作曲家、ジョルジュ・ビゼーの人生と、『オペラ・カルメン』の登場人物を重ね合わせた劇団「THE REDFACE」(ザ・レッドフェイス)の舞台『Carmen Operacomic』(カルメン・オペラコミック)が、2019年4月13日(土)に、神奈川の横浜市開港記念会館で上演されました。オペラの中にフラメンコや芝居を融合させ、「オペラコミック」として独自の世界観を創り上げた作品の神奈川公演の様子をお伝えします。
作曲家のジョルジュ・ビゼー(芦沢真理)は新作『オペラ・カルメン』を生み出し、初演します。しかし、題材の主役であるカルメン(新宮由理)が下層階級の女性で、結末が死ということから、当時のブルジョワからは駄作だと酷評されます。その3ヶ月後、ビゼーは36歳という若さで他界します。彼の死後、妻のジュヌヴィエーヴ(新宮明日香)は『オペラ・カルメン』を監修し、新たな命を吹き込んで再演。『オペラ・カルメン』を成功に導いたのでした。
冒頭に登場したのは、榊原利彦さんが演じるストリーテラーの怪人、サー・トーマス。ビゼーの人生と劇中劇『オペラ・カルメン』の2つの物語の同時進行を、彼がわかりやすく観客に伝えられていきます。
カルメンを演じたのはメゾソプラノ歌手の新宮由理さん。初演から主人公カルメンを演じ、迫力ある歌声で、魅力的に数々の男たちを虜にしていきます。貫禄と色気を持ち合わせたカルメンの存在感はさすがで、ドン・ホセを誘惑するシーンや、エスカミーリョと歌う場面は息を飲むほど官能的で美しかったです。
ドン・ホセに思いを寄せるミカエラを演じたのは、ソプラノの五東由衣さん。清純で美しい心のミカエラはまるで一輪の花が咲いたような存在感でした。ビゼーの愛人で、ビゼーの子どもを産んだマリテレーズとの二役を彼女が演じることで、2つの物語が並行して進んでいくことを示します。衝撃的なラストシーンの演技力が見どころです。
カルメンの虜になったせいで、悲しいほどに人生があっけなく崩れていくドン・ホセを演じたのは、テノールの内田由則さん。魔性の女に翻弄される無垢さに、見る側も心をつかまれていきます。カルメンとドン・ホセが愛の言葉を歌で交わし合う場面はうっとりするほど美しかったです。
そして、劇中劇でもある『オペラ・カルメン』も見逃せません。ビゼーの運命と人間模様を重ね合わせられて進行していくのが、この物語の見どころです。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、『Carmen Operacomic』(カルメン・オペラコミック)公演ルポの全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■闘牛士のエスカミーリョ役はバリトンの月野進さん。カッコイイ!と心の中で叫んでしまうほど
■フラメンコは影山奈緒子さんと伊集院史朗さん。パーカッション、フルートで独自のスタイルに
■貫禄のある芝居の三井伸介さん。シリアスな展開の時でさえ、客席に笑いが起きた今若孝浩さん
■ビゼーの妻、ジュヌビエーヴ役には新宮明日香さん。カルメンと重なる心の変化を巧みに表現
■サー・トーマス役の榊原利彦さんがフランス語の歌の意味を、彼の言葉で解説するところがツボ
<『Carmen Operacomic』(カルメン・オペラコミック)>
【愛知公演】2019月1月14日(月) 愛知県芸術劇場 小ホール(この公演は終了しています)
【神奈川公演】2019年4月13日(土) 横浜市開港記念会館(この公演は終了しています)
THE REDFACE 今後の予定
<舞台『七慟伽藍 其の二十』>
【神奈川公演】2019年6月29日(土)~6月30日(日) 横浜情報文化センター 情文ホール
公式ページ
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CoRich舞台芸術!のページ
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<関連ページ>
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『THE REDFACE』 公式ページ
https://theredface.stage.corich.jp/
- 2020年12月以前のプレゼント 2021年6月16日
- ビゼーの運命と劇中劇を重ねて、THE REDFACE『カルメン・オペラコミック』ルポ 2019年5月22日
- 「裏も全部作っていけるクリエイターになりたい」、榊原利彦インタビュー(下) 2019年5月21日
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■闘牛士のエスカミーリョ役はバリトンの月野進さん。カッコイイ!と心の中で叫んでしまうほど
魅力的な闘牛士のエスカミーリョを演じたのは、バリトンの月野進さん。カルメンを虜にしてしまうだけあって、色気に満ちています。遠くから求愛の歌が聴こえると思っていたら、なんと客席から登場。思わずカッコイイ!と心の中で叫んでしまうほど粋でした。
■フラメンコは影山奈緒子さんと伊集院史朗さん。パーカッション、フルートで独自のスタイルに
ジョルジュ・ビゼー役の芦沢真理さんはピアノを全編に渡って演奏し、編曲も担当。セリフはないのに、切なく迫力のあるピアノが物語の要となっていました。
踊りと演奏も、この作品のキーマンで見逃せません。フラメンコには影山奈緒子さんと伊集院史朗さん、パーカッションには朱雀はるなさん、フルートには仲間知子さんが登場することで、オペラコミックという独自のスタイルが構築されていました。
■貫禄のある芝居の三井伸介さん。シリアスな展開の時でさえ、客席に笑いが起きた今若孝浩さん
ビゼーの父、アドルフ役を演じたのは、三井伸介さん。貫禄のある芝居力と存在感は思わず手に汗をにぎるほどで、釘付けにされました。
カルメンに恋するスニガを演じたのは今若孝浩さん。シリアスな展開の時でさえ、彼が登場して言葉を発すると客席に笑いが起こります。死後はサー・トーマスとともにストーリーテラー役側にまわり、舞台をさらに楽しませてくれました。
■ビゼーの妻、ジュヌビエーヴ役には新宮明日香さん。心の変化と強さを巧みに表現
ビゼーの妻、ジュヌビエーヴ役には新宮明日香さん。ジュヌヴィエーヴの心の変化と強さを巧みに表現しており、カルメンのキャラクターと重なるところが印象的でした。
■サー・トーマス役の榊原利彦さんがフランス語の歌の意味を、彼の言葉で解説するところがツボ
脚本家の榊原玉記さんは「ビゼーが成功を知らずして亡くなったことが最大のテーマ。オリジナル台本のフィクションですが、ご覧いただき、もしかしたら? あれ、こうだったの? そんな風に思っていただけたら、嬉しいです」と話していました。
サー・トーマスがフランス語の歌の意味を彼の言葉で解説するところもツボでした。わかりやすく、思い出すだけで顔がほころんでしまうほど面白く、もう一度その場面を見たくなってしまいました。オペラが初めてという人にも間違いなく楽しめる作品です。