「福島の自然や村の風景を思いながら、歌っています」、アカリさんインタビュー

福島民謡「相馬盆歌」を歌う「アカリトバリ」のアカリさん=2017年7月30日、撮影・松中みどり

2017年7月30日、大阪キタの繁華街・堂山にあるバー「Heaven Hill ヘブンヒル」で、日曜日恒例「天国ライブ」がおこなわれました。初めて声を聴いた時から紹介したいと思っていた、福島県会津若松出身のアカリさんが歌うというので駆けつけた次第です。4組のミュージシャンが出演する「天国唄あしびBIG4」、トップバッターのアカリさんは三味線、相方のトバリさんはアコースティックギター。異色のデュオ「アカリトバリ」による福島民謡「相馬盆歌」でライブは幕を開けました。

こちらは当日、「相馬盆歌」を歌うアカリさんを撮影した動画です。

アカリさんの歌には、伸びやかで素直な声が聴く人の胸にまっすぐ届く魅力があります。それは、そのままアカリさんの魅力。福島で生まれ、家族に愛されて育った人の声です。だからこそ東日本大震災と福島第一原発事故がもたらした衝撃は大きかっただろうと思います。ライブに先立って、2017年6月、アカリさんにインタビューしました。

――2011年の3月11日は、福島にいたのですか?

私はもう大阪に住んでいました。福島に両親がいたので、大阪に逃げて来て欲しかったんです。でも、90になるおじいちゃん、おばあちゃんを連れて避難できないし、もちろんおじいちゃんたちを置いてくることも出来ないと言われました。私はすぐ帰りたかったけれど、両親からは、何が起きるかわからないからこっちに来たらダメだと言われました。あかりちゃんが大阪で元気でいることが私たちの願いだよって。

――それは辛かったですね。原発事故後、初めて帰ったのはいつ?

3月末に、野菜と水を持って家に帰りました。そのお礼にとおじいちゃんがくれたのが三味線だったんです。大阪で民謡を習うようになりました。そしたら余計に、福島の人たちが、土地や山をどれだけ大事に生きてきたかが分かった気がします。

山菜やキノコ採りに連れていってくれたおじいちゃん、おばあちゃんを思って作ったアカリさんのオリジナル曲「山の唄」も素敵です。当たり前のように感じていた自然の恩恵。大人から子供へと伝えられていた昔ながらの知恵。それが今は、土の汚染はどうだろうとか、この食べ物はどうだろうとか、考えなくてはいけない。そんな環境になって初めて、失ったものの大きさを感じたと、アカリさんは話してくれました。

こちらは当日、「山の唄」を歌う「アカリトバリ」のアカリさんを撮影した動画です。

  1. あなたの愛した山々を
  2. 守っていけずにごめんなさい
  3. 日々は流れて 季節はめぐり
  4. 私の心は置いてけぼり

初めて「山の唄」を聴いたとき、歌詞のこの部分で涙があふれました。アカリさんは、この曲について以下のように話しています。

「『山の唄』は原発事故から1年たった頃出来た曲です。今だけでなく来年、そして再来年とずっと続けていける知恵が受け継がれていた山の暮らし。その中で疑うことなく受けていた自然の恩恵が、原発事故後は規制値という数字で語られるようになる一方、山の除染は出来なかったり…。県内でも地域により状況が様々なこともあり、いろいろと難しい問題はありますが、私が見てきた美しい自然や私が教えてもらったこと、そして今感じていることを歌っています」

※アイデアニュース編集部注:きのこや山菜の放射性物質の検査結果による出荷制限などの状況は、林野庁のこちらのページに掲載されています。http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/kinoko/syukkaseigen.html

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分では、アカリさんのインタビューの後半と、もうひとつのオリジナルソング「魔法の石」の動画を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■怖いと思った自分のことを考えました。父と母は私を守ろうとしてくれたんだなと

■今、レパートリーは民謡が8曲くらい、オリジナルは10曲くらいあります

■原発をどう思っている人たちかわからないようなところでも歌いたい

■私もチェルノブイリを忘れていた。だから、お年寄りが教えてくれたことを伝えたい

■「アカリトバリ」のアカリさんが歌う「魔法の石」(動画)

<アカリトバリ ライブ情報>

<第46回 釜ヶ崎夏まつり>
【大阪】2017年8月15日(火) 釜ヶ崎三角公園 アカリトバリ出演は8月15日13時からを予定
会場:西成 釜ヶ崎 三角公園(萩之茶屋南公園) 大阪市西成区萩之茶屋3-7
概要:釜ヶ崎労働者を中心とする地域の恒例夏祭り、8月12日前夜祭から8月15日まで開催
サイト:https://www.facebook.com/events/348216798933436

<ROCK AND ART OSAKA 2017>
【大阪】2017年8月27日(日) さをり会館 アカリトバリ出演は11時30分からを予定
会場:さをり会館 大阪市都島区中野町5-13-4(JR桜ノ宮駅、地下鉄都島駅)
概要:誰もがあるがままの自己を自由に表現するスペシャルイベント
サイト:https://www.facebook.com/happycomecomerockandart/

<みやこ&アカリトバリ ライブ>
【大阪】2017年9月9日(土) 花海 ~Hanami~ ライブは19時00分から
会場:食処BAR「花海 ~Hanami~」 大阪府和泉市府中町1-9-2
サイト:https://hanami-naru.jimdo.com/

<関連サイト>
トバリアカリさん Facebookページ
https://www.facebook.com/profile.php?id=100007985713094
「天国ライブ」が行われたバー「Heaven Hill ヘブンヒル」
http://heavenhill.pa.land.to/
さをり会館(SAORI本部の日々)
http://saori57.exblog.jp/

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福島民謡「相馬盆歌」を歌う「アカリトバリ」のアカリさん=2017年7月30日、撮影・松中みどり

福島民謡「相馬盆歌」を歌う「アカリトバリ」のアカリさん=2017年7月30日、撮影・松中みどり

※ここから有料会員限定部分です。

■怖いと思った自分のことを考えました。父と母は私を守ろうとしてくれたんだなと

――福島に初めて帰るときはどんな気持ちでしたか?

どうなっているか分からないし、行くのが怖かったです。でも、怖いと思う場所に親は住んでいるわけで、怖いと思った自分のことや、いろんなことを考えました。2年前、父は癌で亡くなりました。父と母は私を守ろうとしてくれたんだなと思います。

――福島で民謡を歌っていたわけではないんですね?

そうなんです。大学に行くので大阪に出てきたんですが、三味線を習ったのは大阪で、沖縄の三線なども習いました。私は沖縄にも縁があって、名護の方で藍染めを1年ほどやっていました。

――そういえば、私がアカリさんの歌を初めて聴いたのは、「沖縄のネーネーの話を聞く集い」でした。

ああ、そうでしたね。沖縄にいたのはもうずいぶん前ですが、辺野古の基地反対の人たちのところに連れて行ってもらったこともありました。なにより自然と一緒に生きていきたいという気持ちにさせてもらった沖縄での滞在でした。沖縄の人たちが、なぜこんなに長い間、強い気持ちを持ち続けていられるのか、もっと学びたいと思います。

「アカリトバリ」のアカリさん=2017年6月19日、撮影・松中みどり

「アカリトバリ」のアカリさん=2017年6月19日、撮影・松中みどり

■今、レパートリーは民謡が8曲くらい、オリジナルは10曲くらいあります

――ライブでは福島の民謡だけではなくて他の地方の民謡も歌うのですか?

はい。今、レパートリーは民謡が8曲くらい、オリジナルは10曲くらいあります。最初に人前で歌えるようになった民謡が、福島の「相馬盆歌」なんです。

――アカリさんの相馬盆歌、大好きです。あの曲はどんな気持ちで歌っているんですか?

ありがとうございます。やっぱり美しい福島の自然や、事故後訪れた飯館村の風景を思い出したりしています。そして、田んぼの上にフレコンバックが置いてあったりする今の景色も。いろんなことを想像しながら歌っています。

■原発をどう思っている人たちかわからないようなところでも歌いたい

――釜ヶ崎で歌ったり、沖縄の集会で歌ったりされていますが、お客さんの反応はどうですか?

大阪で歌う機会が多いのですが、釜ヶ崎では、「故郷を思い出した」「福島のいろんな土地に行って道路をつくったことを思い出す」と言われました。また、「原発で働いていたことがあるけど、被爆線量をこえたので帰ってきた」という方もいました。私は、いろんな人がいる場所で歌いたいと思っています。原発をどう思っている人たちかわからないようなところでも歌いたいです。いろんな意見をもっている人の中で歌って、福島のことや故郷のことを思い出してもらえたら嬉しいです。

■私もチェルノブイリを忘れていた。だから、お年寄りが教えてくれたことを伝えたい

――6年たって、原発事故や被災された人たちのことが忘れられていくような気がしますね。

私だってチェルノブイリの事故の時、「雨にあたったら髪の毛が抜けちゃうのかな。死んじゃうのかな」なんて思ってたのに、その後すっかり忘れてしまいました。まさか福島で同じような事故が起きるなんて思ってなかったし、原発の近くに住む人が「まさかまた事故が起きるなんてことはないだろう」と思う気持ちも分かります。だから、じいちゃん、ばあちゃんが教えてくれたことを伝えたい。本当の祖父母だけでなく、地域の大人やお年寄りが、自分の孫みたいに思って教えてくれていたこと。山にキノコや山菜を採りに行ったこと、今は安全とは言いきれない場所が出来てしまったこと。そこにあった生活のことを、歌っていきたいです。

「アカリトバリ」のアカリさん=2017年6月19日、撮影・松中みどり

「アカリトバリ」のアカリさん=2017年6月19日、撮影・松中みどり

■「アカリトバリ」のアカリさんが歌う「魔法の石」(動画)

お話をすればするほど、アカリさんは、歌を聴いて想像していた以上に可愛くて素敵な人でした。歌の相方でもあり、人生のパートナーであるトバリさんと一緒に、これからも伸びやかな声をたくさんの人に聴かせてください。またライブに行くのを楽しみにしています。

こちらは当日、「魔法の石」を歌う「アカリトバリ」のアカリさんを撮影した動画です。

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