【言葉の工房 4】
皆さん、こんにちは。添嶋です。
今回は10月15日、16日の二日間、大分県別府市で開催される、文芸同人誌イベント「zine展 in Beppu」をご紹介します。
このイベントは、JR別府駅から近い商店街にある店舗を会場として、全国から集まった文芸同人誌を展示、販売するというものです。(⇒ http://zinebeppu.jimdo.com/)
主催の豆塚エリさんは別府市で活躍する詩人であり、大分県詩人連盟の理事長も務めていらっしゃいます。詩や小説の執筆からzineやリトルプレス発行、イベントの主催、参加など多岐にわたり活躍される豆塚さんにメールでお話を伺いました。
■10/15-16 zine展 in Beppu3開催
——zine展 in Beppu(以下、zine展)を開催することになったきっかけや経緯を教えてください。
豆塚エリさん(以下、豆塚):きっかけは第二回福岡ポエイチへの参加でした。
自分の本を作り始めて間もないころ、文フリ(文学フリマ)の存在は友人づてに知っていたのですが、当時は福岡文フリもありませんでしたし、九州から出て参加することはまだ考えられませんでした。そんなときに九州唯一の文芸系同人誌即売会として「ポエイチ」を知り、思わず飛びつきました。
参加して、その異様な熱気に驚きました。創作にかける想いや愛情がびしびし伝わってきました。とても楽しかったので、こういうイベントにどんどん参加したい!と思ったのですが、自分が車いすを利用する人間だと言うこともあって、地方から遠方のイベントに参加するのは大変でした。地元大分でもこんなイベントがあったらいいのに、と思い探したのですが一次創作のイベントはなく、ならば自分が主催すればいいのではないかと思いつきました。
——zine展の特徴やおすすめポイントはどういったところにありますか?
豆塚:特徴は、まず会場がひなびた観光地にあることです。田舎なのでアクセスが悪いことがマイナスポイントではあるのですが、それを克服しようと試行錯誤をする過程で、かえって個性が出ました。
販売を完全委託にすることで、単に遠くて来れない人だけでなく、何らかの障害や疾患のある人も気軽に出展できます。
外部には観光地で開催することを積極的にPRし、地元では、地元テレビ局・新聞社や近所の飲食店などにも協力を仰ぎ、地元の人や観光リピーターに愛される名物イベントにしていくことで、他の同人イベントとは全く異なった客層を得られました。
また別府zine展では売ることを最大の目的にしています。他のイベントは交流を主な目的にしているところが多いですが、別府zine展は完全委託なので交流はありません。二日間しかありませんし、作った本人が売ることができないので、どうしても販売力が弱まります。一冊でも多く売り、次につなげてもらうためにも、全体の販売量や個別の本の分析をしたレポートをお返しすることで、次回作のモチベーションに繋がらないかと思いました。
お客様への売りは「全国から本屋さんでは買えない本が集まる」です。
同人イベントが一般にひらかれることで、また、出展者の方に一般の方への販売を視野に入れてもらうことで、今までにない新しいイベントになったと思います。
——過去、開催されたzine展へはどのようなかたが来場されましたか。豆塚さんが参加されたことのあるイベントと比べて、違いはありますか?
豆塚:先ほども書いたことになりますが、地元の方、観光客の方がまず多いです。イベントをツイッターの告知や口コミなどで知った方も、遠方から見えられたりもしました。zine展を目的にではなく、たまたま歩いていたらやっていたので覗いてみたという方も多かったです。気負いのない下町らしい空気感は他のイベントと比べて少し異色のように思います。
最近は静岡や尼崎など地方のイベントが増えてきて、同人イベントの敷居が下がっていっているように思います。それぞれの個性をどんどん発揮しているので面白いですね。
——最後にzine展に興味を持たれたかたへメッセージをお願いします。
豆塚:私も本をつくって売っている立場のため、どうしても売る側の視点になってしまうのですが、時間とお金をふんだんに使って作られた本たちにぜひ触れに来てほしいです。商業的な本以上に「とにかく伝えたい、読んでほしい」輝きや熱意や愛が溢れていますし、流行やおしゃれに左右されない確固たる何かがあります。
毎年少しずつパワーアップしているように感じますが、今回もかなり豪華なラインナップになることが予想されます。
ぜひ別府のzine展に来ていただいて、そして温泉やグルメなどの観光も楽しみ、英気を養ってほしいです。
——ありがとうございました。
開催される時期はちょうど秋の観光にもいい時期だと思いますので、近くに訪れる際は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
■10月の文芸同人誌イベント
・第4回 Text-Revolutions(2016年10月8日 11時〜16時 東京都立産業貿易センター台東館)オールジャンルの文芸同人誌展示即売会。ミニ企画が多数あり、会場内はさながら大人の文化祭。遠方のかた向けにお買い物サービスもある。入場は無料。
⇒ http://text-revolutions.com/event/archives/4257
・第二回文学フリマ福岡(2016年10月30日 11時〜16時 福岡市天神 都久志会館)全国で開催されている、文学フリマ。福岡での開催は2回目。入場無料。
⇒ http://bunfree.net/?fukuoka_bun02
■関連サイト
・こんぺき出版 zine展 in Beppu主催の豆塚エリさんの運営されている出版社。
- 言葉の工房:(7) 泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」、京都店がオープン 2017年2月15日
- 言葉の工房:(6) 第一回文学フリマ京都、出展者として参加してきました 2017年2月7日
- 言葉の工房:(5) 大人の文化祭「Text-Revolutions」/印刷費用の目安 2016年11月12日
- 言葉の工房:(4) 「zine展 in Beppu」/印刷所に依頼して本を作るための手順 2016年9月28日
- 言葉の工房:(3) 詩の同人誌展示即売会「ポエケット」/表紙の作り方と印刷 2016年8月22日
※ここからは、アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分です。前回に引き続き、冊子の作り方です。InDesignで冊子本文の原稿を、Photoshopで表紙の原稿作成の紹介をしています。
■Adobe InDesignをつかって原稿を作る
■Photoshopで表紙を作る
今回から何回かにわけて、印刷所に依頼して本を作るための手順をご紹介します。
前回までご紹介したコピー本の作りかたにもあるように、Wordでも原稿を作ることはできます。Word形式のファイルでも依頼はできますが、印刷所にも自分の使っているのと同じフォントがあるとはかぎりません。この場合、PDF形式で保存すると、フォント情報も埋込まれた状態になるので、自分の意図したフォントやレイアウトで仕上げてもらうことができます。
今回はAdobeというメーカーのInDesignという専用のレイアウトソフトを使用してみます。Wordよりも細かい指定ができるので、こちらを使用するかたも多いようです。
ちなみに、PhotoshopやIllustratorなどの画像用ソフトなどとセットで月額4980円から利用できます。単体でも使用できるのですが、あれこれ使うようになると結局セットのほうが得だったりします。
■Adobe InDesignをつかって本文原稿を作る
用紙設定は、紙面いっぱいに絵や写真などを入れないのであれば、原寸で作成しても問題ない印刷所が多いようです。通常は上下左右に3mmずつ余白を足した状態でサイズ設定をします。
フォントは好みで。ただ、前々回も書きましたが、有料で頒布する場合は商用利用可能かどうかの確認を忘れずに。
画面にある、フォントサイズはQ数という単位を使っています。通常目にするpt(ポイント)とは大きさが異なります。13Qで9.2ptくらいの大きさになるそうです。また、天地は上下方向の余白。ノドは閉じ方向の余白、小口はノドの反対側を示します。ノド方向の余白をあまり少なくすると、開いたときに文字が読みにくくなりますので注意してください。
また、読みやすい紙面にするために、以下のような設定を追加しました。A5サイズ、本文2段組で設定しています。
- ・禁則処理「弱い禁則処理」これに、閉じカッコをぶら下がりに、三点リーダ、ダーシを分割禁止に追加しています。
- ・行末受け約物全角/半角・段落一字下げ(起こし食い込み)これを選んでおくと、段落はじめを一文字下げなくても自動で下げてくれます
- ・Adobe日本語単数行コンポーザー
PDFに書きだす場合は、書き出しの設定で、画像を入れた場合は圧縮をかけない(ダウンサンプルも圧縮もしない設定にする)、フォントの埋込みはする。「PDF/X1a:2001」の形式を選んでおけば間違いは少ないはずです。
■Photoshopで表紙を作る
前回はペイントで簡単に作りました。今回はPhotoshopなどの画像編集ソフトを利用します。
表表紙、裏表紙をつなげた形で作る場合、A5サイズの本を作る場合は縦210mm×横296mmプラス背表紙のぶんという大きさになります。背表紙の厚さは本文の分量、本文用紙の厚みによって代わりますので、印刷所のサイトにある説明を参照してください。
解像度はカラー印刷をするなら300〜350dpi、白黒印刷なら600dpiに設定します。dpiというのはdots per inchの略で、1インチの幅の中に、いくつドットがあるかを表しています。
カラー印刷の場合、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色を使用して印刷するので、それぞれ300個の点で印刷されます。これが四色分1200個の点となって絵や文字を表現するため、300dpiできれいに印刷されます。白黒の場合は黒い点だけですべてを表現しないといけないので、600個の点が必要となるのです。
これは、本文に入れるイラストや写真を用意する場合も同じです。あまりdpiの数値が小さいとモザイクのような状態になってしまい、せっかくのイラストや写真が台無しになってしまいますので注意してください。
カラー設定ですが、もしあれば、CMYK(色料の三原色プラス黒)を指定してください。なければRGB(光の三原色)でも構いません。Photoshop Elementsなど、安価な製品ではRGBしか扱うことができないことが多いです。
ほとんどの印刷所ではRGBでも問題なく印刷を受けつけてくれますが、意図しない色になることが多いです。全体的に、青から紫にかけてくすんだ色合いになることが多いです。また、蛍光色は特別な色となるため、通常の印刷では表現できないので使用しないほうが無難です。
表紙の大きさいっぱいに写真やイラストを載せる場合は、先ほどの大きさにプラスして、上下左右3mmずつ増やした大きさで作成します(塗りたしといいます)。実際の大きさよりも大きめに作ってから、周囲を裁断して大きさを揃えるため、余白が出ないようになります。文字は用紙の端に寄りすぎると裁断の際に着られてしまい、文字が欠ける可能性があります。このため、わざと文字が欠けるようなデザインにしない限りは、周囲5mm程度はあけて配置する必要があります。
デザインは……難しいですよね。自分の場合は以下のような設計図を作って、それに沿ったデザインにすることが多いです。
表表紙側(向かって左側)は三等分し、真ん中の部分にイラストや写真を入れます。上にはタイトル、下には著者名を入れます。裏表紙側(向かって右側)には団体(サークル)名や出版者名などを入れます。これだけでもずいぶん見た目は良くなるはずです。
フォントはフリーで配布しているものを利用してもいいでしょう。ただし、フォントの使用条件に「商用利用可」とあることを確認してください。ゴシック体、明朝体以外のフォント(手書き風のフォントや装飾フォントなど)を使用すると見た目もとても変化します。
次回は印刷所と、用紙のお話です。