宝塚歌劇星組公演、ミュージカル『ドクトル・ジバゴ』が、2018年2月4日に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕し、2月20日からはTBS赤坂ACTシアターで上演されます。「ドクトル・ジバゴ」はロシアの作家ボリス・パステルナークの作品で、パステルナークの投影でもあるユーリ役には、専科の轟悠(とどろき・ゆう)さん。ロシア革命という複雑な時代状況の中で生まれた愛の形を、熱く表現した作品です。
ロシアの作家ボリス・パステルナークの代表作である「ドクトル・ジバゴ」は、1965年の映画版を筆頭に度々映像化され、今回宝塚歌劇のオリジナル・ミュージカルとして舞台化されました。脚本・演出は原田諒さん。20世紀初頭、革命前後の動乱期のロシアで、純真な心を持つ詩人でもある医師ユーリ(ユーリイ・アンドレーヴィチ・ジバゴ)と、彼が愛し続けた運命の女性ラーラ(ラリーサ・ヒョードロヴナ・ギシャール)が辿る波瀾の生涯。悠久のロシアの大地で、時代のうねりに翻弄されながらも懸命に生きた人々の軌跡、そして愛の形を鮮烈に描き上げる大河ロマンです。
ユーリ役の轟さんは、妻トーニャを愛していながら、ラーラにも心を寄せるという役どころで、スマートでシャープな顔立ちと、ビブラートのきいた大人の歌声が、医師であり詩人のユーリを、落ち着いた孤高の男性として表現していました。2人が、いけないと思いつつも、引き寄せられるように一歩一歩近づく様子は、限られた公演時間の中、危うくも美しい雰囲気を醸し出していました。
ヒロインのラーラ役は、有沙瞳(ありさ・ひとみ)さん。3人の男性に求められながらも、幸せな日々は長く続かない役どころ。目鼻立ちがはっきりした有沙さんは、どこにいても目を引き、ラーラが複数の男性の目に留まるのも納得です。のびやかな歌声で、状況に合わせた感情をのびやかに歌い上げていました。
弁護士で、ラーラの母アマリヤのパトロン、コマロフスキー(ヴィクトル・イッポリートヴィチ・コマロフスキー)役は、天寿光希(てんじゅ・みつき)さん。ラーラの母の愛人でありながら、その娘ラーラを自分のものにしようと執着します。物語の「悪」の部分を引き受けているような難役を、低い声でゆっくりと追い込んでいく凄みのある表現で、見事に演じ切っていました。
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<有料会員限定部分の小見出し>
■軍人役の麻央侑希さん、長い手足を生かしたダンスで戦闘を表現
■優しい青年から冷徹な将軍へ、純粋だからこその葛藤を表現した瀬央ゆりあさん
■最後までユーリを助ける医師役の天華えまさん、ふんわり柔らかく優しさを表現
■高音を柔らかく繊細に歌い上げて観客を魅了、ユーリの妻役の小桜ほのかさん
<ミュージカル『ドクトル・ジバゴ』>
【大阪公演】2018年2月4日(日)~2月13日(火) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【東京公演】2018年2月20日(火)~2月26日(月) TBS赤坂ACTシアター
<関連ページ>
宝塚歌劇のページ http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2018/doctorzhivago/index.html
梅田芸術劇場のページ http://www.umegei.com/schedule/690/index.html
TBS赤坂ACTシアターのページ http://www.tbs.co.jp/act/event/doctorzhivago/
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■軍人役の麻央侑希さん、長い手足を生かしたダンスで戦闘を表現
第一次世界大戦で指揮をとる軍人、ガリューリン少尉役の麻央侑希(まお・ゆうき)さん。兵士らと銃を持って踊るシーンは、床に伏せて戦う場面なども織り込まれ、その中心で踊る麻央さんは長い手足を生かし、さらに銃の長さが加わって迫力を増し、目が釘付けになりました。
■優しい青年から冷徹な将軍へ、純粋だからこその葛藤を表現した瀬央ゆりあ
革命派の青年で、ラーラと結婚するも出奔、のちに赤軍派の将軍ストレリニコフと名を変え、人々を粛清するパーシャ(パーヴェル・パーヴロヴィチ・アンチーポフ)役は 瀬央ゆりあ(せお・ゆりあ)さん。パーシャと将軍ストレリニコフという、人格が変わってしまった1人の青年で、パーシャの時は、強い信念を持ち、ラーラを守ろうとするも、ある苦悩を抱え、行方不明に。名前を変え、出で立ちも変わり、冷徹な将軍となってしまいますが、強い信念はそのままで、とても純粋だからこその葛藤が、このような方向に進んでしまったのではないかと思わせます。冷徹で狂気に満ちていても、心の奥底はいい人で、ラーラを深く愛したからこそ変わってしまったのではないかと思います。
■最後までユーリを助ける医師役の天華えまさん、ふんわり柔らかく優しさを表現
ユーリの親友で、最後までユーリを助けようとする医師のミーシャ(ミハイル・グリゴーリエヴィチ・ゴルドン)役は、天華えま(あまはな・えま)さん。天華さんは、少し重たい空気を明るく導いてくれるような存在で、パーマの掛かった髪型などもふんわり柔らかく、優しさを感じました。
■高音を柔らかく繊細に歌い上げて観客を魅了、ユーリの妻役の小桜ほのかさん
ユーリのいとこであり、のちに妻となるトーニャ(アントーニナ・アレクサンドロヴナ・グロメコ)役は、99期の小桜ほのか(こざくら・ほのか)さん。1幕の最後のソロで歌うシーンでは、高音を柔らかく繊細に歌い上げ、歌唱力で客席を魅了しました。トーニャは小さな時から心の底から優しく、本当に良い妻で、小桜さんにぴったりでした。
このほか、2幕の最初、汽車のシーンでユーリの詩集をもっていた青年ワーシャ役の天希ほまれ(あまき・ほまれ)さん。ラーラのご近所の青年だったこともあり、2幕では度々登場するのですが、ひまわりのような明るさと元気さをまとった好青年で、登場するとシーンが明るくなり、とても好感が持てました。
2幕の最初の汽車のシーンは小さな少し上がった舞台の中に乗客が乗り、周りは映像という舞台セットで迫力がありました。また背景の幕に大きな1本の木が描かれていましたが、ライトの当たり方で雰囲気がガラリと変わる演出も素敵。お芝居が終わり、最後の幕が下りる時、轟さんと瀬央さんが目を合わせて笑みを交わしたのが、とても印象的でした。