【動画】澄みわたる美声と胸に迫る演技、カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

男子生徒だけで「宝塚歌劇」を演じる東海高校・中学の「カヅラカタ歌劇団」が2018年10月13日、名古屋市内の東海高校講堂で、東日本大震災復興チャリティーミュージカル『ロミオとジュリエット』を上演しました。アイデアニュースでは、2016年の『エリザベート』、2017年の『1789 -バスティーユの恋人たち-』に続いて、今年も取材をさせていただきました。公演は、全体で3時間15分(休憩20分を含む)の大作ですが、おもなシーンを短くまとめた動画(6分58秒)で紹介させていただきます。

カヅラカタ歌劇団では、驚異的な美声で中学時代から注目されていた矢木俊也くん(高校2年生)が「団長」となって今年の歌劇団を率いるとともに、ジュリエット役で澄みわたるボーイソプラノの力を遺憾なく発揮。ロミオ役は、甘いマスクと柔らかな歌声の近藤慎太朗くん(高校2年生)が、繊細でピュアなロミオそのものになりきり、2人のロマンティックなデュエットが会場を包みます。そして、阿部隼也くん(高校2年生)は、ジュリエットへの思いに慟哭するティボルト役を、胸に迫る演技で表現し、作品の魅力を引き上げていました。

こちらは、フィナーレのあとに行われた団員紹介の全体の動画です(11分8秒)。

<キャスト(紹介順)>
【中学1年】多賀日向(モンタギュー女)
【中学2年】内田康夫(ピーター)、竹内健人(キャピュレット男)、伊東和真(キャピュレット女)
【中学3年】中嶋響(モンタギュー女)、都竹真叶(モンタギュー女)、山口隼矢(愛)
【高校1年】山本智天(キャピュレット男)、長﨑一晃(モンタギュー男)、坂井春樹(モンタギュー男)、日江井昭吾(キャピュレット女・フラメンコの女)、湯浅瑛貴(モンタギュー男・ジョン)、櫻井響(マーキューシオ)、前津瑳佑(ロレンス神父)
【高校2年】森島明隆(キャピュレット卿)、尾嶋倫太郎(モンタギュー卿)、中濱紀世(ヴェローナ大公)、石井淳平(モンタギュー夫人)、段下幸太郎(死)、神野了輔(ベンヴォーリオ)、岡山将士(キャピュレット夫人)、竹田謙太郎(パリス伯爵)、近藤慎太朗(ロミオ)、増田拓真(乳母)、阿部隼也(ティボルト)、矢木俊也(ジュリエット)

<舞台スタッフ>
【高校2年】川口雅生、國井悠生、細野航、森孝介
【高校1年】増田雄太、時々輪侑平、江口知寛

<演奏>
【共演】東海学園交響楽団

カヅラカタ歌劇団は、年々進化していますが、今年は「ロミオとジュリエットといえば…」と思い浮かべられるバルコニーを設置するために、「イントレ」と呼ばれるパイプ式の組み立て足場が使われました。舞台を前に少し広げて、舞台と銀橋(オーケストラボックスと客席との間に設けられた細い舞台)とバルコニーの行き来が自由にできるように作られていました。場面転換は照明で行われ、バルコニー上で歌っていた人物が、さっと正面の舞台に登場するなど、プロのお芝居と変わらないようなスムーズな移動が行われ、舞台の幅と高さが大きく広がりました。

宝塚歌劇を模した豪華な衣装は、松枝衣装店総本店のほか、保護者でつくる「すみれ会」などの協力で作成してきましたが、今年は名古屋モード学園も協力。ジュリエットのグラデーションのついたピンクのドレスは、布を染める工程から名古屋モード学園の生徒が作りました。宝塚歌劇のものと見まごうような立派なパンフレットは、これまでも作成に協力していた河合塾に加えて、トライデントデザイン専門学校が協力するなど、カヅラカタ歌劇団を支える人の輪は、さらに広がり続けています。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

また、今回の公演には「東日本大震災復興チャリティーミュージカル」という「冠」がつけられ、宮城県石巻市(旧牡鹿町)十八成(くぐなり)浜の被災者の皆さんが進めている「アーモンド苑」作りに協力する募金が呼びかけられました。

カヅラカタ歌劇団顧問の久田光政先生は、NPO法人「被災者応援 愛知ボランティアセンター」の理事長で、一般社団法人「十八成(くぐなり)ビーチ・海の見える丘協議会」の事務局長も務めておられます。公演当日は、団員やスタッフが募金箱をもって、来場者に募金を呼び掛けたほか、十八成協議会のメンバーが、公演前の壇上に上がって、あいさつされました。このチャリティーに関する詳しい説明は、カヅラカタ歌劇団のこちらのページに掲載されています。
http://zuka08.blog121.fc2.com/blog-entry-299.html

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、動画で紹介しきれなかったシーンなどの公演写真(13カット)と、テキストでの公演ルポを掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■抜群のビジュアルと柔らかな歌声、ピュアなロミオにピッタリ

■伸びやかに舞い上がるソプラノ。満を持してジュリエットに

■作品の「演劇性」を一気に高めた、怒りと慟哭のティボルト

■優しい美丈夫ベンヴォーリオと、男気あふれるマーキューシオ

■オープニングから一気に観客を作品世界に引き込んだ、愛と死

■笑えるシーンならお任せ、乳母、パリス伯爵、そしてピーター

■両家の卿と夫人、大公…。年齢差を越えて、大人役をしっかりと

■ロミオとジュリエットを見守るロレンス神父。歌声も誠実に

■年々進化するカヅラカタ。高校1年生以下の方々の来年が楽しみ

<東海高校カヅラカタ歌劇団 第16期 秋の本公演 東日本大震災復興チャリティーミュージカル『ロミオとジュリエット』>
【愛知公演】2018年10月13日(土) 東海高校講堂(この公演は終了しています)

<関連サイト>
東海高校カヅラカタ歌劇団 公式ページ
http://zuka08.blog121.fc2.com/
東海高校カヅラカタ歌劇団 公式Twitter
https://twitter.com/kazurakata_offi

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カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

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■抜群のビジュアルと柔らかな歌声、ピュアなロミオにピッタリ

今回の作品で最も驚いたのは、ロミオ役の近藤慎太朗くん(高校2年生)の存在。たしかに、昨年の『1789 -バスティーユの恋人たち-』で、革命側の弁護士、ジョルジュ・ジャック・ダントンを好演してはいたものの、ここまで歌が素晴らしいとは。甘いマスクと柔らかな歌声は、繊細でピュアなロミオの雰囲気にドンピシャで、宝塚歌劇団の新人公演に彼が迷い込んだら「あの子、誰?」と客席がソワソワしそうな、はまりぶりでした。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

■伸びやかに舞い上がるソプラノ。満を持してジュリエットに

ジュリエット役は、満を持してタイトルロールに登場の、矢木俊也くん(高校2年生)。2016年の『エリザベート』に少年ルドルフ役で登場し、伸びやかに舞い上がるような驚異のボーイソプラノを響かせ、2017年の『1789』では、オランプ・デ・ピュジェを堂々と演じていました。矢木くんの歌の素晴らしさは、動画を見れば説明するまでもありませんが、今年は団長として全体を率いるという重責を担っての大役。本当にお疲れさまでした。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

■作品の「演劇性」を一気に高めた、怒りと慟哭のティボルト

そして、特筆すべきは、このミュージカルの「芝居」部分を一身に担ったティボルト役の阿部隼也くん(高校2年生)。ミュージカルは、歌なのか芝居なのかとプロの世界でもよく議論になりますが、彼のティボルトは全身から、そして内面から、怒りと慟哭が噴き出しているのが見えるようで、頭を振ったり手を伸ばす仕草の1つ1つにも感情がみなぎり、この作品の演劇性を引き上げていました。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

■優しい美丈夫ベンヴォーリオと、男気あふれるマーキューシオ

ベンヴォーリオ役の神野了輔くん(高校2年生)は、こんなイケメンの子、去年いたかな(昨年の『1789』では印刷工のミシェル役でした)と思うような、美丈夫ぶり。ロミオを思う優しい友人としてのベンヴォーリオを見事に演じてくれました。そしてもう1人の友人、マーキューシオ役の櫻井響くん(高校1年生)は、中学時代から響き渡っていた声に磨きがかかり、ティボルトとの対決シーンも迫力満点。倒れるシーンでは「謝るな」「ジュリエットを愛し抜け」という台詞に男気があふれていました。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

■オープニングから一気に観客を作品世界に引き込んだ、愛と死

作品を通して、ほとんど出ずっぱりで登場して登場人物に寄り添い、作品全体のトーンを作る「死」役は、段下幸太郎くん(高校2年生)で、「愛」役は、山口隼矢くん(中学3年生)。特に、静かな音楽とともに「愛」と「死」の2人の踊りで始まるオープニングは、一気に観客を作品世界に引き込む力を持っていました。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

■笑えるシーンならお任せ、乳母、パリス伯爵、そしてピーター

シリアスな場面が多いなかで、ちょっと笑えるシーンを担ったのは、乳母役の増田拓真くん(高校2年生)と、パリス伯爵役の竹田謙太郎くん(高校2年生)、そして、キャピュレット家の召使い、ピーター役の内田康夫くん(中学2年生)。みなさん笑いのツボを心得た演技で、登場するだけで客席がにこやかな雰囲気になっていました。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

■両家の卿と夫人、大公…。年齢差を越えて、大人役をしっかりと

成人が演じるミュージカルを見慣れていると、カヅラカタ歌劇団で一番大変そうに見えるのは、大人のキャストたち。しかしながら、モンタギュー卿を演じた尾嶋倫太郎くん(高校2年生)は、口ヒゲと長髪を後ろに流した髪型が端正な顔立ちにピッタリで、そのまま街に出れば大人だと思われるのではないかという似合い方。対するキャピュレット卿役の森島明隆くん(高校2年生)は、ジュリエットへの心情をつづったソロの歌「冷たい父だと」が、切々と心に響いてきました。ヴェローナ大公役の中濱紀世くん(高校2年生)は、大迫力のバリトンで、ヴェローナの街を仕切る大公を熱演しました。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

また、キャピュレット夫人役の岡山将士くん(高校2年生)とモンタギュー夫人役の石井淳平くん(高校2年生)は、女性役でしかも年上の役という2重に大変な役柄ながら、ファルセットを使って、美しいご婦人を好演していました。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

■ロミオとジュリエットを見守るロレンス神父。歌声も誠実に

ロミオとジュリエットの悩みに寄り添い、見守るロレンス神父役は、前津瑳佑くん(高校1年生)。神父役ならではの抑えた演技と、誠実な響きの歌声で、舞台に奥行きを与えていました。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

■年々進化するカヅラカタ。高校1年生以下の方々の来年が楽しみ

モンタギュー男・ジョン役の湯浅瑛貴くん、キャピュレット女・フラメンコの女の日江井昭吾くん、モンタギュー男役の坂井春樹くんと長﨑一晃くん、キャピュレット男役の山本智天くんら高校1年生の出演者や、中学生の出演者は、お芝居や歌やダンスで、しっかりと舞台を支えていました。年々進化するカヅラカタ歌劇団。高校1年生の方や中学生の方たちが、来年、どんな舞台を見せてくれるか、とても楽しみです。

カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人
カヅラカタ歌劇団『ロミオとジュリエット』公演より=撮影・橋本正人

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