「『ピアフ』は、初演の方がプレッシャーが無かった」 碓井将大インタビュー(下)

碓井将大さん=撮影・達花和月

英国の女優で劇作家のシャーロット・ジョーンズ作の舞台『The Dark』が、2017年3月3日から、東京の吉祥寺シアターで上演されます。この舞台に出演する碓井将大さんとプロデューサーの綿貫凜さんのインタビュー、「下」です。有料会員限定部分には、碓井さんがこれまで出演された『ピアフ』や『CRESSIDA』などについてうかがったお話も掲載しています。

碓井将大さん=撮影・達花和月

碓井将大さん=撮影・達花和月

■6部屋で、同じタイミングで同時に違う人が動いていたり、いろんなお芝居が一斉に起こっている

――それでは作品の見どころは、どんなところでしょう?

お客さんの視点で言うと6部屋の中で、同じタイミングで違う人が動いていたりとか、フォーカスするポイントが結構あったりして、こっちの人が喋っているけど、こっちの人が何か作業があったりとか、こっちの人が喋っているけど、まだこっちの人はテレビ観ているとか、いろんなお芝居が、いろんな所で一斉に起こっているので、勿論確かに観ていて、こっちちょっとうるさいな、というのが絶対あると思うんですけど、そういうストレスも結構日常だと起こる事だから、一回観たときに例えばこっちの人の家族にフォーカスを置いて観たっていう人も多分出てくるだろうし。例えば1度観て、あ、面白かったなって思ったら、もう1回観に来て、例えばこっちの人がどういう風なことをしているのかな?とか。いろいろなところに視点を置いてもらえると、この作品『The Dark』のもっとコアな部分を知ることができるかなぁ、と思いますね。

――3家族それぞれの視点で観ることによって、いろんな角度から物語を観ていろいろわかることもありますよ、という感じでしょうか。

そうですね。高橋さんがそういう細かいところに気を配って演出しているので。例えば「そのタイミングで入ってこないで」とか「そのタイミングではまだちょっと待っといて」とか「そのタイミングで動かれるとちょっと、もうちょっとそっちも観たい」とか。その喋っている人だけじゃなくて。この空間の同時に生きている人たちはやっぱ、皆正確に切り取ろうとしているから。何回も何回もやらないと、こっちの家族はちょっと繋がってない、とか。こっちの家族だけが繋がっている、みたいになってしまうので。だからその辺は結構何回観ても、面白いかなっていう感じですかね。

――例えるなら、舞台上のワンシーンを切り取ったとき、スポットライトが当たっているような物語のメインは、普通はひとつですが、この芝居に関しては、3つスポットライトが同時に当たっているような。

■オープニングの面白さ、僕は演ってるから、あまりこう完全には見れないけど~

そうですね。同時に3つがこう、動いているような状態になるので。

――なおかつ、それぞれが芝居の主役を演じるんだけれども、それぞれの芝居の邪魔をしない。しないけれども…、

綿貫:リンクもしていくんですね。会話もリンクしていくし。最初のオープニングは、音と明かりがものすごく変化するので、そういうのを体感する意味でも、お客さんは楽しめるんじゃないかなと思います。(碓井さんに向かって)オープニング、ね、面白いよね。

うん、うん。ちょっと僕は演ってるから、あまりこう完全には見れないんですけど~。

綿貫:あ、そうか(笑)。面白いんですよ。あちこちで(照明が)スイッチングされていくんですよ。

――役者あるあるですね(笑)。観客としては、演じられてる方に「照明が綺麗ですね!」って観た感動をお伝えするんだけれど、「いや、演じてるから分からないんですよー」って、伝わらない(笑)。

そうそう(笑)。分からなかったです。

綿貫:そうなんですよ、役者さんは分からないんですよ。特に今回も割と皆が出突っ張り、ま、ちょっと居なくなったりするところもあるんですけど、ほぼほぼ全員が出突っ張りなので、多分観られないですね、こちら(客席側)からは、なかなか。

――舞台袖から観る機会もほとんどなさそうですね。

綿貫:観られないですね。

そうそう。それが残念なんですけど(笑)。

※有料会員限定部分には、碓井さんがこれまで出演された『ピアフ』や『CRESSIDA』などについてうかがったお話を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■『ピアフ』はライフワークみたいになってきて…。うれしいですね。こういう作品があるって

■映画は“本物に見せる”ために10億とかかけてる。それと全く同じものを魅せて(観せて)くれるのが、大竹さんの凄さ。

■演技と本人との境が、なんかもう、分からないですよ。どこにそのスイッチがあるのか分からない

■平幹二朗さんは、最期にシェイクスピアを若手に教えて、…凄いよね

<オフィス コットーネプロデュース『The Dark』>
【東京公演】2017年3月3日(金)~ 12日(日) 吉祥寺シアター
http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/the_Dark/

<関連サイト>
オフィスコットーネ http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/
碓井将大 ツイッター https://twitter.com/masahiro_usui
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■『ピアフ』はライフワークみたいになってきて…。うれしいですね。こういう作品があるって

――お話有り難うございました。それでは、碓井さんご自身のことについて、少しお話をうかがいたいと思います。ちょうど一年前は『ピアフ』で、初演から連続してご出演されていらっしゃいましたが、これはすごいことなのではと思いました。

こうライフワークみたいになってきていて、こういう作品があるっていいですよね。

――実は私、昨年やっと『ピアフ』を拝見できまして…、

そうなんですか? あ! チケットが…。

――そうなんです、初演の頃から観たかったんですけど、すぐにチケット完売で。それで、初めて拝見して、もう、大竹しのぶさんにひたすら圧倒されました。ものすごいパワーを持って演じてらして。そして壮絶なピアフの人生の晩年に、碓井さんの「テオ・サラポ」が彼女の最後の男として癒やしで出ていらして。…初演は19歳でしたか?

そうですね。

――すごいプレッシャーだったのでは?

初演の時の方がプレッシャーって、無かったかな。何が、どれがすごいか分からなかった、というか。どの人がすごい人なんだ、とか分からなかったし、やっぱり歳を重ねて、いろいろなお芝居に出るようになって、初めて「あれ出てたんだ!」っていうのを、後から分かったというか。だからこそ、大竹さんとかも稽古とか要らないんじゃないかなと、僕ずっと思っていたんですけど。

――お稽古の時から本番みたいだと言うのは、お聞きしたことがあります。

栗山(民也)さんのお芝居は、稽古をあまりしないので。ひとりの役者が1日2回しか出来ないのです。その2回で何かがないと、多分もう無いんだろうなと思ってしまうので稽古から相当みんな緊張してるし。その代わりほんとに3時間とかで終わるんです。

綿貫:3時間!

始まって、1回やって2回ダメ出して、もう1度稽古して、そのシーンは終わっちゃうから。大体4日間で全部通して、5日目からは前半一幕通し2回で終わり、とか。1回二幕通しで終わりとか。結構キツいシーンだと、早めに終わっちゃったりする。そういうプレッシャーっていうか。僕は初演から演ってるから、なんとなく勝手もわかるし、ちょっとずつちょっとずつ、チェンジして、ちょっとずつ変えていく要素を見つけていく作業になるんです。途中から新しく入ってくる人は手震えたりとか。皆キャリアもある人ですが、それでもどこかで、そのプレッシャーと闘ってるのが見えて。その心の震えを感じたりする。「横田(英司)さんでも、台詞飛ばすんだ!?」みたいな。そのぐらいに気持ちを持っていかないと、やられちゃうっていうか。”なにかにやられる”気がする。

■映画は“本物に見せる”ために10億とかかけてる。それと全く同じものを魅せて(観せて)くれるのが、大竹さんの凄さ。

――それだけすごい緊張感があるのですね…。それを受け取る観客側としても、本当に毎回毎回新鮮なインパクトと言うか、「喰らった!」という表現になるのかも知れませんが(笑)。よく観劇後の評として「ピアフ凄かった」という言葉を聞きますが、成程これは「凄い」としか、言葉が探せないと思いました。

大竹さんの「ピアフ」に関して言えばですけど、「演劇」観てるというよりも、なんていうのかな…。僕すごく映画好きなんです。名画もかなり見に行ったけど、やっぱいい映画とかって、このキャラクターって、本当にこういう人なんだろうなって思えて、“その人”にしか見えなくなってくるというか、それはまぁ、ハリウッドとかって、セット・衣装・メイク・スタッフも、カメラワークも一流をそろえ、お金かけて、全部その“一人のキャラクターを本物に見せる”ために、10億とかかけて制作しているじゃないですか。大竹さんの凄さは、演じることでそれを完成させてしまうこと。もう「この人にしか見えない」というか。多分、エディット・ピアフってこういう人だったんだろうなって思っちゃう。

■演技と本人との境が、なんかもう、分からないですよ。どこにそのスイッチがあるのか分からない

――それは本当に体感しました。もう大竹さんなのかピアフなのか分からない!と。

そう、分かんなくなってくるっていうか、演技と本人との境が、もう分からないですよ。どこにそのスイッチがあるのか分からないんですよ(笑)。

碓井将大さん=撮影・達花和月

碓井将大さん=撮影・達花和月

――(笑)。そういえば去年秋にご出演された『CRESSIDA』は、大竹さんもご覧になったそうですね。

そうそうそう。千穐楽を観に来てくれて、お酒まで買ってきてくれて。

■平幹二朗さんは、最期にシェイクスピアを若手に教えて、…凄いよね

――『CRESSIDA』は私も拝見しまして、もう一回観たくて再演を期待していたのですが、大千穐楽の後間もなく主演の平幹二朗さんが御逝去されて、本当に一期一会の機会になってしまいました。

ね。なんかそういうものなんだろうね、多分…。

綿貫:でも、(全公演が)終わってから、っていうのが凄いね。また平さんのその…。

平さんは、20代の頃からずっと蜷川(幸雄)さんと一緒にシェイクスピア創って、最期に、シェイクスピアを若手に教えて…凄いよね。

――そうなんですよね、作品の内容そのままというか…。

綿貫:雲のベッドがね…。

ほんとに乗っていっちゃった。本当にチャーミングだった…。役者だな、って思ったのは、カメラが入った時、カメラと芝居するんです。ほんとはダメでしょそういうの(笑)。役者が目の前にいるのに。こっち(カメラの方)に出る、みたいな。で、なんかそういうところが、やっぱり役者なんだなっていう。

綿貫:色っぽいね。…うん、色っぽい。

俺は今でも現役なんだぞ!っていう。譲ってない! あれは平さんなんだな、っていうか。“粘る”っていうのは変だけれど、主役演る、演りたいって思う、あの所以というかね…。『ハムレット』(2015年彩の国さいたま芸術劇場)演ったじゃないですか、(藤原)竜也くんと。お父さんの役だったんだけど、あのお父さん(クローディアス/亡霊)の役で満足出来ないって言ってたからね。昔、浅利慶太さん演出の『ハムレット』(1968年日生劇場)を、平さんは主役で演ってるから「俺、ハムレット演ったから、ハムレットの面白さ知ってるんだ」みたいな。お父さんの役じゃもう満足出来ない。譲らないとこっていうか、あれは凄いよね、やっぱり。

碓井将大さん=撮影・達花和月

碓井将大さん=撮影・達花和月

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“「『ピアフ』は、初演の方がプレッシャーが無かった」 碓井将大インタビュー(下)” への 2 件のフィードバック

  1. yuri より:

    「ピアフ」「CRESSIDA」は深い感銘を受けた作品でしたのでこうしてまたお話を聞けたことがとても嬉しいです。

    偉大なる先輩方と大きな作品を作り上げた経験をとても大事にしていることが伝わってきましたし、これからも大きく成長を続けていく碓井さんを応援し続けて行きたいと思いました。
    素敵な写真、また素敵な話を引き出してくださいましてありがとうございました。
    大切に読ませていただきました。

  2. YUI より:

    碓井くんが言ってることが、当時ピアフを観た私の気持ちと同じでした。本当に大竹さんの役になりきる気持ちが素晴らしくて、ピアフにしか見えない!というよりかはピアフだ!と思わせてくれる演技が凄いなと思いました。平さんもクレシダで拝見させて頂きましたが、とてもキラキラした素敵な方でした。碓井くんにもいつまでも現役でいてほしいなと感じました。

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