「とにかく良心を捨てて」観始めたら…『ハングマン-HANGMEN-』

『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

PARCOプロデュース2018『ハングマン-HANGMEN-』が、世田谷パブリックシアターで上演中です(5月27日まで)。6月9日から10日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLATホール、6月15日から17日にロームシアター京都 サウスホール、6月21日から22日に北九州芸術劇場 中劇場にて上演されます。

『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

『ハングマン-HANGMEN-』は、アイルランド系イギリス人劇作家のマーティン・マクドナーさんの戯曲で、ローレンス・オリヴィエ賞 2016 BEST PLAY受賞の話題作。今回が日本初上演です。演出は、これまでにマクドナー作品を何度も演出してきた長塚圭史さん。その演出作品で、読売演劇大賞優秀演出家賞、朝日舞台芸術賞などを受賞しています。さらに、翻訳はやはり数多くのマクドナー作品を翻訳・演出してきた小川絵梨子さんが手掛け、長塚さんとの初タッグを組んでいます。

出演は、田中哲司さん、秋山菜津子さん、大東駿介さん、羽場裕一さんなど、実力派のみなさんが集結しました。誰が何を考えているのか、何が真実なのかわからない、スリリングな展開にどんどん引き込まれていく独特な世界が広がります。

<ストーリー>(公式ページより)

1963年。イングランドの刑務所。ハングマン=絞首刑執行人のハリー(田中哲司)は、連続婦女殺人犯ヘネシー(村上航)の刑を執行しようとしていた。しかし、ヘネシーは冤罪を訴えベッドにしがみつき叫ぶ。「せめてピアポイント(三上市朗)を呼べ!」。ピアポイントに次いで「二番目に有名」なハングマンであることを刺激され、ハリーは乱暴に刑を執行するのだった。

2年後。1965年。イングランド北西部の町・オールダムにある小さなパブ。死刑制度が廃止になった日、ハングマン・ハリーと妻アリス(秋山菜津子)が切り盛りする店では、常連客(羽場裕一・大森博史・市川しんぺー・谷川昭一朗)がいつもと変わらずビールを飲んでいた。新聞記者のクレッグ(長塚圭史)は最後のハングマンであるハリーからコメントを引き出そうと躍起になっている。そこに、見慣れない若いロンドン訛りの男、ムーニー(大東駿介)が入ってくる。不穏な空気を纏い、不思議な存在感を放ちながら。

翌朝、ムーニーは再び店に現れる。ハリーの娘シャーリー(富田望生)に近づいて一緒に出かける約束をとりつけるが、その後姿を消すムーニーと、夜になっても帰って来ないシャーリー。そんな中、ハリーのかつての助手シド(宮崎吐夢)が店を訪れ、「ロンドン訛りのあやしい男が『ヘネシー事件』の真犯人であることを匂わせて、オールダムに向かった」と告げる。娘と男が 接触していたことを知ったハリーは・・・!

謎の男ムーニーと消えたシャーリーを巡り、事態はスリリングに加速する。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、公演ルポの全文と写真を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■観劇ガイドに「マーティン・マクドナーの芝居を観る時は、良心を捨てることだ」と

■居心地の悪い物語のなかに、必死に生きている人物たちが、面白おかしく見えてきて…

■ハングマンだった頃を語る時のハリー役・田中哲司さんの得意げな顔と痛々しさ

■紳士的な雰囲気からぶち切れるところまで、自由自在にムーニー役を演じる大東駿介さん

<PARCOプロデュース2018『ハングマン – HANGMEN -』>
【東京公演】2018年5月16日(水)~5月27日(日) 世田谷パブリックシアター
【埼玉公演】2018年5月12日(土)~5月13日(日) 彩の国さいたま芸術劇場
【愛知公演】2018年6月9日(土)~6月10日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【京都公演】2018年6月15日(金)~6月17日(日) ロームシアター京都 サウスホール
【福岡公演】2018年6月21日(木)~6月22日(金) 北九州芸術劇場 中劇場
特設ページ
http://www.parco-play.com/web/play/hangmen/

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『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

※ここから有料会員限定部分です。

■観劇ガイドに「マーティン・マクドナーの芝居を観る時は、良心を捨てることだ」と

開演前にプログラムを拝見していると、観劇ガイドに「マーティン・マクドナーの芝居を観る時に一番大事なのは、良心を捨てることだ」とありました。私はこれまでに『スポケーンの左手』しかマクドナー作品を拝見したことはなかったので、「なんとなくわかるような。とにかく良心を捨てるのね」と言い聞かせて観始めました。

■居心地の悪い物語のなかに、必死に生きている人物たちが、面白おかしく見えてきて…

ストーリーを読んで頂ければ、楽しい話ではないだろうなと想像できると思いますが、居心地の悪い物語のなかに、ブラックジョークが散りばめられていて、良心を捨ててちょっと斜めに見ていると、お世辞にも品があるとは言えない、でも必死に生きている人物たちが、面白おかしく見えてきます。その必死な感じがなんともシュールというか。この人達とお友達にはなるのはご遠慮したいけれど、対岸からその顛末をみていると、愛おしくなってくるような。戯曲の秀逸さと、演出の手腕と、役者たちの巧さが相まって、この独特な可笑しさに引き込まれていくのです。

『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

■ハングマンだった頃を語る時のハリー役・田中哲司さんの得意げな顔と痛々しさ

田中さん演じるハリーが、ハングマンだった頃を語る時の得意げな顔と、ピアポイントに対するコンプレックスにいつまでも捕らわれている様は、可笑しくも痛々しい。結局は誰しもが抱える感情であり、共感せざるを得ない部分もあります。

■紳士的な雰囲気からぶち切れるところまで、自由自在にムーニー役を演じる大東駿介さん

特に素晴らしかったのは大東さん。都会から田舎街へやってきた、異質で怪しい人物を、見事に演じていました。洗練された雰囲気を身のこなしからも漂わせ、紳士的な雰囲気からぶち切れるところまで、自由自在に演じていました。

彼が結局何者で、どうなってしまうのか……そこは、ぜひご覧頂いて考えて頂きたいと思います。

『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

『ハングマン-HANGMEN-』より=撮影:引地信彦

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