宝塚歌劇 宙組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演 オリエンタル・テイル『壮麗帝』(作・演出、樫畑亜依子さん)が、2020年8月14日(金)に開幕しました。この作品は、2020年3月28日から東京の日本青年館ホールで、2020年4月11日からは大阪の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で梅田芸術劇場では約4ヶ月遅れでの開幕となりました(日本青年館ホールの公演は中止)。主演を務める桜木みなと(さくらぎ・みなと)さんにとっては、自身初のシアター・ドラマシティ主演公演ということもあり、まずはその幕が無事開いたことに「おめでとうございます」と、心からお伝えしたいです。なお、本作は2020年8月18日(火)15:00より上演される千秋楽の公演全編が、「Rakuten TV」と「U-NEXT」で視聴可能な宝塚歌劇の動画配信サービス「タカラヅカ・オン・デマンド」で、ライブ配信される予定です。
『壮麗帝』は、オスマン帝国を最盛期に導いた第10代皇帝スレイマンを描いた歴史ロマン。栄華を極めた皇帝から一心に寵愛を受ける元奴隷の娘アレクサンドラ(ヒュッレム)と、忠義を尽くし心腹の友でもある家臣イブラヒムとの関係を軸に物語が繰り広げられます。また、繁栄の時代を象徴する華やかな場面がある一方、ハレムに献上された女たちの嫉妬と欲望、近隣諸国に渦巻く思惑など登場人物の心情も丁寧に描かれている作品です。
物語の舞台は、16世紀初頭のオスマン帝国。第8代皇帝の御代にサファヴィー朝が建国され、君主イスマーイールの働きかけにより、反乱が起こります。その戦いはオスマン帝国に打撃を与え、父のやり方に不満を持った皇子セリムが混乱に乗じて父を排し第9代皇帝へ。その後、長年の戦いの末オスマン帝国はついに勝利を収め、スレイマンの少年期には対外遠征によって領土を広げ続けていました。しかし、皇帝の崩御により事態は変化。のちに「壮麗帝」と呼ばれるスレイマンが第10代皇帝の座につくことになったのです。
そんなスレイマンを演じた桜木みなとさんは、勇壮な皇帝ぶりで観客を魅了。寵愛したアレクサンドラ(ヒュッレム)へ向ける視線や、複数の女たちに囲まれているときに纏う空気からは、観ていてハッとするような色気が感じられ、目を奪われます。普段は愛らしい印象の桜木さんですが、そんな彼女が見せる男らしい艶美な表情に、男役としての将来がますます楽しみになりました。また、国を統治するリーダーとしての気持ちと、そうではない自分の気持ちというスレイマンが抱く葛藤の表現も見事。その先に迎える結末がより一層切なく感じられたのも、桜木さんの演技の賜物でしょう。
アレクサンドラ(ヒュッレム)役の遥羽らら(はるは・らら)さんは美しさだけでなく、芯の強さや聡明さを持ち、皇帝から寵愛を受けるにふさわしいと納得できる魅力的なヒロインを好演。ひとつひとつの所作からも気品が感じられ、さまざまな色合いのドレスを優美に着こなす姿も印象的でした。桜木さんに寄り添い並ぶ姿も麗しく、2人が見つめ合って微笑み合うシーンはまさに眼福。スレイマンへの愛情を窺い知ることができる遥羽さんの視線にも、ぜひ注目してみてください。
■桜木との掛け合いが印象深い和希そら、舞台に華やぎを与える天彩峰里
第10代皇帝であるスレイマンの右腕として活躍するのが、元は異国からの奴隷であった小姓イブラヒム。スレイマンは能力のある者に役目を与えるのは当然のことと、出自に関わらず有能な人材を登用する皇帝で、イブラヒムはその中でも特に目がかけられる存在でした。皇帝と家臣という関係のふたりですが、年月が経つにつれ、その関係性はより深くなり固い信頼で結ばれていきます。そんなイブラヒムを演じる和希そら(かずき・そら)さんからは、本当に「スレイマンのため、国のためを思っている」という気持ちが伝わってくるからこそ、その後に待ち受ける展開に心を大きく揺さぶられました。特に、2幕での桜木さん扮するスレイマンとの掛け合いは、万感胸に迫るものがある必見シーン。
そして、イブラヒムの妻となるハティージェを演じる天彩峰里(あまいろ・みねり)さんは、明るく朗らかな表情で場に華やぎを与えてくれます。「皇帝の妹である」という自分の立場に理解を示す姿から、ハティージェの持つ強さと同時に健気さも表現し、和希さん演じるイブラヒムとの関係がより際立った場面が心に残りました。
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<有料会員限定部分の小見出し>
■凛城きらと秋音光、皇帝の母と第一夫人役で存在感
■敵君主役の秋奈るい、大臣役の水香依千がスパイスに
■ソロナンバーが印象的、不満を抱く宰相役の鷹羽千空
■8月18日(火)午後3時から、千秋楽を全編ライブ配信
<宝塚歌劇 宙組公演 オリエンタル・テイル『壮麗帝』>
【大阪公演】2020年8月14日(金)~8月18日(火) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式サイト
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2020/soureitei/
<宝塚宙組『壮麗帝』千秋楽ライブ配信>
宝塚歌劇の動画配信サービス「タカラヅカ・オン・デマンド」にて、公演全編のライブ配信を実施(見逃し配信の予定は無し)。
■日時:2020年8月18日(火)15:00公演 千秋楽
■視聴方法:「Rakuten TV」および「U-NEXT」にて配信
■視聴料:3,500円(税込)
■販売期間:8月4日(火)10:00~8月18日(火)14:00
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200716_004.html
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■凛城きらと秋音光、皇帝の母と第一夫人役で存在感
今回は普段は男役の凛城きら(りんじょう・きら)さんと、秋音光(あきね・ひかる)さんが、それぞれスレイマンの母であるハフサと、第一夫人であるマヒデヴランという存在感のある女性を演じていたのも印象深い点。皇族としての威厳を表現する一方で、歌唱ではその心の奥にある思いを情感たっぷりに歌い上げ、物語に奥行きを与えていました。
■敵君主役の秋奈るい、大臣役の水香依千がスパイスに
また、オスマン帝国と敵対するサファヴィー朝の君主であるイスマーイール役の秋奈るい(あきな・るい)さんや、サファヴィー朝の大臣であるフサイン役の水香依千(みずか・いち)さんなど、オスマン帝国を目の敵にする人物を登場させることによって物語にスパイスが加わり、帝国にまつわる人間模様の描写にもおもしろみが感じられます。
■ソロナンバーが印象的、不満を抱く宰相役の鷹羽千空
アフメト役の鷹羽千空(たかと・ちあき)さんは、処遇に不満を抱くオスマン帝国の宰相という役どころ。ロック調のソロナンバーでは、その反逆心や嫉妬心を歌に乗せ、アフメトの心中を感情豊かに表現していました。
■8月18日(火)午後3時から、千秋楽を全編ライブ配信
宮廷史家のマトラークチュを演じた悠真倫(ゆうま・りん)さんが、物語の随所に登場しストーリーテラー的な役割を担った演出も効果的で、初見でも話の展開がわかりやすく頭に入ってきました。作・演出の樫畑亜依子さんは、オスマン帝国の資料は他の国に比べると少なく、公演は史実と多く異なる点もあるとパンフレットでも述べていますが、「壮麗帝」と呼ばれた隆盛を極めた王の人生という題材はおもしろく、オスマン帝国の歴史にも興味が出てくる作品。異国宮殿を舞台にした絢爛豪華な衣装や舞台セットをじっくりと鑑賞するのも楽しく、非日常にどっぷりと浸ることができるのも、この『壮麗帝』の醍醐味のひとつでしょう。
なお、本作は2020年8月18日(火)15:00より上演される千秋楽が宝塚歌劇の動画配信サービス「タカラヅカ・オン・デマンド」で、公演全編がライブ配信される予定です。「Rakuten TV」および「U-NEXT」から視聴可能。視聴チケットは8月4日(火)10:00~8月18日(火)14:00まで購入できるので、劇場へ足を運ぶことが難しい場合は、ぜひライブ配信で『壮麗帝』を楽しんでみられてはいかがでしょうか。