シエラが「舞台上で証明は必要なく、共有すればいい」と、城田優インタビュー(下)

城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

世界各地で活躍しているミュージカル界のトップが集結し、2017年12月14日から大阪と東京で上演されるミュージカル・ショー『4Stars 2017』に出演される城田優さんのインタビュー、後半です。

城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

シエラに言われた言葉ですごく印象に残っている言葉があります。セントラルパークのあたりを歩いていた時に、僕のマイナス思考のことや、実はものすごく「気にしい」なところ、ステージに立つ前に緊張してしまうことなど、いろんなことを話していたら、シエラが「優は、証明しようとしているんだね」と。「たぶん、自分のやってきたことを舞台上で証明しなきゃと思っているんだよね。でも、そんなことは必要なくて、共有すればいいんだよ」と。なるほどと思いました。

絶対失敗したくないとか、成功しなきゃいけないというように、自分がこれまでやってきたことを証明する場所として、オーディションみたいな感覚で舞台に立っていた部分がたくさんありました。今でももちろんあるんですが、彼女たちには、それがないんです。オンとオフがほとんどなくて、リハーサルと同じような感覚で「よし行こうぜ」と出ていって、本当に楽に歌い上げる。

彼らなりに緊張はしているけれど、僕のようなネガティブな「どうしよう、こうなったらどうしよう」という、「起こらない不安」を抱き続けるのではなく、どちらかというとポジティブな「興奮している方の緊張感」、「楽しみ」だとか、「何が起こるんだろう」という緊張感でのぞんでいるんですね。

前回の『4Stars』で共演したレア(・サロンガ)も含めて、3人が後ろで盛り上がっていると、僕も共有したいと思いましたし、その感覚を多少なりとも彼らに分けてもらったので、今回は気負いをせずというか、自分の持っているエネルギーを全部出し切って、そして相手による相乗効果でさらに上のレベルに行けたらいいなと思っています。

――ということは4年間の皆さんの交流と言うかお付き合いはすごく大事ですね。

大事です。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、「証明するのではなく、共有すればいい」とシエラさんに言われてからの城田さんの変化や、共演者についての印象、『4Stars』の今後などについて伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■共有を意識してデュエットした時「今までで一番感情が伝わった」と言ってくれた人も

■『4Stars』を一度やった僕たちが、テーマ、物語、筋をひとつ通せるような構成に

■彼らのエネルギーをもらって、解放する。とにかく考えずに、感じることをしたい

■オリンピック、ワールドカップ、そして『4stars』。一大イベントになっていったら

<4Stars 2017>
【大阪公演】2017年12月14日(木)~2017年12月17日(日) 梅田芸術劇場メインホール
【東京公演】2017年12月20日(水)~2017年12月28日(木) 東京国際フォーラムホールC

<関連リンク>
『4Stars 2017』公式サイト http://www.umegei.com/schedule/643/index.html
『4Stars 2017』公式ツイッター https://twitter.com/4Stars_2017
『4Stars 2017』公式インスタグラム https://www.instagram.com/4Stars_2017/

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城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

※ここから有料会員限定部分です。

■共有を意識してデュエットした時「今までで一番感情が伝わった」と言ってくれた人も

―― 仲良くなったから、観る側も前より密なものを観ることや聴くことができるのかなと。

そう思います。前回から4年、その中で会った回数は片手ぐらいでおさまります。でもその間ずっとお互いのことを意識しあい、リスペクトしあってきました。シエラが僕の『エリザベート』を観に来てくれたり、僕がシエラのコンサートを観に行ったり、ラミンがブロードウェイで出演している舞台を僕が観に行ったり。『4Stars』をまたやりたいね、という思いが僕らの中にはずっとあります。何よりも前回みんなで一緒に作った絆があるので、あとは初めてのパティーナともっと密にコミュニケーションをとりながらできたらいいなと思います。

そして、演出家のサラナとは、ニューヨークで打ち合わせや食事をしながら話をさせてもらいましたが、僕が何をしたいか、このショーで何を見せたいのか、彼女もすごく理解してくれました。ミュージカルの色んな楽曲を使って、ひとつの旅の道みたいなものを作ろうとしているので、ぜひぜひ、そのあたりもお楽しみに。僕自身も楽しみにしていますので、皆さんも期待して欲しいなと思います。

――前観た人も、より楽しめるということでしょうか?

前回よりも楽しめることは、お約束できると思います。前回は彼らがやってきたビッグナンバーを、打ち上げ花火のようにドカンドカン上げる「すっごい」ショーでした。今回は、時に線香花火、時に打ち上げ花火、時にロケット花火があるようなショーで、お客様がどちらが好きかは分からないので僕は何とも言えませんけれども、いろんな花火を用いて作るショーとしては、確実に一流の、素晴らしいものになると確信しています。

――さきほど「証明するのではなく共有する」ということをシエラさんが言ったとおっしゃっていましたが、それは、いつごろのことですか?

前回の稽古中の話です。

――2013年の?

2013年に、ニューヨークで『4Stars』のリハーサルをしている時に、レアのコンサートをシエラと観に行きました。その帰りに2人でセントラルパークの中を歩いていた時に言われた言葉です。

――それ以降、城田さんの中で、何かが変わりましたか?

彼らと一緒にいると変われるのですが、日本のミュージカルに出ているとき、特に自分が主演だったり、プレッシャーを感じるような役をやるときは「共有」できませんでした。

――証明しようとした?

例えば『エリザベート』では、自分が作っている「死神」という像を、絶対に失敗しないでやらないと、お客様のイメージを壊してしまう。人と死の境界線を作っているベールが剥がれてしまい、普通の人間に見えてしまった段階で、皆さんが現実に引き戻されてしまうという感覚が僕にはありました。『エリザベート』のトートを演じている時だけは、僕は「共有」はできなかったですね。もちろんその思いはあるのですが、そうなれない心もありましたね。

――『エリザベート』以外のところでは?

『ファントム』や、去年出演した地球ゴージャスの公演、他にもいくつか出演させてもらったコンサートでは、基本的には自分の中で「証明」というよりは、「共有」するように意識していたと思います。僕がすごく尊敬する方と一緒にデュエットを歌った時、「今まで一緒に歌ってきた人の中で一番感情が伝わった」と言ってくださいました。

――デュエットの相手方から…。

はい。ほかにも「一番胸に響いた」と言ってくださった方もいたので、少なからず人には届いているのかなと。

城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■『4Stars』を一度やった僕たちが、テーマ、物語、筋をひとつ通せるような構成に

――さきほど、演出家のサラナさんと「何を見せたいか」話をしたとおっしゃっていましたが、具体的にはどういうことだったのですか?

前回は、それぞれのビックナンバーを歌い上げるようなショーでした。豪華なショーだったんですけど、今回は「ディテール」にこだわりたいと。同じような打ち上げ花火をボンボンあげるのではなく、『4Stars』を一度やった僕たちが、ちゃんとしたテーマを持ち、物語の筋をひとつ通せるような構成にする。かつ、ブロードウェイだけではなく、前回あまり歌わなかったウィーンミュージカル、フレンチミュージカルなどからも、いろんな曲を歌いたいと伝えました。

そして、僕らが持っているアイデンティティを生かした、日本語、スペイン語、英語などでも歌う。前回、レアは「イカウ」という彼女の出身のフィリピンの言葉で「あなた」という意味の歌を歌いました。それはやっぱり彼女にしか出せないアイデンティティだったと思います。そして、シエラはイタリア語でオペラを歌いました。そういうそれぞれのアイデンティティみたいなものを出したいと思っているので、今回も色々な言語が登場します。

そういったディテール部分、選曲に口を出すというよりは、その選曲をどういう風につなげていくかとか、この4人だからこそできる組み合わせ、ただ派手なものを見せてすごいだろうというのではなく、細かいところまでひとつの物語にしたい。血管が身体全体を通っていて、それが体を動かしているんだということを、歌や物語、僕たちのエネルギーで見せられれば、ということを話しました。

――ということは日本語の歌も?

歌います。

――4人の方がそれぞれ母国語の歌を?

今の時点で僕が言えることは、「日本語の曲も歌うでしょう」「スペイン語の曲も歌うでしょう」ということで、「あとは追って発表されるでしょう」ということです(笑)。

城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

城田優さん=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■彼らのエネルギーをもらって、解放する。とにかく考えずに、感じることをしたい

――先ほど、「共演者の方がオンオフがない感じ」と言われたのがすごく印象的だったんですけど、そういう意味でお3方の魅力というものを城田さんから教えていただけませんでしょうか。

パティーナとはまだお会いしていないので、「『ピピン』では本当に素晴らしくて、とんでもないモンスター級の人だなと思いました」ということしか言えないのですが…。

ラミンは、2013年に会った最初の日からすごく僕に興味をもってくれました。日本にもすごく興味を持っていて、好奇心旺盛な人です。いつも何か新しいものを見つけると、「優、これは何だい?」とか、「これ、なんて言うんだい?」と聞かれます。年は僕よりちょっと上で、お兄ちゃん的な感覚です。すごく意志がはっきりしていて、家族思いで、友達思いです。

さらに、おちゃめでちょっといたずらをするような可愛い人です。彼もモンスター級の声を出します。本当に繊細な細い声からダイナミックな高音まで、あんなに自由自在に声を出せる人って世の中にはいません。これはもう勝てないですね。僕自身、キーのレンジに関しては低い音も出るし高い音も、出せます。しかし、彼の音域の広さと安定感は、圧倒的に比べものにならないですね。レベルが違います。それぐらいすごい喉を持っているのですが、それをトレーニングをほとんどせずに天性で持っている、彼はそのくらいすごい人です。

シエラは、ラミンとすごく似ていて、まっすぐでピュアで、非常に優しくて、チャーミングなところは一緒です。動物とか自然が大好きで、日本に来た時も、神社や公園にすごく興味を持っていました。テントウムシ虫がすごく好きで、「レディーバグ(ladybug)って日本語で何て言うの?」というところから始まって、いつも日本語で「テントムシ」「テントムシ」って言っています(笑)。基本的に緑とか動物とか自然が大好きだからこそ、彼女のピュアな部分も見えるのでしょうね。

彼女も日本が大好きで、いつも来るたびに僕が紹介したレストランに行きたいと言ったり、優しい心の持ち主です。さっき言ったように「証明じゃなくて共有する」ということを教えてくれ、「優は何も気にしなくていいんだよ。そのままで本当に素晴らしいんだから。私たちは嘘をつかないから」と僕のモチベーションを上げてくれます。本当に、レアも含めて3人がいつも僕を支えてくれていたと言っても過言じゃないくらい、優しさの塊、愛の溢れる人たちです。

――その中で城田さんご自身の魅力は?

僕は誰とでも仲良くなれるというか、人が好きで、人に興味を持っているところでしょうか。だからこそ彼らが心を開いてくれた部分もあると思うんです。もちろん英語に関しては日常会話しか話せないし、時々会話に置いてかれることもあります。みんな早口で喋るから、全然分からない会話とかもあります。100%コミュニケーションがとれているわけではないですが、言葉の壁がないぐらい、すごくお互いにリスペクトしあえていると僕は思っています。

あと、僕はスペインと日本、そしてそこに英語が入っているということで、このインターナショナルな部分というのは自分の魅力にはなり得るのかなと思います。でも特に自信を持ってこれがすごいですということはないかな。やっぱり、本番になると怖気付いちゃうし、どこかで証明しようとしちゃう自分がいるので、もっともっと彼らのエネルギーをもらって、僕自身を解放したい。とにかく考えずに、感じたいなと思っています。

取材会場に掲げられた『4Stars 2017』のポスター=撮影:アイデアニュース・橋本正人

取材会場に掲げられた『4Stars 2017』のポスター=撮影:アイデアニュース・橋本正人

■オリンピック、ワールドカップ、そして『4stars』。一大イベントになっていったら

―― 4年ぶりの開催ということで、サイクルがオリンピックであったりワールドカップと一緒だと思うんですけど?

そうですね。偶然ですよ(笑)。

――日本代表で選ばれたということで、スパンとして今後も4年ごとにやっていきたいか、実はもっと短いスパンでやりたいか、そういったところは?

『4Stars』をもう一度という動きは何度かあったのですが実現しなかったので、今回の『4Stars 2017』に関しては、僕が「もう1回やりたい!」と周囲に働きかけて始まったプロジェクトで、もちろん僕自身は続けていきたいと思います。こんなにモチベーションを高くしてもらえ、経験値としても圧倒的なものをもらえる。何より世界最高峰の人たちと一緒にひとつの素晴らしい作品を日本で作れるということは、他には絶対ないですから、これは絶対続けていきたいと思います。

僕だけじゃなくて、もっと新しい世代にチャンスをあげられるようなコンセプトのショーをやっても良いとも思います。僕以外にも日本人が出てもいいと思いますし、今後『4Stars』が、ファイブになったりシックスになったり、形がどんどん変わってもいいんじゃないかなと。僕たちが作った第1章から始まった『4Stars』が、どういう形になれど、このようなミュージカル・ショーは続けていきたいと思いますし、続けていって欲しいなと思います。4年でも2年でもいいですが、ただ、やっぱり、あんまり近々でやりすぎると、皆さんにこの素晴らしい価値を感じてもらえなかったり、実はすごく難しいことなのに、毎年できてしまったら、あれ?って思いますよね…(笑)。

――(一同笑 )

おかしいなあ、「プレミアムショー」と言っていたのに、全然プレミアムじゃないぞ、となりかねないので、4年ぐらいがちょうどいいのかもしれないですね。お互いの経験値を増やしていく中で、数年間、最低でも2、3年はあけた方が、みんなの成長もありますし、新しいミュージカル曲も生まれていくと思います。オリンピック、ワールドカップ、そして『4Stars』みたいに、日本の中でのひとつの一大イベントになっていったら、それこそ嬉しいですね。「あっ、来年は『4Stars』の年じゃん」というふうに定着して、僕がお爺ちゃんになった時に、ひとつのコンテンツとして、『4Stars』という、いろんな国のスターたちが集まって日本でショーをやることがあってもいいんじゃないかなと思います。

――いつまで日本代表をやりたいですか?

僕ですか? うーーーーん、あと2回ぐらいかな(笑)。その後、作り手側に回ってみたいです。プロデュース側に。

――最後に、公演への意気込みと、大阪のみなさまへのメッセージをお願いします。

こうやって、ブロードウェイから演出家と出演者と音楽監督が日本に来てショーをするということは、本当にまれなことです。普段、日本のミュージカルファンが本場のミュージカルを観たい場合は、飛行機に乗って、ホテルをとってミュージカルを観に行くことをしない限り、この人たちを見る機会はなかなかないんです。そして、ただでさえすごい豪華なショーにも関わらず、彼らが普段、絶対歌わないようなウィーンミュージカルやフレンチミュージカル、僕が出演してきた『ロミオ&ジュリエット』や『エリザベート』など、日本のファンの方々にも親しみのある曲を、彼らが一緒に歌ってくれるということも、おそらく今までなかったことだと思うので、そこも楽しみにしていただきたいと思います。

前回作った『4Stars』で生まれたものから、僕たちがどんなエネルギーを得て、今、この進化させた『4Stars』を作ろうとしているのか。今回の『4Stars』の見所、やりたいことは、観に来ていただければわかります。なので、ぜひ劇場にいらしてください。大阪公演は本当に短い4日間の公演なので、すぐチケットを取った方がいいと思います。前回も立ち見のお客様もたくさん出て、見られなかった方もたくさんいたと聞いています。迷っているとチケットがなくなる可能性があります! 僕を見に来て欲しいとかいうことではなくて、この作品は本当に素晴らしいので、ぜひ見に来てください!

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