ゲーム『ロマンシング サガ3』の世界を舞台化した「30-DELUX SQUARE ENIX Special Theater『ロマンシング サガ THE STAGE ~ロアーヌが燃える日~』」が2017年4月15日から5月7日まで全国各地で上演されています(東京は終了、大阪は4月30日まで、愛知は5月3日から、福岡は5月6日から)。アイデアニュースでは、東京公演を取材することができましたので、独自撮影の写真とテキストで、公演の様子をレポートします。
■“互いに背中を預けられる”ハリード(清水順二)とシャール(佐藤アツヒロ)
「死食」と呼ばれる現象が生み出す状況を恐れる世界。その年に生まれ、かつ生き残った赤ん坊、“宿命の子”、サラ(新垣里沙)によりもたらされるのは、動乱かはたまた安寧か。今はその答えがもたらされようとする過渡期。それでも人々は日々を、出来る事を成しながら懸命に生きている。
そんな感じで緊張感漂う空気が流れる作品世界ではありますが、フッと息をつけるシーンや思わずクスリと笑えるシーンも散りばめられていました。登場人物たちそれぞれの過去エピソードを含めた、ゲームで語られなかったという見せ場もあるので、ほぼ群像劇。そして、「30-DELUX」といえばアクションプレイ! ゲームもかくや、というアクションが、CGと組み合わされて眼前で見事に再現されると、映画を観ているような、いえ、まるで自分がゲームの世界に紛れ込んでしまったような不思議な感覚になりました。
ゲーム版での主要なキャラクター8人の中で、今作は、崩壊したゲッシア朝の王族で、傭兵として戦っているハリード(清水順二)がメインの筋立て。まだ平和であった頃のファティーマ姫(笠松はる)とのエピソードあり、剣士シャール(佐藤アツヒロ)との男の友情が感じられるシーンも多く、“互いに背中を預けられる”感が半端なくかっこいいです。その終始かっこいい彼ですが、とあるシーンでのファティーマ姫とのエピソードでは意外な姿を見せてくれて、思いがけずコミカルな面を覗かせていました。
■笠松はるのソプラノが美しく切ない、メロディアスな劇中歌「光を抱いて」
その一連のエピソード後半での、ファティーマ姫がハリードに歌う劇中歌「♪光を抱いて」は、美しいソプラノで歌われる大変メロディアスな曲で、物語の美しく切ない側面を高めていました。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、レポートの全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■詩人(田中精)とゆきだるま(谷口敏也)が、旅支度の「前説」
■サラ(新垣里沙)と少年(香音有希)が歌う「宿命の子」は切々と
■ミカエル(中村誠治郎)とカタリナ(緒月遠麻)の関係にヤキモキ
■縦横無人の軽快な身のこなしが目を引いた平山佳延の海賊ブラック
■魔龍公ビューネイ(片山萌美)との戦いがクライマックスに
<ロマンシング サガ THE STAGE ~ロアーヌが燃える日~>
【東京公演】 2017年4月15日(土)~4月23日(日) サンシャイン劇場(この公演は終了しました)
【大阪公演】 2017年4月28日(金)~4月30日(日) サンケイホールブリーゼ
【愛知公演】 2017年5月3日(水・祝)~5月4日(木・祝) 愛知県芸術劇場 大ホール
【福岡公演】 2017年5月6日(土)~5月7日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
公式ページ http://saga-stage.com/
- 2019年以前の有料会員登録のきっかけ 2020年8月18日
- 欠けているものを補いあって生きる大切さを教えてくれる音楽劇『Zip & Candy』 2019年7月10日
- ロボットファンタジーの絵本を舞台化、音楽劇『Zip & Candy』7月4日から 2019年6月21日
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■詩人(田中精)とゆきだるま(谷口敏也)が、旅支度の「前説」
ゲームが元になっている物語なので、独特の世界観が存在します。開演前の劇場では、詩人(田中精)とゆきだるま(谷口敏也)の2人(?)による「前説」の時間が設けられていて、『ロマンシング サガ3』をプレイしたことがない方にも親しみやすいように、これから物語の世界を旅をする私たち観客に、旅支度とばかりに基礎知識を伝授してくれます。
ハリードの友シャール(佐藤アツヒロ)は、女神とも称えられる美しいミューズ(梅本静香)を守りながら生きています。大切な女性を「護る」と誓ったのは、ハリードとの共通点。そして彼はその誓いを守る過程で、剣士としての生命線、利き腕の腱を切られてしまいます。戦場に立てなくなった彼は、ミューズとともに暮らしますが、そこにハリードが現れて…。そんな手があったのか!と膝を打つシーンでした。
■サラ(新垣里沙)と少年(香音有希)が歌う「宿命の子」は切々と
人々に“宿命の子”としての好奇、畏怖さまざまな視線を浴び続けて生きる少女サラ(新垣里沙)。健気に自らの宿業を受け入れながら、自分を守ろうと武器を取り、トーマス(馬場良馬)やユリアン(村瀬文宣)たちと自警団で戦う姉エレン(長谷川かすみ)に、感謝と自分のために戦いに巻き込んで申し訳ないという思いを抱き続けてます。
そんな彼女を気にかけているトーマスとのやりとりは、今は幼くとも、将来何らかの花が芽吹くのでは?と思わず予感させる、やさしいシーンでした。サラと少年(香音有希)の歌う劇中歌「♪宿命の子」では宿命の子たちの思いが切々と語られます。果たして彼らの運命はどうなるのか。本作のラストシーンは強くそう思わずにいられない展開で、続きが気になりました。
■ミカエル(中村誠治郎)とカタリナ(緒月遠麻)の関係にヤキモキ
若くて血気盛ん、考えがわりとすぐ言葉や態度に出る登場人物が多い中、ロアーヌ侯ミカエル(中村誠治郎)と剣士カタリナ(緒月遠麻)の存在は異色で、落ち着いた大人の雰囲気を漂わせていました。
第二夫人腹の息子と揶揄する意見を退けて、怜悧な賢君として領民の評価高いミカエルと、ミカエルの妹のモニカ(山本ひかる)を護る貴族出身で侍女兼護衛の剣士であるカタリナ。自分の真の思いは軽々に口に上らせず、モニカの身を護りながら黙々とやるべきを遂行していく二人。
カタリナは、その人物を認められて、先代のロアーヌ侯直々にロアーヌ侯妃が代々所有する秘宝である聖王遺物のマスカレイドを授かっていましたが、彼女の秘めた思いを神王教団のマクシムスに突かれ、そのマスカレイドが奪われるという事件が起きてしまいます。そこに絡む顛末では客席には本人たちの語らぬ想いが伝わるので、互いに立場に阻まれてなかなか進まない展開にヤキモキドキドキさせられました(笑)。
■縦横無人の軽快な身のこなしが目を引いた平山佳延の海賊ブラック
異色といえば、海賊ブラック(平山佳延)の存在もその通りで、他の若者たちが「裏表なき正義感」とすれば、「清濁併せ呑む」、むしろ「濁」多めのキャラですが、なんのかんのと毒付きながらも、結果的にはエレンたちの助けになる頼もしい存在。舞台を縦横無人に暴れまわる軽快な身のこなしは目を引きました。
そしてその存在も不可思議なゆきだるま(谷口敏也)。どんなに重い深刻なシーンでも、ゆきだるまが舞台上に居るだけで思わず和む…のですが、そのユーモラスな姿からは想像出来ない活躍ぶりが、実のところこの物語最強の存在?!と思わずにいられない(笑)、ストーリーがシリアスなだけに、なんとも言えず面白い存在になっていました。
■魔龍公ビューネイ(片山萌美)との戦いがクライマックスに
物語は魔龍公ビューネイ(片山萌美)との戦いがクライマックスに据えられていますが、お話としてはまだまだ続きを予感させるものになっていて、戦いを経て互いに信頼度の増した彼ら登場人物たちの苦難の旅はまさにこれから!という感じのエンディングに、続編が…きっとあるよね、きっと!と期待しつつ、元になっているゲームの方にも興味津々となってしまった観劇後でした。