ミュージカル『レベッカ』が、東京でのプレビュー公演、愛知、福岡公演を終え、2018年12月20日(木)には梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでの大阪公演が開幕しました(大阪公演は12月28日まで。2019年1月5日から東京・シアタークリエ公演あり)。『レベッカ』は、2008年にシアタークリエ・オープニングシリーズのミュージカル公演第1弾として上演され、2010年に再演。今回は、初演から10年ぶり、3度目の日本版公演となります。原作はダフネ・デュ・モーリア氏の同名小説で、脚本・歌詞はミヒャエル・クンツェ氏、音楽・編曲はシルヴェスター・リーヴァイ氏。ラブロマンスに加えてサスペンスに満ちたミュージカル『レベッカ』は、どんな結末を迎えるのか、最後までハラハラさせられる展開が見どころです。
マキシム・ド・ウィンター(山口祐一郎)は、「マンダレイ」という広大な敷地を所有する上流紳士。「わたし」(大塚千弘/平野綾/桜井玲香のトリプルキャスト)は、アメリカ人富豪ヴァン・ホッパー夫人(森公美子)の世話係です。2人の出会いはモンテカルロのホテル。ホッパー夫人に挨拶する優雅で上品なマキシムに、「わたし」は目を奪われます。
その翌日、「わたし」が一人朝食のテーブルに着いたところ、隣のテーブルにいたマキシムから声をかけられ、一緒に食事をすることに。風邪でヴァン・ホッパー夫人が寝込んでいる間に、マキシムと「わたし」は逢瀬を重ね、次第に惹かれあっていきます。
マキシムには事故で亡くしたレベッカという妻がいましたが、レベッカの死の影を引きずるマキシムにとって、「わたし」は忘れていた心の安らぎを与えてくれる存在でした。ところが、突然ホッパー夫人がニューヨークへ戻ると言い出し、「わたし」はマキシムに別れを告げることに。「そういうことなら」と、マキシムは「わたし」にプロポーズし、2人は結婚することになるのです。
幸せの最中にいた2人でしたが、マキシムが住む屋敷「マンダレイ」に戻ってからは、そんな結婚生活に影が落ちていきます。マンダレイでは大勢の召使いに出迎えられ、その雰囲気に圧倒されてしまう「わたし」。なかでも、家政婦頭であるダンヴァース夫人(涼風真世/保坂知寿のWキャスト)は、新しい妻の「わたし」に好意的ではない様子。
また、誰もが才色兼備と褒めたたえる先妻レベッカの面影が屋敷内のいたるところから感じられ、「わたし」の心はどんどんかき乱されていくのです。「マキシムを驚かせたい」という「わたし」の気持ちも空回りして、うまくいかない。そんな中、ある疑惑が持ち上がり、物語は大きく動いていきます……。
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■上流階級のマキシムは品がある山口祐一郎さんぴったり。だからこそ、取り乱す変化が…
■「わたし」役の大塚千弘さんは、白を思わせる純真無垢な印象から、芯の強い女性へ
■圧倒的な存在感のダンヴァース夫人役、涼風真世さん。鳥肌が立つくらい揺さぶられ
■石川禅、吉野圭吾、今拓哉、tekkan、KENTARO、出雲綾、森公美子…。実力派のみなさんが勢ぞろい
<ミュージカル『レベッカ』>
【東京(プレビュー)公演】2018年12月1日(土)~12月4日(火) シアター1010(この公演は終了しています)
【愛知公演】2018年12月8日(土)~12月9日(日) 刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール(この公演は終了しています)
【福岡公演】2018年12月15日(土)~12月16日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール(この公演は終了しています)
【大阪公演】2018年12月20日(木)~12月28日(金) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【東京公演】2019年1月5日(土)~2月5日(火) シアタークリエ
<公式サイト>
ミュージカル『レベッカ』大阪公演 特設ページ 梅田芸術劇場
http://www.umegei.com/rebecca2018/
シアタークリエ ミュージカル『レベッカ』
https://www.tohostage.com/rebecca/
- 「ミュージカルには、これからも携わり続けたい」、『DOROTHY』桜井玲香(下) 2022年8月18日
- 「ドロシーは、私と実年齢が同じくらいの設定」、『DOROTHY』桜井玲香(上) 2022年8月17日
- 『ジョセフ ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』 キャスト発表 2021年12月3日
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■上流階級のマキシムは品がある山口祐一郎さんぴったり。だからこそ、取り乱す変化が…
山口祐一郎さんが演じるマキシムは上流階級の紳士らしく、立ち振る舞いに品があって、とてもスマート。ひとつひとつの仕草から育ちのよさが伺える、大人の男性という雰囲気が山口さんにぴったりです。そんな余裕が感じられる態度が印象的だったからこそ、物語が進むにつれて、感情をあらわにして取り乱すマキシムの変化がより浮き彫りになり、「その背景にあるものは何なのか」と興味をそそられました。特に印象的だったのは、ボートハウスで歌う「神よ なぜ」。過去に囚われて苦しむマキシムの心情と、それを乗り越えようとする前向きな感情を山口さんが力強く、ドラマチックに歌い上げ、マキシムが抱える複雑な胸の内をうまく表現していました。
■「わたし」役の大塚千弘さんは、白を思わせる純真無垢な印象から、芯の強い女性へ
マキシムの妻となり、マンダレイの新しい女主人となった「わたし」役はトリプルキャストですが、私が観た回で出演したのは大塚千弘さん。何色にも染まっていない白を思わせる大塚さんの歌声は純真無垢で、守りたくなる女性という印象があり、「わたし」役によくハマっています。しかし、最初はレベッカの影に怯え、おどおどとした態度の「わたし」も、マキシムを守ると決心してからはしっかりと自分の足で立つ、芯の強い女性へと成長。大塚さんがそんな「わたし」の変化を丁寧に演じていたので、マキシムと「わたし」の関係が変化していく過程もスッと頭に入ってきました。
■圧倒的な存在感のダンヴァース夫人役、涼風真世さん。鳥肌が立つくらい揺さぶられ
劇中に圧倒的な存在感を放っていたのが、私が観た回のダンヴァース夫人役の涼風真世さん。「わたし」の前では建前上きちんと振舞っているように見えるものの、先妻レベッカへの並々ならぬ思いをもつダンヴァース夫人からは、新しい妻への拒絶が感じられます。その表情は冷たく、ときに背筋が凍りつくような怖さが感じられるほど。劇場内に響きわたる涼風さんの威厳と深みのある歌声は聴き応えがあり、思わず鳥肌が立つくらい胸を揺さぶられました。特に、レベッカへの思いを歌った「レベッカ」は、舞台を観終わったあとも口ずさんでしまうくらい耳に残るナンバー。ぜひ劇場で、生で聴いてみてほしい曲のひとつです。
■石川禅、吉野圭吾、今拓哉、tekkan、KENTARO、出雲綾、森公美子…。実力派のみなさんが勢ぞろい
そのほかにも、「わたし」を温かく迎え入れてくれるマンダレイの管理人フランク・クロウリー役の石川禅さんや、レベッカの従兄弟ジャック・ファヴェル役の吉野圭吾さん、郡保安官であり、マキシムの友人のジュリアン大佐役の今拓哉さん、マンダレイの海辺を浮浪する謎の男ベン役のtekkanさん、ベアトリスの夫ジャイルズ役のKENTAROさん、マキシムの姉ベアトリス役の出雲綾さん、「わたし」の雇い主であるヴァン・ホッパー夫人役の森公美子さんなど、個性豊かな実力派キャストが勢ぞろいしています。
全編を通してシリアスなシーンが多いですが、その中でも「わたし」が主催する仮装パーティーは重々しい雰囲気がパッと明るくなる場面。森さん演じるヴァン・ホッパー夫人が歌うポップなメロディラインの「アメリカン・ウーマン」は、自然と客席から手拍子が生まれるリズミカルなナンバー。また、煌びやかな民俗衣装を身にまとった招待客たちの華やかなダンスシーンにも注目です。
レベッカ役は登場しないにも関わらず、その影は常に舞台上に潜んでいて、「レベッカはどんな人物だったんだろう」と気にしてしまう「わたし」の気持ちがよく分かります。レベッカの死の真相はどうだったのか。そして、マキシムと「わたし」の行く末はどうなるのか。最後まで見逃せない、ハラハラドキドキする展開を、ぜひ劇場で体感してみてください。