「ミュージカル俳優はこの程度かと判断されないように」、井上芳雄インタビュー(下)

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

井上芳雄さんのインタビュー後半です。ミュージカル「グレート・ギャツビー」のカンパニーの様子や、今のご自身の新たなチャレンジについて伺いました。

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

■万里生なんて役にぴったりすぎて、逆にやりにくいのかなと

――初めてこのチラシを拝見したとき、全員がハマっているなと思いワクワクしました。

それは僕も思いました。キャラクターで選んだんでしょうね。小池先生は独特のキャスティングをされますが、他にどんな条件があったとしても、キャラクターに合っていなかったら、キャスティングしないと思います。そこは絶対に譲らないところで、信頼を得ているところだと思います。今回もまさにそうで、それぞれがそのままのキャラクターで見せられるんじゃないでしょうか。もちろん、内面を埋めていくのはこれからですね。

――皆さんと稽古をされていて、意外なことや、しっくりくることなど、いかがですか?

僕はまだ1日しか一緒にやっていないですが、万里生なんて役にぴったりすぎて、逆に演じにくいくらいじゃないかと(笑)。役者だから「この役はこういう人で、こういう所を強調してやろう」と演じると思いますが、僕から見る万里生の存在とニックがあまりにもぴったりすぎて、そんな必要すらなく見えます。そんなこと言われても本人は困るでしょうが(笑)。

■(夢咲ねねさんは)いい意味で凛とした近寄りがたさがある

――恋の相手となるデイジー役の夢咲ねねさんはいかがですか?

「緊張する、緊張する」とっ言っていました。いい意味で凛とした近寄りがたさがあるから、デイジーにすごく合ってるんじゃないかと思います。あくまでイメージですが、「本当のところは誰とも分かち合わないぞ」みたいな強さを持っているように見えるので、デイジーと合っていると思います。

――全体としてはどんな雰囲気のカンパニーですか?

とても穏やかな雰囲気かなと思います。「この人めんどくさいな」っていう人は、今のところいない気が……いても言えないけど(笑)。

――(笑)。

でも、だいたいどのカンパニーにも1人くらいはいるんですよ(笑)。レミゼみたいな規模になると、2人くらいいるかな(笑)。今回、僕が初めての方もいらっしゃるから、まだ見えていないのかも。あとは、基本的に若いですね。若い勢いみたいなものが生きる芝居だと思うので、もう少し、穏やかではない雰囲気になるといいな思います。これから作っていきながら、伝えていければいいですね。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、「ミュージカル俳優だと言っていてそんな程度かと判断されないように、常に戒めています」という井上さんの舞台にかける思いについてさらに掘り下げて伺った内容を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■チャレンジャーの立場にもいて、辛い思いもすることが必要

■色があるというのはいい意味で強みなんだなと分かってきた

■踊りもやれと言われれば、それなりに納得してもらえる技量は持っていたい

■実話でないからこその魅力的なギャツビーがいると思ってもらえるよう、頑張ります

<ミュージカル『グレート・ギャツビー』>
【東京公演】2017年5月8日(月)~5月29日(月) 日生劇場
【愛知公演】2017年6月3日(土)~6月15日(木) 中日劇場
【大阪公演】2017年7月4日(火)~7月16日(日) 梅田芸術劇場メインホール
【福岡公演】2017年7月20日(木)~7月25日(火) 博多座
公式ページ http://www.tohostage.com/gatsby/

<関連サイト>
井上芳雄オフィシャルサイト http://www.grand-arts.com/yi/

グレート・ギャツビー 関連記事:

⇒すべて見る

※井上芳雄さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは5月1日(月)です。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

■チャレンジャーの立場にもいて、辛い思いもすることが必要

――ミュージカル、ストレートプレイ、ラジオ、大河ドラマ、WOWOW……と、今年も幅広いご活躍で、どんどん新しいことに取り組んでいらっしゃいますが、そのモチベーションは何ですか? 新しい事に取り組むのは面白い反面、リスクも色々とあると思いますが、どういうスタンスで選んでいますか?

基本的に頂ける仕事で、自分がやりたいと思えたらほとんど何でもやりますね。でも、初めてのものは毎回それなりに苦労するし、いい事ばかりではないとは思います。ギャツビー役にもそういう苦労はあると思います。17年くらいやらせてもらってきて、やっと色んなことがやりやすくなってきたというか、心と体のバランスが良くなったと思っています。初めて取り組むことでも、何となく取り組み方というか、自分の個性やどこを出せばいいのかというのは、以前より早く分かるようになりました。若いときは自分の個性が何なのかも分からないですからね。経験だけは重ねているので、どんなものをやっても多少の手応えはあります。それでもやはり初めてのものには「もっとこうすればよかった」という思いはつきもので、逆にそれがないとつまらないのかもしれません。

――新しいことがないとつまらない?

ミュージカルばかりやっていると、どんどん偉くなってきて、「ブロードウェイの俳優はそんなんじゃないんだよ」とか言い出すと思うんですよ、僕の性格だと(笑)。

――(笑)。

「ストレートプレイの俳優はさ」とかも言いたくなっちゃうと思うので(笑)。それよりも自分がチャレンジャーの立場にもいて、辛い思いもしながらやっていることが必要だと思います。時折ミュージカルに帰ってきて、他の現場での経験を体現できるかもトライアルですよね。偉そうなことだけ言って、やってみたら全然だなと思われないように、やはり何が出来るかが毎回挑戦だと思いますから。

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

■色があるというのはいい意味で強みなんだなと分かってきた

――先頭を走る方がどんどんチャレンジしていると、後ろに続く方ももっとやりたいとなるでしょうね。

そういうものだと思いますね。「ここまでやるんだ」とかね。もちろん僕が全ての正解ではありませんが、自分のためにもそういう姿勢は崩さない方がいいだろうと思っています。

――最近、20代の方にインタビューをすると、「ミュージカル俳優ではなく、俳優でありたい」というおっしゃる方が多い印象です。今、ミュージカルが乗ってきていて、例えば先日の『SONGS』などテレビに出演されているのを拝見すると、トップを走る皆さんはあえて「ミュージカル俳優」と押し出していらっしゃるように感じます。意図してやっていますか?

僕も昔は「俳優と言ってください」って言っていましたね。今も「ミュージカルだけに限定されたくない」という思いはありますが、ずっとやっていると、色があるというのはいい意味で強みなんだなと分かってきたんだと思うんです。あんまりミュージカルやってないミュージカル俳優も最近はいますからね。

――そうですね。

だけど、あえてミュージカル色を出していった方が、とっかかりとしてやりやすかったりもする。だから、いい意味でこだわりを乗り越えて、「ミュージカルをやっているんです」という自分の個性を出しているんだと思います。でも、同時にすごく難しいんですよ。ミュージカル自体は専門職で技術も必要です。「ミュージカルをやっています」というのは、本当の意味でちゃんとやれているのか、自分も含めて問い続けないといけない事だと思いますね。「ミュージカル俳優だと言っていてそんな程度か」と判断されないように、常に戒めています。

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

■踊りもやれと言われれば、それなりに納得してもらえる技量は持っていたい

――中川(晃教)さんが最近よく「ミュージカルは専門職だ」とおっしゃっいますね。

本当にそうなんですよね。お芝居だけでも成立するくらいのお芝居をしなくてはいけないのに、その上、歌も上手く歌うってすごい事だと思うんですよね。実際問題、両方が出来ていないこともまだまだあると思いますが、理想を言えば、それぞれがプロフェッショナルでありたいと僕は思っています。踊りは、僕にとってはプロフェッショナルではないですが。全てやれと言われれば、それなりに納得してもらえるように出来る技量は持っていたいですし、役者、表現者でありたいと思います。

――『グレート・ギャツビー』では、その技術を存分に見せて頂けると期待しています。

「さすが、これぞミュージカル俳優だな」というところを! 自分で言っちゃった(笑)。この作品は、歌も踊りもお芝居も、ちゃんと要素がはっきりしていて、いわゆる王道ミュージカルだと思います。

――しかも、新作ですね。日本ではオリジナルミュージカル自体がまだまだ希少なので、なおさら期待しています。

「イケメンばかり出ているからいいか」とか「人がたくさん出て踊っているからいいか」という言い訳は出来ない(笑)。色んな作品があっていいと思っていますが、『グレート・ギャツビー』は正統派で勝負する作品ですね。

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

■実話でないからこその魅力的なギャツビーがいると思ってもらえるよう、頑張ります

――最後に、楽しみにしていらっしゃるお客様にメッセージをお願いします。

ミュージカルとしても見応えがあるものになると思います。ギャツビーの生き様は理想形というか、みんなが憧れるけれど出来ない生き方を貫いた人だと思います。そこから何が見えるかはそれぞれだと思いますが、どんな人が観ても何か自分の人生にプラスになる、教訓的なものを受け取れる物語だと思います。ギャツビーはものすごく愛しい人で格好いい。実話ではないので存在はしないですが、だからこそ成立するぐらい魅力的な人。魅力的なギャツビーがそこにいると思ってもらえるように、僕達も頑張りますので、ぜひ楽しみに来て頂ければと思います。

――ありがとうございました。

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

井上芳雄さん=撮影・山本尚侍

※井上芳雄さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは5月1日(月)です。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

[contact-form-7 404 "Not Found"]

Follow me!

“「ミュージカル俳優はこの程度かと判断されないように」、井上芳雄インタビュー(下)” への 2 件のフィードバック

  1. はる より:

    井上くんの新作グレートギャツビーにかける並々ならぬ思いを感じます。
    これまでストレートプレイを含め、多くの作品に出演され、磨かれた演技で素敵なギャツビーを見せて頂けることを楽しみにしています!

  2. あのはな より:

    文中の17年という言葉に今更ながらハッとしました。ルドルフからもうそんなに経つんですね。後半は井上さんらしい視点のお話で色々と楽しめました。ギャツビー観劇が待ち遠しいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA