実録・コインランドリー屋さん(3) コインロッカー式のコインランドリーって、できないの?

一部の方にはお待たせしました。コインランドリー屋さんシリーズの第3回です。それにしても、コインランドリーの話をすると急に乗ってくるのは、男性ばかりですね。先日も、ある金融機関の方と話していたのですが、コインランドリーの話になると身を乗り出してきたのは、やはり男性。同席した女性は、それほど関心はない感じ。やっぱり、あの大きな乾燥機のドラムが、くるくる回っている姿が、なんとなく機械好きな男性のココロを揺さぶるのでしょうか。

一番右側が新たに買い換えた1号機(番号なし)=撮影・橋本正人

一番右側が新たに買い換えた1号機(番号なし)=撮影・橋本正人

さて、とはいえ、コインランドリーは趣味でやっているのではないので、新しい洗濯機を購入した約30万円と、床のリフォーム代の約30万円と、合計約60万円を回収する方法を、まずは考えなければいけません。そこで、頭をひねって出てきたのが「コインロッカー・コインランドリー」は、どうかということでした。

コインランドリーは、サラリーマンなどが利用することが多いため、夜や土日の稼働率は高いものの、平日の昼間の稼働率を上げないと、売上増は望めません。そこで、コインランドリーの中に、コインロッカーを設置して、午前10時までにロッカーの中に洗濯物を入れて500円を投入しておけば、昼のうちに合鍵でロッカーを開けたスタッフが洗濯と乾燥を終えた衣服を綺麗に畳んでロッカーに戻しておき、午後6時以降にロッカーのカギを持った人が取り出して家に持って帰るという方式です。

コインロッカー自体は、それほど高価なものではありませんし、これがうまくゆけば、他の場所にロッカーを設置して、事業規模を拡大することもできるのではないか、と夢は膨らみました。連れ合いに説明すると「下着などを洗うのに、自分以外の人には触らせたくない」と言っていましたが、男性陣に聞くと「朝放り込んでおけば、夕方には畳んで返してくれる? それはいいなぁ」という反応ばかりでした。このコインランドリーは、郊外で家族連れが多く住む住宅街ではなく、どちらかというと単身の男性が多い地域の駅近の場所にあるので、「コインロッカー・コインランドリー」は当たるのではと思いました。

店内の洗濯物をたたむスペース。ここにコインロッカーを置けないかと考えましたが…=撮影・橋本正人

店内の洗濯物をたたむスペース。ここにコインロッカーを置けないかと考えましたが…=撮影・橋本正人

しかし、機材を購入したコインランドリーの専門業者に聞くと、ひと言「たしかに、便利そうですよね。でも、コインロッカーのコインランドリーって、あまり聞いたことがないですよね。それは法律の壁があるからなんです」と。え? 法律の壁って、なに?

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※ここからアイデアニュース有料会員限定部分です。「コインロッカー式のコインランドリー」を運営するための「法律の壁」とは何なのか。そしてその「法律の壁」を乗り越える方策を実施すると、法律以外の別の「壁」が出てくるということも教わりました。それらの壁とは何なのか、それに対してどうしたのかについて書いています。

その業者さんによると、人から衣類を預かって洗濯して返す場合は、クリーニング業となり、「クリーニング師」の資格がないと営業できないというのです。

コインランドリーの場合は、自分で洗濯機に入れ、自分で乾燥機に入れるので、形式的には洗濯物を預かっていることにならず、クリーニング師の資格は必要ないものの、ロッカーに入れられた洗濯物を「スタッフが洗濯機に入れる」場合は資格が必要だということです。

調べてみると、クリーニング師の資格試験(各都道府県が実施)には、法律などについての知識を問う筆記試験のほか、繊維や薬品を識別したりアイロンがけをする実技試験も含まれており、それなりに気合を入れて勉強しないと難しい感じです。

ただし、「洗濯機に入れる」ことをスタッフがしないようにするため、「洗濯機に投入するまでを利用者本人にやってもらい、そのあとでスタッフが乾燥機に移し替えたり、乾燥機から取り出しておいて置くということを代行している店は聞いたことがあります」とのことでした。

たしかに、コインランドリーは、洗濯物を入れてから乾燥機に移し替えるのに戻ってくるのが面倒ですし、洗濯機と乾燥機が一体になった機械でも、乾燥が終わる時間に必ず戻ってこないと次の人に迷惑をかけるし、気を使うので、取り出すことだけでも代行してくれれば、助かるのは助かります(自分の洗濯物を他の人に触られたくないという人はいるでしょうけど)。

また、その業者は「コインロッカーで預かると、ボタンがとれたとか、生地が縮んだとか、クレームがつきやすいと思います」とも話していました。洗濯物を投入する部分に人が立ち会えば「人と人とが顔を合わせるので、クレームもつきにくい」ということでした。

そして、洗濯物を洗濯機に入れるところにスタッフが立ち会うということになると、スタッフをずっと配置しなければならず、人件費がかかります。人の配置が必要なコインロッカーというと、それはもはやコインロッカーではないとも言えますよね。これが「法律以外の壁」です。

夜のランドリー。24時間営業となっています=撮影・橋本正人

夜のランドリー。24時間営業となっています=撮影・橋本正人

「コインロッカー・コインランドリー」の実現は、完全にあきらめたわけではありませんが、まずは、チラシを作って近所にポスティングしてゆくとか、私が得意なインターネットの技術を駆使して店の情報を検索できるページを作るとか、そうした地道な対策を実行するのが先だなあと、思い始めました。1年ほどあれこれやってみて、知識と経験を見につけてから、新しいことにチャレンジしても遅くはないと思います。

このコインランドリーを引き継いだ時、店の中には、何かあった時の連絡先の電話場号などが表示されていませんでした。常識的には、機械が動かなくなったなどのトラブルがあった時のために、電話番号などが書いてあるのが普通だと思うのですが、どこにもありません。壁に貼られた、お客さまに向けた使用上の注意の余白には「お金を入れたのですが乾燥機が動きません。連絡先を教えて下さい」などとボールペンで書き込まれたメッセージが、数件ありました。

コインランドリーの引き渡しの際に、前のオーナーに連絡先表示がないことについて聞いたところ、「私は遠隔地にいるので、何かクレームをつけられても動けませんしね。電話がかかってきても対応できない以上、書いておくわけにいかないんです」とのこと。「お金を入れたまま動かなくなってらどうするんですか?」と聞くと、「まあ、あきらめてもうらうしか…」と。仕方がないのかもしれないけれど、それは利用者の側からしたら、頭にくるだろうなと思いました。

店を引き継ぐことになってから、来店していた年配の女性と立ち話をするようになり、このことを話すと、「お金入れても動かないこと、あるよ。途中で止まったり」。「でも連絡先が書かれてませんよね」。「うん。書いてないからしょうがない。別の機械を使って洗濯する」。「そしたら、お金が返ってこないから、貯金箱じゃないですか」。「貯金箱って?」。「ほら、お金を入れたまま出てこないから、貯金箱みたいだなって」。「あんた、うまいこと言うな。貯金箱か。わはははは」。って、笑ってるくれるお客さまで、助かりました(汗)。

ということで、もちろん、私がオーナーを引き継いでからは、すぐに私の携帯の電話番号が書かれた紙を連絡先として貼り出したのですが、私が引き継いでから3ヶ月たって、まだ1度も電話がかかってきたことはありません。

水漏れで汚れた床を綺麗にして、壊れた機械を修理し、連絡先を表示する。、無人の店舗だけに、小さなことの積み重ねで利用者の信頼を得ていかなれければ、いけないと心がけています。もちろん、収益を上げることも大事ですが(汗)。

ということで、3回にわたって掲載したコインランドリーの裏側紹介は、いったんここで休止とさせていただきたいと思います。まだコインランドー屋さんになって4ヶ月しかたっていないので、またしばらくして新しいネタがたまりましたら、報告したいと思います。ちなみに、これからは、10年前に「サラリーマン大家さん」になろうと思って、小さな中古のワンルームマンションを購入してから、少しずつ規模を拡大して、このコインランドリーが入っているマンション1棟を取得した経緯を赤裸々につづった(汗)、「実録・大家さん」を掲載したいと思います。引き続き、もちろん興味のある方だけで結構ですので、おつきあいくださいますようお願い申し上げます。

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“実録・コインランドリー屋さん(3) コインロッカー式のコインランドリーって、できないの?” への 3 件のフィードバック

  1. 管理人 より:

    すわさま、コメントありがとうございます。コインランドリーは夜も煌々と電灯をつける形にしており、また録画可能な防犯カメラをつけています。24時間営業による問題が生じたことは、今のところありません。トラブルといえば、「お金を入れたのに動かない」などの連絡を受けて、急いで現場に駆け付けることが月に1回程度あるのと、数カ月に1回のペースで機械の修理などを行わなければいけないということでしょうか。

  2. すわ より:

    24時間営業だと、ホームレスの人が住み着いたりするので、あと、頭洗ったり、体拭いたりして、床がびしょびしょになったりするので、対策とか考えているけど(セコムに頼むとか、また、金かかるけど)、何か、事件はなかったですか。

  3. すわ より:

    洗濯乾燥機自体を、コインロッカーの中に入れるみたいにできると、見張ってなくても、下着ドロボーの防止になるし、入れっぱなしの時だけ課金すれば、洗濯乾燥機の占有防止にもなるし、どうでしょう。
    続きを期待しています。

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