ウエストエンドの70人、『民衆の歌』で劇場関係者と医療関係者への支援呼びかけ

YouTubeの『70 West End stars perform Les Miserables’ Do You Hear The People Sing』チャンネルより

ウエストエンドシアターは、ロンドンのウエストエンド周辺にある劇場地区で、ニューヨークのブロードウエイシアターと並び称される商業演劇地域です。COVID-19で全ての劇場が閉まっている今、オンラインで集結した70名の歌手が歌うレ・ミゼラブルのナンバー『民衆の歌』をYouTubeで聴くことができます。日本語の全訳をつけて紹介します。(動画の指定部分を再生した後に同じ部分を繰り返して聴く時は、ブラウザの画面を更新してから再生するとその部分だけを聴くことができます)

司会のクリストファー・ビギンズさんは、英国の俳優で、テレビ番組の司会もしている人です。まずは動画の冒頭で、彼が、「新型コロナウイルス拡大を防ぐため、このパンデミックの最前線で闘っている英国の医療従事者やボランティアのために、ウエストエンドシアターの歌手が声を合わせて歌います」と語っている部分を聴いてください。

■司会者クリストファーさんのセリフの翻訳

Just over two weeks ago, theaters around the country closed their doors in order to help contain the COVID-19 virus. And now, as we all do our bit to help fight this awful pandemic, West End performers from those very theaters have joined together to say thank you to our wonderful NHS workers and volunteers, help boost our morale and remind of us how much stronger we are when we work together.

国中の劇場が、新型コロナウイルス拡大を抑制するためにその扉を閉めて、すでに2週間以上になります。そして今、この恐ろしいパンデミックとの闘いに少しでも協力したいと、ウエスト・エンドの各シアターからパフォーマーが集結し、英国の医療関係者やボランティアの皆さんにお礼を申し上げます。みんなの士気を高めるため、そして、共に働くことでどれだけ強くなれるのかを示すため、私たちは集まりました。

歌われるのは、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のナンバーで ”民衆の歌:Do you hear the people sing” 。パリ市民が政府軍と衝突する場面で、民衆のリーダーが中心となって歌う曲です。もちろん全てのパフォーマーが自宅からネットでつながることで実現したリモートバージョンです。

このビデオは、ふたつのチャリティへの寄付を呼び掛けています。ひとつは”Acting for Others “という劇場関係者を支援するもので、もうひとつは最前線で闘っている医療関係者への支援となる”in aid of the NHS Charities COVID-19 Appeal ” です。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、歌われている『民衆の歌』歌詞の日本語への私訳、動画の最後で英国の女優のレスリー・ジョセフさんが声だけの出演でチャリティへの呼びかけをした部分の私訳、そして「Virtual Choir」(バーチャル・クワイア)と呼ばれるこうした合唱動画の作り方についてアイデアニュース編集部が調べた結果を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■『民衆の歌』歌詞の私訳

■英国の女優、レスリー・ジョセフさんが声だけの出演でチャリティへの呼びかけをした部分

■「Virtual Choir」の作り方

<関連リンク>
Acting for Others
http://actingforothers.co.uk/
in aid of the NHS Charities COVID-19 Appeal(Virgin Money Giving)
https://uk.virginmoneygiving.com/fundraiser-display/showROFundraiserPage?userUrl=ClapForOurCarers&pageUrl=2

※ここから有料会員限定部分です。

■『民衆の歌』歌詞の私訳 

*英語の歌詞はコピーライトの関係で出せないと思うので、私訳だけつけておきます。

人々の歌声が聴こえるか?

夜の谷に失われた人々の声

それは民衆の音楽

光を求めて這い上がる者の歌

地上の哀れな者たちのため

決して消えない炎がある

最も暗い夜でさえ 必ず終わりが来て 日が昇るのだ

神の庭で再びの命を受け 自由に生きる

農具を置き 武器を手放し

鎖は解き放たれるだろう

全ての人が報われるのだ

この闘いに加わるか?

私とともに立ち上がるか?

バリケードの向こうに

望んできた世界が見えるだろうか?

人々の歌声が聴こえるか?

遠くにドラムが聴こえるか?

人々がもたらす新たな未来なのだ

明日が来れば!

(*後半の繰り返し)

この闘いに加わるか?

私とともに立ち上がるか?

バリケードの向こうに

望んできた世界が見えるだろうか?

人々の歌声が聴こえるか?

遠くにドラムが聴こえるか?

人々がもたらす新たな未来なのだ

明日が来れば!

■英国の女優、レスリー・ジョセフさんが声だけの出演でチャリティへの呼びかけをした部分

At times like this we all have to look after each other so if you can please support our two wonderful charities through the links in the video description.   And on behalf of acting for others,  thank you for your support.   Stay safe.  Look after each other.  Thank you.

このような時には、互いに助け合うことが必要です。二つの素晴らしいチャリティがあるので、ご協力をお願いいたします。この動画の説明部分にリンクが貼ってあります。そのうちのひとつ、Acting for Others を代表して、皆さんのご支援にお礼を申します。どうかご無事で。お互いに助けあいましょう。ありがとうございました。

■「Virtual Choir」の作り方

【以下、文責:アイデアニュース編集部】今回取り上げたウエストエンドシアターの歌手が声を合わせて歌っている動画は、「Virtual Choir」と呼ばれるものの一種で、このような形でインターネットを使った合唱や合奏の動画は、海外のYouTubeに多く掲載されています。どうやってこの「ネット合唱」が行われているのか調べてみたところ、1つの伴奏音源を参加者にネットで配り、受け取った人が自宅などでその伴奏をヘッドフォンで聞きながら、その伴奏に合わせてスマホなどに歌っている映像を録画すると、伴奏のない歌だけの映像を作ることができます。その映像をネットで編集者に送り、集まった動画を動画編集ソフトの複数トラックに入れて、音を同期して合唱の形にしていることがわかりました。こちらのページに詳しい解説が出ています。
https://delraestudios.lpages.co/i-can-virtual-choir-and-so-can-you/

使っている技術はそれほど特殊なものではなく、一般的な動画編集ソフト(たとえば Adobe Premiere Elements など)でも、Virtual Choir を作れることが確認できました(Adobe Premiere Elementsでも最大で99トラックまで作ることができるそうです)。
https://helpx.adobe.com/jp/premiere-elements/kb/4507.html

複数のトラックに並べた複数の映像や音声の同期は、自動でできるソフトもあれば、波形を見ながら手動でしかできないソフトもありますが、複数の動画データを同期するのに一番簡単なのは「カチンコ」を使う方法です。よく映画の撮影シーンなどの紹介で「はい、スタート! カチン!」という風に、拍子木のようなものと合わせるシーンがありますが、カチンコ映像を撮影しておくと、カチンコが閉じる瞬間の映像と「カチン!」と音がする瞬間の波形を簡単に合わせられるので、複数のカメラで撮った映像を合わせる時に便利です。「Virtual Choir」であれば、たとえば伴奏音源の冒頭にカチンコ代わりの音を録音しておいて、その部分だけはヘッドフォンから流れる音をマイクに近づけてカチンコの音を録画してもらって、そのまま伴奏曲に入るところでヘッドフォンをつけて伴奏なしで歌っている映像を録画すれば、簡単に音を同期できると思います。

こちらの動画を見ると、「Virtual Choir」の作り方が良く分かります。パソコンなどで表示された説明動画を見ながら、説明の音声とビープ音(カチンコの音のようなもの)がするまではパソコンから流れる音をそのままスマホなどに録音しておいて、ビープ音がしてからヘッドフォンのジャックをさしてパソコンから音が外に出ないようにして、パソコンの中で指揮をする人の手の動きと、ヘッドフォンの中から流れてくる伴奏音楽に合わせて、スマホなどに向かって歌って録音・録画するというパターンがよく分かると思います。編集者はビープ音で同期すれば、歌もピッタリ同期できるというわけです。この動画の冒頭に出て来る「エアコンを切っておいて」というお願いは、とても大切です。エアコンのウィーンという動作音は、人間の耳にはあまり聞こえなくても録音機には騒音として入るので、動画取材の際などにはエアコンを切るように私たちもお願いしています。ちなみに「黒い服」は、この動画の演出上必要とされているだけですので、通常の合唱であれば不要です。

「stay at home」が求められている今だからこそ、「場所」と「時間」を超えて、合唱・合奏をする「Virtual Choir」に挑戦してみるのも、面白いかもしれませんね。

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