)~11月6日(日)AiiA 2.5 Theater Tokyo
【岩手公演】2016年11月12日(土)~13日(日)田園ホール 矢巾町文化会館
【福岡公演】2016年11月17日(木)~20日(日)キャナルシティ劇場
【大阪公演】2016年11月24日(木)~27日(日)梅田芸術劇場 メインホール
【東京凱旋公演】2016年12月1日(木)~4日(日)AiiA 2.5 Theater Tokyo
【ライブビューイング】2016年12月4日(日)18:00開演 全国47都道府県の映画館

<関連サイト>
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“烏野、復活!”
http://www.engeki-haikyu.com/
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“烏野、復活!”ライブビューイング
http://www.toho.co.jp/theater/ve/engeki-haikyu/
須賀健太twitter
https://twitter.com/suga_kenta1019?lang=ja
木村達成officialsite
https://twitter.com/tk_officialsite

Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

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■気鋭の才能が結集した舞台はスタイリッシュで、現代劇を彷彿とさせる進行

ウォーリー木下(演出・脚本)、中屋敷法仁(脚本)、和田俊輔(音楽)ら、気鋭の才能が結集して創り上げる舞台は相変わらずスタイリッシュで、モノクロームな色彩が斬新。白や黒の衣装をつけたコロスたちの淡々としたナレーションで進行していく手法は、むしろ現代劇を彷彿とさせる。

■目を見張る映像使い。バレーボールの試合を、あの手この手で舞台上で表現

もちろん「ハイパープロジェクション演劇」と称するだけあって、映像使いには目を見張るものがある。バレーボールの試合を舞台上でどうやって表現するのか?と疑問に思われるだろうが、それをあの手この手で見せてくれるのも楽しい。

笑顔が眩しい!日向翔陽(須賀健太)=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

笑顔が眩しい!日向翔陽(須賀健太)=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

間に挟まるアナログでコミカルな癒し場面も健在だ。今回は練習試合の合宿所の場面を、何と布団を活用して、烏野、音駒それぞれの夜を早変わりで見せる。学生時代の修学旅行の夜などをちょっと懐かしく思い出してしまうような身近感。その身近なバレー部が成長し、一歩一歩前進していくのが嬉しいのだ。

■気恥ずかしくなるような「名言」を正々堂々とセリフで言ってくれるのもお楽しみの一つ

この作品、普通じゃちょっと気恥ずかしくなるような「名言」を正々堂々とセリフで言ってくれるのもお楽しみの一つかもしれない。1幕の名言は「翼がないから、人は飛び方を探すのだ」。「飛べ!」と巨大な文字で書かれた幕が降りたところで休憩だ。

因縁のライバル・音駒高校=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

因縁のライバル・音駒高校=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

続く第2幕ではいよいよインターハイの予選が始まる。次なる名言は「勝とうとしなきゃ、勝てない!」だ。烏野のメンバーが少しずつ変わっていく。自分たちの強みが何かを知り、その強みの使い方を考えるようになっていく。その中で、一人ひとりが自らの役割を自覚していく。烏合の衆が「チーム」になっていくのだ。

■2回戦の伊達工業戦は、さながらダンス対決の趣き。振付は「左 HIDALI」の笹尾功

2回戦の伊達工業戦は、さながらダンス対決の趣きだ。振付を担当したのは、動きのプロフェッショナル集団「左 HIDALI」の笹尾功。ボディーパーカッション的な振りもある伊達工業のダンスは迫力十分だ。クライマックスではミラーボールもぐるぐる回る。こう見せられると、今後出てくる学校との対決は、どんな風に見せてくれるのだろう?という期待も膨らむ。

伊達工業(左)・烏野高校(中央)・音駒高校(右)=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

伊達工業(左)・烏野高校(中央)・音駒高校(右)=Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

■役者に対する賞賛というよりは、まるでスポーツ観戦の客席のような拍手喝采

何となく烏野高校が勝つとはわかってはいるものの、本当に勝利した時は客席が拍手で沸いた。それは役者のパフォーマンスに対する賞賛というよりは、「烏野、勝利おめでとう!」という、まるでスポーツ観戦の客席のような拍手喝采だった。客席の私たちはいつの間にか烏野応援団となってしまっていたのだった。

■まるで連続ドラマの第2回目を見終わった時のようなワクワクした気持ち

次はいよいよ強豪、青葉城西高校と対戦するのだろう。この高校には影山の兄貴分たる及川徹がいる。当然のように第三弾も上演されるものと確信し(別にどこで発表されているわけでもないのだが)、「次はどうなるんだ??」と、まるで連続ドラマの第2回目を見終わった時のようなワクワクした気持ちで席を立った。

最後は全員総出で盛り上がる Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

最後は全員総出で盛り上がる Ⓒ古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe

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