ベッドに横になっていても、お腹の上が見える「プリズムメガネ」

父の介護で使ってみて、実際に「これは役に立つ」とわかったアイデア商品の数々を紹介しているシリーズ。今回は、90度下が見える「プリズムメガネ」です。

もともとは、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが主演した映画「最高の人生の見つけ方」(2007年・米)の中で、ジャック・ニコルソンがつけていて、「なんじゃ、あれは?」と思ったのがきっかけで、日本でもあるだろうと探して見つけたものでした。この映画は、余命わずかな大金持ちと自動車整備工が出会ってともに旅をする姿をつづったものですが、ジャック・ニコルソン演じる大金持ちが病院に入院しているシーンで、天井から吊り下がった大型テレビを、彼がベッドに横になったまま見ているシーンがあり、なんじゃ?と思ったのです。

父は頸椎損傷で首から下が動かなくなり、好きな映画を見るためにベッドから体を起こすのも大変な状態でした。もちろん、家族が介護してベッドから起き上がって車いすに座り、大きなプロジェクターに映し出された映画を見るというのは、大けがをしてからの父の一番の楽しみでもあり、一番のリハビリでもあったのですが、体調が悪いと起き上がることができない。そんな時に、ジャック・ニコルソンのようにベッドの上に横になったまま、映画が見れないかと考えたのです。

「プリズムメガネ」という言葉も知らなかったので、「横になって見る メガネ」などで検索して探したのですが、そのうち、見つかりました。日本でも売っていました。それが次の動画のプリズムメガネです。実際にどんな風に見えるのか、まずは動画をご覧ください。

父愛用のプリズムメガネ(中央)と、目にくっつかないタイプ(左)、メガネの上にかけられるタイプ(右)=撮影・橋本正人

父愛用のプリズムメガネ(中央)と、目にくっつかないタイプ(左)、メガネの上にかけられるタイプ(右)=撮影・橋本正人

こんなメガネを使わなくても、当初は、天井にテレビを貼り付けるとか、プロジェクターを天井に向けて照射すれば横になったままでも映画を見ることができるのではとも考えましたが、天井にテレビをつけるのは天井の強度の点で問題があり、万が一、テレビが外れて落ちてきたらと考えると、自分では身動きできない父の顔の上にテレビを置くのは危険だと思いました。プロジェクターはなんとかなるようにも思えたのですが、介護の関係でベッド回りでは多くの人が動くため、大きな機械を設置するのは難しい状況でした。

そこで当初考えたのは、食事などの際にベッドの上に差し込む形で使うテーブルに、小型のポータブルDVDプレーヤーを乗せて、見てもらえないかということでした。そのために知人の大工さんに相談したところ、机に固定するアーム式の電灯(スタンド)を使って、電灯がつく部分い板をつけ、そこにDVDデッキを固定し、画面部分だけを外に出せば見られるのではないかと考えました。

スタンドを材料にして作ったアーム式の台=撮影・橋本正人

スタンドを材料にして作ったアーム式の台=撮影・橋本正人

これは、一時的には使いました。ただ、ポータブルDVDプレーヤーを固定するためにベルトなどで機械を巻いたりするとDVDの取り出しが困難になるとか、操作の際に間違って落としたりすると父の顔に落ちかねないなど、やはり安全面で問題がありました。

そんな時に見た映画で見たのが、ジャック・ニコルソンの「プリズムメガネ」だったのです。食事に使うテーブルの上にポータブルDVDプレーヤーを置いた状態で、真横になって見られるので、とても安全です。

米国では、この「プリズムメガネ」が病院には良くあるのかもしれませんが(映画の中だけかもしれませんが)、父がプリズムメガネを使って、テーブルの上に置いたポータブルDVDプレーヤーで映画を見たり、iPadで本を読んだりしている姿を見ると、ほとんどのヘルパーさんや看護婦さんが「このメガネは何ですか?」と聞いて、説明すると「へえ~~~!」と驚いていました。

私も、ちょっと風邪で弱っていた時に、仕事でどうしてもある映画を見る必要があったため、父のプリズムメガネを借りて、お腹の上にポータブルDVDプレーヤーを置いて映画を見たことがありますが、さすがに真横になっているので、2時間あまりの映画を見ても、あまり疲れませんでした。

入院先でプリズムメガネをつけて映画を見る父。奥に見えているのはアーム式の電灯にカレンダーを貼り付けたもの。入院していると退院の日が待ち遠しくて、カレンダーを見たくなるんですよね=撮影・橋本正人

入院先でプリズムメガネをつけて映画を見る父。奥に見えているのはアーム式の電灯にカレンダーを貼り付けたもの。入院していると退院の日が待ち遠しくて、カレンダーを見たくなるんですよね=撮影・橋本正人

プリズムメガネは、そんなに高価なものではない(1000円から3000円ぐらい)ですし、入院していて起きがれない人にとっては、とても便利なものなので、ぜひ病院に備え付けて、貸し出して欲しいですね。

<アイデアニュース関係記事>
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アイデアニュース有料会員向け【おまけ】  Amazonで注文したものと違う「プリズムメガネ」が届いて、返品・返金を初体験(橋本正人)

返品の際につけた説明=撮影・橋本正人

返品の際につけた説明=撮影・橋本正人

プリズムメガネは、使っているうちに耳にかける部分と鏡のついた部分の間がだんだん弱くなってきたので、同じものを買おうと、Amazonで注文しました。注文の際には、商品の写真をよく見て、間違いないと思って買ったのですが、届いたものは父が希望していたものとは違う、目のまわりがふくれていて使いにくいタイプでした。

Amazonに問い合わせたうえで、返品することになり、宅配業者が自宅まで取りにきてくれたので、送料もかからずに、支払った代金は後日、振り込みで返金されました。

写真と違うものが届くということは、通販の世界では、ままあることなんでしょうね。結局、新しいものは買わずに、古いプリズムメガネをそのまま使い続けているうち。2015年4月に父は亡くなりました。

いつでも誰でも、病気になって本やテレビが見にくくなることは十分可能性があるので、父が遺したこのプリズムメガネは、また誰かに使ってもらう時のために、とっておいています。

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