「どれだけ保護しても根本的問題を正さないと終わらない」、杉本彩インタビュー(下)

舞台「森奈津子芸術劇場 第一幕~パトス編~『いなくなった猫の話』」公演ビジュアルより=写真提供:Zu々

杉本彩さんインタビュー後半です。有料部分では、久しぶりの舞台活動について、次回出演作の「森奈津子芸術劇場 第一幕~パトス編~『いなくなった猫の話』」について伺いました。杉本さんが演じる小夜(さよ)役は、動物への愛情だけでなく、酸いも甘いも知った人生の機微を感じさせ、女の色気も感じさせる女性の役。全てを兼ね備えた方に演じてほしいからと、プロデューサーの方が杉本さんに出演のお願いをしたそうです。

舞台「森奈津子芸術劇場 第一幕~パトス編~『いなくなった猫の話』」公演ビジュアルより=写真提供:Zu々

舞台「森奈津子芸術劇場 第一幕~パトス編~『いなくなった猫の話』」公演ビジュアルより=写真提供:Zu々

――個人の保護活動をされていた杉本さんが、財団を立ち上げることになったのはどうしてですか?

10年程前に、広島ドッグパークの経営破綻で、犬が放置されている事件がありました。そこに100頭以上の犬がほったらかしで、餓死したり、共食いしたり、もう悲惨な状態で警察の捜査が入って……という報道がメディアで大きく取り上げられました。それで、広島へ行って色々な状況を見て、動物を取り巻く問題はどういうことがあるのかを、猫だけでなく全体的に、ますます知るようになったんです。今度は保護だけではなく、啓発活動をしなければいけないと思い、色々なことを発信するようになりました。でも、1人でやっていても出来ることには限界があるので、このままでは無理だなと思い、それが財団を立ち上げるきっかけになりました。

――啓蒙活動の必要さを感じられたのがきっかけだったんですね。

やはりどれだけ保護しても、根本的な問題を正さないと、終わりがないんだなと思いました。そう考えた時に、自分の役割は、元の問題をみんなに伝えて、その問題を解決していくような活動をした方がいいんだろうなと。しなければいけないというか。

――もう使命感ですよね。

そう思うようになってしまいました。

――日本人の国民性として流行に左右されますし、色んなことにすぐに影響を受けますよね。ある意味、一つスイッチが入ったら一気に動く。

そうなんです。だから、何かのきっかけがあれば、すごく簡単なんだと思いますが、そのきっかけが何なのかは本当に難しいです。

――それを探しながら常に活動をされているんですか?

メディアの力が大きいと思います。ただ、今はメディアも保護犬や保護猫のことを取り上げてくれるようになりましたが、同時にペットショップの生体展示販売も疑問を持たず堂々と肯定的な番組や情報を流しますよね。だから、本当にメディアがガラリと変わってくれたら状況は変わるのにとは思いますが、今の状況を見ると、あまりメディアに期待は出来ないなと思っています。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、2016年のミュージカル『クリスマス・キャロル』、今回の『いなくなった猫の話』と、久々の舞台出演で感じた「舞台の良さ」について語ってくださった内容など、インタビュー後半の全文を掲載しています。。

<有料会員限定部分の小見出し>

■まだまだテレビの影響が強い。テレビのあり方がいかがなものかと思うことは多々あります

■久々にやって舞台っていいと思いました。自分を活性化してくれる誤魔化しの利かない世界

■原作を読んで、小夜の気持ちを、自分の心と身体を使って伝えたいと思いました

■動物たちと一緒に生活をしていて、命の尊さなどを感じた人には、絶対見て欲しいなと

<森奈津子芸術劇場 第一幕 ~パトス編~ 『哀愁主人、情熱奴隷』『いなくなった猫の話』>
【東京公演】2017年7月28日(金)~8月1日(火) 紀伊國屋ホール
(7月28日は「前夜祭」としての『哀愁主人、情熱奴隷』上演とトークイベントで、杉本彩さんは出演しません)
【出演者(予定)】『哀愁主人、情熱奴隷』:伊藤孝太郎、加藤ひろたか、野尻大介、『いなくなった猫の話』:杉本彩、野尻大介、鈴木ハルニ、伊藤亜斗武、村上健斗、木下政治
※この作品は15歳未満入場不可です(映画のR-15と同程度のセクシュアルな表現があるため、15歳未満の入場をお断りしています)
【公式サイト】http://www.zuu24.com/mngg_pathos/
【公式twitter】https://twitter.com/mngg_zuu

<関連リンク>
杉本彩さんオフィシャルブログ https://ameblo.jp/sugimoto-aya/

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舞台「森奈津子芸術劇場 第一幕~パトス編~『いなくなった猫の話』」公演ビジュアルより=写真提供:Zu々

舞台「森奈津子芸術劇場 第一幕~パトス編~『いなくなった猫の話』」公演ビジュアルより=写真提供:Zu々

※ここから有料会員限定部分です。

■まだまだテレビの影響が強い。テレビのあり方がいかがなものかと思うことは多々あります

――そうですよね。アイデアニュースは、広告料を一切取らずに、自分たちが発信したいものを発信するというメディアで、協力してくださる方に有料会員になって頂きたいという思いで運営していて、社会的な問題も多く取り上げたりしています。

ネットでそこに特化した情報を流してくださるのは本当に有難いと思います。ただ、やっぱりまだまだテレビの影響が強いので、テレビのあり方が、いかがなものだろうと思うことは多々あります。

――杉本さんは、ある意味それを利用していくことも可能な立場ですね。

そうなんです。私も上手にやらないといけません。こういう活動をしていると、どういうスタンスで何を発言するのか自体が難しいです。メディアとしてはあまりシビアなことは言って欲しくないというのがベースにあるんですよね。そういう空気が読めて、結果カットされたり、違うように書かれるんだろうなというのは、とても分かります。

――ここではそのままお伝えしますので、存分に語ってください。

■久々にやって舞台っていいと思いました。自分を活性化してくれる誤魔化しの利かない世界

――作品の話を伺わせて頂きたいのですが、杉本さんに舞台の印象がありませんでした。

長いことやっていないんです。

――昔はされていたんですか?

ストレートプレイを1本とミュージカルを2本くらいですね。あとは、ほとんどダンスの舞台で、お芝居とダンスを融合させた、芝居仕立てのダンスを自分で主催して、30代のときに何年かやっていました。昨年の年末に、ミュージカルをやらせて頂きましたが、いわゆるストレートプレイの舞台は18年ぶりくらいです。このお話いただいて、やってみようかなとチャレンジ精神でお引き受けしました。

――今、舞台の波になっているんですね。

元々小学生の頃から舞台に立つのが好きだったんです。「舞台」という生のライブ的な感じが、小学生の頃から大好きでした。仕事で舞台をやるというのは、とても自然なことでしたが、途中で映像の方へ行きはじめたので、舞台の機会がなくなってしまいました。舞台は稽古を含めて時間がとてもかかりますし、自分が独立してからは、チャレンジさせて頂くのが難しかったんです。

――なるほど。

この歳になって、昨年久々にやってみて、舞台っていいよねと思いました。どんな仕事をやるよりも、とても自分を活性化してくれる、磨いてくれるものなんだなと思います。やはり誤魔化しの利かない世界なので、とても刺激的でやりがいがあったんですよね。昨年のミュージカルがなかったら、この大変な作品を引き受ける勇気はなかったかもしれない(笑)。

■原作を読んで、小夜の気持ちを、自分の心と身体を使って伝えたいと思いました

――いいタイミングだったんですね(笑)。原作を読ませて頂きましたが、電車の中で読み始めた私がいけなかったというくらい泣いてしまいました(笑)。

(笑)。私は原作を読んで、とても引き込まれてしまって。私が演じる小夜の思っていることが手に取るように分かり、彼女の気持ちを、自分の心と身体を使って伝えたいと思いました。みんながみんな、深く共感出来ることではないなと思ったんです。だから、私がやらせて頂いたら、きっとすごく深いところまで理解して、表現させてもらえるんじゃないかと思いました。

――今、お稽古をされていていかがですか?

やればやる程難しいと思っています(笑)。

――どんな部分が難しいですか?

やはり舞台独特のテンポがありますね。SFだというところもありますが、現代や過去の小夜が行ったり来たりしている独特の表現をしながら、小夜の気持ちになっていくところも、リアルな現代の生活の中にはないところは難しいなと思います。

■動物たちと一緒に生活をしていて、命の尊さなどを感じた人には、絶対見て欲しいなと

――なるほど。今回2作上演ですが、杉本さんが出演される『いなくなった猫の話』は、どこを見てほしいなどの思いがありますか?

やはり私と同じように動物たちと一緒に生活をしていて、心を通わせて本当に命の尊さなどを感じた人には、この作品は本当に深く心に染みると思うんですね。そういう方には、絶対見て欲しいなと思います。でも、そういう経験がなかったとしても、本気で誰かを愛したことがあるとか、人生が思うようにならなくて、切なさや不条理、理不尽な思いをたくさん経験して傷ついて、一生懸命生きてきた人には、何かしら感じてもらえるんじゃないかと思います。

小夜の台詞にもあるように人生は本当に残酷ですし、人間ってそもそも残酷。本当に生きるって大変なことだと思いますよね。その大変な人生の中で誰かと深く関わりあった時に、自分の中に芽生えてくる愛や感情、信頼関係を、人生の中で感じるという時が、やっぱり人生の醍醐味なんだと思います。その瞬間に人の魂はキラキラと輝くんだろうなと、そういう人生の光と影を感じてもらえるような作品だったらいいなと思います。

――小説を読むだけでももちろん考えられますが、舞台では五感を使って感じられますね。

やはりこの舞台のストーリーの中に含まれている、進行形の今の社会にある問題がたくさん感じられると思います。本当に人の命が軽視されている問題や、動物の悲惨な流通問題など、そういった人間が犯していく罪、人間の愚かさなど、そういった今の社会の現在進行形の問題をここから感じて頂いて、自分たちの社会がどうあるべきか、どういう風に生きるべきかまで考える一つの作品になったら、とても素敵だなと思います。

舞台「森奈津子芸術劇場 第一幕~パトス編~『いなくなった猫の話』」公演ビジュアルより=写真提供:Zu々

舞台「森奈津子芸術劇場 第一幕~パトス編~『いなくなった猫の話』」公演ビジュアルより=写真提供:Zu々

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