「この音楽を体現したい」、ミュージカル『BKLYN』長尾哲平インタビュー(上)

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

ブロードウェイミュージカル『BKLYN-ブルックリン-』が2018年9月19日(水)~9月24日(月)まで、東京・上野ストアハウスで上演されます。「EAST」と「WEST」2チームにて上演される今作の、「WEST」チームで「ストリートシンガー」を演じられる、長尾哲平さんに作品への思いを語っていただきました。

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

――『BKLYN』というミュージカルとの出会いは?

僕、もともと「ブルックリン」っていう名前が好きなんですよ。23歳のときにニューヨークに行ったんですけど、そのときブルックリンに行って、街の風景とか人、本当にいろんな人たちが居て、その空気がすごい好きだったんです。その時はなにかこう、いろんな時代や背景を感じていたんだろうなと。

――ブルックリンという街の歴史を?

多分そうじゃないかなって。それで「ブルックリン」という街が、まず印象に残って。ミュージカルの『BKLYN』は、11年前(2007年)に石井一孝さんたちが演じられてるのを、なにかのサイトで見たのが作品を知ったきっかけです。それは、最初は僕がブルックリンという街が好きで、「ブルックリン」と名の付くものに、そもそも興味がいっていたから(笑)。それで、『BKLYN』っていうミュージカルあるんだ! と思って内容を見てみると、ブルックリンという華やかな名前とは裏腹に奥深い作品だな、と。演出の奥山寛さんとも話してたんですけど、改めていろんな形の愛があって、すごい深い作品だと。

登場人物のそれぞれって、実は全員ホームレスなんです。そのホームレスたちが、日銭を稼ぐために劇をするという、劇中劇のスタイルで進んでいくミュージカルです。そこに出てくる人間たちがどこまで真実なのかというのは、お客さまにお任せしている部分もあるんです。そして、本当に真実なのはある人物だけ。逆に言うと、全てが真実にもみえる。だからこそ、お客様が登場人物一人一人に感情移入出来ると思うんです。

大切なもののために、何かを失わなきゃいけないとか、失ったものが大きすぎると、人によってはこう、道を逸れちゃったりもするじゃないですか、薬だったり、犯罪だったりに。人ってそういう弱いものだと思うんです。だけど、大切な人が居るからこそ頑張れる人も居たり、大切な人だからこそ、その人に「なんでなの?!」って怒ったりとか、なんか本当にそういうものがこの作品には凝縮されていて。だから、それを伝えるのは難しいと思うんですけど、そういう本当に深い作品だなというのを、最初に観たときに感じたんです。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、ゴスペルをずっとやってきて、差別が好きじゃなくて、ブラックミュージックに憧れてきたという長尾哲平さんの「ブルックリン」という街への思いと、「え?!なにこの曲たちは!」と思ったという『BKLYN』の音楽などについて伺ったインタビュー前半の内容と写真を掲載しています。9月9日(木)掲載予定のインタビュー「下」では、この作品で共演する吉田純也さん、青野紗穂さん、エリアンナさんについて語ってくださったお話など、インタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■サラッと言ってるけど、そこにストリートシンガーの人生がにじみ出るように

■「やっぱり戦争って良くないよね」っていう話にも繋がったら良いなと思うんです

■誰かのせいとかでもなく、それでもHappy Endを信じよう、というお話なんです

■ゴスペルをずっとやってきて、『BKLYN』の音楽を聞いたとき「めっちゃ好き」って

<THE MUSICAL『BKLYN-ブルックリン-』>
【東京公演】2018年9月19日(水)~9月24日(月) 上野ストアハウス
脚本・作詞・作曲:マーク・ショーンフェルド&バリー・マックファーソン
演出:奥山寛
CAST:
RiRiKA/青野紗穂、エリアンナ/塚本直、尹嬉淑/香月彩里、染谷洸太/高橋卓士、長尾哲平/吉田純也

<関連サイト>
『BKLYN』公式サイト
https://www.scoreproduce.com/bklyn

<関連リンク>
長尾哲平 Twitter
https://twitter.com/Teppei1219
長尾哲平 東宝芸能オフィシャルサイト
https://www.toho-ent.co.jp/actor/profile.php?id=8899
Score Produce Twitter
https://twitter.com/Score_Produce

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※こちらはYouTubeの「Broadwaycom」チャンネルに掲載されている「Flashback: Opening Night of the 2004 Broadway Musical “Brooklyn” w/Eden Espinosa, Karen Olivo & More」です。音楽の雰囲気などを知るための参考用に共有させていただきます(アイデアニュース編集部)。

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長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

※ここから有料会員限定部分です。

■サラッと言ってるけど、そこにストリートシンガーの人生がにじみ出るように

――ご覧になったのは、2007年の作品を?

海外の舞台映像でした。いろんな愛の形のある作品なんだと思って観ると、やっぱり素晴らしくて。サラッと流してるものの中に、そういう深いものがあって、たったひとりの人の物語なんだなって。こんなにもいろんなものがあって、だけど結局やっぱり人生って、本当にいろんなことがあるんだなって。笑って話しながら、でも内側には人それぞれいろんな経験があって、何にも見せない人ほど、やっぱりそれがにじみ出ていたりとか。だから、僕はストリートシンガーなので、その人の、ストリートシンガーのそれが出せたらなと思っているんです。あっさり、サラッと言ってるけど、そこに自分の人生がにじみ出るような。

他のキャスト陣は、ホームレスの一座で、自分の「ファミリー」と呼んでるんです。それぐらい、愛情深い人たちが一緒に演ってるもの、みんな愛される5人になれたらなっていう作品なんです。少人数で、でも、すごくみんな愛されるべきというか、なかには本当に悪役として出てくるヤツも居るけど、その悪役自身も、やっぱり過去に何かがあって、そうなっていたりとかするんですよ。そんなもんじゃないですか? 善と悪って。

――最初から善悪に定まっている訳ではない、ということですね。

そうです。何かがあって、しょうがなくやっぱり悪の方に行く人も居る。例えば『RENT』のベニーも、やっぱり周りと方向が違って、長い目で社会を正して綺麗にしたいからって動くんだけど、今を生きようとしているマークやロジャーたちには「お前なんだよ、裏切り者!」って言われて。だけどその裏切り者が居るおかげで、例えば現実社会の今のニューヨーク、マンハッタンは発展していった訳で、なにが良い悪いってわからないものじゃないですか。だけど、それぞれでいろんなものを抱えながら生きているいろんな人に、この作品ってちゃんと届くと思うんです。もちろん全員とは言わないし、難しい部分もあるかもしれないけど。でも、なんとなくでもいいから、そういうのが自分に置き換えられるんじゃないかな、と。「おとぎ話」ってよく言うんですけど、そのおとぎ話の中でも、自分と、こう、繋がるものが絶対多分みんなにある作品だと思うんです。そのひとつの言葉としては「愛」が、ひとつテーマになっているんだろうと。その中に「戦争」も関わっていて。

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

■「やっぱり戦争って良くないよね」っていう話にも繋がったら良いなと思うんです

――作品の中に戦争のシーンが出てきますね、それはどう作品と関わっているのですか?

ブルックリンっていう地区は、すごい戦争に関わっていて、ベトナム戦争もそうだし、「ブルックリン戦争」って呼ばれているような独立戦争時代のものもあって。アメリカ自体がそうなんですけど、ブルックリンもいろんな移民の地区で、だからいろんな人が居るんですよ。でも、なんていうか、同じ人間なんだから、別に誰が居ようが、日本人だろうが、外国人だろうが、関係ないじゃないですか。そのブルックリンの都市自体が、そういういろんな人が居るところだったから、それで余計に僕はその街がすごい好きになって。「ブルックリン」という名の今回の作品もやっぱり戦争に関わっているので、結果、「やっぱり戦争って良くないよね」っていう話にも繋がったら良いなと思うんです。僕としては、“いろんな人に感情移入出来て、いろんな人生あるけどさ、前向きに、ハッピーに生きれたらいいよね”ってなったら良いと思うんです。でも戦争って、誰が悪いとかっていうものじゃないじゃないですか。僕は戦争に行ってないから、こんなことは簡単には言えないんですけど、でも、戦争で「攻撃した側」、「やられた側」、やっぱり両方あるわけで、でも、両方ともそれぞれの正義があるわけで。

――その通りなんですよね。

だから、どっちが、とかじゃないと思うんですよね。

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

■誰かのせいとかでもなく、それでもHappy Endを信じよう、というお話なんです

――人によって立場が違うし見方も違う。一方的に「お前が悪いんだ」というのは成り立たないとは思います。

ベトナム戦争の経験者の方から、実際の話をたまたま聞いたことがあって、そしたらやっぱり、このベトナム戦争って、目の前で人を殺らなきゃいけなかったと。今って空爆じゃないですか。空の戦いじゃないですか。

――直接ではなく間接的にボタンひとつで、ですね。

はい、直接人を殺らない。でも、この作品の時代、ブルックリンの父親のテイラーもそうなんですけど、目の前で、自分の手で人を殺る。人を殺るために、本当に薬漬けになって、自分の感覚をおかしくしないと、もうやっていけない。自分を保てないというか、すでに保ててないんですけどね。そういう状況の話、戦争とは本来そういうものだとその人からも聞いていて。で、その方がおっしゃっていたのは「両方ともが存在する」って。どっちが良い悪いとかじゃなくて、相反する意見が存在する、存在出来るということを言っていて、むしろそうであるべき、というか、それで良い、と。「それってすごい、本当にその通りだな」って思ったんです。日常でも逆の意見って絶対あるじゃないですか、でも「両方とも存在している」んだなって。「おまえの意見、絶対に違うよ」じゃなくて、「なるほどね、そういう意見もあるんだ」、だからすごい根本に繋がると思って。で、戦争も、過去を振り返ったときに結局、そういういうことなんだとは思うんですよね。決して肯定するわけではないけど、否定するとどっちかを否定しなきゃいけないというのはあるじゃないですか。

――そうですね。

だから、そういうものが関わっていて、戦争が引き起こした悲劇によって、いまを生きていっている人たち、誰かのせいとかでもなくそれでもHappy Endを信じよう、というお話なんです。

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

■ゴスペルをずっとやってきて、『BKLYN』の音楽を聞いたとき「めっちゃ好き」って

――まずは、ブルックリンという街が好きで、それが作品を知るきっかけになったということなんですね。

もともと昔から「ブルックリン」というのは印象にあって。なんでだろうな?(笑)。

――なにかきっかけがあったんでしょうね。

僕、ゴスペルをずっとやっているんですが、ブラックミュージックに憧れて(笑)。僕は昔から差別が好きじゃなくて、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の話とかを、興味があってすごい調べていたんです。「I Have a Dream」の演説とか、人種差別問題みたいなのを調べていて、その中にも「ブルックリン」って出てきているんですよね。そういう差別の起きた中の一つの街で、ブルックリンにもそういう方がたくさん居て、ニューヨークとか、アメリカ全土がやっぱりそうだったから、バス・ボイコット事件のきっかけになったローザ・パークスさんという人の話とか、本当に物心ついたときから興味があって。

――そして、実際に現地に行かれて。

ニューヨークに行って、街の空気に触れたら「あぁ、俺、表面だけしか知ってなかったわ」みたいな。そこから調べ始めたら、この『BKLYN』という作品が出てきたんですね。で、音楽を聞いたときに、僕、もともとゴスペルやっていたから、それで余計に「え?!なにこの曲たちは!」って。「ザ・ミュージカル」といっているものの、曲調的には全然ミュージカルソングではないんですよね。だから個人的に「めっちゃ好きなジャンルだ!」と思って。で、作品をみたら、やっぱりそういうものだったから、これは観るものじゃなくて、体現したい、自分が演者になりたいなって思う作品だな、って言うことですね。それで、オーディション受けて。

――長尾さんが『BKLYN』の出演情報をツイートされたときに、ご出演の嬉しさはもちろん、作品への思いに、なにか背景があるように感じたのですが、そういうことだったんですね。

今ので大丈夫ですか?ちゃんとした背景になってました?(笑)。

――もちろんです(笑)。

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

長尾哲平さん=撮影・伊藤華織

※長尾哲平さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは10月8日(月)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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